2009年6月22日月曜日

キッシンジャーを中国に派遣する米国の意図は?




【北制裁】米、キッシンジャー氏を中国に派遣か 韓国紙


韓国紙、朝鮮日報は22日、米国が中国に対し、国連安全保障理事会決議によ
る対北朝鮮制裁への積極的な参加を促すため、特使としてキッシンジャー元国
務長官の派遣を検討していると報じた。外交筋の話としている。
同筋によると、先週、韓国の李明博大統領が訪米した際に行われた協議で、米
側が高官を中国に派遣する方針だと説明、有力候補としてキッシンジャー氏の
名前が挙がったという。(共同)

(産経新聞 2009/06/22)


北「核で世襲」幻想捨てるべき…米新政権が譲るという誤算

もはや「覆せない(Irreversible)」合意がワシントンのキーワードだ。

米国は核交渉が再開する場合、非核化プロセスの最終段階である核廃絶から出
発しようとしている。北朝鮮のすべての核と核物質をテーブルの上にのせて、
廃棄と補償を協議しようとしている。

米国の暫定的な結論通り、北朝鮮が最後まで核を断念しない場合、米国は核の
不拡散をいかにして達成するのだろうか。答弁は衝撃的だ。オバマ政権の人々
は言葉を控えるものの、ブッシュ政権が初期に進めた北朝鮮の体制交代(Regime
Change)のほかに方法がない、という立場だという。

ぞっとする過去への回帰だ。より衝撃的なのは米国が「北朝鮮の体制交代」を
行動に移す場合、その直前に在韓米軍を、北朝鮮のミサイルの射程に入る韓国
から撤退させる方針だということだ。北核問題をめぐる事態が、米国の「北朝
鮮体制の交代に向けた措置」によって悪化すれば、米軍が撤退し、韓国の各都
市、産業施設、軍事基地が北朝鮮のミサイルのターゲットに入ることになるのだ。

北朝鮮が韓国を攻撃する場合、米国が核の傘と通常戦力で守ると確実に公約し
たものの、それが韓国の「被害ゼロ」を保証するわけではない。だから南北
(韓国・北朝鮮)が交わす進軍喇叭(らっぱ)のような強硬姿勢が非常に不安
に思える。

米国は北朝鮮に対話の扉を開けておいてはいるものの、制裁の局面で対話をも
の乞いする考えはない。北朝鮮に拘束中の米国人女性記者問題を核交渉に結び
つける考えもない。だから北朝鮮が希望するアル・ゴア元副大統領の平壌(ピ
ョンヤン)訪問にも冷淡だ。オバマ政権を「押せば押される」と誤算したのが
北朝鮮の失敗だ。

事態が非常に危うい。北朝鮮は現実を直視すべきだ。核兵器で強盛大国を実現
し、26歳の青年に世襲する権力の基盤を固めるという時代に反した幻想を捨
てねばならない。中国は「北朝鮮の崩壊より、核を持った北朝鮮の存続が有利
だ」という偏狭な国家利己主義を捨てるべきだ。対北制裁に積極的に加わり、
北朝鮮を交渉のテーブルに戻らせねばならない。

韓国と米国は中国を動かすことに外交力を集中すべきだ。韓米同盟と韓中関係
のバランスを取るべきだ。韓国は制裁の局面でも、対話を通じて南北関係を管
理していかねばならない。李明博(イ・ミョンバク)大統領は8月15日(独
立記念日)の演説で、北朝鮮が拒めない提案をしなければいけない。

(中央日報 2009/6/22)


上の記事が事実であるとすれば、今時、何の為に米国はキッシンジ
ャーを派遣するのか疑問とする処です。中国に安保理決議に協力さ
せるというのは、あまりにも漠然としすぎています。共和党政権の
元国務長官であり、米中接近と、ベトナム撤退を実現した中国の古
い友人で、バーゲニング外交の第一人者を送るには相応の理由があ
る筈です。

それに対する回答が二番目の中央日報の記事です。オバマ政権は、
北のレジームチェンジを決意しているというものです。

核廃絶を訴えたオバマに対して、北朝鮮は、オバマを甘く見すぎて
強く押しすぎたという内容です。北朝鮮との対話チャネルを開くの
にタイミング良く(?)発生した米国ジャーナリストの逮捕事件に対
しても、ゴア元副大統領が対朝交渉に乗り気な割には、オバマ政権
が奇妙に無関心な印象を与えているのも事実です。

記事にある、体制変更の実施前に、在韓米軍を撤退させるというの
は、もし本当であれば、米国が仕掛けるタイミングが誰の目にも明
らかになってしますので、眉唾かとも思います。

しかし、米国が、レジームチェンジだけを狙うのであれば、米軍を
動かす必要はありません。米国も、そして、実は韓国も、ボトムラ
インは、現状維持ができれば良いのであり、まともなインフラ整備
に幾らかかるか判らない最貧国の救済に手を出す気はサラサラない
のです。米軍によって北が解放されるよりは、北朝鮮の伝統的同盟
国であり、血の盟約を結んだ中国が自らレジームチェンジの手を下
す事で、引き続き、朝鮮半島の北半分を中国の勢力化に置いた方が、
中国にとって有利であるのは言うまでもありません。

特に、最近のミサイル発射実験と核実験に対する、中国の安保理決
議案参加で、北朝鮮は中国の事を米国追従勢力とまで非難している
と言うのでは、出来上がった核ミサイルの照準が北京に合わせられ
る事まで中国は、心配せざるを得ない事になりつつあります。

オバマにしてみれば、偉大な大統領として名を残す事にも繋がる核
廃絶の実現どころか、北朝鮮が核武装する事で、韓国や日本にも核
のドミノ的拡散が懸念される状態となり、少なく共、条約上の義務
に基づいて、韓国や日本に核を再配備せざるを得なくなるのでは、
北朝鮮によって人類の進歩が逆行を余儀なくされると感じて不思議
ではありません。

そうであれば、キッシンジャーのカバンの中には、北朝鮮のレジー
ムチェンジを中国が行うか、さもなければ、米国によるレジームチ
ェンジを黙認して欲しいというオバマからの親書が入っていてもお
かしくは無い様に思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月19日金曜日

米臨検への対応で明らかになる?北朝鮮は撃つ撃つ詐欺か?

※写真はロイターサイトより転載

ミサイル積載か 米軍、北朝鮮船舶「カンナム」を追跡 過去に兵器拡散活動

米海軍がミサイルや核関連物質を搭載した疑いのある北朝鮮船舶を追跡してい
ることが18日、明らかになった。米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議
長は18日の記者会見で、「(北朝鮮への追加制裁を決めた)国連安全保障理
事会決議を積極的に実行するつもりだ」と述べ、具体的言及は避けたが、追跡
していることを事実上認めた。

北朝鮮による武器輸出の全面禁止や貨物検査などを盛り込んだ12日の制裁決
議採択後、大量破壊兵器を積んだ疑いがある北朝鮮船舶の初めての動きだけに、
寄港先となる国の対応が注目される。

FOXテレビなどによると、船の名称は「カンナム」。行き先は明らかになっ
ていないが、17日に北朝鮮の港を出航し、シンガポール方向に向けて航行中。
過去にも北朝鮮の大量破壊兵器の拡散活動に使われてきた船舶だという。
2006年10月、香港海事局は北朝鮮の貨物船「カンナム1号」と姉妹船で
ある「カンナム5号」を安全設備に不備が見つかったとして、出港を認めない
強制措置を取った。「カンナム1号」は07年5月にミャンマーに入港したこ
とが確認されている。北朝鮮とミャンマーは同年4月、国交を回復しており、
北朝鮮からの武器輸出の可能性が指摘されていた。
米軍が今回追跡している船舶が「カンナム1号」かどうかは不明だ。
マレン議長は北朝鮮の船舶が米軍による検査を拒否した場合の対応について、
安保理決議で強制的な乗船は認められていないため、最寄りの港に向かうよう
指示し、寄港地の国が船舶検査を実施することになると説明した。

(産経新聞 2009/6/18)


さて、いよいよ北朝鮮の決意が試されるシチュエーションが近づい
てきました。「カンナム」の目的地は、現時点では判りません。ミ
ャンマーである可能性が強いと言いますが、中東方面かも知れませ
ん。それに対し、米海軍は、記事にもある通り、「カンナム」に近
寄って、船舶検査の為、最寄の港湾へ向かう様に指示する事になり
ます。

実は、この船舶検査や臨検は、北朝鮮が一番嫌がっている事の一つ
です。北朝鮮が韓国のPSI参加に対して「PSI参加が武力衝突と全面
戦争へとつながるのは時間の問題だ」とまで、論評したのもPSIが
臨検を含むものであった事によるものと考えられてきました。

北朝鮮は、6月13日の安保理決議に対する外務省声明の中で、
「米国とその追従勢力が封鎖を試みた場合、戦争行為と見なし、断
固軍事的に対応する。」と言明しており、臨検もそれに含まれると
していました。今回、米海軍が、船舶検査を試みた場合、それを北
朝鮮が臨検と見なすかどうかが問題になります。

米軍の行動に対応した反応を北朝鮮がどの様な形で見せるのかで、
北朝鮮のエスカレーションに関してどの程度の決意をしているのか
その程度が推測できるのではないかと思われるのです。

今まで、北朝鮮は、声明や発表の上では、激烈な言葉を頻発させて
いますが、実際の行動では、意外に慎重に振舞っています。例えば、
6/18に、日本海で、北朝鮮艦船が、NLLに接近しましたが、韓国軍
の警告を受けて引き返しています。元々北朝鮮はNLLを認めていま
せんから、国連決議以降もっと大胆に行動しても良さそうなもので
す。また、短距離ミサイルの発射に関して、国際ルールに沿った航
行情報を出していると言う報道もあります。そういう具合で事実と
しては、色々とブラフは行っているものの決定的な行動は避けてい
る様に見えるのです。

その一方で、報道によれば、北朝鮮は、現在、テポドン2号2基、
ノドン一基の計三基のミサイルの発射準備を進めているという報道
があります。

北朝鮮がエスカレーションを避けるのであれば、米海軍の行動に対
して、攻撃的な声明を行うだけで、実際の行動は避ける筈です。
それに対し、対決する決意があるのであれば、より積極的な行動を
とってくると思われます。

最初に述べた様に、北朝鮮の船舶が輸送しているものは、武器以外
にも、核開発関連物質や、ニセドル札、麻薬、覚醒剤、ニセ煙草と
言った表ざたになった場合、北朝鮮の評価や面子を失わせる様なも
のが含まれているのは、まず間違いありません。

その様な点からも、ここ数日の北朝鮮の反応に当分目が離せないと
思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月18日木曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(余)

※写真は中国の移動式ミサイルの発射シークエンス

最初は三回で終了する予定でしたが、要約部分が字あまりになって
しまいましたが、「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」はこれで
全訳終了です。
今、pdfファイルにする準備を進めています。
原典にあってブログに載せられなかった写真や図なんかもpdfでは
全部ではありませんが復元したと思っています。
ミサイルを調べる時の基礎的な資料として使って頂ければ幸いです。

------------------------------
SUMMARY(要約)
------------------------------

弾道ミサイルはすでに広範囲にわたって使用されており、今後とも数的にも多
様性も増加し続けるだろう。弾道ミサイルで使用する目的で大量破壊兵器を入
手する事が可能になる事で、この脅威の重要性は著しく増加する。ロシアの戦
略ミサイル戦力が量的には縮小しているにもかかわらず、ロシアは、恐らく、
合衆国以外では最も大きな戦略弾道ミサイル戦力を保持し続けるだろう。新し
い弾道ミサイルシステム(SS-27 ICBMとSS-N-23 Sineva、及び
SS-NX-32/Bulava-30 SLBM)の開発には、高い優先順位が与えられている。
ロシアの当局は、新しい種類の極超音速飛行体が、戦略弾道ミサイルとして、
ミサイル防衛システムを突破するために開発されていると述べている。ロシアは、
また、新型のイスカンダール-E SRBMを輸出しようとしている。

中国は先進的な技術の弾道ミサイルを生産しており、弾道ミサイル技術を他の
国に売り込んでいる。中国は、非常に大きな戦域ミサイル配備計画があり、台
湾の隣接地に弾道ミサイルの大きな戦力を展開している。中国は、この戦力の
到達範囲を拡大しており、将来の地域紛争に外国が関与するのを防ごうと試み
ている。中国は既に、ICBMの比較的小さな戦力で合衆国を目標にできているが、
今後、中国のICBM戦力は、相当程度、成長すると見込まれる。

北朝鮮はテポドン2 ICBM/人工衛星打上ロケットの開発を続けており、IRBMの
開発も行っている。北朝鮮は弾道ミサイルシステムを輸出しており、今後も恐
らくそれを続けると思われる。

LACMの拡散は、今後十年で更に拡大する。少なくとも九ヶ国が、LACMの生産に
関与している。大多数の新しいLACMは、非常に正確で、通常弾頭を装備してお
り、輸出も可能である。ミサイルが通常弾頭しか装備していなくても、多くの
LACMの高い正確性は、目標に重大な損傷を負わせる事ができる。合衆国の防衛
システムは、多方向から同時に目標を攻撃する低空飛行のステルス型巡航ミサ
イルによって、非常に圧迫を受けるに違いない。

弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、比較的低い運用経費、防御システムを突破
する可能性、及び国力の象徴として価値から、多くの国で攻撃用兵器として選
択され続けるだろう。それ故に、将来の軍事計画と作戦において慎重に考慮さ
れなければならない脅威であると言える。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月17日水曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(下)



------------------------------
INTERCONTINENTAL BALLISTIC MISSILES(大陸間弾道ミサイル)
------------------------------


ロシアはICBMに2000個の核弾頭を保持しており、これらのミサイルの殆どは警
戒待機態勢に置かれ、命令があれば数分以内に発射できる状態が維持されてい
る。ロシアのICBM戦力の規模は軍備制限協定や、ミサイルの老朽化、資源制約
のため、減少し続けるが、ロシアは、おそらくアメリカ合衆国外で最大のICBM
戦力を保持し続けると思われる。戦力を維持し、近代化する努力は、進行中で
ある。弾道ミサイル防衛システムに対抗できる設計のSS-27 Mod 1 ICBMは、現
在5つのミサイル連隊(ミサイル48基)で、サイロ配備されている。ロシアは、
2006年にSS-27 Mod 1の道路移動タイプの配備を開始した。MIRV化されたバー
ジョンのSS-27(SS-27 Mod-X-2(RS-24))は、現在、開発中で飛行試験段階
にある。それに加え、ロシアの当局者は、極超音速で飛行し、ミサイル防衛シ
ステムを突破する新しい種類の戦略ミサイルを開発していると主張している。
1994年12月に効力を発した戦略兵器削減交渉(START I)条約は、ロシアと合
衆国が、各々6000個(ICBM、SLBM、重爆撃機を含む)を超えない弾頭数しか保
有しない様に制限している。2002年の戦略攻撃力削減についてのモスクワ条約
では、2012年末までにロシアと合衆国が各々1,700~2,200の配備された弾頭し
か持たない様に制限している。

中国のICBM戦力は、戦略的な核抑止力の実現を意図している。中国は核武装し
た、液体燃料推進で射程に制限のあるCSS-3 ICBMと、合衆国に到達可能なCSS-4
ICBMの比較的小さな戦力を保有している。しかし、中国は、先進的な新型の移
動式で固体燃料推進のICBMの開発と配備を進めている。

道路移動式で、固体燃料推進の、CSS-10 Mod 1と長射程のCSS-10 Mod 2の両方
が、第二砲兵部隊内で数単位配備された。道路移動式ICBMの配備は、中国の戦
略ミサイル戦力の生存性を強化する。
CSS-10 Mod 1はヨーロッパとアジアの全域及びカナダと合衆国北西部の一部を
射程に収めている。より長い射程のCSS-10 Mod 2は合衆国大陸部の殆どを目標
とする事ができる。中国は一部のICBM用にMIRV弾頭を開発することができよう。
そして、合衆国を脅かすことができる中国のICBMの弾頭の数は、次の15年で
100を軽くオーバーする数に増加することになるだろう。

北朝鮮はテポドン2(TD-2)ICBM兼衛星打上ロケットを開発している。そして、
ICBMとして開発されるならば、それは合衆国に到着できる性能を持つ。TD-2の
二回の発射実験は失敗に終わったが、2009年4月の飛行は2006年7月の発射時と
比べ、より完全な性能を示した。

TD-2の開発で示された北朝鮮の継続的な進歩は、長射程弾道ミサイルと人工衛
星打上能力を保有する事への決意を明白に示している。テポドン2は、将来他
の国に輸出されるに違いない。

イランには野心的な弾道ミサイルと人工衛星打上ロケットの開発計画がある。
そして、十分な外国の援助があれば、イランは、2015年までに合衆国に到達す
る事が可能なICBMを開発しテストすることができると思われる。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 発射機 最大射程(マイル)* ランチャー数
ロシア
SS-18 Mod 4 2+PBV 10 液体 サイロ 5,500+ 104基
SS-18 Mod 5 2+PBV 10 液体 サイロ 6,000+ (Mods 4 & 5の合計)
SS-19 Mod 3 2+PBV 6 液体 サイロ 5,500+ 122基
SS-25 3+PBV 1 固体 道路移動 7,000 201基
SS-27 Mod 1 3+PBV 1 固体 サイロ又は道路移動 7,000 54基
SS-27 Mod-X-2 3+PBV 複数 固体 サイロ又は道路移動 7,000 配備未済

中国
CSS-3 2 1 液体 サイロ又は移動式 3,400+ 10基から15基
CSS-4 Mod 2 2 1 液体 サイロ 8,000+ 約20基
CSS-10 Mod 1 3 1 固体 道路移動 4,500+ 15基以下
CSS-10 Mod 2 3 1 固体 道路移動 7,000+ 15基以下

北朝鮮
Taepo Dong 2 2 1 液体 不明 3,400+ 配備未済
Note: 射程距離は全て概算
* この推計には、PBVによる射程距離延長が含まれていない。いくつかのPBVは、
射程距離を延長する能力を持つ。

------------------------------
SUBMARINE-LAUNCHED BALLISTIC MISSILES
(潜水艦発射弾道ミサイル)

------------------------------

ロシアは、大陸間ミサイルの射程を持つ原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)の
相当な戦力を維持している。ロシアは、冷戦時代の老朽化したシステムに代え
て、新しく、且つ改善されたSLBM兵器システムを開発している。Sinevaと名づ
けられた新ミサイルは、デルタIV級SSBNの既存のSS-N-23を置き換えることを
目的としている。NX-32/Bulava-30 SLBMは、主として新しいドルゴルキー級
SSBNへの配備を目的とした新しい固体燃料推進のSLBMである。ロシアのSLBMは、
浮上中や潜航中のSSBNから、色々な発射場所で、発射可能である。

中国は、現在、12基のCSS-NX-3/JL-1ミサイルを搭載する事を目的とする夏級
SSBNしか保有していない。それに加え、中国は12基のCSSNX-14/JL-2 SLBMを搭
載した新型の晋級SSBNを配備する予定である。このミサイルは、初めて、中国
沿岸のSSBMの行動区域から合衆国の大部分を目標とする事ができる。

インドは、2つの新しい海軍用のシステムを開発している。2010年以降に使用
可能となる見込みのSagarika SLBMと、Prithvi陸上基地発射弾道ミサイルの海
軍バージョンであるDhanush海上発射型弾道ミサイルである。
Dhanushは、インドの海軍水上艦艇からの海上発射飛行試験を実施中である。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 搭載潜水艦 最大射程(マイル)* 発射筒数
ロシア
SS-N-18 2+PBV 3 液体 デルタIII 3,500+ 96基
SS-N-20 3+PBV 10 固体 タイフーン 5,500+ 40基
SS-N-23/Sineva 3+PBV 4 液体 デルタIV 5,000+ 96基
SS-NX-32 3+PBV 6 固体 ドルゴルキー 5,000+ 16基 配備未済
(Bulava) (ボレイ)
タイフーン 20基 配備未済

中国
CSS-NX-3/JL-1 2 1 固体 夏 1,000+ 12基 配備未済
CSS-NX-14/JL-2 3 1 固体 晋 4,500+ 12基 配備未済

インド
Sagarika 不明 不明 不明 不明 180+ 不明 配備未済

Note: 射程距離は概算


------------------------------
LAND-ATTACK CRUISE MISSILES(陸上攻撃巡航ミサイル)
------------------------------


弾道ミサイルとは異なり、巡航ミサイルは通常、使用目的と最大射程の替わり
に発射モードによって分類される。最も幅広いカテゴリー分けは、陸上攻撃巡
航ミサイル(LACM)と対艦巡航ミサイル(ASCM)である。各々のタイプは、
航空機、艦艇、潜水艦または地上に置かれた発射機から発射する事ができる。
この文書ではLACMについて述べる。

LACMは、無人の武装した飛行体で、固定された、あるいは移動する陸上目標を
攻撃するよう設計されている。それは、予め定められた目標へ前もってプログ
ラムされた飛行経路を飛行するが、任務中の大部分の時間を水平飛行に費やす。
推進力は、通常小型ジェットエンジンによって提供される。
目標の2、3フィート以内にミサイルを命中させる事ができる非常に精密な誘
導装置を装備している事から、最も先進的なLACMは、通常弾頭で武装したとき
でも、非常に小さな目標に対しても効果的に使用する事ができる。LACMの誘導
は、通常3つの段階で行われる。発射時と、飛行中と終末の三段階である。発
射段階では、ミサイルは慣性航法装置(INS)だけを使って誘導される。飛行
段階では、ミサイルは以下のシステムの一つ以上によって更新されるINSで誘
導される。レーダーに基づく地形照合システム(TERCOM)、レーダーまたは光
学的場面照合システム、それと衛星航法システム(例えば合衆国の全地球位置
測定システム(GPS)またはロシアのGLONASSシステム。)
終末誘導段階はミサイルが目標域に入り、より正確な場面照合が使用されるか
目標探知器(通常光学的であるかレーダーに基づくセンサー)が使用される段
階から始まる。

LACMに対する防衛は、対空防御システムに圧迫を加える事になる。巡航ミサイ
ルは、敵のレーダー覆域の下方にとどまり、場合によっては、地形の陰に隠れ
る事ができる様に低高度を飛行できる。より新しいミサイルは、レーダーや赤
外線検出器からも見えない様にするステルス機能を取り入れている。最新の巡
航ミサイルは、最も効率的な方法で目標に接近し、攻撃するようにプログラム
されている。例えば、防空システムを最も弱い部分で圧倒する様に、複数のミ
サイルで同時に異なる方向から目標を攻撃することができる。さらに、LACMは
レーダーと防空施設を避けるように回り道のルートを飛行し目標を攻撃する機
能を持つ。それでも隠蔽が巡航ミサイルの主要な防御手段ではあるが、いくつ
かの開発中のシステムでは、チャフやデコイ(囮)と言った防御層を加えている。

米軍に対する巡航ミサイルの脅威は、次の10年間増加すると思われる。少なく
とも9つの国が次の10年の間にLACMの生産に関与する。そして、LACM製造業者
のいくつかはそれらのミサイルを輸出可能とするだろう。
米国のトマホーク巡航ミサイルの成功は、多くの国で巡航ミサイル獲得に対す
る関心を高めた。購入可能な多くの巡航ミサイルは、精密攻撃任務を果たす可
能性がある。これらのミサイルの多くには、類似した特徴がある。それらは、
モジュール設計(航法機能や弾頭を選択可能とする様に製造する)、ステルス
技術の適用、戦闘機サイズの航空機から発射できる能力、そして、高亜音速で、
低高度を、地形追随しながら飛行する能力などである。


■ 性能
ミサイル名 発射モード 弾頭タイプ 最大射程(マイル)* 配備開始

中国
YJ-63 空中発射 通常 不明 不明
DH-10 不明 通常又は核 不明 不明

フランス
APACHE-AP 空中発射 子弾頭 100+ 2002
SCALP-EG 空中または艦船 貫通体 300+ 2003
Naval SCALP 潜水艦/水上艦 貫通体 300+ 2010+

アラブ首長国連邦
BLACK 空中発射 貫通体 250+ 2006
SHAHEEN*

ドイツ、スウェーデン、スペイン
KEPD-350 空中発射 貫通体 220+ 2004

インド、ロシア
Brahmos-A 空中発射 通常 150+ 2010+

イスラエル
Popeye Turbo 空中発射 通常 200+ 2002

パキスタン
RA'AD 空中発射 通常又は核 200 不明
Babur 陸上 通常又は核 200 不明

ロシア
AS-4 空中発射 通常又は核 185+ 運用中
AS-15 空中発射 核 1,500+ 運用中
SS-N-21 潜水艦 核 1,500+ 運用中
Kh-555 空中発射 通常 不明 不明
New GLCM 陸上 通常 300以下 不明
3M-14E 水上艦/潜水艦/陸上 通常 185+ 不明

南アフリカ
MUPSOW 空中/陸上 通常 125+ 2002
Torgos 空中/地上 通常 185+ 2006+

台湾
Wan Chien 空中発射 通常 150+ 2006
HF-2E 陸上 通常 不明 不明

英国
Storm Shadow 空中発射 貫通体 300+ 2003
Note: 全ての射程距離は概算。射程距離はミサイル本体のみ。発射形態によっ
ては、システムとしての射程距離は大きく伸延する。
*BLACK SHAHEENはSCALP-EGの輸出タイプ


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






2009年6月16日火曜日

ロシアも独自のミサイル防衛網で北朝鮮のミサイル攻撃に対応か?

※S-400対空ミサイルシステム
http://www.defencetalk.com/russia-s400-air-defense-systems-victory-day-18601/
より転載

極東に対空ミサイル ロシア、北への警戒強める

インタファクス通信によると、ロシアのノゴビツィン参謀本部次長は十一日、
最新鋭の対空ミサイル「S400」を極東地域に配備する考えを示した。
モスクワなど大都市を除く地方での同ミサイル配備は初。北朝鮮の二回目の核
実験実施や、新たな弾道ミサイル発射の兆候を見せていることなどを強く警戒
した措置とみられる。
ロシアは、北朝鮮が核保有国となることへの懸念を強めており、十一日に合意
に達した北朝鮮の核実験に対する国連安保理の制裁決議案の協議でも、消極的
対応から強硬姿勢に転換。オバマ米政権との協調を重視するロシア政権の思惑
も背景にあるが、核開発を加速する北朝鮮の脅威が最大の理由だ。
一方で、ロシアは、制裁強化による北朝鮮の暴走も懸念。ロシア外務省筋は同
日、タス通信に「決議は問題解決のために必要だが、北朝鮮が緊張を高める行
動を取らないことを望む」と述べた。
S400は、ロシア版ミサイル防衛(MD)の主力ミサイルとされ、モスクワ
とサンクトペテルブルク近郊にも配備されている。

(東京新聞 2009/6/12)


北朝鮮のミサイルと核開発に対抗する為に、日本はミサイル防衛網
の構築を進めている訳ですが、あれだけ北朝鮮の肩を持っていたロ
シアも冷静に北の核ミサイルに対する対抗手段の構築を進めている
ようです。

ロシアは元々、米国とのABM(弾道弾迎撃ミサイル)条約に基づきモ
スクワを防衛するABMとしてガロッシュ迎撃ミサイルを配備してい
ました。米国でも一時期、ABMが配備されましたが、その後撤去され
ています。一方、ソ連/ロシアではそれを維持し、現在は、ABM-3
(ロシア名はA-135)システムを導入しています。このシステムは、
核弾頭装備のシステムですが、ロシアは、これに加え、通常弾頭で
弾道ミサイル迎撃能力を持つ対空ミサイルS400の生産と配備を行っ
ています。

このS400は、2003年から配備が開始された最新型の対空システムで
近距離から遠距離(400km)まで、地上5mから高度30kmまで、UAVやス
テルス機から弾道ミサイルまでを迎撃対象とする優れものであり、
WikipediaやGlobalsecurityの情報を読む限り、パトリオットを凌
駕する性能を持ってる様に思われます。

記事によれば、現在S400が配備されているのは、モスクワとサンク
トペテルブルグですが、北朝鮮が核ミサイルを配備した時にその目
標となる極東地区にも配備するというものです。
元々ロシアは、現在多数のシステムを保有している対空ミサイルシ
ステムの簡素化を推進しており、その大きな柱となっているのが
S400ですから、極東地区の対空ミサイルもいずれS400に切り替えら
れる予定ではあったろうと思われますが、北朝鮮の核開発の進展に
よって優先順位が変更されたのだと思われます。

S400は大量生産が予定されているので調達コストはかなり低くなる
と思われますが、それにしても、最新の対空システムですから大き
な費用を要する事に間違いありません。ロシアが北朝鮮の事を本当
に信頼できる国と考えているのであれば、その様な費用負担は不要
である筈です。しかし、表面上の北朝鮮の友好国としての顔の下で
ロシアは、最悪の事態を想定し、北朝鮮との関係がいつ険悪化して
も良い様にする対策をとっていると言えると様に思われます。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月15日月曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(中)



------------------------------
BALLISTIC MISSILES(弾道ミサイル)
------------------------------


作戦可能な弾道ミサイルは、サイロや潜水艦や陸上を移動する発射台に配備さ
れている。移動式のミサイルは、隠すことができ、それにより生存性を大幅に
高める事ができるので、多くの国で好まれている。
多くの短距離弾道ミサイルでは、弾頭が爆発するまで、ミサイルの形状は発射
時のままである。長距離弾道ミサイルでは、弾頭は分離された再突入体に含ま
れる。いくつかの長距離弾道ミサイルは、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備
しており、ミサイル一基につき10個程度の再突入体(RV)が備えられている。再
突入体は、地球の大気圏に、ICBMの場合、一秒間に4~5マイルという非常な
高速で再突入する。
弾道ミサイルでは、固体燃料または液体燃料がロケットの推進システムとして
用いられる。近代的なミサイルシステムは、補給面での要請と運用の単純化の
為に、固体燃料が使用される傾向にある。しかしながら、いくつかの第三世界
諸国では、液体燃料技術を入手するのがより容易である事から、新しい液体燃
料ミサイルの開発が続けられている。

多段式ミサイルは、各々独立した推進システムが各段階にあるので、長距離作
戦に対して適している。
ICBMは通常、二ないし三段式で、目標に対し搭載物を推進する為に、強力な液
体燃料エンジンや固体燃料モーターを装備しており、ポスト・ブースト・ビー
クルには、もっと小さな推進システムが装備されている。ポスト・ブースト・
ビークルは単弾頭ミサイルの場合には再突入体の命中精度を改善し、MIRVを搭
載しているミサイルの場合には、再突入体が別々の目標に命中する様に、各々
異なった軌道を取る為に発射されるのに用いられる。いくつかのMIRVミサイル
は、一つのミサイルで1000マイル以上離れた目標を攻撃する事ができる。

高度の慣性誘導システムを備えた弾道ミサイルは、6000マイルを飛行した後で
目標の200~300フィート以内に再突入体を運搬する能力がある。多くのミサイ
ルで、衛星航法誘導の活用によって正確性が飛躍的に改善された。また、ミサ
イルには、非常に高い正確性を達成する為の終末センサーを持つ機動再突入体
(MaRV)を使用する事ができる。

より近代的な誘導技術が拡散したので、各国は、ミサイル戦力の正確性と致死
性を改善する事ができる。しかしながら、大きな都市を直撃する程度の正確性
をもつミサイルであっても、大量破壊兵器を装備した場合には大量の犠牲者を
負担させる事ができる。

多くの弾道ミサイルは再突入体に弾道ミサイル防御システムをくぐり抜けさせ
る事を目的にした侵入補助機能を装備している。侵入補助機能とは、ミサイル
や再突入体を探知、追跡するセンサーを欺瞞したり、無効化する事を目的とし
た装置である。侵入補助機能は、弾道ミサイルを開発したり運用したりしてい
る国々で重要性を増している。

------------------------------
SRBM 短距離弾道ミサイル
射程 1,000 km以内 (621 mi)

MRBM 準中距離弾道ミサイル
射程 1,000-3,000 km (621-1,864 mi)

IRBM 中距離弾道ミサイル
射程 3,000-5,500 km (1,864-3,418 mi)

ICBM 大陸間弾道ミサイル
射程 5,500 km以上 (3,418 mi)

SLBM 潜水艦発射弾道ミサイル
射程に関わらず潜水艦から発射される弾道ミサイルは全て

------------------------------
SHORT-RANGE BALLISTIC MISSILES(短距離弾道ミサイル)
------------------------------

何ヶ国かは、現在でもSRBM(短距離弾道ミサイル)システムを生産するか開発す
るかしているが、他の多くの国では、ミサイル製造メーカーからミサイルやミ
サイル技術を購入している。新しいSRBMシステムが数ヶ国で開発されている。
中国は、台湾に近接する地域で近代的な固体燃料推進のSRBMの大きな戦力を展
開している。
ロシアのSCUD Bとも呼ばれているSS-1c Mod 1は、他のいかなる種類の誘導ミ
サイルよりも多くの国に輸出されており、広い用途で使用可能な適合性の高い
兵器であると認められている。
例えば、イラクのSCUDミサイルは1991年の湾岸戦争で使用されたが、射程距離
を二倍にする様に改造された。北朝鮮は独自のタイプのSCUD BやSCUD Bの射程
を延長させたSCUD Cを生産している。

SCUDは、もともと戦術戦場支援兵器として設計されたが、多くの国は、SCUDや
他のSRBMシステムを都市に対して使用される戦略兵器とみなしている。イラク
は、イラン・イラク戦争と1991年の湾岸戦争に戦略兵器として、射程距離延長
型のSCUDミサイルを使用した。他の国は、SCUDの正確性を大幅に向上させて、
価値の高い軍事目標や都市に対して利用するために改造した。最近の紛争では、
ミサイル防衛能力について関心が集まっており、ミサイル防衛能力の開発に対
する継続的な誘因を提供している。そして、それは、弾道ミサイル開発者には
ミサイル防衛対抗策を追求する動機を与える事になっている。一部のSRBM開発
者はすでにミサイル弾頭を機動させる様な対抗策を開発し始めており、対抗策
の開発継続が期待されている。

■性能
ミサイル名 推進剤  発射機 最大射程(マイル)
ロシア
SCUD B 液体 道路移動 185
(SS-1c Mod 1)
SS-1c Mod 2 液体 道路移動 150+
SS-21 Mod 2 固体 道路移動 43
SS-21 Mod 3 固体 道路移動 75
SS-26 固体 道路移動 185+
Iskander-E 固体 道路移動 170+

中国
CSS-6 Mod 1 固体 道路移動 370
CSS-6 Mod 2 固体 道路移動 550+
CSS-6 Mod 3 固体 道路移動 450+
CSS-7 Mod 1 固体 道路移動 185
CSS-7 Mod 2 固体 道路移動 370
CSS-8 第一段:固体 道路移動 93
第二段:液体
B611 固体 道路移動 93

北朝鮮
SCUD B 液体 道路移動 185
SCUD C 液体 道路移動 310
Toksa 固体 道路移動 75
ER SCUD 固体 道路移動 435-625

インド
Prithvi I 液体 道路移動 93
Prithvi II 液体 道路移動 155
Dhanush 液体 艦載 250
Agni I 固体 道路移動 435

パキスタン
Hatf-1 固体 道路移動 50
Shaheen I 固体 道路移動 280+
Ghaznavi 固体 道路移動 250

イラン
Fateh-110 固体 道路移動 120+
Shahab I 液体 道路移動 185
Shahab II 液体 道路移動 310
CSS-8 固体/液体 道路移動 93

シリア
SCUD D 液体 道路移動 435
Note: 全ての射程距離は概算

■ランチャー数と戦闘序列

国名
ミサイルシステム ランチャー数*

ベラルース
SS-21s/SCUDs 100基以下
カザフスタン
SS-21s/SCUDs 50基以下
シリア
SS-21s/SCUDS 100基以下
中国
CSS-6/CCS-7 200基以上
リビア
SCUDs 100基以下
トルクメニスタン
SCUDs 25基以下
エジプト
SCUDs/SS-1 25基以下
北朝鮮
Toksa/SCUDs 100基以下
ウクライナ
SS-21s/SCUDs 200基以下
インド
Prithvi-I/II 50基以下
Agni I 25基以下
パキスタン
Ghaznavi/Shaheen-1 50基以下
ベトナム
SCUD-Bs 25基以下
イラン
CSS-8/Fateh-110/SCUDs 100基以下
ロシア
SCUDs/SS-21/SS-26) 200基以下
イエメン
SRBMs(SCUD/SS-21s) 25基以下

*ミサイル保有数はランチャー数よりもはるかに多い。
これは、ミサイル発射後ランチャーが再利用される
事による。

------------------------------
MEDIUM-RANGE & INTERMEDIATE-RANGE BALLISTIC MISSILES
(準中距離弾道ミサイルと中距離弾道ミサイル)

------------------------------

新しいMRBM(準中距離弾道ミサイル)やIRBM(中距離弾道ミサイル)システムは、
中国、北朝鮮、イラン、インドとパキスタンで開発されている。これら戦略的
なシステムであり、そして、ほとんどは非通常弾頭を装備している。イラン以
外のこれらの国は、全て、核実験を行っている。ロシアも合衆国も1988年に効
力を発生した中距離核戦力(INF)条約によって禁止されているのでMRBMもIRBM
も生産したり、保持していない。中国は、非常に活発にMRBMの開発を行ってい
る。中国の長期的、且つ広範囲の戦力変革では、戦力展開能力を向上させてお
り、中国の弾道ミサイルは、台湾が関係するどの様な将来の対立においても、
外国の軍隊の紛争地域へのアクセスを拒否する中国の努力で鍵となる役割を担
っている。中国は、地域の核抑止力のために、現在、核装備のCSS-2、CSS-5
Mod 1、CSS-5 Mod 2を配備ている。中国は、より長射程で精密な攻撃を行うた
めの、新しい通常弾頭のMRBMも調達している。これらのシステムは、補給拠点
や地域的な飛行場や港湾を含む軍事基地を脅かすか、または攻撃する事を目的
としている様に思われる。特筆すべきは、中国はCSS-5の派生型を基にした
対艦弾道ミサイル(ASBM)を開発している事である。

北朝鮮には野心的な弾道ミサイル開発計画があり、ミサイル技術をイランとパ
キスタンを含む他の国に輸出している。北朝鮮は、核兵器を保有している事を
みずから認めている。北朝鮮のテポドン1は1998年8月に衛星を軌道に乗せる
試みに使われた。小さな第三段が衛星を軌道に乗せる事に失敗したが、二段式
のブースターは明らかにうまく作動した。テポドン1は、長射程ミサイル開発
のために必要な技術を北朝鮮が持っている事を示している。北朝鮮は、開発中
のIRBMを持っている。このシステムは、他の国に輸出されるに違いない。

イランには広範囲なミサイル開発計画があって、ロシア、中国と北朝鮮の機関
からの援助を受けている。イランのShahab 3 MRBMは、北朝鮮のノドンミサイル
を基にしている。イランは、その射程と有効性を拡張するために、Shahab 3を
改良した。イランは、2004年にShahab 3の改良版をテストしたと主張している。
それに続くイランの当局の声明では、改良されたShahab 3の最大射程は1,250
マイルであり、イランにはShahab 3ミサイルを大量生産する能力があることを
示唆している。2008年には、イランは2,000km射程の二段式固体推進MRBMの発
射テストを二回実施している。2008年後半と2009年前半には、多段式宇宙打上
ロケットSafirを発射したが、それは長射程弾道ミサイル技術のたたき台とし
ても用いる事ができるものだった。そして2009年のテストでは、衛星を軌道に
乗せる事に成功した。Safirは弾道ミサイルとして使われるならば、恐らくIRBM
としての射程を達成することができるだろう。

インドは、その弾道ミサイルを開発し、改善し続けている。インド当局は、固
体燃料推進のアグニII MRBMが配備準備ができたと述べている。新しい固体燃
料推進のアグニIII IRBMは、2006年以降三回、飛行テストを実施されている。
インドのミサイル開発者は、射程3,000~3,700マイルのICBMを製造する能力が
あると述べている。

パキスタンは、ミサイルの実射試験を含む実地訓練を通じて、陸軍戦略軍コマ
ンドと個々の戦略ミサイルグループの即応性と能力の改善を続けている。
パキスタンは2004年以降六回その固体燃料推進のシャヒーン2 MRBMをテスト
しており、このミサイルシステムは、恐らく、すぐに配備されると思われる。

■性能
ミサイル名 段数 推進剤 発射機 最大射程(マイル) ランチャー数*

中国
CSS-2 1 液体 移動可能 1,900 5基~10基
(限定的な移動性)
CSS-5 Mod 1 2 固体 道路移動 1,100+ 50基以下
CSS-5 Mod 2 2 固体 道路移動 1,100+ 50基以下
CSS-5 通常型 2 固体 移動式 1,100 30基以下
CSS-5 ASBM 2 固体 移動式  900+ 配備未完了

サウジアラビア (中国製造**)
CSS-2** 1 液体 移動可能 1,750 50基以下
(限定的な移動性)

北朝鮮
No Dong 1 液体 道路移動 800 50基以下
IRBM 1 液体 移動式 2,000+ 50基以下

インド
Agni II 2 固体 線路移動 1,250+ 10基以下
Agni III 2 固体 線路移動 2,000+ 配備未完了

パキスタン
Ghauri 1 液体 道路移動 800 50基以下
Shaheen II 2 固体 道路移動 1,250+ 不明

イラン
Shahab 3 1 液体 道路移動 800 50基以下
(全派生型込)
Shahab 3派生型 1 液体 道路移動 1,200+
新型MRBM 2 固体 道路移動 1,200+ 配備未完了
IRBM/ICBM    不明 不明 不明 不明 不明

Note: 射程距離は全て概算
* ランチャー一基に数機のミサイルが利用可能と思われる。
** 輸出用のCSS-2は通常弾頭装備


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月12日金曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(上)


米国国立航空宇宙情報センター(NASIC)から「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの
脅威」の新版が発表されましたので、ご紹介します。
弾道ミサイル及び巡航ミサイルについての動向が非常に完結に、且つ、素人に
も判り易く説明してあると思います。英語も平易で写真や図も豊富ですので、
原本にもあたられる事をお勧めします。
http://www.fas.org/irp/threat/missile/naic/NASIC2009.pdf


国立航空宇宙情報センター(NASIC)
ライト・パターソン空軍基地
NASIC-1031-0985-09

BALLISTIC AND CRUISE MISSILE THREAT
  弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威

-----------------------------
TABLE OF CONTENTS(目次)
-----------------------------

Key Findings(主要な発見)
Threat History(脅威の歴史)
Warheads and Targets(弾道と目標)
Ballistic Missiles(弾道ミサイル)
Short-Range Ballistic Missiles(短距離弾道ミサイル)
Medium-Range andIntermediate-Range Ballistic Missiles(中距離及び準中距離弾道ミサイル)
Intercontinental Ballistic Missiles(大陸間弾道弾)
Submarine-Launched Ballistic Missiles(潜水艦発射弾道ミサイル)
Land-Attack Cruise Missiles(陸上攻撃巡航ミサイル)
Summary(要約)

-----------------------------
Key Findings(主要な発見)
-----------------------------
多くの国で、弾道ミサイルや巡航ミサイルシステムは費用対効果の高い兵器で
あり、国力のシンボルであるとみなされている。それに加えて、それらは合衆
国の空軍力に対して非対称な脅威を与えている。

多くの弾道ミサイルや巡航ミサイルシステムは大量破壊兵器を装備している。

北朝鮮は、ICBM(大陸間弾道弾)として開発された場合には、核弾頭を装備し米
国に到達可能なTD-2(テポドン2)の開発を継続している。また、中距離弾道弾
(IRBM)と、新しい固体燃料短距離弾道ミサイルも開発されている。

イランは、Shahab 3(シャハブ3)準中距離弾道ミサイル(MRBM)を改造し、射
程距離と有効性を拡張し、より射程距離の長いミサイル開発に向けた技術と能
力を高めている。2008年には、イランは二段式固体燃料MRBMの発射実験を行っ
た。2008年後半から2009年前半にかけ、イランは長距離弾道ミサイル技術のた
たき台として用いることができる多段式人工衛星打上ロケット(SLV)を発射
した。十分な外国からの援助が得られれば、イランは、2015年までには合衆国
に到達するICBMを開発し、テストすることができると思われる。

中国は、世界で最も活発で多様な弾道ミサイル開発計画を保有している。
中国は攻撃用ミサイルの開発とテストを行っており、新たなミサイル部隊を編
成し、特定のミサイルシステムの質的改善を図っており、また、弾道ミサイル
防衛網への対抗手段を開発している。
中国の弾道ミサイルは、ミサイルの数とタイプの両面で拡大している。
CSS-10 Mod 1(DF-31)とCSS-10 Mod 2(DF-31A)の両ICBMが追加されると共
に、台湾周辺で新しい戦域ミサイルの配備が続いている。
新しいJL-2潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も、開発中となっている。
将来のICBMは、恐らく、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備するものが含まれ、
合衆国に到達できる核弾頭の数は、15年以内に100個を上回るものに拡大する
に違いない。

インドとパキスタンは、新しい短距離と長距離の弾道ミサイルを開発し続けて
いる。パキスタンは2004年以降6回に亘って固体燃料のShaheen 2(シャヒーン2)
MRBMをテストした。そして、インドは2006年以降3回、新しい固体燃料推進の
Agni III(アグニ3)IRBMをテストした。インドによれば、固体燃料のAgni II
(アグニ2)MRBMの配備準備が完了している。

ロシアは、引き続き2000個を上回る核弾頭を合衆国に到達可能なミサイルに配
備している。ロシアの戦略ロケット軍は、軍備管理による制限と資源の不足に
より数的には縮小しているものの、新しいICBMとSLBMシステムの開発が進めら
れており、ロシアは合衆国外では、最大の戦略弾道ミサイル戦力を保有してい
る。

陸上攻撃巡航ミサイルは (LACMs)は、軍事作戦に大きな脅威を与えることがで
きる非常に効果的な兵器システムである。
少なく共、10年以内に海外の九ヶ国がLACMの生産に携わる事になると予想さ
れ、多くのミサイルが輸出可能になると見込まれている。

------------------------------
THREAT HISTORY(脅威の歴史)
-----------------------------
合衆国とその領域に関してと同様に、弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、海外
における米国と同盟国の軍隊に対しても、重大な脅威となる。
有人の航空機での攻撃が非現実的であるか、あまりに高くつくような恐るべき
防空システムを保有する敵に対しても効果的に使用することができるので、ミ
サイルは多くの国にとって魅力的である。
それに加え、ミサイルは、抑止や強制の道具としても使うことができる。ミサ
イルは、有人の航空機に対して、保守や訓練、補給に関する要求でも有利さを
持つ。少数の使用であってもミサイルは、破壊的でありえる。何故なら、ミサ
イルは化学兵器、生物兵器、核兵器を弾頭に装備する事ができるからである。
弾道ミサイルと巡航ミサイルの脅威はミサイル技術の拡散により継続的に増加
している。20ヶ国以上が弾道ミサイルシステムを保有しており、ミサイルは、
合衆国の軍隊が関与する将来の紛争でも脅威となる。
弾道ミサイルは過去25年の間、イラン・イラク戦争、アフガニスタン内戦、
イエメン内戦、1991年と2003年のペルシア湾紛争、チチェンとグルジアでのロ
シアの軍事行動と言ったいくつかの紛争で使われている。
LACMは、拡散が広まっているとは言えないが、今後10年で、20ヶ国が保有す
る事になると思われる。

合衆国空軍は、他の軍とも共同で、弾道ミサイルと巡航ミサイルの脅威に対し
抑止や、必要に応じて、活発な抑制を通して対処する役割を持っている。
この脅威の抑制には、発射前や飛行中のミサイルシステムへの攻撃や、支援イ
ンフラへの攻撃が含まれる。この文書には、現存及び計画中の主要な海外の弾
道ミサイル及び巡航ミサイルの情報が含まれている。
--------------------------------------------------
誘導された巡航ミサイルと弾道ミサイルは、第二次大戦中にV-1号巡航ミサ
イル及びV-2号弾道ミサイルとしてドイツによって、英国及び北部ヨーロッ
パを目標とする攻撃に初めて用いられた。これらのミサイルは不正確だったが、
その使用により数万人もの連合国側の犠牲者が出た。
--------------------------------------------------

------------------------------
WARHEADS AND TARGETS(弾頭と目標)
-----------------------------


弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、通常弾頭あるいは非通常弾頭を装備する事
ができる。通常弾頭は(例えばTNTの様な)化学爆薬で満たされており、爆薬と
結果として生じる金属ケースの破片の爆発を致死のメカニズムとしている。
非通常弾頭には、大量破壊兵器(核・生物・化学兵器)が含まれると共に、致死
性ではない弾頭、比較的新しい種類の兵器で人を殺傷するよりも武器を使用不
能とするよう設計されたものが同様に含まれている。
通常弾頭と、生物、化学兵器は、単一の弾頭、あるいは、子弾頭(広い地域に
散らばる様、高度をとって発射される複数の小さな小型爆弾)として成形され
ている。

通常弾頭は、特定の種類の目標のために最適化することができる。例えば、子
弾頭は飛行場の滑走路にクレーターを作ったり、装甲車両を破壊するのに用い
られる。貫通弾頭は、比較的少量の爆薬をぶ厚い金属ケースに覆った形で使わ
れるが、バンカーといった強化構造物を貫通する事ができ、内部を破壊する。

多くの長距離弾道ミサイルや、いくつかのタイプのLACMは、核弾頭を装備する。
これらの弾頭の殆どは、第二次大戦中に使用された原子爆弾と比べ、数十倍か
ら数百倍の爆発力を持っている。化学兵器と生物兵器は、多くの第三世界諸国
にとって魅力的であろう。何故なら、核兵器に比べ容易に製造する事ができる
為である。化学兵器と生物兵器戦争のプログラムを持つ多くの国は、弾道ミサ
イル及び巡航ミサイルを保有している。これらの兵器を都市部や軍事基地の集
中した地域に使用する場合は正確性はあまり重要ではない。
化学・生物兵器は、大量の犠牲者を作り出し、民間人をパニックと混乱に誘導
し、軍事作戦の遂行能力を深刻に低下させることができる。

------------------------------
BALLISTIC MISSILES(弾道ミサイル)
-----------------------------
作戦可能な弾道ミサイルは、サイロや潜水艦や陸上を移動する発射台に配備さ
れている。移動式のミサイルは、隠すことができ、それにより生存性を大幅に
高める事ができるので、多くの国で好まれている。
多くの短距離弾道ミサイルでは、弾頭が爆発するまで、ミサイルの形状はその
ままである。長距離弾道ミサイルでは、弾頭は分離された再突入体に含まれる。
いくつかの長距離弾道ミサイルは、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備してお
り、ミサイル一基につき10個程度の再突入体(RV)が備えられている。再突入体
は、地球の大気圏に、ICBMの場合、一秒間に4~5マイルという非常な高速で
再突入する。
弾道ミサイルは、固体燃料または液体燃料がロケットの推進システムとして用
いられる。近代的なミサイルシステムは、補給面での要請と運用の単純の為に、
固体燃料が使用される傾向にある。しかしながら、いくつかの第三世界諸国で
は、液体燃料技術を入手するのがより容易である事から、新しい液体燃料ミサ
イルの開発が続けられている。



環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月11日木曜日

北朝鮮の肩を持つ事で自分の首を絞める中ロ

※写真は国連安全保障理事会

北核実験 7カ国が制裁決議案に合意、週内採択へ

2度目の核実験を強行した北朝鮮への対応を協議していた国連安全保障理事会
常任理事国5カ国と日本、韓国の7カ国は10日、北朝鮮に対する非難と制裁
措置を盛り込んだ決議案で合意に達した。7カ国は、引き続き同日午前に招集
された安保理の非公式協議にこの合意案を提示、週内の決議案採択を目指す。

決議を採択する見通しがついたことで、国際社会は北朝鮮の挑発行為について
厳しい姿勢を示したかたちだ。しかし、核実験実施から決議の採択まで3週間
近くもの時間を費やしたことは、北朝鮮をめぐる国際社会の思惑の違いをも浮
き彫りにすることにもなった。

協議は、強い制裁措置を主張していた日米が、慎重な対応を求める中国に配慮
を示した結果、9日の時点で双方が合意した。ただ、ロシアが細部でさらなる
調整を求めた結果、10日の大使級会合で7カ国が最終的に合意に達した。

合意内容の詳細は明らかになっていないが、強い制裁措置を求めていた当初の
日米案からは、北朝鮮の暴発を恐れ慎重な対応を求める中国に配慮するかたち
で、後退した内容になったとみられる。焦点となっていた北朝鮮に出入りする
船舶に対する貨物検査(臨検)では、日米が求めていた各国への自国領内での
臨検実施義務化が見送られるもようだ。

一方で北朝鮮はすでに、決議が採択されれば「強硬な非常措置をとる」と警告
しており、さらなる長距離ミサイルの発射などの動きも見せている。国連外交
筋は、長距離ミサイル発射の場合は再び安保理緊急会合が招集されるとしてお
り、北朝鮮情勢をめぐっては引き続き、緊迫したやりとりが国連を舞台に続く
ことになりそうだ。
(産経新聞 2009/6/10)


以前にも、述べている事ですが、大事な事なので、繰り返します。
今回の安保理協議で一番おかしいのが、中ソが北朝鮮の肩を持ち、
結果的に北朝鮮の核保有国化に手を貸してしまっている点です。

もし、北朝鮮が核保有国としてのステータスを得る事ができたとし
て、それは何を意味するのでしょうか。それは核拡散防止条約(NPT)
を批准した国であっても、北朝鮮の様に上手く立ち回れば、国際社
会は、核保有を認めるという事です。

現在、五大国(P5)以外に、インド、パキスタン、イスラエルという
事実上の核保有国がありますが、これらの三ヶ国は元々NPTを批准
していませんでした。つまり核を保有する意思を隠しておらず、そ
れによる不自由を甘受した上で核保有を実現したと言えます。
しかし北朝鮮はちがいます。NPTを批准する事で、NTP批准国は、
IAEAを通じて原子力平和利用に関する情報へのアクセスが許容され
ます。北朝鮮は、そこで得た情報に、パキスタンのカーン博士の核
の裏ネットワークを通じた技術情報と資材によって、核保有を実現
したのです。

パキスタンの核開発は、カーン博士の核の裏ネットワークを作り出
しましたが、北朝鮮が核保有に成功すれば、イラン、シリアが後に
続く事は目に見えています。そうなると、第二第三のカーン博士や
裏ネットワークが出現しておかしくありません。一部の報道によれ
ば、北朝鮮は、「米国を嫌っている国」への核拡散の意図があると
伝えられています。北朝鮮は、現在でさえ、ニセ札、覚醒剤、ニセ
タバコ、武器等の非合法製品の輸出に手を染めているとされていま
す。既に地下組織への販売ルートは整っており、今度は、核兵器も
製品リストに加わる事になります。

米国にとっては、許しがたい事でしょうが、これは同時に中ソにと
っても許しがたい事態である筈です。中ロ両国はある種の「帝国」
であり、国内に少数民族問題や民族紛争を抱えています。北朝鮮や
その他のならずもの国家やテロ組織から、中ソの現政権に反対する
勢力に核兵器が流れないという保証はどこにもなく、中ロ両国が、
反対勢力を厳しく弾圧する抑圧体制を敷いているだけに、それに対
する反対派も先鋭化していると言えます。それだけに非政府組織に
よる核使用の可能性は、米国に対するより、中ロの方がより高いと
すら言えるのです。

これに加え、現在のNPT体制下で、中ロは持てる国としての特権を
認められています。しかしながら、北朝鮮に続く国が増加する事で
核保有国の特権が空洞化する事になり、最終的には、特権そのもの
に意味がなくなる事になります。そして、現在の国連常任理事国が
全て核保有国である事に見られる様に、核兵器を保有する事による
非核保有国に対し軍事的にもっていた絶対的な優位が、核の保有量
の違いという相対的な優位に転化してしまう事にもなりかねないの
です。
総合国力で考えれば、米、英、仏は、経済的にも高い国力がありま
すが、中、ロは軍事力がその総合国力に占める割合が高いだけに
NPT体制の崩壊による影響はより深いと言えます。

以上の二点から考えても、中ロが今回の安保決議で北朝鮮への強い
制裁決議を回避した事は、まさに天に唾する行為であるとしか言え
ない様に思われてなりません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月10日水曜日

北朝鮮はこのところ、何を主張しているのか?

※写真は、産経新聞サイトより転載

テポドン発射から核実験まで、密度の濃い期間の電波浴をお楽しみ
下さい。当初は人工衛星発射と言っていたのが、核実験後はミサイ
ル発射と言っているのが、ご愛嬌です。(ミサイル発射というのが
短距離ミサイルの事であれば別ですが...)

-------------------------------------------------------------
【盧前大統領死亡】「自殺は計画的政治虐殺だ」 北の対韓機関

北朝鮮の対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」は9日、韓国の盧武鉉前大統
領の自殺について「米国と、南朝鮮(韓国)の親米・保守勢力による計画的な
政治テロ、政治虐殺だ」と文書で主張した。朝鮮中央通信が伝えた。
北朝鮮メディアが盧氏の自殺を「政治テロ」と断言、米国非難と関連づけて報
道したのは初めて。(共同)
(産経新聞 2009/6/10)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮:挑発行為受ければ核兵器行使と警告-AP通信

AP通信は9日、北朝鮮が挑発行為を受ければ核兵器行使を伴う「容赦ない攻
撃」を実施すると表明したと報じた。
(Bloonberg 2009/6/9)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】「決して見過ごせない」 北朝鮮が日本の制裁強化に警告

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は8日、日本が北朝鮮の2回目の核実
験実施を契機に単独制裁の強化を検討していることを「決して見過ごせない」
と非難、「強力な対応措置が伴うことを警告する」との論評を掲載した。朝鮮
中央通信が伝えた。
論評はまた「われわれの核実験やミサイル発射は正当防衛措置」「核実験は朝
鮮半島やアジア、世界の平和に寄与」などと主張した。(共同)
(産経新聞 2009/6/9)
-------------------------------------------------------------
「全面戦争は時間の問題」 北朝鮮紙、韓国に警告

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は6日、韓国が米国主導の大量破壊兵
器拡散防止構想(PSI)への全面参加を決めたことについて「われわれの自
主権への挑戦で売国行為」と非難、「PSI参加が武力衝突と全面戦争へとつ
ながるのは時間の問題だ」と警告する論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
北朝鮮は今年2月にも、同通信の論評で「物理的衝突だけが時間の問題として
残っている」と韓国をけん制したことがあるが、今回は「全面戦争」まで言及
し韓国のPSI参加に強い反発を示した。
この日の論評はまた、「無分別な挑戦には強力な報復で立ち向かうのが、われ
われの革命的気質であり、想像もできない報復打撃で残るのは灰だけだ」と強
調した。(共同)
(産経新聞 2009/6/6)
-------------------------------------------------------------
【盧前大統領死亡】「李明博政権が追い詰めた」 北朝鮮紙が非難

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は5日、韓国の盧武鉉前大統領の自殺
に関連し、李明博政権が盧氏を「心理的に圧迫して死に追いやった」と非難す
る論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
北朝鮮メディアが、盧氏の自殺と李政権非難を関連付けて取り上げるのは初めて。
論評はまた「朝鮮半島の平和は、われわれの自衛的な核抑止力で守られている」
と強調、「米国の核の傘が韓国を守っている」との李政権の主張は「現実を判
断する初歩的な能力もない者の詭弁(きべん)」と指摘した。(共同)
(産経新聞 2009/6/5)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】北、軍事的強硬対応は正当と論評

 ラヂオプレスによると、北朝鮮の朝鮮中央放送は28日夜、韓国の大量破壊
兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加表明に対し、北朝鮮軍部などが27
日に「軍事的な強硬対応」を発表したことを「極めて正当なものだ」と主張す
る論評を放送した。
論評はまた、「わが国は、米帝と李明博一味(韓国の李政権)のわずかな敵対
行為にも、直ちに強力な報復打撃を加えるだろう」と強調した。(共同)
(産経新聞 2009/5/29)
-------------------------------------------------------------
「日本全土が報復圏内」「修羅場に」と警告 北朝鮮

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は29日、自民党内で敵基地攻撃能力
保有論が取り上げられ、麻生太郎首相が法的な可能性に言及していることなど
を「再侵略の野心の表れ」と非難、「日本が再侵略戦争を起こすなら、全土が
報復打撃の圏内となる」と警告する論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
論評はまた、「日本の主要都市である東京、大阪、横浜、名古屋と京都には、
日本の人口の3分の1以上が住み、工業の基幹部分が集中している」とした上
で、「強力な反撃が行われれば、日本は修羅場になるだろう」と強調した。(共同)
(産経新聞 2009/5/29)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】国連決議あっても「認めない」と北

北朝鮮の外務省報道官は29日、2回目の核実験実施に対し国連安全保障理事
会が決議や決定を出しても「認めない」と言明、制裁決議などが採択された場
合は「さらなる自衛的措置が不可避となる」と警告する談話を、朝鮮中央通信
を通じ発表した。
報道官はまた、今回の核実験は「衛星打ち上げ」に対する安保理議長声明やそ
の後の制裁に対する「自衛的措置の一環」と強調。「事態がここ(核実験)ま
で進んだのは、米国と追従勢力にすべての責任がある」と述べ、米国などを非
難した。
さらに北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)やミサイル関連技術輸出規制(MT
CR)などの国際法の規制を受けずに「国家の最高利益が侵害される場合には、
核実験やミサイル発射をいくらでも行う権利を有している」と主張した。(共同)
(産経新聞 2009/5/29)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】北朝鮮が米国と国連を批判「二重基準」

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は28日、米国が核問題や人権問題な
どで「自国に従う国には問題があっても黙認し、従わない国々には強圧的に対
応する二重基準の政策を展開している」と非難する論評を掲載した。朝鮮中央
通信が伝えた。
論評はまた、国連安全保障理事会に対し「公正性を失い二重基準政策に走れば、
国際機構としての存在意義を失うことになる」と指摘した。今回の核実験には
触れなかったが、安保理の制裁論議をけん制したとみられる。(共同)
(産経新聞 2009/5/28)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】北朝鮮の「宣戦布告」声明文の要旨

北朝鮮の朝鮮中央通信が27日伝えた朝鮮人民軍板門店代表部の声明文の要旨
は次の通り。
1、韓国の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)全面参加をわれわれに対する
  宣戦布告とみなす。
1、われわれの船舶に対する取り締まり、検査など、いかなるささいな敵対行
  為も、わが共和国の自主権への容認できない侵害とみなし、即時に強力な
  軍事的打撃で対応する。
1、わが軍はこれ以上、休戦協定に拘束されない。休戦協定が拘束力を失えば、
  朝鮮半島は直ちに戦争状態に戻り、わが革命武力は軍事的行動に移る。
1、黄海上の米韓軍艦および一般船舶の安全航海を担保できない。
(産経新聞 2009/5/27)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】北、包囲網に反発「直ちに強力な軍事的打撃で対応する」

北朝鮮の朝鮮人民軍板門店代表部は27日、韓国が米国主導の大量破壊兵器拡
散防止構想(PSI)への全面参加を26日に決めたことを「宣戦布告と見な
す」と非難する声明を、朝鮮中央通信を通じ発表した。
核実験実施で今後予想される国際的な圧力包囲網へのけん制とみられる。
声明は、PSIに伴う北朝鮮船舶への臨検などは「わが国への容認できない自
主権侵害と見なし、直ちに強力な軍事的打撃で対応する」と表明。さらに朝鮮
戦争休戦協定について「もはや拘束されなくなり、わが革命武力は軍事的行動
に移るだろう」とした上で、黄海の南北境界水域での船舶の安全航行や、同水
域で韓国領となっている五つの島の法的地位も「保証できなくなる」と警告し
た。(共同)
(産経新聞 2009/5/27)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】「強大な国力を誇示」と強調 平壌で祝賀大会

北朝鮮の朝鮮中央通信によると、平壌で26日、2回目の核実験の成功を祝う
市民大会が開かれた。大会では朝鮮労働党の崔泰福書記が演説、「強大な国力
を誇示した」と「実験成功」の意義を強調した。
崔書記は「今回の核実験は、米帝の核先制攻撃の脅威と制裁圧力策動がさらに
甚だしくなっている状況で、共和国(北朝鮮)の最高利益を守り、国と民族の
尊厳と自主権を固守するための快挙」とも指摘した。
ラヂオプレスによると、祝賀大会を報じた北朝鮮の朝鮮中央放送は「すべての
演説者は、偉大な領袖・金日成同志の誕生100周年にあたる2012年に強
盛大国の大きな扉を開くという党の崇高な構想と意図を輝かしく実現していく
ことを強調した」と伝えた。
北朝鮮では2006年10月の1回目の核実験の際も、平壌をはじめ全国各地
で祝賀大会が開かれた。今年4月に長距離弾道ミサイルを発射した際も、平壌
の金日成広場で「人工衛星打ち上げ成功」を歓迎する市民大会が開かれた。
(産経新聞 2009/5/27)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】「敵視政策に変化なし」 北朝鮮紙、オバマ政権を非難

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は26日、オバマ米政権が北朝鮮に対
し「ブッシュ前政権の無謀な軍事的圧殺政策をそのまま踏襲している」と主張、
「敵視政策に少しも変化はない」としてオバマ政権をあらためて非難する論評
を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
論評は25日に行った2回目の核実験には言及しなかったが、「われわれには
核兵器より威力ある一心団結(の体制)があり、必勝不敗の軍事力がある」と
し、「米帝の先制攻撃策動に備え、万端の戦闘準備態勢を備えている」と強調
した。
また労働新聞は26日、2回目の地下核実験の「成功」を伝えた25日の朝鮮
中央通信の報道を1面に掲載した。2006年10月の核実験の際は、実施を
伝えた同通信の報道を3面に掲載していた。(共同)
(産経新聞 2009/5/26)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】北朝鮮の党機関紙「当然の選択」

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は25日の論評で、核再実験と大陸間
弾道ミサイル(ICBM)の試射は「帝国主義侵略勢力の軍事的脅威の強まり
に対抗し、朝鮮半島の平和と民族の安全を守るための当然の選択」と強調した。
同紙はまた別の記事で「平和的な核エネルギーの開発と利用は、今日の世界で
一つの流れとなっている」と主張した。
いずれも同日の核再実験実施には言及していないが、掲載当日に実験が行われ
た点が注目される。(共同)
(産経新聞 2009/5/25)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】「脅し続けるなら、新たな核実験も」北朝鮮当局者

在モスクワ北朝鮮大使館当局者は25日、イタル・タス通信に対し、北朝鮮が
核実験を実施した事実を確認した上で、「米国やその同盟国が北朝鮮に対する
脅しを続けるのなら、新たな核実験を行う可能性がある」と述べた。
(産経新聞 2009/5/25)
-------------------------------------------------------------
【北核実験】「地下核実験を成功裏に実施」北朝鮮発表全文

25日の朝鮮中央放送と平壌放送は正午の定時ニュースで、第3項目に、朝鮮
中央通信社が報道した「いま1度の地下実験を成功裏に実施」との発表を伝えた。
全文は以下の通り
     ◇
わが方の科学者、技術者らの要求に従い、共和国の自衛的核抑止力を各方面か
ら強化するための措置の一環として、主体98(2009)年5月25日、い
ま1度の地下核実験を成功裏に行った。
今回の核実験は、爆発力と操縦技術において新たな高い段階で安全に実施され、
実験の結果、核兵器の威力をさらに高め、核技術を絶えず発展させる上での科
学技術的問題を円満に解決することになった。
今回の核実験の成功は、強盛大国の大きな扉を開くための新たな革命的大高潮
の炎を力強く燃え上がらせ、150日戦闘に一丸となって立ち上がったわが軍
隊と人民を大きく鼓舞している。
核実験は、軍事優先の威力で国と民族の自主権と社会主義を守護し、朝鮮半島
と周辺地域の平和と安全を保障する上に寄与するであろう。(RP)
(産経新聞 2009/5/25)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮紙が論評「国民のための政治期待できず、日本の未来明るくない」

北朝鮮の内閣などの機関紙「民主朝鮮」は21日、民主党の代表交代や、鴻池
祥肇前官房副長官が週刊誌に女性問題を報じられ辞任したことなど、最近の日
本の政局を紹介しながら、「今後の選挙結果がどうなるか断定できないが、国
民のための真の政治は期待できず、日本の未来は明るくない」との論評を掲載
した。
北朝鮮メディアが、民主党の小沢一郎代表の辞任と鳩山由紀夫幹事長の代表就
任を伝えるのは初めて。
論評は「今後行われる衆議院選挙は、麻生太郎首相と鳩山代表の対決になる見
通し」としたが、政権交代の行方と日朝関係には言及しなかった。(共同)
(産経新聞 2009/5/21)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮が道路管理を要求 違反すれば罰金

韓国統一省は21日、北朝鮮の中央特区開発指導総局が先月末、開城工業団地
にある道路の管理義務と罰則を明記した細則草案を送付してきたことを明らか
にした。
中央日報によると、草案には44の条項が記載され、大半が韓国側に順守を求
める内容。環境汚染や道路を損傷させる恐れのある車の通行を禁止し、入居す
る企業に道路使用料を徴収、自転車道や街路樹などを備えた「最上級」の道路
を建設することも韓国側に求めている。違反した場合には最高1万ドル
(約94万円)の罰金を科すとしている。
同省は、草案について「現在、南北間で協議を進めている」としている。
(産経新聞 2009/5/21)
-------------------------------------------------------------
「戦争で南朝鮮は火の海、廃虚に」北の委員会が報道官談話

北朝鮮の対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」は18日、韓国の外交通商省
が北朝鮮の核問題や「衛星」打ち上げを国連などで非難し南北関係を破綻させ
たと主張、「このままでは戦争が起き、南朝鮮(韓国)が火の海、廃虚となる
のは避けられない」と警告する報道官談話を出した。朝鮮中央通信が伝えた。
韓国の李明博政権が南北関係の進展と核問題を一体化させ、北朝鮮との懸案に
ついて、国連や日米などとの多国間外交を通じて取り組もうとする姿勢をけん
制したとみられる。
談話は、外交通商省が韓国政府の中でも「最も悪質で無分別な反民族的集団」
と非難。開城工業団地で韓国側職員が拘束されている問題を、国連人権委員会
に持ち込もうとしていることについても「立場をわきまえず介入している」と
批判した。(共同)
(産経新聞 2009/5/19)
-------------------------------------------------------------
米に対話前の謝罪要求 北朝鮮

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は19日に掲載した対米論評で「米国
は(北朝鮮との)対話を持ち出す前に、これまで合意した内容を覆し、わが国
の自主権を侮っていることについて謝罪すべきだ」と主張、米オバマ政権に対
北朝鮮政策の根本的な転換を求めた。朝鮮中央通信が伝えた。
論評は「オバマ政権がスタートして以降の(対北朝鮮)政策は、過去(の敵視
政策)と少しも変わらず、より凶悪な方法で強化されている」と非難。米国が
北朝鮮との対話を呼び掛けるのは「火を放つのに有利な条件をつくるためのジ
ェスチャーにすぎない」と指摘した上で「米国の侵略策動に対処し、自衛的な
核抑止力をさらに強化するのはわれわれにとって最重要の課題だ」と強調した。
(共同)
(産経新聞 2009/5/19)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮、相変わらず「衛星は現在も稼働」

北朝鮮の朝鮮中央通信は18日、先月打ち上げられた試験通信衛星「光明星2
号」が現在も軌道で正常に稼働しているとする記事を配信した。社会主義経済
建設で科学者や技術者が大きな役割を果たしている、と紹介する記事の中で主
張した。
一方、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は同日、米韓の対北朝鮮政策を批判した
論評で、オバマ米政権もブッシュ前政権の敵視政策を継続していると主張。
「向き合っても得るものはあるのか」とし、政策転換がない限り対話には応じ
ない立場をあらためて示した。(共同)
(産経新聞 2009/5/18)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮、開城工業団地の契約無効を宣言

北朝鮮は15日、南北経済協力事業として運営されている開城工業団地の契約
無効を一方的に宣言し、韓国側に提示した賃上げなど新たな条件を受け入れる
意思がなければ団地から撤退してもよいとの立場を表明した。韓国の李明博政
権への揺さぶりが狙いとみられる。
北朝鮮は4月21日に開かれた南北政府間協議で、工業団地の土地使用料支払
いの前倒しと従業員の賃上げなど契約の全面的な見直しを韓国側に通告。2回
目の南北協議の日程調整が進められる中、韓国側が工業団地内で3月末に拘束
された韓国人男性職員の釈放問題に関する協議開催を求めていた。
北朝鮮側は、これに「不当な問題」と反発。日程調整が難航していた。
韓国政府は15日午前、南北協議を18日に開くことを北朝鮮側に提案したと
ころ、この日午後になって北朝鮮側から契約無効の通知文が届いたという。通
知文は「今後の事態がどのように険悪に発展するかは、全面的に南側の態度に
かかっている」と警告した。
これに対し、韓国統一省報道官は論評を発表し、「無責任な行動だ」と北朝鮮
を非難。「北朝鮮の一方的な措置を受け入れられない」として、南北協議に応
じるよう北に求めた。
2000年に締結した南北間の合意により、工業団地は、韓国の政府や民間企
業などが7300億ウォン(約550億円)を投資して開発。韓国の進出企業
は現在約90社で、北朝鮮の従業員約3万9000人と韓国側関係者
約1000人が勤務している。
(産経新聞 2009/5/15)
-------------------------------------------------------------
北の朝鮮中央通信、米に核軍縮率先を要求

北朝鮮の朝鮮中央通信は12日、「米国が核軍備競争を終息させようとするな
ら、世界最大の核保有国である自らの核政策を直ちに是正すべきだ」と米国に
核軍縮を率先して行うよう要求する論評を出した。
オバマ米大統領が4月にプラハで行った核軍縮演説には言及しなかったが、同
演説を念頭に置いた論評とみられる。
論評はまた「核を持った相手には核だけが通用する」とした上で「日増しに露
骨になる米国の核戦争策動に対処し、われわれが自衛的な核抑止力を備えるこ
とは正当だ」と主張した。(共同)
(産経新聞 2009/5/13)
-------------------------------------------------------------
「オバマ政権と向き合っても成果ない」 北労働党機関紙

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は12日、「衛星打ち上げ」に対する
国連安全保障理事会の議長声明の不当性を強調、「国連安保理が直ちに誤りを
認め謝罪しなければ、核(再)実験と大陸間弾道ミサイルの発射試験を含む自
衛的な対応措置を講じざるを得ない」とあらためて警告する論評を掲載した。
朝鮮中央通信が伝えた。
論評はまた、オバマ米政権が「ブッシュ前政権と同じ旧態依然の(対北朝鮮)
敵視政策を展開している」と非難、「そのような相手と向き合っても成果はな
い」と主張した。(共同)
(産経新聞 2009/5/12)
-------------------------------------------------------------
「南北対話は論議の余地なし」 北朝鮮、韓国に反発

北朝鮮の対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」は9日、報道官談話を通じ、
韓国政府が北朝鮮の人権問題を提起したことについて、「わが方(北朝鮮)の
尊厳と体制を全面否定したものだ」と非難し、「われわれを公然と中傷、冒涜
し、露骨に否定した状態で北南間の対話について論議する余地すらない」と主
張した。韓国の聯合ニュースが伝えた。
4月21日に開催された南北の政府間協議を受け、次回協議は早ければ来週中
にも開催されることが予想されていたが、今回の談話からは、協議が開催され
るかは不透明だ。
米ワシントンで4月下旬に開かれた北朝鮮の人権弾圧に抗議する行事「北朝鮮
自由の週」に、今回初めて韓国政府を代表して諸成鎬(チェ・ソンホ)北朝鮮
人権大使が参加。韓国政府の対北人権政策の方向性と北朝鮮の人権改善に向け
た政府の取り組みを説明した。
北朝鮮は談話の中で、この行事に参加した諸大使が「脱北者定着村建設」に触
れたことなどをとくに問題視し、「われわれの度重なる警告にもかかわらず、
反共和国(北朝鮮)人権騒動で一層狂奔している」と批判した。
(産経新聞 2009/5/9)
-------------------------------------------------------------
北の専門機関が「光明星2号」目的は達成と発表

北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会は7日、試験通信衛星「光明星2号」の打ち
上げから1カ月過ぎたことを受け、「試験通信の目的を十分に達成した」など
とする報道官談話を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。
談話はまた「今後の実用衛星発射のための科学技術的な土台作りに大きな進展
があった」と指摘。時期は明示しなかったものの、実用衛星打ち上げを計画し
ていることも示唆した。
4月5日に打ち上げた「光明星2号」が軌道に進入、通信が行われていると専
門機関が強調することで、「平和目的」との主張を支える狙いがあるとみられ
る。長距離弾道ミサイルの発射だったとする国際的な批判には触れなかった。
(共同)
(産経新聞 2009/5/8)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮が米政権を名指しで初非難 「わが国への敵視政策に少しも変化はない」

北朝鮮の外務省報道官は8日、「オバマ米政権がスタートし100日間の政策
動向を見守ったが、わが国への敵視政策に少しも変化はないことが明白になっ
た」と述べ、オバマ政権を名指しで初めて非難した。朝鮮中央通信を通じ語った。
報道官はまた、「われわれを変わりなく敵視する相手と向き合っても、何も生
まれない」と指摘、米国の政策転換がない限り対話する意向のないことを示唆
した。
北朝鮮は4日、外務省報道官が朝鮮中央通信を通じ、「現在の米政権」との表
現でオバマ政権非難を開始した。6カ国協議再開に向け、7日から日中韓など
参加国への歴訪を始めた米国の北朝鮮担当、ボズワース特別代表の動きをけん
制する狙いもあるとみられる。(共同)
(産経新聞 2009/5/8)
-------------------------------------------------------------
「力には力で対抗」北朝鮮機関紙がオバマ外交を非難

北朝鮮の内閣などの機関紙「民主朝鮮」は7日、オバマ米政権の外交政策を
「本質においてブッシュ前政権と少しも変わらない単独主義的政策を実施して
いる」と非難した上で、「米国の力の政策には力で対抗するのがわれわれの固
い意志、信念だ」とする論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
北朝鮮は4日、外務省報道官の談話を通じてオバマ政権への本格的な非難を開
始しており、同紙の論評も非難攻勢の一環とみられる。
論評はまた「米国は自分の力を過信して国際的な正義と公正を踏みにじる国際
社会のごろつき」などと主張した。(共同)
(産経新聞 2009/5/7)
-------------------------------------------------------------
金総書記、列車で2カ月間移動生活「人民経済が心配で家に帰って安心して眠れない」
労働党機関紙

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は7日の論評で、金正日総書記が経済
再建や国民生活向上のため「昨年末から約2カ月間、家に戻れず列車で生活し
ながら、人民経済のさまざまな部門で現地指導を続けている」とする発言を伝
えた。
発言時期は今年2月の「意義深い祝日」としており、同月16日の金総書記自
身の誕生日での発言とみられる。
金総書記は「この2カ月は旧正月など祝日も多く、家で家族と休みたいという
思いもなくはなかったが、人民経済が心配でそうはできなかった」と述べ、経
済再建までは「家に帰って安心して眠れない」と話したとも伝えた。(共同)
(産経新聞 2009/5/7)
-------------------------------------------------------------
「意識かすむ時もある」金総書記、疲労を吐露

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は4日付で、金正日総書記がある党実
務者と面談した際、「仕事が多く疲れることは事実だ。私がどんな仕事もてき
ぱきと片付けると話す人もいるが、そうではない」とした上で、「時には数時
間も精神を集中し考えようとすれば、意識がかすむ時もある」と語ったとする
記事を掲載した。
発言時期は「ある年の暑い夏の昼食時間」としたが、健康が悪化したとされる
昨年8月かどうかは不明。金総書記が自らの健康状態に立ち入り、心情を吐露
する発言が紹介されるのは異例。
同紙はまた、金総書記が「長時間考えた末、明け方に明白な答えを探し当てる
喜びは何事にも替え難い」と話し、「一生涯、仕事に没頭しようと思う。これ
が私の最大の幸福であり喜びだ」と語ったとも伝えた。(共同)
(産経新聞 2009/5/5)
-------------------------------------------------------------
北朝鮮が米政権への本格非難開始 「政策に変化なし」

北朝鮮の外務省報道官は4日「現在の米政権」の対北朝鮮政策はブッシュ前政
権と「少しも変わりはない」と指摘、オバマ政権を初めて本格的に非難する立
場を朝鮮中央通信を通じ表明した。
北朝鮮は「衛星打ち上げ」に対する国連安全保障理事会の議長声明採択後、使
用済み核燃料棒の再処理着手や核再実験の方針表明など段階的に緊張をエスカ
レート。この過程でも米国を非難してきたが、北朝鮮当局が公式に「現在の米
政権」とオバマ政権を念頭に非難の対象として言及したのは初めて。(共同)
(産経新聞 2009/5/4)
-------------------------------------------------------------
国民総動員態勢を提示 「150日戦闘」と北朝鮮

北朝鮮は4日、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の社説を通じ、経済分野を中心
に国民総動員態勢を図る「150日戦闘」を全国民に提示した。今年9月の建
国記念日や10月の党創建記念日を目標にした経済再建策とみられるが、一定
の成果を示すため今後、核再実験や長距離弾道ミサイルの再発射などの動きを
本格化させる可能性もある。
北朝鮮で期間を区切り生産や建設の目標達成を促す経済運営方式は「速度戦」
と呼ばれており、これまで1970年代の「70日戦闘」「100日戦闘」や
80年代の「200日戦闘」などが代表的。最近では、2005年の党創建
60周年を前に「100日戦闘」が展開された。
社説は今回の「150日戦闘」が、故金日成主席の生誕100周年となる
2012年に「強盛大国」を建設するための「闘争を左右する」と意義を強調
している。(共同)
(産経新聞 2009/5/4)
-------------------------------------------------------------
「盗人たけだけしい」 韓国人拘束非難に北が反論

北朝鮮の開城工業団地を統括する朝鮮中央特区開発指導局の報道官は1日、北
朝鮮当局による韓国企業、現代峨山の韓国人男性職員の拘束を韓国が非難して
いることについて「盗っ人たけだけしい」と反論した。朝鮮中央通信を通じ表
明した。
男性職員は北朝鮮の政治体制を非難したとして拘束された。報道官は職員が
「われわれの自主権を侵害し、法に抵触する重大な行為を犯した」として拘束
の正当性をあらためて強調、「引き続き詳しく調査している」とした。
さらに、韓国が非難を続けるなら「事態はさらに厳しくなり、開城工業団地の
事業にも不利になる」とけん制した。(共同)
(産経新聞 2009/5/1)
-------------------------------------------------------------
6カ国関連条項を除外 非同盟閣僚級会議でと北朝鮮

北朝鮮の外務省報道官は1日、キューバで4月30日閉幕した非同盟諸国会議
の閣僚級会議で採択された最終文書で、これまで記載されてきた6カ国協議を
含む朝鮮半島関係の条項が除外され、同協議が「もはや必要なくなった」とす
る北朝鮮の主張が会議で理解を得た、と表明した。朝鮮中央通信を通じ述べた。
報道官はまた、「会議の参加国は、破綻(はたん)した(韓国との)北南関係
も言及する必要がないと認めた」とした。北朝鮮は今回の会議に、朴宜春外相
率いる政府代表団を派遣している。(共同)
(産経新聞 2009/5/4)
-------------------------------------------------------------
大阪生まれの李明博大統領非難 北朝鮮紙「民族の魂を大阪に埋めた」

北朝鮮の内閣などの機関紙「民主朝鮮」は23日、韓国の李明博大統領が日本
の歴史教科書検定問題を非難しない姿勢を見せているとした上で「生まれると
同時に民族の魂を大阪に埋めた」李大統領を「除去する(退陣させる)闘争を
強化すべきだ」と主張する論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
論評は日本の歴史認識を問題視しない李大統領は「日本の反動勢力の再侵略の
野望に同調しているとんでもない親日逆賊だ」と批判した。
北朝鮮メディアは、今年1月にも李大統領を「日本に忠実な日本人」と批判し
たことがある。(共同)
(産経新聞 2009/4/23)
-------------------------------------------------------------
「繁栄のため、疲れても我慢する」 金総書記の発言紹介

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は17日、試験通信衛星「光明星2号」
打ち上げの意義を取り上げた論評で、金正日総書記が国家繁栄のため「疲れて
いても我慢する」と語ったとのエピソードを紹介した。
発言時期は不明だが、金総書記は「人間は体を気遣わねばならないが、私には
そのような時間はない」とした上で「私も疲れれば眠気に襲われるが、祖国と
人民の運命を背負っているという使命感、われわれがより多く仕事をしてこそ
国が繁栄し、人民が幸福になるという責任感から」と理由を説明したという。
論評はさらに「核保有国の空に打ち上がった光明星2号は帝国主義の敵との決
戦で勝利を宣言した戦勝の祝砲」と強調した。(共同)
(産経新聞 2009/4/17)
-------------------------------------------------------------
【北ミサイル】「この程度の情報力でミサイルを迎撃するのか」 北「労働新聞」

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は10日、試験通信衛星「光明星2号
」打ち上げの意義を扱った論評で、「電波妨害をはじめ、あらゆる障害の中で
も、衛星から発せられる信号は各地ではっきりと観測されている」と指摘した。
論評は、「われわれの衛星を否定しようとする(日米韓などの)卑劣な策動は
現在も続いている」と主張。また発射をめぐる日本の誤情報発表について、
「この程度の情報力で(北朝鮮の)ミサイルを迎撃するのか、というあざけり
を受けざるを得なかった」と批判した。
同日の「労働新聞」は、通常より2面増やした8面で構成、9日に平壌で行わ
れた最高人民会議第12期第1回会議の結果を伝えた。(共同)
(産経新聞 2009/4/10)
-------------------------------------------------------------
軌道に沿い周回

「『銀河2号』により『光明星2号』を軌道に進入させることに成功した。
『銀河2号』は『光明星2号』を自らの軌道に正確に進入させた。『光明星2
号』は40・6度の軌道傾斜角で、地球から最も近い距離が490キロメート
ル、最も遠い距離が1426キロメートルの楕円軌道に沿って回っており、周
期は104分12秒だ。衛星は自らの軌道に沿って正確に回っている。衛星か
らは不滅の革命頌歌「金日成将軍の歌」と「金正日将軍の歌」の旋律と測定資
料が470メガヘルツで地球上に伝送されており、衛星を利用してUHF周波
数帯域で中継通信が行われている。衛星は宇宙の平和利用のための科学研究事
業を推進し、今後、実用衛星発射のための科学技術的諸問題を解決する上で決
定的な意義を有する。偉大な領導者、金正日同志の雄大な構想に従い、父なる
領袖(故金日成主席)の誕生100周年にあたる2012年までに、何として
も強盛大国の大きな扉を開くための新たな革命的大高潮の炎が全国に強く燃え
広がっている激動の時期に収められた宇宙科学技術の飛躍的な発展を象徴する
今回の衛星発射の成功は、総進軍の道に一丸となって奮い立ったわが人民を大
きく鼓舞している」(4月5日、朝鮮中央通信)
-------------------------------------------------------------
「平和的衛星打ち上げに難癖をつけることは、国際宇宙条約が当事国に同等に
付与している主権国家の自主的権利に対する乱暴な蹂躙(じゆうりん)行為で
あり、国際法に対する無知の表れだ。国連安保理でわが方の人工衛星打ち上げ
問題が取り上げられること自体が、すなわち6者会談(6カ国協議)の崩壊を
意味する」(4月1日、民主朝鮮)
-------------------------------------------------------------
「日本は、衛星が打ち上げられた場合、独自の追加制裁を講じ、国連安保理に
上程するだろうとわめいている。彼らは衛星を迎撃すると豪語し、騒ぎ立てて
いたが、今や運搬ロケットから段階別に分離する『残骸(ざんがい)が日本の
領土に落ちた場合のみ』と言葉を変える哀れな境遇となった。日本が迎撃をし
ようがしまいが、わが方は恐れない。日本が迎撃へと進んだ場合、わが軍隊は
最も強力な軍事的手段によってすべての迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕す
るであろう」(3月31日、朝鮮中央通信)
-------------------------------------------------------------
「国際社会は、主権国家の平和的衛星打ち上げについて共感し、期待を表して
いる。わが共和国は、他のすべての衛星打ち上げ国と全く同様の国際的手続き
と慣例に従い衛星を発射する。これを広範な国際社会が評価している」
(3月29日、労働新聞)
-------------------------------------------------------------
「国連安保理が議長声明であろうと、たった一言でも非難する文書のようなも
のを出すのはもちろん、上程して取り上げること自体が乱暴な敵対行為だ」
(3月26日、北朝鮮外務省)
-------------------------------------------------------------
「米国とその一部追従勢力は、衛星運搬ロケットが長距離ミサイルと技術が区
別されないため、わが方が衛星を発射すれば自分らにとって脅威になるという
論理を展開し、国連安保理で問題視しなければならないと騒いでいる。米国、
日本をはじめ、わが方の衛星発射に言いがかりをつける国々はすべてわが方よ
り先に衛星を打ち上げた国々である。衛星発射の技術が長距離ミサイル技術と
同じならば、それらの国々こそミサイル技術も先に開発し、より多く蓄積して
いることを物語っている。国連安保理が他国の衛星発射問題を取り扱い問題視
したことはない」(3月24日、北朝鮮外務省)
-------------------------------------------------------------
「日本反動らは最近、敵国の弾道ミサイル発射を即座に探知できる早期警戒衛
星まで開発しようとしている。彼らの世界征服の野望がどの程度まで至ってい
るかを如実に示している」(3月23日、労働新聞)
-------------------------------------------------------------
「衛星迎撃への即時対応打撃戦は堂々たる自衛的措置である」
(3月12日、労働新聞)
-------------------------------------------------------------
「平和的衛星に対する迎撃は戦争を意味する。迎撃に対しては、最も威力ある
軍事的手段による即時の対応打撃で応える」(3月9日、朝鮮人民軍総参謀部)
-------------------------------------------------------------
「(衛星発射は)国際的に公認された自主的な権利だ。わが共和国はすでに、
久しい前に堂々たる衛星発射国となっていた」(2月27日、朝鮮中央放送)
-------------------------------------------------------------


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






2009年6月9日火曜日

米人記者逮捕事件の不思議

※写真は、Reutersサイトより転載

北朝鮮、米人記者に労働教化12年=オバマ大統領「深く憂慮」

朝鮮中央通信は8日、北朝鮮の中央裁判所(最高裁に相当)が、拘束中の米国
人女性記者2人に対し、12年の労働教化刑を言い渡したと伝えた。オバマ米政
権が北朝鮮の核実験を受け、テロ支援国再指定検討など制裁強化の動きを見せ
ている中、米国への挑発を強めた形だ。今後、米国は身柄解放に向け、北朝鮮
との交渉を働き掛ける方針だが、難航するとみられる。
同通信によると、裁判は4日から8日まで続けられ、2人に対して「朝鮮民族敵
対罪と不法出入国罪の有罪を確定」したという。
これを受けて、ホワイトハウスはオバマ大統領が「(判決を)深く憂慮してい
る」と明らかにした。その上で2人の解放実現に向け、全力を尽くす方針を強
調。米国務省も北朝鮮に対し、2人の即時解放を改めて呼び掛けた。
判決を受けたのは、米ケーブルテレビ局のローラ・リン、ユナ・リー両記者。
2人は3月17日、中朝国境地帯で脱北者問題を取材中に捕らえられ、その後、
「不法入国と敵対行為」などの罪で起訴。朝鮮中央通信は6月4日に「裁判を4
日午後3時から始める」と異例の事前報道を行っていた。
今後の日程は明らかとなっていないが、これで判決が確定する可能性が高い。
北朝鮮の刑法では、朝鮮民族敵対罪は5年以上の労働教化刑で、特に、事案が
重大な場合は10年以上としている。
(時事通信 2009/6/09)


今回の報道で、北朝鮮には、朝鮮民族敵対罪という犯罪と、不法出
入国罪という犯罪があるのが判りました。北朝鮮に対して外国人が
取材する事が何故、朝鮮民族敵対罪になるのか判りませんし、北朝
鮮に入国してもいないのに、不法出入国罪に問われるのか理解でき
ないのですが、それにも増して、我々外部の人間は、北朝鮮の刑法
や刑事訴訟法を読む事が出来ても、北朝鮮国内では、絶対機密にな
っており、住民は、その内容を知る事すらできないである点は余程
問題であると思われます。法律が公開されていなければ、事前でも
事後でも、為政者の思う通り法律を作る事が出来る訳で、誰であっ
ても明確な根拠なく犯罪者として逮捕する事が可能になります。こ
れだけをとっても、北朝鮮が法治国家ではなく、前近代的な専制国
家であると言えます。

更に、報道によれば、二人の記者は、国境の中国側で北朝鮮の官憲
に逮捕されたそうですから、中国領でも北朝鮮の国境に近い部分で
は、北朝鮮側が管轄しており、一定の逮捕権も持っているようです。
しかし、その様な事実は、同じく、公開されていないという点で中
国が北朝鮮と同様な問題点を持っている事を示しています。

法律的な面でも、この事件は興味深いのですが、政治的には、より
興味深い側面があります。元々事件が発生した時から言われた事で
すが、北朝鮮は、この二人の記者を人質として利用すると考えられ
ています。つまり、米国が北朝鮮に対する敵対行為を止めたら記者
を解放すると言う訳です。そして、記者解放の為の交渉に当たって
相手側の大物政治家を要求し、その政治家と、記者解放以外の北朝
鮮との関係全般について大枠で合意してしまうという手法を使う事
が懸念されています。クリントン政権時のカーター元大統領との交
渉や、富士山丸事件での金丸副総裁との直接交渉などが、この典型
例です。

今回の場合は、逮捕された記者の所属するカレントTV社の経営者
には、アル・ゴア元副大統領がおり、オバマ政権は北朝鮮との記者
解放交渉をゴア氏に任せるという話も出ているようです。既に過去
の例もあるので、例えゴア氏が交渉に出るとしても、カーター氏の
轍を踏む事はないと思われますが、今回有罪を宣告された記者が各
々、中国系と韓国系である事や、事件が発生したタイミングが北朝
鮮がミサイル発射や核実験を行う直前であった事を踏まえると、事
件そのものが北朝鮮が対米直接交渉を実現する為に準備した一種の
舞台装置ではないかという疑念も考えずにいられないのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






2009年6月8日月曜日

「戦うべき時は戦う覚悟を」との首相発言を初めて聞いた。しかし...。

※街頭演説する麻生首相。読売新聞サイトより転載

「対北、戦うべき時は覚悟を」…麻生首相が演説

麻生首相は7日、東京都議選(7月12日)の立候補予定者の応援で訪れた武
蔵野市のJR吉祥寺駅前で街頭演説し、弾道ミサイルの発射準備を進める北朝
鮮に関し、「戦うべき時は戦わねばならない。その覚悟を持たなければ、国の
安全なんて守れるはずがない」と述べ、制裁強化などで圧力を強める姿勢を強
調した。

また、民主党が海賊対処法案に反対していることについて、「ソマリア沖を通
って日本にものを運んでくる船が海賊に襲われる。守るのが当たり前だ。どう
してこれが反対か理解できない」と批判した。

(2009年6月7日19時31分 読売新聞)

別に勇ましい発言を聞きたい訳ではないのですが、北朝鮮との関係
で、この「戦うべき時は戦う覚悟を」という言葉が日本国内閣総理
大臣の口から出たのを初めて聞いた様に思います。

勇ましいというよりも重い言葉ですね。そういう覚悟が自分にある
かどうかを胸に手を当てて考えると、確かにあるとは言えないとい
うのが私を含む大方の本音でしょうし、為政者が国民に対し簡単に
「覚悟」、「覚悟」と言って欲しくもないとも思います。しかしな
がら、北朝鮮の現状は、そういう覚悟を六十年ぶりに日本国民に求
める程、深刻なのかも知れません。

現状では、北朝鮮は数個の核兵器を保有しているだけで、それを弾
道ミサイルに搭載する事もできないと思われますが、国際社会が北
朝鮮への非難決議もできずに「会議を踊って」いる中で、全力で、
核弾頭の小型化や、弾道ミサイルの改善に力を注いでいる事に間違
いはありません。北朝鮮が日本を射程に収めているノドンにしても
弾頭重量は1トンはあり、通常弾頭であっても1トン爆弾といえば
相応の爆発力は持っています。それが百五十発~二百発場合によっ
ては落ちてくるかも知れないのです。勿論、現在整備中のMDによ
って落とせる部分もありますが、半分は打ち洩らす可能性があります。

以前にも書きましたが、第二次大戦中、ドイツはロンドンに向け
1,308基のV-2号を発射しましたが、その成果は、死者2,754名、負
傷者6,523名でしかありませんでした。MDを掻い潜って日本に着
弾するノドンの数が百発程度とすれば、ロンドンの場合の五分の一
から十分の一程度の損害、即ち、死者300名~600名、負傷者700名
~1500名程度の損害が予想されます。大きな数字ですが、阪神淡路
大震災の被害などとは比べ物にならない数字でしかありません。日
本は十分耐える事が出来ます。

ただ、ここで考えないといけないのは、北朝鮮が日本を攻撃する場
合は、日本を戦争に引き込みたい時でもあるという事です。
例えば、北朝鮮が単独で韓国を攻撃したが、進行がはかばかしくな
く逆に、戦争を拡大する事で、中国を北朝鮮側に参戦させる為に、
日本を攻撃するケースや、あるいは、日本を戦争に引き込む事で、
共同の敵が出来たとして韓国との間で休戦を成立させようとする場
合です。

こういった時には、日本は攻撃をうけ、被害がでながらも反撃を自
制しなければなりません。これには、戦う以上の勇気(自制心)が必
要になります。為政者にとっても死活の決断に迫る事になるでしょう。
従って、政治家には、「戦うべき時は戦う覚悟を」を、しかし「戦
うべきでない時には、戦う事を諦める事を国民に説得する勇気を」
求めたいと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月5日金曜日

オバマ政権が隠す五つ目の対北原則

※画像は、http://www.cagle.com/news/NorthKorea09/2.aspより転載

オバマ政権が示す対北政策の「4大原則」

「この文章は非常に慎重に作成されたもので、米国政府のトップにある人たち
の承認を得たものです。読み上げます」

本紙と米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が共同で主催したフォーラムで、オ
バマ米政権が2日、対北朝鮮政策の原則を発表した。最近2回目の核実験を強行
するなど、数々の挑発行為を繰り広げている北朝鮮に対する政策の原則を明ら
かにしたものだ。最近シンガポールで行われたアジア安全保障会議でゲーツ国
防長官が発表した七つの文章からなる発言が、オバマ政権における今回の対北
朝鮮政策の基本になっているという。フォーラムに出席した米政府高官が明ら
かにした。

その内容によると、オバマ政権が定めた韓半島(朝鮮半島)政策の4大原則は、
(1)韓半島(朝鮮半島)の完全かつ検証可能な形での非核化という米国の目
標に変わりはない(2)北朝鮮を核保有国として絶対に認めない(3)核兵器や
核関連物質がほかの国や非国家団体の手に割った際には、米国と同盟国にとっ
て甚大な脅威となるため、このような行為にはそれに相応した結果が伴うよう
になる(4)米国は同盟国を守るために献身する、という内容だ。「同盟国の
防衛に献身すること」を明確にしたのは、最近韓国で起こっている核主権論に
対し、先手を打つという次元で出たものだという。この日フォーラムに出席し
た人物が語った。

オバマ政権がゲーツ国防長官の発言を本紙とCSISのフォーラムで改めて示した
のは、北朝鮮に対して明確なメッセージを送るためのものだ、とワシントンの
外交筋が説明した。この外交筋は「米政府関係者が政府のトップについて言及
しながらこれらの原則を読み上げたのは、オバマ大統領の意向が反映されたも
のでもあるからだ。今後米国による北朝鮮への対応は、これらの内容を基本と
してここから外れることはないだろう」と述べた。

一方、最近北朝鮮が2回目の核実験を行って以降、韓国では2012年4月に予定さ
れている戦時作戦統制権の韓国への移管を延期すべきという声が、本格的に力
を得始めている。これについて米国防省のデレク・ミッチェル東アジア太平洋
担当首席副次官補は、「北朝鮮が核実験を行ったからといって、韓米両国が非
常に驚いてこれまでの合意内容を急いで変更するような姿は見せたくない。戦
時作戦統制権の移管時期を延期することなどについて再検討する計画はない」
と明言した。しかし盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権とブッシュ前政権の間でこ
の問題が話し合われていた当時、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)
アジア担当局長として実務に当たっていたビクター・チャ氏(ジョージタウン
大学教授)は、「戦時作戦統制権の移管は本来条件付きの合意だった。北朝鮮
の核実験で韓半島をとりまく安全保障環境が急激に変わりつつあるため、もう
一度考え直すこともできる、という話がワシントンでも出ている」と話した。

◆米国が発表した対北朝鮮政策の4大原則

(1)韓半島の完全な非核化は米国の不変の目標

(2)北朝鮮を核兵器保有国として絶対に認めない

(3)北朝鮮による核兵器・核関連物質の移転は容認しない

(4)米国は東アジアの同盟国防衛に最善を尽くす

ワシントン=特別取材班

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2009/06/04)


この記事では、オバマ政権の明示的な対北朝鮮政策を四原則として
示していますが、一番重要な五つ目の原則が、記述されていません。
私は、オバマ政権には武力による北朝鮮の体制変更を行わず、
対話と交渉で問題を解決する
という原則があると考えています。

昨日(6/4)、米国の一部国会議員によるテロ支援国再指定の要求に
対して、オバマ政権は「北朝鮮はテロ支援国の定義に当てはまらな
い」として再指定を拒否したと報じられましたが、これも第五原則
に沿った対応であると考えます。

では、何故、今対話を始めないのかですが、それは北朝鮮、米国共
に交渉材料をテーブルの上に並べている最中であるからと考えます。
また、オバマ政権にとっては、優先順位の高い問題がある事が挙げ
られます。

北朝鮮とすれば、米国による体制保証、「核保有国」としての認知
と大規模な経済援助の獲得が要求事項ですが、その要求を行う上で、
韓国との軍事的対立のエスカレーションや、日本や米国向けのミサ
イル発射といった交渉材料の呈示がまだ行えていません。

交渉を始める時には、カードが出来るだけ多い方が良い訳ですが、
現時点では長距離ミサイル実験は失敗の結果しか出ていない為、米
国は、北朝鮮のミサイルを脅威として捉えていません。従って、交
渉のカードとしても認知度が低いと言えます。北朝鮮としては、ミ
サイル開発を放棄する代償として(実際に開発を放棄するかどうか
は別として)、可能な限り高い値段をつけたい筈であり、その為に
は実験を成功させる必要があります。それには、まだ、多少の時間
を要するという訳です。

これは、韓国との軍事面でのエスカレーションについても同様です。
韓国との緊張状態が高ければ高い程、緊張緩和を米国との交渉材料
に使えます。「休戦条約に拘束されない」という発言は「新しい休
戦状態を作るには代償が必要」と言い換える事が出来ます。

米国にとっても状況は同じです。国連安全保障理事会で、北朝鮮に
対するできるだけ厳しい制裁実施を加盟国に要請する決議に合意を
取り付ける必要があります。それに対して、北朝鮮は中ロを通じて
制裁をできるだけ緩和し、決議の交渉材料としての有効性を損ねる
為の働きかけを行っていると言えます。

それに加え米国にとっては、現在戦っている中東における対テロ戦
争を如何に終息させるかの方がより優先度の高い案件であると言え
ます。昨日行われたオバマ大統領のカイロ演説も似たような対イス
ラム対応原則の表明でしたが、大統領本人がカイロまで出かけて行
って行った演説と、ワシントンのフォーラムでの政府関係者の発表
とでは影響度も反響もまるで違います。実際には、核拡散という観
点から見た重要度で両者の違いはそれ程大きくないという評価もあ
りえるのですが、オバマ政権にとっての優先順位付けには大きな差
異があると言えます。

では、オバマ政権がこの第五原則を明示しない理由はなんでしょう
か。それは、明示したとたんに、オバマ政権は、人権外交を放棄し
たと言われかねないからだと思います。更に、この第五原則を認め
る事自体が、北朝鮮との交渉カードになるとも言えます。
しかしながら、この第五原則が存在する事は、私の様な国際問題に
対する素人の目から見ても明らかなのですから、北朝鮮からも交渉
の前提与件になっていると考えるべきです。

大方の日本国民には残念な事ですが、オバマ政権の期間中に、米国
代表と北朝鮮代表がにこやかに握手する場面を見せられる様に思わ
れます。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月4日木曜日

敵基地攻撃能力として何を保有するのか?

※画像はhttp://therealrevo.com/blog/?p=5876より転載

敵基地攻撃能力の保有を打ち出す 防衛大綱で自民提言案 

自民党は3日、国防部会防衛政策検討小委員会(今津寛委員長)で、政府が年
末に改定する「防衛計画の大綱」への提言案をまとめた。核実験と弾道ミサイ
ル発射を繰り返す北朝鮮を念頭に敵基地攻撃能力の保有を打ち出した。また、
平成15年度予算以来の防衛費・防衛力の縮減方針を撤回し、防衛費と自衛官
の定員を維持・拡充するよう要求した。近く首相官邸や防衛省へ提出する。
提言を政府側がどれだけ受け入れるかが焦点になる。

提言案は敵基地(ミサイル策源地)攻撃について「専守防衛の範囲で、ミサイ
ル策源地攻撃能力を保有し、米軍の情報、打撃力とあいまった、より強固な日
米協力体制を確立することが必要」とし海上発射型巡航ミサイル導入を挙げた。

防衛費縮減方針の撤回要求の理由としては「陸海空自衛隊ともやりくりの限界
を超えている。防衛力整備に必要な防衛予算および整備基盤の維持・拡充を行
うべきだ」とした。政府の経済財政政策の指針「骨太方針」の中の防衛費縮減
目標の見直しも求めた。

また、米国を狙う弾道ミサイルの迎撃など集団的自衛権の行使容認▽内閣直轄
の対外情報機関や国安全保障会議(日本版NSC)創設▽他国との共同開発の
ための武器輸出三原則の緩和▽国境離島(防人の島)新法制定と離島の領域警
備体制の充実-を盛り込んだ。

同小委の会合では(1)軍事大国にならない(2)専守防衛(3)非核三原則
-に沿って防衛政策を進めることも確認した。今津委員長は記者団に「次期衆
院選の争点の1つになるのが安全保障政策だ」と語った。中谷元・党安全保障
調査会長「北朝鮮が核やICBM(大陸間弾道ミサイル)を保有するなら、専
守防衛は変えないものの策源地攻撃能力を考えなければならない」と述べた。

(産経新聞 2009/6/03)


整備すべきは、敵基地攻撃能力なのか策源地攻撃能力なのか今ひと
つ判り難いですね。それでいて専守防衛は変えないとなると、なか
なか実現すべきもののイメージがはっきりとしません。どの様に想
定するかで、実現に要する費用も期間も大きく変わってきます。今
回の提言案の中にもっと書きこんであるとは思いますが、提言の内
容が報道されるまでの間は少し想像の羽を伸ばして、何が、目的を
達成する上で、合理的な実現手段なのかを考えてみたいと思います。

高名な軍事関係ブログのコメント欄では、ノドンの移動発射機を潰
せないと意味がない。その為には、数千機の攻撃機とそれを支援す
る制空戦闘機や支援機が必要という極端な意見が出ています。残念
ながら作戦機の数が五百機程度しかない航空自衛隊の現状では、実
現は到底不可能です。

では、まず、何の為に、敵基地攻撃能力を整備するのか目的をはっ
きりさせたいと思います。私はこの敵基地(策源地)攻撃能力は、敵
の通常兵器による攻撃を抑止する為のものであると考えます。
つまり、北朝鮮が、核攻撃を行った時には、米国が核報復を言明し
ているので抑止されているとしても、通常弾頭を装備したミサイル
で日本を攻撃した場合に、米国による攻撃と同時に、あるいは日本
単独であっても北朝鮮の基地(策源地)に攻撃を行う事を明らかにし
ておく事で、北朝鮮のミサイル攻撃を抑止するというものです。

これを、一度、攻撃を受けた後に、敵基地を攻撃する事=ノドンの
移動発射機を破壊する事が目的であると解釈すると難易度が極端に
高くなり、やっても無駄という結論にしかなりません。
何故なら、イラク戦争中に、発射機が比較的見つけ易いと思われる
イラクでスカッド狩りを米軍が行いましたが、かなりの兵力を投入
したにも係わらず百発近いスカッドの発射を許容せざるを得なかっ
たからです。トンネルの掘削経験・能力が高く、地勢的にも移動式
発射機隠すのが容易な北朝鮮では、ノドン狩りの有効性は更に低下
すると考えるのが適当と思われます。

従って、目標を明らかにするかどうかは別にして、日本が整備すべ
きは、通常兵器の範囲で、北朝鮮のミサイル攻撃を抑止できる兵力
であると定義する事にします。
この定義で整備すべき、一番小さな兵力は、百発程度のトマホーク
巡航ミサイルであると考えます。北朝鮮はノドンは百発~二百発程
度保有していると伝えられていますので、弾着の正確性を考えると
概ね百発程度トマホークがあればバランスすると思われるからです。
通常弾頭の戦術トマホークの価格は、一発1.5億円程度です。
これを発射するランチャーとしては、護衛艦が装備しているMk41VLS
が使用できます。Mk41VLSは、こんごう型護衛艦に一隻当り90発分、
あたご型護衛艦に同じく96発、むらさめ型護衛艦に各16発。たかな
み型護衛艦には各32発分搭載しています。百発程度であれば容易に
搭載できます。所要費用もソフトウェア関連の改修費用が必要かも
知れませんが、トマホークを装備するには、それ程のコストにはな
らないでしょう。概算で約200億円程度でしょうか。

それよりも、寧ろ、目標として何を選択するかが課題になります。
一番良いのは、ノドン移動式発射機ですが、音速以下の比較的低速
で飛ぶ巡航ミサイルにこの種の移動式目標の攻撃任務を与える事は
有効ではありません。発射時に目標設定が必要ですが、目標までの
飛行中に目標が移動してしまう為です。

寧ろ、固定目標を狙うべきであり、ノドンの製造工場や、液体燃料
の製造工場、軍の各級の司令部、固定式ミサイル基地、航空基地、
レーダー基地等があげられます。また、北朝鮮の代表的な記念碑や
指導者の宮殿も対象にして、嫌がらせを行う事で、敵の非合理的反
応を引き出す事が可能になるかも知れません。日頃から北朝鮮のど
こに何があるのかを情報収集衛星等で集めておき、北朝鮮が一番嫌
がる場所をいつでも攻撃する様にしておく事が重要です。

トマホークの配備に加え、より効果的な攻撃を行う為には、支援戦
闘機(攻撃機)を強化する必要があります。また、北朝鮮を攻撃する
場合、足の長い攻撃機を空中給油機でサポートする必要があります。
現在使用しているF-2は、海上目標と攻撃する事を目的に開発され
たもので、既に生産ラインも閉鎖されています。これから整備する
のであれば、F-15E系列の戦闘爆撃機を導入するのが適当ではない
かと思われます。規模は、2個~3個飛行隊(50機~75機)、所要
費用は、戦闘機導入だけで五千億円~七千五百億円です。
当然、空中給油機も現在の4機では不足するので、これを三倍程度
に増やす必要があります。これにも二千億円程度を要します。
合わせて一兆円といった処でしょうか。本音を言えば、早期警戒管
制機や電子戦機も欲しい処です。

北朝鮮攻撃用に航空機を整備する事を考えるとトマホークと比べる
と非常に高価なものになるのが判ります。敵基地(策源地)攻撃能力
の整備と合わせ、MD整備も怠り無く進めないとならず、こちらに
も資金を要しますから、優先順位としては、戦闘爆撃機他の航空機
の整備は後回しにすべきだろうと思われます。

敵基地(策源地)攻撃能力は、実は、政治的な戦力整備であるとも言
えます。もし、北から通常弾頭のミサイル攻撃があった場合、従来
の考え方からすれば、北朝鮮への攻撃は全て米国が担う事になりま
す。米国が自動的に報復攻撃を行うかどうかは米国の判断による事
になりますが、米国が自身の思惑で、迅速な報復を行わない事がな
いとは言えません。また、攻撃を受けたにも係わらず、日本として
一矢を報いる事をしなかった場合、内閣が持たない可能性が考えら
れます。世論は一夜で変わります。昨日までは攻撃兵器を持たない
のが世論であっても、一度理不尽な攻撃を受ければ報復の声が世論
となるのは明らかです。今回の敵基地(策源地)攻撃能力整備は、抑
止力であると同時に、そのような事態になった際の政治的な言い訳
の道具としても使われると思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月3日水曜日

今度こそ、弾道ミサイル迎撃演習の本番

※地図は産経新聞サイトからの転載

北、相次ぐ軍事挑発 日本射程のミサイル準備

【ソウル=水沼啓子】北朝鮮が国際社会の非難を無視し、軍事挑発を一段と強
めている。米本土を射程に入れるとみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)
や、日本を射程に入れる中距離ミサイルの発射準備を進めていると相次いで報
じられた。北朝鮮の一連の動きは、後継者問題などを抱える北朝鮮の内部事情
によるものとの見方が強い。

韓国の通信社、聯合ニュースは2日、北朝鮮が日本海側にある南東部の江原道
(カンウオンド)旗対嶺(キテリヨン)で、中距離ミサイル発射準備をしてい
ると伝えた。韓国軍合同参謀本部をこの日訪問した国会国防委員会の所属議員
らに対し、軍当局が明らかにした。

聯合ニュースは1日には、北朝鮮が発射準備を進めている長距離弾道ミサイル
が、北西部の平安北道(ピョンアンプクド)東倉里(トンチャンリ)に新しく
建設された発射施設に到着し、組立施設に搬入されたとみられると報道。韓国
の政府筋が「東倉里に移動したICBMは覆いをされたまま組立棟と推定され
る施設に移送されたようだ」と明らかにしたという。

北朝鮮が旗対嶺で発射準備をしているという中距離ミサイルは、射程1300
キロのノドン・ミサイルと推定されるが、2007年から実戦配備された射程
3000キロ以上の新型中距離ミサイルの可能性もある。

聯合ニュースによると、北朝鮮が東倉里で発射準備をしている長距離弾道ミサ
イルと中距離ミサイルを「同時多発的に発射する可能性もある」という。

北朝鮮は06年7月に、舞水端里(ムスダンリ)から長距離弾道ミサイル「テ
ポドン2号」を発射した際、旗対嶺からノドン・ミサイルなど計6発を相次い
で発射している。

韓国・世宗研究所の李相賢首席研究委員は「金正日総書記の後継体制固めのた
めにも軍事強化が必要で、核保有国として米国などに認めさせるには、核(弾
頭)とICBMはセットで開発を進めなければならない。短・中距離ミサイル
の発射は韓国や日本に脅威を与えるのが目的だ」と分析している。

(産経新聞 2009/6/02)


4月の北朝鮮による長距離ミサイル実験は、事前に人工衛星打ち上
げという発表や、第一段や第二段の落下予定場所の発表もあったの
で、発射時間こそ判らなかったものの比較的探知、追跡は容易であ
ったと思われます。日本を飛び越える事もほぼ確実であり、何らか
の事故が発生した場合のみ、日本の領土、領海に落下すると見込ま
れていました。

今回は、現在までに判明している処では、米国向けのテポドン2型
弾道ミサイルに加え、日本向けの弾道ミサイルであるノドンも発射
準備に入っているようです。北朝鮮が日本を攻撃する時に、実際に
使われる事になるミサイルです。

かと言って、実際に日本を攻撃するつもりはどうもなさそうです。
あくまで外交交渉で有利な立場を得る為のミサイル実験に過ぎませ
ん。何故なら、本当にミサイル攻撃を行うのであれば、ここまであ
からさまな発射準備を行わないであろうからです。

そうであれば、これは、日米両国にとっては、願ってもないミサイ
ル防衛実戦演習の機会に他なりません。
前回の長距離ミサイル実験とは異なり、今回は、実戦でも日本向け
に使われるものでミサイルが使用される他、米国向けの弾道ミサイ
ルとの連続発射の可能性があります。着弾位置も日本の領土、領海
に非常に近い位置に設定される筈です。連続したミサイル発射に対
して、迎撃するか、しないか的確な判断が求められると同時に、迎
撃した場合には、何故迎撃したかに関して説明も求められます。

そういった諸点を含め、自衛隊のみならず、防衛省本省や、外務省、
総理大臣官房、米国との連携まで含めた、まさにミサイル防衛に関
する総合的な実戦演習の機会である様に思われるのです。


4月のミサイル発射でも、自衛隊は得がたい経験を得られたと思い
ますが、今回は、ミサイル迎撃を実際に行うかどうかは別にしても、
前回の轍を踏まえ、より実戦に近い状況での対応を正確に実施し、
更にそれをより高度なものに発展させて貰い、国民の安全と安心を
高めて欲しいものだと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月2日火曜日

何が悲しくてF-22のモンキーモデルに金をかけるのか?

※写真はロイターサイトからの転載

米上院歳出委、空軍への輸出向けF22戦闘機開発の打診検討

米上院歳出委員会の防衛分科会は、ロッキード・マーチンの最新鋭ステルス戦
闘機F22の輸出向け機種の開発について、米空軍に実現性を調査するよう要
請することを検討している。関係筋が1日、ロイターに明らかにした。
同筋は匿名を条件に「少なくとも、2010年度予算案に、その可能性を探る
との文言が挿入される可能性はある」と述べた。

ゲーツ米国防長官は今年4月に発表した2010年度の国防予算計画で、ミサ
イル防衛(MD)計画の縮小に加え、ロッキード・マーチンのF22戦闘機に
ついて、今年9月までの2009年度中に4機を発注した後は新規発注を停止
する方針を示した。

レキシントン・インスティテュートの防衛アナリスト、ローレン・ソンプソン
氏によると、日本の防衛省は導入を計画している次期主力戦闘機(FX)とし
て、F22戦闘機を40─60機購入することを希望している。

主要な防衛関連会社数社のアドバイザーを務める同氏によると、日本は輸出向
けの最新鋭戦闘機の開発費用としていくら拠出してもかまわないとの姿勢を示
している。アナリストの試算では、高度な機密を要する部品を取り除くなどし
て輸出用の機種を開発するコストは約10億ドル。

日本政府は、日本への攻撃を抑止するためにはF22のような戦闘機が必要だ
としている。ソンプソン氏によると、北朝鮮のミサイル発射などの一連の挑発
行為で、次期主力戦闘機の導入問題が再び注目されているという。
米空軍は最近これまでの方針を翻し、F22戦闘機の輸出用機種の開発は不可
能ではないとの姿勢を示した。ソンプソン氏によると、米上院歳出委員会の防
衛分科会の議長を務めるダニエル・イノウエ上院議員は、F22戦闘機の日本
への輸出を支持し、規制解除に向け努力しているという。

ただ、米上院軍事委員会に以前補佐官としてかかわったグレッグ・キリー氏は、
輸出に関する規制解除には約1年かかり、米国の軍事機密技術の輸出を禁止す
る法律の厳しいハードルを乗り越える必要があるため、日本への輸出に関する
合意が承認されるにはさらに時間がかかるとの見方を示した。

キリー氏は、こうした手続きの間にロッキードの生産を継続させるための資金
の拠出には米議会の4つの委員会の賛成を得る必要があるが、こうした委員会
内には、最近日本に対してF22戦闘機は輸出しないと言明したゲーツ国防長
官に対抗する動きは今のところないと指摘。同氏は「F22戦闘機の輸出は実
現しないと思われる」としている。

(ロイター 2009/6/02)


航空自衛隊の主力戦闘機は従来から、数に制約を設けられている代
わりに、金額には制約を設けられていない事から非常識なほど高価
な機体を購入する事が続いていました。

右肩あがりの時代であればそれでも良いのかも知れませんが、この
記事の中で、「日本は輸出向けの最新鋭戦闘機の開発費用としてい
くら拠出してもかまわないとの姿勢」とされている様に、防衛省は、
いまだにその条件が続いていると勘違いしているとしか思えません。

しかしながら、防衛費はこの10年削減され続け、自衛隊の定員も削
減されてきました。その一方で、海外派遣任務は増え、中国を睨ん
だ島嶼防衛も行わなくてはならない上、MD対策も邀撃ミサイルに
加え、早期警戒衛星の整備も防衛費の枠内で行わなくてはなりません。
更に、情報収集衛星についても現状はJAXAの予算ですが、これも、
打ち上げロケットをGX化されると同時に防衛費枠による調達に移
管される可能性があります。これに加えて、自民党の中からは、北
朝鮮の弾道ミサイルに対する攻撃力の整備を行うべきという意見も
表明されています。このままでは、いくら防衛費があっても足りな
くなってしまいます。

しかしながら、国民としては安易にそれを容認する事は出来ません。
F-22は一機当り150億円の機体ですが、これを日本が購入する場
合は、それに機体開発費用が上乗せさせられます。今回の輸出型開
発費用は性能を落とすための改造ですが、それに10億ドル(約一
千億円)をかけるというのです。F-22の導入機数を記事にある60
機とするとモンキー化費用は一機当り16.7億円になります。元々の
開発費用にこれを加えると日本が導入するコストは、一機当り200
億円を超える可能性がある上、ライセンス国産は許される訳もなく、
日本の航空産業を潤す事もあまりないという事になります。

恐らく、F-35Aと比較すればF-22モンキーの方が強力な制空戦闘機
だろうとは思いますが、F-35Aであれば100億円程度で購入可能
である訳で、果たして二倍の費用を合理化できる程のものなのか
と言う点で疑問を抱かざるを得ないのです。

陸・海・空の三自衛隊はこれまで、高価で、概して高性能?な兵器
を少数配備するという方針をとっていましたが、これは正に実戦を
行わないという前提の元での防衛力整備方針と言えます。しかしな
がら自衛隊の任務多様化と予算制約は、そんな余裕のある防衛力整
備方針を許してはおけなくなったと言うべきだと思われます。

モンキーモデルに血道を上げるよりもより合理的で安価な兵器によ
る防衛力整備を切に希望したいと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年6月1日月曜日

中国が787クラスの旅客機の開発を開始?

※写真は開発中の中国国産のリージョナルジェットARJ21

中国初の国産中型旅客機、14年にも試験飛行

【上海=河崎真澄】中国が国家プロジェクトとして上海で独自開発に着手した
初の国産中型旅客機「C919」は、早ければ2014年末にも試験飛行が行
われ、16年から国内の航空会社向けに供給が始まる見通しとなった。上海紙、
解放日報などが伝えた。この「C919」は座席数が最大190人の中型機で、
航続距離は最長で5500キロ程度を予定している。開発費用は総額約2000
億元(約2兆8000億円)という。

型名「C919」の由来は「C」がまず「China」からだが、欧州エアバ
ス、米ボーイングの頭文字と合わせ「ABCが肩を並べる」意味ももつ。さら
に数字の最初の「9」は中国語の発音が同じ「久」を表し、「永久に存在する」
ことを目指す。「19」は190人乗りを示しており、将来は290人乗りの
「C929」機の開発も計画している。

開発と生産を担当する中国商用飛機では、今後3年間で「C919」本体や国
産ジェットエンジンの開発に300億元(約4200億円)、本社や工場の建
設に300億元をそれぞれ投入し、従業員も現在の4000人から生産開始時
には3万人まで増やす計画だ。

(産経新聞 2009/6/01)


今までどんな報道がされているか調べてみると同じレベルの報道が
3月9日にRecord Chinaで、出ていました。
流石に今回の報道では、生産計画は少し詳しくなっていますが、ま
ず同程度と言って良いと思います。

実際に中国独自で787クラスの採算に乗る旅客機が作れるかどうか
ですが、生産開始予定が2016年であるとすれば、売れる機体を作る
のは、なかなか厳しいのではないかと思われます。

その一つの理由は、2016年頃には、ボーイング787の生産が佳境に入
っており、更に、その対抗馬であるA350XWBも生産に入っている筈と
言う点が上げられます。既に市場を押さえられているという点で、
ボーイング、エアバスに後発の中国が、正面から張り合う事になる
のは、如何に安価な機体にしても、流石に苦しいのではないかいう
事です。(勿論、中国国内で使う上では、問題にはなりません。)

機体サイズは、787(223席~296席)やA350XWB(270席~350席)に比べ
C919は、やや小さいのですが、シリーズの中にC929という290人乗
りまである処を見ると、737ではなく、787の競合機と考えるべきか
と思います。

C919の利点ですが、採用するエンジンについては、ロールスロイス
製にせよ、GE製にせよ、既に、787やA350で実績のある新型エンジ
ンが使用できるという事が上げられます。また、機体の設計や製造
についても、787と同様の新素材や合理的なアプローチが取れる上、
787が陥った陥穽を避ける事ができるという後発メリットがあります。

また、機体価格は、中国の人件費を反映してかなり低いでしょうか
ら、737-900並みの値段で、787が買えるという事で、ローコスト航
空会社を中心に興味を示す所も出てくるのではないかと思われます。

今でこそ、原油高騰とその後のリーマンショックで世界的に経済が
縮小傾向にあり。これを反映して航空輸送量も減少していますが、
この機体の製造が始まる2016年には、世界経済も回復し、航空輸送
能力の拡大が業界の命題になっているかも知れません。それを冷徹
に見越した上での開発であれば、一見、ボーイングとエアバスの寡
占体制に切り込む中国航空機製造業界の大きな賭けに見えますが、
実は冷静な計算の結果と言えるのかもしれません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/