2009年6月2日火曜日

何が悲しくてF-22のモンキーモデルに金をかけるのか?

※写真はロイターサイトからの転載

米上院歳出委、空軍への輸出向けF22戦闘機開発の打診検討

米上院歳出委員会の防衛分科会は、ロッキード・マーチンの最新鋭ステルス戦
闘機F22の輸出向け機種の開発について、米空軍に実現性を調査するよう要
請することを検討している。関係筋が1日、ロイターに明らかにした。
同筋は匿名を条件に「少なくとも、2010年度予算案に、その可能性を探る
との文言が挿入される可能性はある」と述べた。

ゲーツ米国防長官は今年4月に発表した2010年度の国防予算計画で、ミサ
イル防衛(MD)計画の縮小に加え、ロッキード・マーチンのF22戦闘機に
ついて、今年9月までの2009年度中に4機を発注した後は新規発注を停止
する方針を示した。

レキシントン・インスティテュートの防衛アナリスト、ローレン・ソンプソン
氏によると、日本の防衛省は導入を計画している次期主力戦闘機(FX)とし
て、F22戦闘機を40─60機購入することを希望している。

主要な防衛関連会社数社のアドバイザーを務める同氏によると、日本は輸出向
けの最新鋭戦闘機の開発費用としていくら拠出してもかまわないとの姿勢を示
している。アナリストの試算では、高度な機密を要する部品を取り除くなどし
て輸出用の機種を開発するコストは約10億ドル。

日本政府は、日本への攻撃を抑止するためにはF22のような戦闘機が必要だ
としている。ソンプソン氏によると、北朝鮮のミサイル発射などの一連の挑発
行為で、次期主力戦闘機の導入問題が再び注目されているという。
米空軍は最近これまでの方針を翻し、F22戦闘機の輸出用機種の開発は不可
能ではないとの姿勢を示した。ソンプソン氏によると、米上院歳出委員会の防
衛分科会の議長を務めるダニエル・イノウエ上院議員は、F22戦闘機の日本
への輸出を支持し、規制解除に向け努力しているという。

ただ、米上院軍事委員会に以前補佐官としてかかわったグレッグ・キリー氏は、
輸出に関する規制解除には約1年かかり、米国の軍事機密技術の輸出を禁止す
る法律の厳しいハードルを乗り越える必要があるため、日本への輸出に関する
合意が承認されるにはさらに時間がかかるとの見方を示した。

キリー氏は、こうした手続きの間にロッキードの生産を継続させるための資金
の拠出には米議会の4つの委員会の賛成を得る必要があるが、こうした委員会
内には、最近日本に対してF22戦闘機は輸出しないと言明したゲーツ国防長
官に対抗する動きは今のところないと指摘。同氏は「F22戦闘機の輸出は実
現しないと思われる」としている。

(ロイター 2009/6/02)


航空自衛隊の主力戦闘機は従来から、数に制約を設けられている代
わりに、金額には制約を設けられていない事から非常識なほど高価
な機体を購入する事が続いていました。

右肩あがりの時代であればそれでも良いのかも知れませんが、この
記事の中で、「日本は輸出向けの最新鋭戦闘機の開発費用としてい
くら拠出してもかまわないとの姿勢」とされている様に、防衛省は、
いまだにその条件が続いていると勘違いしているとしか思えません。

しかしながら、防衛費はこの10年削減され続け、自衛隊の定員も削
減されてきました。その一方で、海外派遣任務は増え、中国を睨ん
だ島嶼防衛も行わなくてはならない上、MD対策も邀撃ミサイルに
加え、早期警戒衛星の整備も防衛費の枠内で行わなくてはなりません。
更に、情報収集衛星についても現状はJAXAの予算ですが、これも、
打ち上げロケットをGX化されると同時に防衛費枠による調達に移
管される可能性があります。これに加えて、自民党の中からは、北
朝鮮の弾道ミサイルに対する攻撃力の整備を行うべきという意見も
表明されています。このままでは、いくら防衛費があっても足りな
くなってしまいます。

しかしながら、国民としては安易にそれを容認する事は出来ません。
F-22は一機当り150億円の機体ですが、これを日本が購入する場
合は、それに機体開発費用が上乗せさせられます。今回の輸出型開
発費用は性能を落とすための改造ですが、それに10億ドル(約一
千億円)をかけるというのです。F-22の導入機数を記事にある60
機とするとモンキー化費用は一機当り16.7億円になります。元々の
開発費用にこれを加えると日本が導入するコストは、一機当り200
億円を超える可能性がある上、ライセンス国産は許される訳もなく、
日本の航空産業を潤す事もあまりないという事になります。

恐らく、F-35Aと比較すればF-22モンキーの方が強力な制空戦闘機
だろうとは思いますが、F-35Aであれば100億円程度で購入可能
である訳で、果たして二倍の費用を合理化できる程のものなのか
と言う点で疑問を抱かざるを得ないのです。

陸・海・空の三自衛隊はこれまで、高価で、概して高性能?な兵器
を少数配備するという方針をとっていましたが、これは正に実戦を
行わないという前提の元での防衛力整備方針と言えます。しかしな
がら自衛隊の任務多様化と予算制約は、そんな余裕のある防衛力整
備方針を許してはおけなくなったと言うべきだと思われます。

モンキーモデルに血道を上げるよりもより合理的で安価な兵器によ
る防衛力整備を切に希望したいと思います。


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