2009年6月11日木曜日

北朝鮮の肩を持つ事で自分の首を絞める中ロ

※写真は国連安全保障理事会

北核実験 7カ国が制裁決議案に合意、週内採択へ

2度目の核実験を強行した北朝鮮への対応を協議していた国連安全保障理事会
常任理事国5カ国と日本、韓国の7カ国は10日、北朝鮮に対する非難と制裁
措置を盛り込んだ決議案で合意に達した。7カ国は、引き続き同日午前に招集
された安保理の非公式協議にこの合意案を提示、週内の決議案採択を目指す。

決議を採択する見通しがついたことで、国際社会は北朝鮮の挑発行為について
厳しい姿勢を示したかたちだ。しかし、核実験実施から決議の採択まで3週間
近くもの時間を費やしたことは、北朝鮮をめぐる国際社会の思惑の違いをも浮
き彫りにすることにもなった。

協議は、強い制裁措置を主張していた日米が、慎重な対応を求める中国に配慮
を示した結果、9日の時点で双方が合意した。ただ、ロシアが細部でさらなる
調整を求めた結果、10日の大使級会合で7カ国が最終的に合意に達した。

合意内容の詳細は明らかになっていないが、強い制裁措置を求めていた当初の
日米案からは、北朝鮮の暴発を恐れ慎重な対応を求める中国に配慮するかたち
で、後退した内容になったとみられる。焦点となっていた北朝鮮に出入りする
船舶に対する貨物検査(臨検)では、日米が求めていた各国への自国領内での
臨検実施義務化が見送られるもようだ。

一方で北朝鮮はすでに、決議が採択されれば「強硬な非常措置をとる」と警告
しており、さらなる長距離ミサイルの発射などの動きも見せている。国連外交
筋は、長距離ミサイル発射の場合は再び安保理緊急会合が招集されるとしてお
り、北朝鮮情勢をめぐっては引き続き、緊迫したやりとりが国連を舞台に続く
ことになりそうだ。
(産経新聞 2009/6/10)


以前にも、述べている事ですが、大事な事なので、繰り返します。
今回の安保理協議で一番おかしいのが、中ソが北朝鮮の肩を持ち、
結果的に北朝鮮の核保有国化に手を貸してしまっている点です。

もし、北朝鮮が核保有国としてのステータスを得る事ができたとし
て、それは何を意味するのでしょうか。それは核拡散防止条約(NPT)
を批准した国であっても、北朝鮮の様に上手く立ち回れば、国際社
会は、核保有を認めるという事です。

現在、五大国(P5)以外に、インド、パキスタン、イスラエルという
事実上の核保有国がありますが、これらの三ヶ国は元々NPTを批准
していませんでした。つまり核を保有する意思を隠しておらず、そ
れによる不自由を甘受した上で核保有を実現したと言えます。
しかし北朝鮮はちがいます。NPTを批准する事で、NTP批准国は、
IAEAを通じて原子力平和利用に関する情報へのアクセスが許容され
ます。北朝鮮は、そこで得た情報に、パキスタンのカーン博士の核
の裏ネットワークを通じた技術情報と資材によって、核保有を実現
したのです。

パキスタンの核開発は、カーン博士の核の裏ネットワークを作り出
しましたが、北朝鮮が核保有に成功すれば、イラン、シリアが後に
続く事は目に見えています。そうなると、第二第三のカーン博士や
裏ネットワークが出現しておかしくありません。一部の報道によれ
ば、北朝鮮は、「米国を嫌っている国」への核拡散の意図があると
伝えられています。北朝鮮は、現在でさえ、ニセ札、覚醒剤、ニセ
タバコ、武器等の非合法製品の輸出に手を染めているとされていま
す。既に地下組織への販売ルートは整っており、今度は、核兵器も
製品リストに加わる事になります。

米国にとっては、許しがたい事でしょうが、これは同時に中ソにと
っても許しがたい事態である筈です。中ロ両国はある種の「帝国」
であり、国内に少数民族問題や民族紛争を抱えています。北朝鮮や
その他のならずもの国家やテロ組織から、中ソの現政権に反対する
勢力に核兵器が流れないという保証はどこにもなく、中ロ両国が、
反対勢力を厳しく弾圧する抑圧体制を敷いているだけに、それに対
する反対派も先鋭化していると言えます。それだけに非政府組織に
よる核使用の可能性は、米国に対するより、中ロの方がより高いと
すら言えるのです。

これに加え、現在のNPT体制下で、中ロは持てる国としての特権を
認められています。しかしながら、北朝鮮に続く国が増加する事で
核保有国の特権が空洞化する事になり、最終的には、特権そのもの
に意味がなくなる事になります。そして、現在の国連常任理事国が
全て核保有国である事に見られる様に、核兵器を保有する事による
非核保有国に対し軍事的にもっていた絶対的な優位が、核の保有量
の違いという相対的な優位に転化してしまう事にもなりかねないの
です。
総合国力で考えれば、米、英、仏は、経済的にも高い国力がありま
すが、中、ロは軍事力がその総合国力に占める割合が高いだけに
NPT体制の崩壊による影響はより深いと言えます。

以上の二点から考えても、中ロが今回の安保決議で北朝鮮への強い
制裁決議を回避した事は、まさに天に唾する行為であるとしか言え
ない様に思われてなりません。


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