2009年2月9日月曜日

エアバスA400Mの開発も遅延が拡大中


※CGはエアバスミリタリー社サイトから転載

日本でも、ジェット輸送機C-Xの開発に大幅な遅延が生じ、未だ初飛行の日
程が定まらず、量産機取得予算にも2年の遅延が生じていますが、略同規模の
機体を国際共同開発しているプロジェクトであるA400Mの開発にも、大き
な遅延を伴う深刻な問題が生じている様です。

2/4付けのビジネスウィークの記事を抄訳します。

エアバスA400Mは救われるのか?

軍用輸送機A400Mが話題になる時、エアバス社のCEOであるトーマス・エ
ンダーズの反応は、あまり熱が入った様には見えません。
「A400Mを生産したいとは思っているが、幾らかかっても良い訳じゃない」
と彼は語っています。

このコメントはエアバス社の方針転換を示しています。エアバス社は今まで、
プロジェクトが危険に晒されているという噂を一貫して否定してきました。
しかし、巨大な機体は、巨大な問題を引き起こし、開発費用の増大と神経をす
り減らす絶え間ない遅延になやまされてきました。
エアバス社の現在のスタンスは、それでも、プロジェクトが成功する事を必要
としているというものです。

A400Mの開発に熱意を失いつつあるのは、エアバス社だけではありません。
ドイツ国防省の忍耐も限度に近づきつつあります。国防省は記録に残るコメン
トをする事は拒否しています。しかし、ある空軍の高官は、「エアバス社の問
題への対応には、国防省内でも殆ど、熱意を呼び起こす事はなかった」と述べ
ています。

この高官が言及した「問題」は、A380ジャンボ旅客機の開発での大幅遅延
の発生の記憶を呼び起こすものですが現在進行中のものです。
A380の問題とは、機内配線や他の問題により広範囲な遅延が発生したもの
ですが、それによりエアバス社は何億ユーロもの損害を蒙りました。これと同
じ運命がA400Mにも生じている様です。機体のエンジン制御を行うソフト
ウェアの幾つものトラブルの他、進行方向制御のメカニズムも挑戦的である事
が判りました。また、プロペラエンジンの騒音も予想以上でした。そして、新
しい機体開発につきものであり、エンダーズCEOが認めている様に機体が重量
過大である事が判明しました。南ドイツ新聞によれば、機体はこれから12ト
ンもの重量軽減を行う必要があります。この結果、数十億ユーロを要する遅延
が発生しています。

当初、一号機は今年引き渡される予定でしたが、現時点で、2014年の引渡しが
可能かドイツ空軍内では懸念されています。
ファイナンシャルタイムズ ドイツ版で、クラウス・ペーター・スティーグリ
ッツ中将は、それは「破滅的な開発だ」と述べています。空軍内では、代替策
が議論されています。「我々はエアバス社と結婚した訳じゃない」とドイツ空
軍の高官は述べています。空軍は一~二年の遅延であれば、現在のC-160
トランザール輸送機をもたせる事はできるものの、「ある時点で、もし、遅延
が更に続くようであれば、何をすべきか決定する必要があるだろう」と語って
います。

ドイツ空軍が発注を取り止めれば、プロジェクトの継続は困難です。ドイツは
A400Mの最大の顧客で、発注全体190機の内、60機を発注しています。
エアバス社も、オプションについて検討しています。「現在進められている方
法だけでは、継続は覚束ない。それだけだ。」とエンダーズは述べています。
彼は、OCCAR(ドイツ、フランス、英国、イタリア、ベルギー、スペインをメ
ンバーとする防衛コンソーシアム)で再交渉したいと考えています。

この再交渉の内容は技術的な仕様の詳細な再検討による問題の解消です。もう
一つの議論の焦点は、財務面での交渉です。計画開始時に決められた固定価格
は、数度の開発遅延発生により、恐ろしく高価な負担をエアバス社に課すもの
になっています。「この様なプロジェクトでは、隠れたリスクな必ずあるもの
だ」とエンダーズは言います。巨額の開発コストの増大に加え、引渡しの遅延
による高額の損害金の支払いも、また大きな問題です。EADS社は既に17億ユー
ロを引当てています。A400Mは昨年夏には初飛行を行っている筈でした。

エンダーズは、いまだに初飛行が行われていない事について全責任を引き受け
るつもりはありません。「エンジンがあれば、昨年10月には初飛行が出来た筈
だ」と彼は言います。エンジンは、フランスのSNECMA、英国のロールス・ロイ
ス、スペインのITP、ドイツのMTUアエロエンジンからなるコンソーシアムで開
発されてきました。「エンジンの選択はエアバス社の選択ではなかった」とエ
ンダーズは、この急造チームの事を語ります。プロジェクトをヨーロッパ共同
で行う事は政治的な決定でした。エンダーズは、技術的な問題は克服できると
今も考えています。彼によれば、似たような軍用機プロジェクトと比較した場
合、A400Mプロジェクトの現状は、かけ離れたものではなく、一度完成す
れば、他の軍用輸送機とは比べものにならない「素晴らしい機体」になると彼
は語ります。

A400Mの規模の開発では、問題が発生するのは通常の事だと言います。ド
イツ国防省も、軍用輸送機の開発が、紙の上の計画ほど簡単なものではない事
に気がついています。空軍の高官は、他の輸送機製造メーカーが米国やロシア
にあるといいつつも、「それらの会社も発注が入ってから、一から開発を始め
ないといけない」と語っています。


Airbus A400Mの開発スケジュール
2003年5月 国際共同開発合意
     (英,独,仏,伊,西,土,白,ルクセンブルグ8ケ国 生産数212機)
      後、伊が脱退。南ア、マレーシアが購入決定(生産数 192機に変更)
2003年5月 開発着手
2004年1月 エンジン開発着手
2005年1月 強度試験機製作開始
2005年10月 エンジン試験運転開始
2007年4月 静強度試験機用パーツが揃い、組立開始
2007年6月 飛行試験用エンジン引渡し (当初予定2006年11月)
2007年8月 飛行試験機生産開始    (当初予定2007年第一四半期)
2008年6月 エンジン飛行試験開始   (当初予定2007年10月-12月)
2008年6月 ロールアウト       (当初予定2007年第二四半期)  
(当初予定2008年夏 初飛行  リスケ後スケジュールの公表なし)
2009年1月 12tの重量超過発覚                <--現在ここ
2010年第一四半期 引渡開始(計画修正後 現在では2014年引渡しを危ぶむ声も)


※A400Mについて触れた過去のエントリーは以下の通りです。


エアバスA400Mロールアウト 初飛行は静かに三ヶ月延期(2008/7/02)

重大な遅延に直面している?A400Mプロジェクト(2007/8/21)

C-X、P-X遂にロールアウト!(2007/7/05)

P/C-X 零号機 6月中旬にロールアウト(2007/05/17)

意外に頑張っている日本の航空産業-CXプロジェクト(2006/10/29)



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2009年2月6日金曜日

「はやぶさ」地球帰還まであと485日


※写真はJAXAサイトからの転載

<はやぶさ>エンジン再起動成功 軌道を地球に向け

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、世界初の小惑星の岩石採取に挑戦
した探査機「はやぶさ」が、地球帰還に向けたメーンエンジンの再起動に成功
したと発表した。同日午前11時ごろ(日本時間)、4基あるエンジンのうち
1基を再起動し、同35分、正常に動いていることを確認した。はやぶさは軌
道を地球に向けて変え、順調にいけば来年6月、当初予定より3年遅れて地球
付近に帰ってくる予定だ。

はやぶさのメーンエンジンは、電気推進の「イオンエンジン」。燃費がよく長
距離の航行に耐えられる。これまでに設計寿命(1万4000時間)を大きく
超える3万1000時間稼動している。

はやぶさは03年5月に打ち上げられた。05年11月、地球と火星の間を回
る小惑星イトカワに着陸。表面の岩石採取を2度試みた。その「成果」を積ん
で、地球から約3億キロのかなたを航行している。

これまでに姿勢制御装置3台のうち2台が壊れ、姿勢制御用燃料がすべて漏れ
るなどのトラブルに見舞われた。イオンエンジンの燃料となるキセノンは地球
帰還に必要な量があるという。

地球付近まで戻ることができれば、高度数万キロで帰還用カプセルを切り離し、
オーストラリアの砂漠に落下させる。総航行距離は三十数億キロに及ぶという。

(毎日新聞 2009/02/06)

最初にお断りしておきますが、地球帰還までの日数はかなりいい加
減です。「やまと」にひっかけたジョークという事でご容赦下さい。

今まで事実上の冬眠状態であった「はやぶさ」ですが、小惑星「い
とかわ」と地球との位置関係が、帰還に際して燃料を一番節約でき
る関係になった為に、冬眠から目をさまし、地球帰還コースに進路
をとったという事です。(正確に言えば、既に「いとかわ」の軌道
からは離脱していましたので、第二期軌道変換とJAXAでは言ってい
ます。)

小惑星への着陸と離陸を世界で始めて成し遂げた「はやぶさ」です
が、その直後に姿勢制御用の燃料が全て洩れるという大トラブルに
見舞われ、地球帰還は不可能と思われましたが、イオンエンジン用
の燃料であるキセノンガスを直接噴射するという荒業で、緊急姿勢
回復を成し遂げ、地球との交信を回復しました。ただ、この間に、
電気が全て放電され衛星を制御しているコンピュータもリセット状
態になっていたりと満身創痍の状態である事は今も変わりません。

姿勢制御も姿勢制御系の噴射エンジンは使えず、三つの内、ただ一
つ残ったリアクションホイールを騙し騙し使っている状態で、これ
が、故障すれば、地球への帰還は全く不可能となります。その点で、
イオンエンジンの再始動成功は良いニュースではありますが、全く
予断を許さない状況はこれから地球帰還まで続いていきます。「は
やぶさ」の運用を行っているJAXAの「はやぶさ」運用チームは、今
まで同様、気の抜けない日々が続く事になります。

非常な困難の中にある「はやぶさ」ですが、既に、科学専門誌「サ
イエンス」が一冊丸々で、その成果を特集する程の成果を上げてい
ます。その点では、地球帰還とサンプルリターンは、「はやぶさ」
の成功を大成功にするものと言えます。

ISAS広報の任にある的川教授をして、「こんなにrobustでtoughな
のは見たことがない」と言わせた「はやぶさ」であり、「はやぶさ」
運用チームです。数々の困難を克服した実績には既に太鼓判が押さ
れていますが、今後共、頑張って頂き、「はやぶさ」の地球帰還と
サンプルリターンを是非成功させて欲しいものだと思います。


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2009年2月5日木曜日

本来の仕事もちゃんとやってるインド海軍と中国海軍



※写真は「海口」。http://icc.skku.ac.kr/~yeoupx/からの転載

ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊

【香港4日時事】4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、
海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されてい
ることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があっ
た。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。
同紙は潜水艦の国籍には言及していないが、インド海軍が保有するロシア製の
キロ級潜水艦だったことを示唆している。 

(時事通信 2009/02/04)

ソマリアの海賊対策で派遣されていても、平常の仕事はインド海軍、
中国海軍共にちゃんとやっている事を窺わせる事件です。

インドと中国は、国境紛争で戦火を交えた事もある関係であり、ま
たインドは、中国と対立していたソ連と親しい関係であった事もあ
り中国を仮想敵国の一つとして位置づけています。インドの核武装
もパキスタン向けというより中国向けの軍備であると言えます。

その様な関係ですから、今回の事件も、インド海軍にしても、中国
海軍にしても通常の緊張状態を維持していただけと言えるのかも知
れません。仮想敵国であるか否かに関わらず、他国軍艦の音紋を採
取する事は、海軍が平時から行うべき情報収集業務です。指紋で犯
罪者を識別する様に、海軍は、この音紋で艦種、艦名を識別します。
インド海軍は、その音紋採取を行っていたのではないかと思われます。

今回、中国海軍は、海賊対策にミサイル駆逐艦「海口」と「武漢」、
及び補給艦「微山湖」の三隻を派遣しています。「海口」は中華イ
ージスと呼ばれる052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)で、中国海
軍の虎の子であり、「武漢」も052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
の新鋭艦です。しかも、低速の補給艦を随伴しているので艦隊速度
が遅かった事から、インド海軍としては、音紋採取の格好の機会と
判断したのではないかと想像します。

一方の、インド海軍の潜水艦ですが、報道通りであれば、ロシア製
のキロ級潜水艦です。キロ級は通常動力潜水艦であり、本来であれ
ば、チョークポイントでの待ち伏せを得意としています。通常動力
潜水艦は原子力潜水艦程、速力も航続力も出ない替わりに、静粛性
が高い事によるものです。キロ級潜水艦の最高速力は20ktですが、
通常の活動では、この様なスピードを出す事はありません。静粛性
に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピードを出せば、
当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は艦隊速度が
遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断したのではな
いかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉えられたと
言う訳です。

通常型潜水艦が、無音状態に移行すると、水上艦からは探知するの
が殆ど不可能と言われ、演習時には、潜水艦がわざわざ音を出して
探知し易くしないと演習にならないという噂がある位ですから、今
回は、インド海軍の潜水艦は余程盛大に音を出していたのだろうと
思われますが、それにしても、それを逃さずにキャッチした中国海
軍も、ちゃんと緊張状態と維持して仕事をしていたと評価できると
思います。

海上自衛隊のソマリア派遣艦艇も、実戦であるという意識を持って
中印海軍同様の緊張感を持って任務に当たって欲しいと思います。


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2009年2月4日水曜日

イラン人工衛星打ち上げ成功 オバマ政権へのならず者国家のラブコール続く


※写真はReutersから転載

イラン初の国産人工衛星 核絡み強まる懸念

【カイロ=村上大介】イラン政府は3日、初の国産人工衛星の打ち上げに成功
したと発表した。アフマディネジャド大統領は国営テレビで「われわれは公式
に宇宙空間に足場を築いた」と演説し、打ち上げの様子を伝える映像が繰り返
し放送された。衛星打ち上げ技術は長距離弾道ミサイルにも応用が可能で、イ
ランの核開発問題とも関連して、国際社会の懸念をさらに強めることになりそ
うだ。

イラン国営通信など地元の報道によると、「オミド(希望)」と名付けられた
衛星は2日夜、国産ロケット「サフィール2」により衛星軌道に打ち上げられ
た。1日に地球を15回周回して通信実験などのデータを収集し、1~3カ月
後に地球に戻るという。ファルス通信は、イラン航空宇宙局長官が今年3月
20日までに再び人工衛星打ち上げを行うと語った、と伝えた。

イラン側は核開発について、平和利用が目的だと繰り返し強調している。しか
し、イランが核弾頭と長距離弾道ミサイルの両方を保有すれば、イスラエルや
湾岸アラブ産油国だけでなく、いずれは欧州の一部も射程にとらえると懸念す
る声は強い。

オバマ米政権は、ウラン濃縮の即時停止など国連安全保障理事会決議の完全履
行を条件に直接対話の選択肢も除外しないとしているが、アフマディネジャド
大統領は「米国がまず、過去にイランに対して犯した『罪』を謝罪しなくては
ならない」と強気の発言を繰り返しており、歩み寄りが実現する気配はない。

打ち上げは、今月10日に祝われるイラン革命30周年に合わせて「イランの
技術力」を内外に誇示する目的もあったとみられている。イランは昨年2月に
衛星軌道調査用のロケットを打ち上げ、8月には国産ロケットで模擬衛星を軌
道に乗せたと発表した。米国の観測では、8月の打ち上げは「失敗」とされて
いた。

(産経新聞 2009/02/03)

イラン衛星打ち上げに懸念 米政府

【ワシントン=有元隆志】米政府は3日、イランが初の国産人工衛星を打ち上
げたことについて、弾道ミサイル開発にも応用が可能であるとして、懸念を表
明した。

モレル国防総省報道官は3日の記者会見で、「イランの脅威は増している」と
述べ、弾道ミサイルの長射程化に警戒感を示した。

クリントン国務長官は3日のミリバンド英外相との会談後、記者団に対し、米
政府として対話の用意はあるとしたものの、イラン側も挑発的な行為をすべき
でないと指摘した。

米政府当局者はロイター通信に対し、衛星発射はイランにとっては「重要な前
進」としたものの、「最先端の技術は使われていない」として、地域の安全保
障のバランスに変化を及ぼすまでには至っていないとの認識を示した。

「オミド(希望)」と名付けられた衛星は2日夜、イランの国産ロケット「サ
フィール2」により衛星軌道に打ち上げられた。

(産経新聞 2009/02/03)

北朝鮮が前日に、ミサイル実験かと報じられたすぐ後になりますが
今後は、同じならず者国家のイランが初の衛星打上げに成功しまし
た。

米国での報道を読むと、衛星そのものについては、スプートニクか
らそう発展したものではないとの事ですが、自力で衛星を打ち上げ
た国としては9番目になるようです。

上の記事でも米国が既にこの衛星打上げについては懸念を表明して
いる様に、衛星打上ロケットと大陸間弾道弾は同じ技術が使われま
す。実際、今回衛星を打ち上げた「サフィール」ロケットは、北朝
鮮から技術導入したノドンミサイルを改造したものと言われていま
す。イランが独自にウラン濃縮を行っている点から言っても、核弾
頭付きのICBMを開発しているという懸念が持たれるのは当然の事で
す。

有力な産油国であるイランが、その必要性に乏しいにも関わらず、
ロケット開発や原子力発電、核燃料開発に異常な努力を傾けている
事を、イランの国是であるイスラム原理主義革命、イスラエルの国
家としての生存を許さないとする指導者の度々の声明、イスラム原
理主義勢力であるハマスへの援助等を考えると、米国が、ヨーロッ
パにイランの大陸間弾道弾に対抗するMD関連施設を建設するのも
むべなるかなと感じる次第です。

サフィールロケットですが、直径は1.25メートル、長さ24メートル
で、直径がやや細い事を除けば、概ね初期のミューロケットと同程
度の大きさです。二段式、又は三段式で、液体燃料とも固体燃料と
も、言われていますが、公開されている写真を見ると、一段目は固
体燃料で、衛星打上に必要な機体制御を行う二段目には液体燃料を
使っていると考えるのが適当である様に考えます。実際、上の写真
でも、二段目上部に、燃料注入用のチューブが導入されているのが
判ります。

今回の衛星打ち上げについて、イランは「われわれは公式に宇宙空
間に足場を築いた」と評価していますが、米国から見れば、同じ
「ならずもの」国家である北朝鮮のミサイル発射実験と同期を取っ
た動きと見る筈です。つまり「ならずもの」国家の側から、オバマ
政権をその公約通りに直接交渉に引きずり出す戦略に出た様に見え
る様に思われるのです。オバマ政権にしてみれば、直接交渉を行う
場合でも交渉のイニシアティブを確保する上でも、交渉に引きずり
出されたという印象を国際社会に与えるのは避けたい筈です。

北朝鮮については、六ヶ国協議がありますので、その場を使う事で
オバマ政権は対面を保ちつつ直接対話を行う事が可能です。イラン
については、その核開発について米国は、ドイツ、フランス、イギ
リス、ロシア、中国と協議を今週にもフランクフルトで行う事にな
っていました。この協議の中で、イランについても、北朝鮮と同様、
多国間協議の枠組みを発足させる事が議論されるのではないかと観
測する次第です。


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2009年2月3日火曜日

北朝鮮ミサイル発射準備中。テポドンなら米国向けだが



※USA TODAYより転載

北朝鮮がテポドン発射準備 米偵察衛星確認 改良型の可能性

北朝鮮が、核弾頭を搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準
備を進めていることが2日、分かった。複数の政府筋が明らかにした。米国な
どの偵察衛星が発射準備とみられる動きを確認しており、1~2カ月中に発射
準備が完了する可能性が大きい。北朝鮮は日本や韓国の対北強硬姿勢に強く反
発しており、対抗措置としてミサイル発射準備を進めているとみられるが、万
一発射すれば、国際世論の反発は必至で、6カ国協議の行方にも大きな影響を
与えそうだ。

複数の政府筋によると、米などの偵察衛星が、北朝鮮北東部の平安北道東倉里
で新たに建設中のミサイル発射施設に複数のトラックが頻繁に出入りしている
のを確認。ミサイルを格納する大型コンテナも運び込まれていることが分かっ
た。コンテナなどの大きさからミサイルは、テポドン2号と同等以上のサイズ
とみられる。

すでに北朝鮮は昨年秋までに発射施設でエンジンの燃焼実験を行っていること
が確認されている。北朝鮮のミサイルは液体燃料を使用しているため、発射台
への設置や燃料注入にはかなりの時間を要するため、発射は早くても1~2カ
月先になる可能性が大きい。

テポドン2号は北朝鮮が独自開発した弾道ミサイルで、1段目に新型ブースタ
ーを登載し、2段目には旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル「スカッドC」
を改良したノドンを使用しているとされる。射程は約6000キロで、米国の
アラスカやハワイ周辺まで到達するとみられている。

今回のミサイルはテポドン2号の改良型である可能性もある。改良型ならば射
程は1万キロに達するとみられ、米本土も射程圏に入るとされる。

北朝鮮は、韓国・李明博政権の対北強硬姿勢に反発を強めており、先月30日
に朝鮮中央通信は祖国平和統一委員会の声明として「北南間のすべての政治・
軍事的合意を無効化する」と伝えた。麻生政権も「核、ミサイル、拉致問題が
包括的な解決が国交正常化の条件」との立場を崩さず、対北経済制裁を続けて
いる。

北朝鮮は平成5年5月29日、日本海に向けてノドンを発射。18年7月5日
にはテポドン2号やノドンなど7発のミサイル発射実験を実施した。テポドン
2号は空中分解し、実験は失敗したが、国連安保理は7月15日、全会一致で
非難決議を採択し、ミサイル発射再凍結を求めた。2月3日2時54分配信 

(産経新聞 2009/02/03)

韓国向けの限定的な軍事的エスカレーションはあると思っていまし
たが、テポドン2号の発射準備とは、少し意外でした。先日来の南
北合意の一方的破棄とそれに続く恫喝声明は、韓国向けである事が
明らかであっただけに、同時に二正面恫喝を行うとまでは、思って
いませんでした。テポドン2号は射程の長い、初歩的な大陸間弾道
弾です。韓国向けや、日本向けであれば、スカッドやノドンで充分
の筈です。北朝鮮にしても、価格の高い、テポドンの発射実験を行
う事は経済的には避けたい筈です。しかし、そのコストを出してで
も、米国向けにラブコールを行いたいという事なのだろうと思われ
ます。

オバマ政権は選挙期間中は、条件をつける事なく、敵対国との対話
を行うと公約していましたが、政権獲得後は、北朝鮮への態度が当
初考えられていたものよりも硬いという事が判りました。この段階
で、テポドン発射という瀬戸際外交に移行したのは、米国との本質
的な関係改善の為には、タイミングが良いとはいえない様に思いま
すが、一気にミサイル発射や核実験を行う事で軍事的な対決姿勢と
核保有国である事の誇示を行い、その後に柔軟な外交攻勢で行う事
で、戦争を避けたいオバマ政権から宥和策と援助を取り込むという
狙いがあると考えられます。

相撲で言えば、格下が横綱との対戦で、立会い直後に猫騙しをやる
様なものでしょうか。四つに組むと全く相手になりませんが、横綱
の体勢が整う前に奇襲攻撃をかければ、横綱に土をつける事も可能
と言えなくないという訳です。

ここでのポイントは、北朝鮮が本気である事をオバマ政権に信じさ
せる事です。ブラフであると思われてしまうと効果はありませんか
ら、テポドン2号は、米国本土沿岸への着弾に成功させる必要があ
りますし、それに引き続き核実験を行う事で北朝鮮の断固たる対決
姿勢を誇示する事が必要になります。

オバマ政権にとっては、緊急度は異なるもののケネディ政権で起こ
ったキューバミサイル危機に近い状況が政権発足直後に発生する事
になります。六ヶ国協議に参加している北朝鮮を除く5ケ国は、恫
喝に屈して、意味もなく援助をするのも望んでいませんが、北朝鮮
の暴発も望んでいません。勿論、オバマ政権は一面で、それが、北
朝鮮のブラフであるとは判っていても、政権発足直後では、それを
無視をする事もまた出来ないと思われます。その点では、六ヶ国協
議を主導する米国新政権の外交姿勢を知る上で格好試金石を提供し
てくれていると言えるかも知れません。


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2009年2月2日月曜日

北朝鮮またも韓国を恫喝するもロイターは物乞いと報道?


※写真はRoutersサイトからの転載

労働新聞「警告無視すれば軍事衝突につながる」

【ソウル1日聯合ニュース】北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は1日、
祖国平和統一委員会が先月30日に出した声明について言及し、韓国政府は北朝
鮮側の警告を無視しているが、朝鮮半島の休戦状態を考慮すると、軍事的衝突
と戦争につながる可能性もあると主張した。朝鮮中央通信が報じた。
労働新聞は同日の論評で、平和統一委の声明は「南北関係にこれ以上収拾の方
法も正す希望もなくなったという厳重な状態に対処した当然の措置」だと主張
し、李明博(イ・ミョンバク)政権は南北関係を険悪な状態にした責任があり、
代価をしっかり支払わなければならないと強調した。また、「われわれの尊厳
を棄損し無分別な反共和国対決の道に進み続けようとすれば、南北関係の全面
遮断を含む重大な決断を下すしかなくなるという警告を出したのは1、2度では
ない」とし、にもかかわらず韓国政府は「常套的な脅迫」などと警告を無視し、
むしろ反共和国対決と北侵戦争挑発の動きを見せることで返答してきたと非難
した。

さらに「休戦状態にあるわが国で、対決はすなわち緊張激化であり、それは防
ぐことも避けることもできない軍事的衝突、戦争につながり得るものだ」と述
べている。警告を無視し反共和国対決策動にこだわり続ければ、終国の破滅に
つながることもあると肝に銘じなければならないと主張した。
(YONHAP NEWS 2009/02/01)

北朝鮮と韓国、戦争発生の危機にある=朝鮮中央通信社

[ソウル 1日 ロイター] 北朝鮮は1日、韓国との関係悪化により、朝鮮
半島は戦争発生の危機にあると警告した。北朝鮮は30日、韓国が敵対的な政
策を推し進めているとして、和解に向けた両国間の全ての協定を破棄すると表
明している。

今回の北朝鮮による行動について、アナリストの間では同国に対し強硬姿勢を
取る韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領への政策変更を促す狙いがあるほ
か、オバマ新米大統領の関心を引くための戦略ではないかと見る向きもある。

北朝鮮の朝鮮中央通信社(KCNA)は論説で「(韓国による対北朝鮮への)
敵対政策は、軍事衝突、ひいては両国間での戦争を引き起こすものである」と
主張した。

両国は、1950─53年の朝鮮戦争休戦後も平和協定を締結しておらず、国
境付近には100万人超規模の軍備を配置するなど依然事実上の戦争状態にあ
る。また韓国には約2万8000人の米軍兵が駐留している。

李明博大統領は2008年の就任後間もなく、過去10年間続いた対北朝鮮へ
の無償援助を打ち切っており、北朝鮮は最近、同大統領率いる保守政権への攻
撃を強めている。

ただ、李明博政権は北朝鮮による挑発をほぼ取り上げていない。

(Reuters 2009/02/02)

勿論、ロイターには北朝鮮は物乞いとは書いてありませんが、上の
記事の最後の所に、わざわざ、「李明博政権は、~過去10年間続
いた対北朝鮮への無償援助を打ち切っており~、北朝鮮による挑発
をほぼ取り上げていない。」と書いてあって、裏を読めば、北朝鮮
は、援助を打ち切った李明博政権に対して援助の再開を求めて駄々
をこねていると読める様になっています。

こうなると、前回のエントリーにも書いた様に、北朝鮮は限定され
たエスカレーションを実施せざるを得なくなりつつあると言えます。
李明博政権にしてみれば、野党民主党に国会では足を引っ張られて
おり、また、経済大統領と呼ばれたかったのに、現実は、李政権に
なってから、経済は低迷の一途を辿っていることから、国論統一、
人気回復の為には、北との緊張が多少高まる事は寧ろ歓迎であろう
と思われるのです。

韓国からの無償援助が止まってしまうと、北への援助は国際機関か
らのものと中国からのものしかなくなってしまいます。ロシアは元
々北朝鮮に援助する気はありません。日本に対しては、六ヶ国協議
中の悪口雑言で、相手にして貰えなくなっています。米国のオバマ
政権も、発足後間もない上、ブッシュ政権が北に譲歩しすぎた点を
失敗と解釈しており、北朝鮮と対話を再開する体制が整っていません。

これら点から言っても、また、今年は、事の他春窮が厳しくなりそ
うという観測もあり、北朝鮮は韓国に足元を見られていると言って
も過言ではありません。それだけに各国の注目を引こうと刺激度の
高い言葉を連発していると言えます。

朝鮮戦争が始まる直前に北朝鮮は、韓国に平和攻勢をかけた事があ
ります。勿論、開戦に備えて韓国の油断を誘い、韓国の国論を分断
する事が目的であった訳ですが、この時と同様に、北朝鮮が、軟化
したり、平和攻勢をかけてきた時こそが寧ろ危険の兆候と解釈すべ
きであり、逆に、強がりを言っている時は、国内的な弱みがある訳
で、全く怖くないと言える様に思います。


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2009年1月30日金曜日

いつものラブ・コールだが、NLLでの衝突再発はあるかも


※写真は韓国の新型コムクスドリ級ミサイル艇「ユ・ヨンハ」Powercorea.comより転載

北朝鮮「南北合意は無効」と宣言 海上軍事境界線も破棄

【ソウル=山口真典】北朝鮮の対韓国担当機関、祖国平和統一委員会は30日、
韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権の対北朝鮮政策を非難し「南北間の政治
・軍事的対決状態の解消に関するすべての合意事項を無効化する」と宣言する
声明を発表した。1992年に発効した南北基本合意書で規定した黄海(朝鮮半島
西側)の海上軍事境界線に関する条項も破棄すると表明した。

朝鮮中央放送の報道をラヂオプレスが伝えた。北朝鮮は黄海上で南北を分ける
北方限界線(NLL)を「米国が一方的に引いたもの」として独自の境界線を
主張してきたが、今回の声明では「完全に破棄する」と強調。南北銃撃戦など
軍事衝突の懸念が高まりそうだ。南北合意の無効化により、対話・交流だけで
なく開城(ケソン)工業団地など経済協力も一段と冷え込む可能性がある。
声明は南北関係を「もはや収拾する方法も希望もなくなり、戦争の瀬戸際まで
きた」と指摘。「我が方だけ過去の北南合意に拘束される必要がないのは自明
だ」と力説した。

(日本経済新聞 2009/01/29)

こういうのを米国では北朝鮮のストリップ外交と言っています。
見せるぞ、見せるぞという割に、実際には見せる事はないという事
だそうで、聞いた時には、正しくその通りと感心してしまいました。
北朝鮮が現行一致の国であれば、東京もソウルも今までに何度も火
の海になっていておかしくないのですが、幸いな事に朱子学でなら
した朝鮮民族の国である割には、現行不一致が国是になっている事
は、今や日本では気の利いた中学生でも知っている事実になってし
まいました。

今回は、過去の南北合意事項は全て無効というのですが、金剛山観
光事業がストップしている中、開城工業団地が実際に閉鎖されるか
どうかが注目されます。開城工業団地は、進出した韓国企業が支払
う賃金の四分の三が北朝鮮当局によってピンハネされるという酷い
搾取が行われています。それだけに、北朝鮮にとっては、数少ない
合法的なハードカレンシー入手ルートであり、その閉鎖は、自分に
も不利益となって帰ってくる事になります。その貴重な現金入手ル
ートを本当に潰すかどうかで、北朝鮮の覚悟の程を知る事ができる
と言えます。

開城工業団地について、一言説明を加えるなら、材料、技術、工作
機械、資金を韓国から工業団地に持ち込み、北朝鮮の極めて安価な
労働力を使って加工し、製品にした上で、韓国内で販売したり輸出
したりしようというものです。北朝鮮には労賃が支払われ、そのご
く一部が労働者に還元され、多くは朝鮮労働党の懐に入ります。
この工業団地の建設は、韓国でも民主党政権の目玉プロジェクトと
して推進されましたので、進出企業からは、民主党や民主労働党へ
もキックバックが政治献金として流れていると思われます。
その点では、北朝鮮から韓国の民主党や民主労働党に脅しが入った
と言えなくもありません。

さて、今回の声明で、注目したいのは、わざわざ、海上軍事境界線
に関する条項も破棄すると表明している点です。この北方限界線
(NLL)は米軍が朝鮮戦争終結時に設定したもので、制海権を確
保していた事もあって、韓国側に有利な設定になっています。この
NLL付近が好漁場になっていたり、北朝鮮からの工作員の侵入ル
ートになっている事もあり、過去何度も南北の哨戒艇同士の衝突が
発生しています。1999年には北朝鮮の、また、2002年には、韓国の
哨戒艇が撃沈されています。

韓国は、この種の哨戒艇を80隻以上保有していますが、新しい艇
でも、既に建造から20年以上が経過しています。不思議な事に、こ
の処、海軍艦艇の増強が著しい中で、対北朝鮮戦力の先兵とも言う
べき、高速哨戒艇の拡充、更新は、実は遅々として進んでいないの
です。写真の新世代のミサイル艇は、昨年末に一番艇が就役しまし
たが、二番艇以降は来年以降ゆっくりとしたペースで就役する予定
です。

今年は、いわば、韓国の哨戒艇整備の端境期とも言える時期に当た
ります。北朝鮮にしてみれば、韓国が隔絶した実力を持つ新型ミサ
イル艇を投入する前に、比較的エスカレーションがしにくい哨戒艇
で南北が直接戦火を交わす事で、世界の耳目を集めようとする可能
性が高いのではないかと考える次第です。


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2009年1月29日木曜日

供述調書漏洩事件 似非ジャーナリストは情報提供者を守らない



※検察側証人草薙厚子 朝日新聞サイトから転載

「いまも後悔していない」崎浜被告 調書漏洩事件

奈良県田原本町の医師(50)宅放火殺人の供述調書漏洩(ろうえい)事件で、
秘密漏示罪に問われた精神科医、崎浜盛三被告(51)の第6回公判は27日
午後も、奈良地裁(石川恭司裁判長)で続けられた。被告人質問が行われ、崎
浜被告は「医師の長男が殺人者でないことを世間に知ってほしい、という信念
については今も後悔していない」と供述。供述調書を外部に見せた行為の正当
性をあらためて主張した。

「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の著者でフリージャーナリストの
草薙厚子さん(44)に長男(18)の調書などを見せた理由を、崎浜被告は
「長男に殺意がなかったことを世間に広めたかった。しかし、そのことを理解
するには、長男の広汎性発達障害を知ることが必要。草薙さんはこの障害に取
り組んでいるジャーナリストだった」と説明。

一方で「僕パパ」については、「本を出すことは直前まで知らなかった」「表
紙に(長男が取り調べの際に書き、被告宅で草薙さんらが無断で撮影した)犯
行計画書がそのまま使われていて言葉を失った」「内容も私の意図に全く反し
ていた」と述べ、意に反する出版だったことを強調した。

そのうえで草薙さんについて、「調書を撮影するのはコピーするのと同じ。コ
ピーしないという約束を破ったのと、『僕パパ』がこういった形で出版された
ことの両方で、結果的にだまされた」と述べた。

(産経新聞 2009/01/27)

ジャーナリストの全部が全部こんな人間ばかりではないと信じたい
と思いますが、日頃の報道内容を見ると、こういう似非ジャーナリ
ストが多いのも日本のジャーナリズムの特徴ではないかという感じ
がします。

一言で言えば、自分の商売の為ならば、ジャーナリストとしての良
心や倫理観、人権に対する意識など、かけらもないと言う事です。

奈良県で発生した、医師宅放火殺人の調書漏洩事件の裁判で判った
のは、警察が作成した調書を情報提供者である鑑定医の意図と、情
報提供時の約束(①調書のコピーを作らない②調書を直接引用しな
い③公開時の事前チェック)を、この草薙厚子という似非ジャーナ
リストが一方的に破った事で、情報提供者が逮捕される事になった
という事です。

裁判で検察側証人として出廷した草薙氏は、この約束(自分で録音
したICレコーダーの記録で明らかになっているもの)について、言
を左右し、責任のがれをするのみという酷い態度に終始するのです。

この事件が、如何に酷いものであったかについては、
講談社の社内調査委員会の報告
でも明らかになっていますが、
その調査委員会報告に対する草薙氏の反論
裁判での陳述<----必見!
等を見ると、
似非ジャーナリスト達が如何に倫理感に欠ける恥知らずな存在であ
るかこれほど良く判る例はない様に思われます。

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2009年1月28日水曜日

原発廃止から原子炉更新、新設へ道を開け!

原発の出力向上ルール作り 新設厳しい中で供給改善へ

経済産業省は27日、既存の原子力発電所の出力を高める改良工事を促すため、
安全確保に必要なルールづくりに着手した。今後のエネルギーの主軸は原子力
になるとみられているが、原発新設は立地地域の住民の理解を得るのが難しい
うえ、既存の原発も事故や不祥事で検査が長引いて稼働率が60%程度と低い
のが現状。既存原発の出力向上でエネルギー供給の安定化を図るとともに、火
力発電への依存を少なくして二酸化炭素(CO2)排出量削減を目指す。

この日開いた資源エネルギー調査会の小委員会で、ルール作りを検討する原子
力熱出力ワーキンググループの設置を決めた。電力会社が原発の出力向上工事
を行う場合、安全性や保守・運転管理にどのような影響があるかを検討し、今
年半ばに報告書をまとめる。経産省の原子力安全・保安院は、報告書に基づい
て電力会社の出力向上計画を審査することになる。

ワーキンググループでは具体例に沿った検討が必要だとの判断から、出力を5
%向上させる計画を打ち出している日本原子力発電の東海第二発電所(茨城県
東海村、出力 110万キロワット)を取り上げる。

また1970年代以降、米国で91基、欧州で37基が出力向上工事を行って
いることから、こうした事例も参考にする。

出力向上の具体策としては、原子炉で熱した水蒸気で回すタービンの改良など
が想定されている。

東海第二発電所は、2011年のにも出力向上工事を行う計画で、新しいルー
ルに基づき初めて工事を行うケースとなる。このほかにも出力向上の余地があ
る十数基でも工事が行われるとみられている。

(産経新聞 2009/01/28)

原油がピークのバレル140ドルをつけた頃、暖房用に電気ストーブ
やエアコンを使ったら灯油ストーブより安かったという経験をされ
た方が多いのではないでしょうか。
電気で暖房する事は、灯油ストーブで暖房するのに対して、数段の
加工が加わっていますから、値段が高くて当然なのです。
それが、同じか安い値段で提供されているのは、総発電量の20%以
上を占める原子力が、燃料代が原油価格に概ねスライドして値上が
りした石油、石炭、天然ガス火力に比べ、安値で安定しているから
に他なりません。

元々、原子力発電、水力発電、風力/太陽光発電は、火力発電に比
べライフサイクルコストに占める施設関係の費用が大きく、燃料費
の割合が小さいのが特徴となっています。今回は、原油価格が瞬く
間に下落したが、BRICs各国の発展が停止でもしない限り、原油価
格がこのまま安値安定すると考えるのは、お気楽に過ぎるだろうと
思われます。予想される将来の需要増加に対するには、原子力発電
による発電量をより高める必要があります。

ドイツは数年前に原子力発電所を全廃する方針を示しましたが、こ
れは、ロシアからの天然ガス輸入の見込みがたった事と、隣国のフ
ランスが原子力発電大国で、ここからの電力供給が見込まれた事に
よります。しかしながら、ドイツは原油価格の乱高下や、ロシアか
らの天然ガス供給の不安定さ等の理由から、原子力発電所再開に政
策を転換しつつあります。他のヨーロッパ諸国でも同様です。
米国でも、スリーマイルアイランド事故以来停止していた原子力発
電建設が再開されつつあります。

上の記事は、原子力発電所の新規建設が難しい中で、新しい技術を
適用する事で、発電効率を向上しようという試みについて書かれて
いますが、老朽化しつつある原子炉も多い中、原子炉の更新を積極
的に行う事で、安全度がより高い新型原子炉に更新し、安全性、効
率性を向上させると共に、発電量全体に占める原子力発電の割合を
更に高める事が、エネルギー供給の安定化策として必要なのではな
いかと考える次第です。


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2009年1月27日火曜日

海賊対策 現実無視の民主党に政権を任せられるのか?



※写真はReutersサイトからの転載

民主「海賊対策」視界不良 他の野党に配慮、方針打ち出せず

アフリカ・ソマリア沖の海賊対策として海上自衛隊の護衛艦を派遣する政府方
針への民主党のスタンスが定まらない。党内の意見集約ができていないことに
加え、政権交代時の連立相手と想定している社民党、国民新党が自衛艦派遣に
強く反対しているためだ。安全保障論議は、かねてから民主党のアキレス腱
(けん)と呼ばれてきたが、海賊対策で、また一つその危うさが露呈した形だ。
(原川貴郎)
自民、公明両党が自衛隊法の海上警備行動による自衛艦のソマリア沖派遣を正
式了承したことを受け、麻生太郎首相は近く、浜田靖一防衛相に派遣準備を指
示する。防衛相は月内に海自に準備指示を出し、3月には護衛艦が派遣される
見通しとなっている。
これに対し、野党では共産党に加え、社民、国民新の両党が「一義的には海上
保安庁で対応すべきだ」などと反発している。
23日には両党の幹事長が、民主党の鳩山由紀夫幹事長に「反対」で共同歩調
をとるよう求めた。鳩山氏は野党共闘を重視し、「できる限り一致していける
ように努力していきたい」と応じた。
だが、鳩山氏の言葉をそのまま実現するのは容易ではない。民主党は保守系か
らリベラル派まで幅広い意見を抱えており、公式見解をまとめようとしても意
見調整が難しいからだ。

皮肉なことに、自衛艦派遣問題の発火点となったのは、民主党議員の国会での
質問だった。
昨年10月17日の衆院テロ防止特別委員会で民主党の長島昭久氏は、「海上
保安庁の巡視艇がソマリア沖の海賊対策に当たるのは困難」との趣旨の答弁を
政府から引き出したうえで、「自衛隊艦艇のエスコート(護衛)は海賊対策に
かなり効果がある」と提案したのだ。
首相は「こういったご提案をいただけるのは、ものすごくいいことだ」と両手
を挙げて歓迎した。
ところが民主党内ではその後、海賊対策論議は遅々として進まず、政府・与党
の対応を遠くから眺めているだけの状況だ。
長島氏のアイデアも党内議論にはならず、鳩山氏は23日の記者会見で「なぜ
海上保安庁じゃだめなのか、なぜ自衛隊なのかというところが、判然としてい
ない」と長島質問を否定するかのような姿勢もみせた。
党内の幹部の一部は、海賊問題に関心すらない。
昨年中のソマリア沖の海賊事件は100件を超え、23人の乗組員が乗った日
本郵船の大型原油タンカー「高山」が小型不審船から発砲を受け被弾した事件
も含め日本関係船舶関連では3件の海賊事件があった。
ところが、民主党の平田健二参院幹事長は20日の記者会見でこんな驚くべき
発言をしてみせた。「海賊というのは漫画で見たことはあるが、イメージがわ
かない。ソマリア沖で、日本の船舶が海賊から襲撃を受けて被害を受けたとい
うことがあったのか」
同党の安全保障政策の不安な一面を、浮き彫りにしているといえそうだ。

(産経新聞 2009/01/25)

これはかなり酷い話であると思います。私のブログでも、ソマリア
沖の海賊対策については、何度かエントリーを書いていますし、昨
年来、日本船主の便宜置籍船も、三件攻撃を受けている事は、報道
されている通りです。国連も沿岸国のソマリアが無政府状態にある
事から、海賊の処罰する主体を沿岸国から、近隣国と警護部隊の派
遣国に拡大した上、海賊の根拠地であるソマリア沿岸部への実力行
使を許容するなどの海賊対策の特別決議を行い、各国に海賊対策へ
の参加を呼びかけている状況にあります。これにともなってEUをは
じめ中韓も艦艇を派遣し、また、派遣する予定です。

この様な状況を民主党が知らない訳がありません。平田健二参院幹
事長の発言は、民主党として対策を出さない事を正当化する為に現
実を無視しているものであり、国際的な常識を欠く対応であるとし
か言えません。この様な、自国商船団も被害を受けている国際的な
問題を無視して党利党略に走る民主党に果たして政権が担当できる
のか甚だ疑問を感じざるを得ないのです。

今回の海賊対策については、憲法第九条も、集団安全保障も全く関
係がありません。民主党は、自衛隊の海外派兵については、国連で
の決議を絶対条件にあげている程の国連中心主義ですが、何故か、
この海賊対策については国連決議には完全に目を瞑っている様子で
す。つまり、自衛隊は信用できないから海外派兵するのが嫌で嫌で
堪らないという、まるで子供の様な論理を振り回しているという訳
です。

民主党は、政権を担当できる責任ある野党を目標に発足した筈です
が、いつのまにか旧社会党の左巻き指向に染まってしまっていると
しか思えない行動を取る様になってしまっています。

この自衛隊嫌い、現実無視姿勢は、以前にも別の政党で見た事があ
ります。社会党が主導する村山内閣が阪神淡路大震災の時に、自衛
隊への災害出動指示を長時間放置した事で、被害者数を大幅に増加
させてしまった事を思い浮かばせるのです。この社会党の不作為の
原因になったのがまともな理由のない自衛隊嫌いであった事が思い
出されるのです。この件で、国民の信頼を完全に失った社会党は、
いまや泡沫政党でしかありませんが、社会党の反自衛隊指向を受け
継いだ、民主党が、同じ道を歩む事のないよう祈らずにはいられま
せん。


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2009年1月26日月曜日

H2A F-15 素晴らしく鮮明な衛星切り離し画像



※写真は、上は毎日.jpより転載
 写真下は、Starwarsからの抜粋画像

H2Aロケット:「いぶき」が切り離し時に小型衛星を撮影

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日、23日に打ち上げられた温室効
果ガス観測技術衛星「いぶき」が、H2Aロケット15号機から切り離される
際に撮影した画像を公開した。地球を背景に、ロケットの衛星搭載部が鮮明に
とらえられており、分離を待つ「まいど1号」など相乗りの小型衛星7基も写
っている。

画像は打ち上げから約16分後の23日午後1時10分ごろ、高度約670キ
ロで撮影された。ロケットは第1段の燃料タンクなどが切り離され、短い2段
目だけになっている。この後、7基の衛星は順次、分離された。

一方、いぶきは24日、打ち上げ初期の姿勢制御などを終えた。今後3カ月か
けて搭載機器の機能を確認した後、二酸化炭素やメタンの濃度分布の観測準備
に入る。【西川拓】

(毎日新聞 2009/01/25)
}}}

毎日.jpが掲載した写真はJAXAの発表の写真に小型衛星の説明をつ
けたもので、JAXA発表の写真そのものは更に高解像度となってい
ます。

今まで衛星分離の写真は、ロケット側から写したものばかりで、
画像としての魅力は今ひとつといった感がありましたが、今回は、
衛星側からの魅力的なアングルの写真で、且つ充分な解像度を持っ
ている事で、まるでSF映画のひとコマの様な写真に仕上がってい
ます。

下の写真はStar warsで出て来た脱出ポッドです。似たような感じ
に見えますが、実際には、上の写真は、第二段ロケットの上端部な
ので直径は4mもあります。脱出ポッドの直径はわかりませんが、
直径が人が立てる程度で、外殻の厚さを考えると2.5mから、3m
と考えるのが妥当と思います。そうなるとH2Aの方が一回り大き
いという事になります。

ISASやJAXAは、従来、NASAやESAに比べ、一般への魅力的な写真の
提供といった広報活動に余り力を入れてこなかったきらいがありま
す。ISASの的川教授がその任につかれて大分変わったとも思います
し、科学衛星では収集する情報内容自体が魅力的な写真にならない
ケースも多いと思います。それでも活動内容の紹介や写真の発表に
ついては、一般の理解を得る、より大きな努力が必要が必要ではな
いかと思います。今後、こういった魅力的な写真を積極的に公開す
る事で、宇宙に対する世論の後押しを得るのがJAXAにとっても望ま
しいと考える次第です。


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2009年1月23日金曜日

あたご衝突事故 軍隊への尊敬がない国の悲喜劇



※写真は毎日新聞サイトから転載

イージス艦「あたご」衝突事故 海自の組織的責任認める

海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、横浜地方
海難審判所(織戸孝治審判長)は22日、「あたご」の所属部隊の第3護衛隊
(京都府舞鶴市)に勧告を言い渡した。刑事裁判の判決に当たる「裁決」で、
海自の組織的責任を認めたことになる。

審判では、あたごの乗員らが内規を守らなかったり、十分な見張りを行ってい
なかったなどずさんな航行が明らかになった。その上で、理事官側は「あたご
が動静監視不十分で、清徳丸の針路を避けなかった」と指摘。指定海難関係人
とした前艦長、舩渡健1等海佐(53)ら4人とあたごの所属部隊の第3護衛
隊(京都府舞鶴市)の計5者に勧告を請求していた。

一方、海自側は「衝突の1分前に清徳丸が大きく右転し、事故が起きた」と主
張。事故後に再発防止策などを徹底したとして勧告は不要と述べた。

事故は平成20年2月19日午前4時5分ごろ、千葉県・野島崎沖で発生。清
徳丸に乗っていた吉清(きちせい)治夫さん=当時(58)=と長男の哲大
(てつひろ)さん=同(23)=が死亡認定された。第3管区海上保安本部
(横浜)は、監視と回避行動を怠ったとして、業務上過失致死容疑などで衝突
時と衝突前の当直責任者だった3佐2人を書類送検した。

(産経新聞 2009/01/22)

この衝突は、起きるべくして起きた事故であると私は考えます。
勿論、「あたご」側にも海難審判で指摘された見張り体制の問題が
あるのも事実です。しかしながら、最大の問題は、漁船側に自衛艦
を避けるつもりが全くなかったという事です。
海軍は、自国船舶を守る事がその存在の最大の目的の一つですが、
守られるべき船舶の側が守っている船に対する尊敬がなければ、守
られる資格がないと言えるかも知れません。

今回審判で認定された航跡図では、時速約20kmでゆっくりと直進す
る「あたご」に対して「清徳丸」が、その二倍のスピードで航路前
方を横切ろうとした事が判っています。確かに海上衝突予防法では、
相手を右に見る船が衝突を避ける事になっています。
しかしながら、「あたご」と「清徳丸」では、大きさが全く違いま
す。「あたご」が、一万トン級であるのに対し、「清徳丸」は数ト
ンしかありません。当然の事ながら、速度も運動性も全く異なりま
す。運動性の良い小型船の方が、障害物を避け易いのは明らかです。
しかも「清徳丸」の僚船が「あたご」に対してジグザグに航行した
事も判っており、衝突を避けようとすれば、進路を推定し易くする
為に、ゆっくりと直進するのが実務上は、適切という意見もあるの
です。

更に、「清徳丸」と衝突したのが、例えば、「あたご」と同程度の
大きさの中型の貨物船であった場合、あるいは、相手が海上保安庁
の巡視船であった場合、「清徳丸」は、衝突コースを漫然と維持し
たのか、また、海難審判所が今回と同じ判断をしたのかについては
疑問が残ります。

相手が護衛艦であったからこそ、「清徳丸」は直進したのではない
かと思えるのです。もし、「清徳丸」に護衛艦に対する尊敬や畏れ
の念があれば、「清徳丸」は、「あたご」に進路を譲っているに違
いありません。審判所の意見の中でも指摘されている様に、「清徳
丸」は、衝突を回避する協力を行っていませんでした。
その点に、護衛艦に対する甘えと傲慢さが見えるとすら言えます。

今回の事故は、まさに戦後日教組教育によって、自衛隊を敵視する
思想を植え付けられた漁民によって引き起こされた自業自得の事故
であると言える様に、私には思われてなりません。


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2009年1月22日木曜日

候補者から為政者へ変身したオバマ氏

※Reutersサイトから転載

封じた「CHANGE」 現実見据えた再生へ決意

米国の第44代大統領に就任したバラク・オバマ氏(47)は20日(日本時
間21日未明)の就任演説で、選挙戦で聴衆を高揚させた「変革(チェンジ)」
などの派手なキャッチフレーズを避け、国民の結束によって「米国の再生に取
り掛かる」と、重々しく呼びかけた。“肩透かし”に等しい地味な演説は、景
気後退など厳しい環境下で船出した政権の周辺から、虚飾や過剰な期待を排し
ておく政治判断によるようだ。

就任宣誓に続く20分足らずの演説で、選挙期間中にオバマ氏の代名詞ともな
った「変革」「希望」の使用頻度は、無関係の文脈まで含めても、それぞれ2
度だけにとどまった。

代わってオバマ氏が描いた米国の現状は、出口の見えないテロ組織との戦いや、
「一部の者の強欲と無責任」と厳しい決断の先送りが招いた「経済の激しい弱
体化」など、政権交代後もにわかに解決は難しい「本物の試練」だった。

オバマ政権の移行チーム関係者は、就任式典が近づいた先週末のあたりから、
演説が「責任と透明性」(ラム・エマニュエル新大統領首席補佐官、49歳)
を強調する地味で固い内容となることをメディアに根回ししてきた。オバマ氏
が敬愛するエイブラハム・リンカーン(1809~1865年)やジョン・F・
ケネディ(1917~1963年)ら、歴代大統領の名演説を「敢えて意識し
ない」とも伝えられた。

■「責任分担」明確に示す
就任演説は、大半の部分をオバマ氏自身がまず執筆し、その後、大統領選をと
もに戦い抜いた主任スピーチライターのジョン・ファブロー氏(27)と推敲
を重ねたとされる。だとすれば、就任演説への“期待値”を予め引き下げる広
報対応は、オバマ氏自身が「演説の名手」という評価に傷をつけてでも、厳し
い情勢認識や負担の大きな政策の方針をはっきり示し、国民に責任分担を求め
る必要があると決意した結果と読める。

オバマ氏が訴えようとしたのは、「家も職も失い、ビジネスは閉ざされた」と
いう灰色の現状から、国民が結束して「新しい責任の時代」に突き進むことで、
状況の好転を図るためのいわば道筋だ。

だが、政策に関する言及を見渡すと、「公的資金を管理する者は賢い使い方を
すべきだ」「監視システムがなければ、市場はコントロールを失う」など、オ
バマ政権のめざす政策は、国民や業界の間に痛みや不満が伴うものも多い。

安全保障についても、国際協調路線への転換を打ち出すのと同時に、現実のテ
ロの脅威には米国の武力で対処するという現実路線が盛り込まれた。就任演説
はオバマ氏の独自色ばかりに染めることのできない政権指導者としての苦衷が
色濃くにじんだようだ。(ワシントン 山本秀也)

(産経新聞 2009/01/22)

表題の割には、軽めの話題です。一昨日の夜、オバマ氏の就任演説
をライブで聴かれた方は恐らく少なかったのではないでしょうか。
かくいう私も、昨日勤めを終わってから、yahooの演説テキストを
見ながらABC提供動画で初めてオバマ氏の演説を聞いた次第です。
新聞各社から翻訳は出ていますが、英語でオバマ氏の魅力的な低音
の演説を聞いていると意外に、対位法を使ったり韻を踏んだりと言
った演出が多い事に気がついたりしました。

ただ、就任演説で一番気になったのは、オバマ氏が実に淡々と19分
のスピーチを終えた事です。National Mallに集まった200万人が期
待したフレーズ「Yes We Can !」という言葉が無いのは勿論の事、
フレーズの区切りでも、聴衆の歓声が沸きあがっている途中で、
その腰を折るような感じで、次のフレーズを始めてしまうと言った
具合です。

National Mallへの入場を許された人達は、大統領選挙で、オバマ
当選に貢献した民主党員が殆どです。寒風の中、大統領就任式を何
時間も待ち続けたのは、オバマ新大統領の演説を聞きながら、
「Yes We Can!」を連呼する事で、勝利に酔う事であったに違いあり
ません。オバマ氏も、それは良く承知していたに違いないのです。
そして、その期待に応える事は、全く容易な事であった筈です。
スピーチライターに、そう頼むだけで良かったのですし、民主党大
会での大統領候補受諾演説など、そういうスピーチは、今までも何
度も行っています。また、そういう機会に熱狂的な聴衆の反応を引
き出して来ているのがオバマ氏です。今回の演説でも、聴衆の熱狂
を引き出し、国民の一体感を形成するというオプションもあった筈
です。

今回、その様な草の根民主党員の期待を振り切って実に淡々とした
就任演説を行った事は、まさにオバマ氏が意図してその様なものに
したと明確に指摘できます。オバマ氏は大統領就任式にあがったの
でも、スピーチライターが悪かったのでもなく、寧ろ、候補者時代
の周囲の期待を切り捨てる様な演出をあえて行う事で、明白に為政
者としての役割に転換する事を意図したのではないかと思えるのです。

就任演説の内容そのものの中にも、それを思わせるフレーズがあり
ます。最初に、現実の暗さを指摘し、演説の後半で国民の努力でそ
れを変えて行こう、努力を継続したと後世の人から言われる様にし
ようと促しています。まさに、就任時に華やかな雰囲気で出発する
のではなく、寧ろ低く暗く出発する事で、目的達成への努力を促し
政権を通じた盛り上がりに繋げようという意図があったのかも知れ
ません。

その点で、為政者としてのオバマ氏は、上院議員一期のみという、
その政治経験の乏しさにも係わらず、意外にしたたかな人物である
事を予想させたと言えるのかも知れません。


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2009年1月21日水曜日

オバマ政権 期待度は高いが、支持急落の可能性も高い?


※宣誓するオバマ新大統領。時事通信サイトより転載

オバマ新大統領が就任演説、国民に米国再生への協力促す

米民主党のバラク・オバマ前上院議員(47)は20日正午(日本時間21日午前2時)
過ぎ、ワシントンの連邦議会議事堂で宣誓後、就任演説し、米国の現状につい
て危機のまっただ中にあるがこれを克服し、将来も繁栄した強い国家であり続
けるとの決意を表明した。

新大統領はこの中で、米国は戦時下にあり、経済は弱体化し、短期間で解決出
来る問題ではないと国民の理解を求めた。その上でこれらの問題は必ず解決出
来るとして米国民に奮起を促し、米国再生へ共に取り組むよう呼び掛けた。

経済問題では、景気刺激のための大胆かつ迅速な行動が必要と強調。政府の活
動については、機能するかどうかが重要な問題であるとの認識を示した。

また、対テロ戦争の主戦場と位置付けるアフガニスタンの平和構築に全力を注
ぐと主張。多宗教を尊重し、相互利益や敬意に基づきイスラム社会との新たな
関係構築への希望を述べた。友人やかつての敵と協力しながら「核の脅威」の
ない国際社会を目指すとの考えも強調した。

イラク問題では、駐留米軍の撤退は責任ある形で進めるとも言明。地球温暖化
の進行を押しとどめる決意も述べた。

米国が直面する試練や打ち出す対応策は新しいものかも知れないとしながらも、
成功を生み出す勤勉、正直、勇気、忍耐、好奇心、忠誠や愛国心などの美徳は
昔ながらのものとし、真実でもあると強調。米国の歴史を通して進歩を生む源
の力にもなったとして、現在の試練に立ち向かうにはこの力が今こそ必要であ
ると国民に呼び掛けた。

(CNN.co.jp 2009/01/21)

オバマ氏の支持率は8割、就任時ではカーター氏以降最高

【ワシントン=本間圭一】オバマ次期米大統領の支持率が約8割に上ることが、
18日発表の各種世論調査の結果で分かった。就任時の支持率では、カーター
元大統領以降、最高となった。

18日付ワシントン・ポスト紙によると、カーター氏以降の大統領に関し、1
期目就任時の好感度を尋ねた調査で、オバマ氏は首位の79%。ブッシュ大統
領が62%、最下位はレーガン元大統領の58%。ニューヨーク・タイムズ紙
が18日発表した調査では、カーター氏以降の大統領の1期目就任時に「今後
4年間を楽観視する」と答えた人は、オバマ氏が首位で79%、ブッシュ大統
領が64%で最下位だった。
(読売新聞 2009/01/19)

世論調査では、オバマ氏は非常に高い支持率を得ていますが、この
支持率の高さは、期待度の高さとも言い換えられますので諸刃の剣
として働きます。つまり、オバマ政権の政策について、高率の支持
が得られる半面、期待を充足しない状況が続くと支持率が急低下す
る可能性が高いという訳です。政権発足時の支持率が非常に高かっ
たカーター政権は、イラン人質救出の失敗や人権外交で、支持率が
急低下した事が想起されます。

特にオバマ氏は、当初は、民主党でも、最もリベラルな上院議員と
いう評価を得ていました。ここでいう「最もリベラル」という言葉
は、必ずしも良い意味ではありません。最も左派的な議員という評
価である訳で、日本で言えば、社民党や共産党に相当する投票行動
を議会でとっていたと言う事です。

大統領選挙を勝ち上がっている時には、こういう過去の投票行動は
問題にされませんし、逆に、イラク侵攻に反対した点が評価された
事もありました。また、オバマ氏自身が、そのラディカルな指向を
大統領選挙中には封印したいた事、マスコミもあえてそういう傾向
を取り上げなかった事もありますが、オバマ氏が大統領としてそう
いうカラーを出してきた時には、多くの中間層やオバマ・リパブリ
カンがそっぽを向く可能性はかなり高いのではないかと考えます。

どの評論家も指摘していますが、国民に不評な政策は、政権発足後
100日以内のハニームーン期間に、済ませて置くに越した事はあ
りません。つまり、中高所得層に対する増税です。これには、選挙
期間中にも提起されていましたので、共和党支持層にも一定の支持
があります。しかし、経済が危機的状況の中で、増税をするのは、
大恐慌中に財政均衡を図って失敗したフーバー大統領の二の舞にな
りかねません。また、オバマ政権の経済チームもそういった事はす
る筈もありません。という事は、最初の100日以降に増税を行わざ
るを得ず、それが政権に対する不安要因になる事が考えられます。

更に、イラクやアフガニスタンからの撤退についても、国民の多く
が望んでいる政策ですが、責任を持った撤退を行おうとしても、イ
ラクのマリキ政権もアフガニスタンのカルザイ政権も政権基盤は磐
石とはとても言えない状況であり、下手をすればオバマの在任期間
中にイスラム原理派による政権転覆も起こる可能性も捨て切れませ
ん。そうなった場合にはオバマ政権への批判は高まらざるを得ませ
ん。

また、オバマ政権では、財政赤字対策や新政策財源として、ブッシ
ュ時代に膨張した、内国安全保障予算を削減する事が課題になると
思われます。また、ブッシュ時代に「ならずもの国家」に指定され
ていたイラン、シリア、北朝鮮とも宥和的にアプローチすると思わ
れますが、それを実施した後で、米国内でテロが発生した場合には、
オバマ政権は、窮地に立つ可能性すら考えられるのです。

これらを勘案すれば、オバマ政権は、その期待度の高さと比べ、政
策の自由度はそう高い訳ではなく、特に、オバマ氏がそのラディカ
ル指向を表に出した場合は、政策が裏目に出る可能性が寧ろ高いの
ではないかと懸念する次第です。

唯一、救いのあるのは、オバマ氏が自らをエイブラハム・リンカー
ンになぞらえている事です。リンカーンは自省する事の多かった人
物としても知られています。オバマ氏が、リンカーンのひそみに倣
って、自省を繰り返した上で、後世の批判に耐える政策展開を行う
事を切に希望したいと思います。



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2009年1月20日火曜日

パンダ・ハガーがいても、日本は対米協調による国益確保を目指すのみ


※代表的パンダ・ハガー Wikipediaより転載

<オバマ新政権>多すぎる親中派「パンダ・ハガー」に日本がヤキモキ―米紙

2009年1月16日、米ブルームバーグニュースは「オバマ政権に多すぎる『パン
ダ・ハガー』が、日本の日米関係に対する危惧を増長させている」と題した記
事で、米次期政権の中国重視に不安を募らせる日本の姿を紹介した。19日付で
環球時報が伝えた。 

「パンダ・ハガー」(=パンダにハグする人の意)とは親中派の蔑称。記事は、
「首相がころころ変わる日本」の麻生太郎首相が、オバマ次期大統領に対する
当選祝いの電話で「米国との関係強化を外交政策の最重要項目」と強調するな
ど、米国の日本離れを食い止めることに心を砕く日本の姿を紹介した。また、
日本の新聞社が次期国務長官に任命されたヒラリー・クリントン氏を筆頭に
「オバマ政権には『パンダ・ハガー』が多い」と危機感をもって報じたことも
伝えた。 

記事はまた、「日本の必死なアピール」として法律を改正してまでソマリア沖
の海賊対策に艦隊を送ろうとしていると指摘。小泉元首相による靖国神社参拝
で冷え切った中国や韓国との関係改善を図ろうと、安部元首相が最初の訪問国
に中国、次に韓国を選んだことも取り上げた。 

だが、かつて国家安全保障会議アジア担当上級部長と大統領特別補佐官を務め
たケネス・リバソール氏は、「オバマ次期大統領の対日政策は気候温暖化や北
朝鮮の核問題など『実務』が中心になる」と指摘。記事は、河野太郎・外務委
員長も「日米の親密な関係が薄れてきているのは事実」と認めた上で米国の中
国重視姿勢に「多くの議員が懸念を示している」と語ったと伝えた。

(Record China 2009/01/19)

バブルの時の日本がそうだったように、中国は今、自国のポジショ
ンに過大な自信を抱いているようです。
こういった米国通信社の配信記事を細かく伝える事によって、国民
にナショナリズム的高揚感を与えているとも言えます。勿論、政権
に対しては、支持増加要素になると言えるでしょう。
ところで、パンダ・ハガーがオバマ政権内に増えると、それが日本
にとっては、即悪なのでしょうか。私は必ずしもそうではないと考
えます。

米国にとって日本は経済面では競争相手であっても、安全保障面で
は、長年に亘る同盟国です。一方の中国は、安全保障面でライバル
であると同時に経済面でも、台頭してきたライバル国という事にな
ります。しかも、米国の議会制民主主義や人権規範とは、潜在的に
相容れない一党独裁体制、人権抑圧体制を引き続き堅持しています。

勿論、一党独裁体制、人権抑圧体制の国が米国と協調できない訳で
はありません。シンガポールの様に、中国とは実質的には異ならな
い国とも米国は協調していますし、米国は第二次大戦時には、ソ連
や中国と言った独裁国家を同盟国とし、それらより民主主義の度合
いの進んだ日本を敵とした事もある訳です。

しかしながら、米国にとって中国と日本、どちらが将来の米国にと
って脅威であるかを現時点で問えば、それは中国である事に殆どの
米国の政治家が同意するだろうと思われます。

米国の政治家がかってのソ連に対するのと同様に潜在敵国である中
国を重視する事はあっても、現時点でのナチュラル・アライは、日
本ある事は明白であり、それは、パンダ・ハガーであっても同様の
認識であると思われるのです。但し、そういう認識は、長年に亘る
行為の蓄積の所以であって、自然に放置してそうなる訳でない事は
言うまでもありません。米国で反日宣伝を行おうとする者にとって
日米の過去は、宣伝材料に事欠くものでない事を充分に認識してお
く必要があります。

マスコミの論調とは大いに異なりますが、私は米国の政治的経済的
に唯一の超大国としての地位は、予見できる将来に置いても、変わ
る事はなく、日本にとって協調する甲斐のある民主主義法治国家で
あると考えます。勿論、米国の100%が善である訳ではありませんが
同様のスコープで中国やロシアがヘゲモニーを取ったケースを比較
しても、米国が悪である、その度合いは、中ロに比べましであると
言えると思います。

日本としては、中国が、現体制が維持されるよりも、和平演変の結
果、人権を重視する民主主義法治国家へ体制が変化してくれる事が
望ましい訳であり、米国がその様な戦略性を持って中国の変化を促
すのであれば、それに越した事はないと言えます。私は、その結果
として、日本が米国のアジアにおける第二の同盟国になっても、そ
れはそれで歓迎できる事であるいと思います。

日本として絶対に避けるべきは、日本が米国と利害調整に失敗し、
あるいは、中国や第三国の反日キャンペーンに敗れる形で米国を敵
に回す事であると思います。その意味で、クリントン政権における
ジャパン・バッシャーの発生は、反面教師として、再び、その様な
議論が出て来ない様、注視する必要があると言えます。
昭和天皇は、英米を敵に回した松岡洋右を最後まで許す事がなかっ
たと言いますが、我々が最も警戒すべきは、左右何れの側からであ
っても対米協調を破壊する意図を持ったアジア主義者であると考え
る次第です。その意味で、福沢諭吉の脱亜論は今日的価値を引き続
き持っていると考えます。

それにしても、日本で代表的なパンダ・ハガーである河野太郎が「
日米の親密な関係が薄れてきているのは事実」と発言しているのは
問題であると思います。


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2009年1月19日月曜日

ガス供給再開するも敗者はロシア


※写真は、ロイターサイトからの転載

「19日にもガス供給」EUは不信感 露・ウクライナ

【モスクワ=佐藤貴生】ロシアがウクライナと欧州への天然ガス供給を停止し
た問題で、ウクライナのティモシェンコ首相は18日未明、「19日にも欧州
向けのガス供給が再開される」との見通しを語った。インタファクス通信が伝
えた。モスクワで首相と会談したプーチン露首相も同様の趣旨を述べた。ただ、
パイプラインの再稼働に必要なガスの費用をだれが支出するかなどは明らかで
はなく、欧州連合(EU)は両国の動きを慎重に見守る姿勢を崩していない。

プーチン首相は会談後、ウクライナ側がガスの通過料を昨年同様に抑えること
を条件に、「今年のウクライナ向けガス価格を、欧州向けのマイナス20%と
する」ことで合意したと述べた。ティモシェンコ首相は、ロシアとウクライナ
が19日、新たな合意文書に署名した後、供給が再開されるとしている。

ガスの欧州向け価格は1000立方メートル当たり450ドル前後とされるが、
両国が合意した今年の具体的な価格は明かされていない。また、ウクライナが
ロシアに対して6億5000万ドルに上るガス料金を未払いのままにしている
問題もあり、両国の対立がすべて解消されるかは不透明だ。

モスクワでは17日、EU関係者を招いて問題を協議する会議が開かれた。メ
ドべージェフ大統領は欧州の主要ガス企業でコンソーシアムを結成し、ウクラ
イナ国内のパイプライン維持に必要なガスを購入することなどを提案した。

しかし、EUは議長国チェコの閣僚らを会議に派遣するにとどめ、ロシア側と
距離を置く姿勢を示した。ロシアとウクライナによって何度か調停案を覆され
てきたEUの不信感はかなり根深いとみられる。EUは最近、早急に事態が打
開されない場合、「両国との関係を見直す」との厳しい姿勢を打ち出している。

(産経新聞 2009/01/19)

今回のロシアのヨーロッパに対するガス供給停止問題に絡んで、ロ
シアとウクライナの確執であるとか、料金の不払いであるという要
素を抜きにしても、ロシアは、そういった問題と無関係のヨーロッ
パ諸国に対し、供給責任を果たさなかったという事実は残ります。

元々、今回の欧州へのガス供給停止は、ウクライナのガス抜き取り
に対抗するというロシア流の大義名分がありましたが、その内容た
るや、ウクライナが抜き取ったとされた量を通常の供給量から削減
するという乱暴なものであり、ウクライナが、そこから、自国の必
要量を取得すれば、ヨーロッパ諸国への供給はますます削減される
しかない点で、ヨーロッパ諸国に共同でウクライナに外交圧力をか
けないとガス供給を停止するというロシアからの恫喝以外の何者で
もありませんでした。そして、その結果として二週間以上に亘り実
際にガス供給が停止してしまった訳です。

この様に、露骨にウクライナへの圧力をかけるという目的でロシア
は天然ガス供給を政治的武器として使用しました。これは2006
年に続いて二回目の事です。一回だけなら誤射かもしれませんが、
二回目ともなれば、どの国であっても、ロシアにガス依存度を深め
るとそれを梃子に圧力がある事を前提に外交を考えないといけません。
つまり、今後共、ロシアのガス供給に依存する事を選ぶ国は、基本
的にロシアの地域ヘゲモニーに従う事を積極的に選択した国と言う
事になります。

逆に言えば、ロシアの政治的圧力を嫌う国は、ロシアの天然ガスに
対する依存度を低下させる必要が出てきます。具体的には、天然ガ
ス供給国を多角化する事です。それによって、ロシアからの供給を
備蓄目的用にしてしまえば、供給ストップとなっても通常使用分は
影響を受けない事になります。また、エネルギー源としての天然ガ
スへの依存を低下させる必要も出てきます。この為には、一部の国
で既に始まった様に停止原発の再稼動や原発の新設まどが対策とし
て考えられます。
その一方で、ロシアが進めようとしているウクライナを経由しない
ノースストリームやサウスストリームと呼ばれるガスパイプライン
については、ロシアへの依存度を下げたいと思っている国は、現状
以上に建設に消極的になる筈です。

ロシアは、昨年12月に「ガス輸出国フォーラム」(GECF)を
開きOPECにならったガス供給に関する価格生産量調整用の国際
機関を作ろうとしましたが、今の処、国際金融危機もあって、創設
への動きは鈍いと言えます。また、天然ガスを高価格にすると、海
中に眠っているメタンハイドレードの開発を加速させる事にもなっ
てきます。

これらを勘案すると、今回のガス供給を梃子にしたプーチン外交は、
発動するタイミングとしては、必ずしも良いものではなく、逆に、
ロシアが更なるガス戦略を発動する事を前提とした欧州諸国の対抗
処置を招き、結果的にロシアの戦略オプションの幅を狭め、ガス輸
出量を低下させる悪手であると言える様に思います。


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