※CGはエアバスミリタリー社サイトから転載
日本でも、ジェット輸送機C-Xの開発に大幅な遅延が生じ、未だ初飛行の日
程が定まらず、量産機取得予算にも2年の遅延が生じていますが、略同規模の
機体を国際共同開発しているプロジェクトであるA400Mの開発にも、大き
な遅延を伴う深刻な問題が生じている様です。
2/4付けのビジネスウィークの記事を抄訳します。
エアバスA400Mは救われるのか?
軍用輸送機A400Mが話題になる時、エアバス社のCEOであるトーマス・エ
ンダーズの反応は、あまり熱が入った様には見えません。
「A400Mを生産したいとは思っているが、幾らかかっても良い訳じゃない」
と彼は語っています。
このコメントはエアバス社の方針転換を示しています。エアバス社は今まで、
プロジェクトが危険に晒されているという噂を一貫して否定してきました。
しかし、巨大な機体は、巨大な問題を引き起こし、開発費用の増大と神経をす
り減らす絶え間ない遅延になやまされてきました。
エアバス社の現在のスタンスは、それでも、プロジェクトが成功する事を必要
としているというものです。
A400Mの開発に熱意を失いつつあるのは、エアバス社だけではありません。
ドイツ国防省の忍耐も限度に近づきつつあります。国防省は記録に残るコメン
トをする事は拒否しています。しかし、ある空軍の高官は、「エアバス社の問
題への対応には、国防省内でも殆ど、熱意を呼び起こす事はなかった」と述べ
ています。
この高官が言及した「問題」は、A380ジャンボ旅客機の開発での大幅遅延
の発生の記憶を呼び起こすものですが現在進行中のものです。
A380の問題とは、機内配線や他の問題により広範囲な遅延が発生したもの
ですが、それによりエアバス社は何億ユーロもの損害を蒙りました。これと同
じ運命がA400Mにも生じている様です。機体のエンジン制御を行うソフト
ウェアの幾つものトラブルの他、進行方向制御のメカニズムも挑戦的である事
が判りました。また、プロペラエンジンの騒音も予想以上でした。そして、新
しい機体開発につきものであり、エンダーズCEOが認めている様に機体が重量
過大である事が判明しました。南ドイツ新聞によれば、機体はこれから12ト
ンもの重量軽減を行う必要があります。この結果、数十億ユーロを要する遅延
が発生しています。
当初、一号機は今年引き渡される予定でしたが、現時点で、2014年の引渡しが
可能かドイツ空軍内では懸念されています。
ファイナンシャルタイムズ ドイツ版で、クラウス・ペーター・スティーグリ
ッツ中将は、それは「破滅的な開発だ」と述べています。空軍内では、代替策
が議論されています。「我々はエアバス社と結婚した訳じゃない」とドイツ空
軍の高官は述べています。空軍は一~二年の遅延であれば、現在のC-160
トランザール輸送機をもたせる事はできるものの、「ある時点で、もし、遅延
が更に続くようであれば、何をすべきか決定する必要があるだろう」と語って
います。
ドイツ空軍が発注を取り止めれば、プロジェクトの継続は困難です。ドイツは
A400Mの最大の顧客で、発注全体190機の内、60機を発注しています。
エアバス社も、オプションについて検討しています。「現在進められている方
法だけでは、継続は覚束ない。それだけだ。」とエンダーズは述べています。
彼は、OCCAR(ドイツ、フランス、英国、イタリア、ベルギー、スペインをメ
ンバーとする防衛コンソーシアム)で再交渉したいと考えています。
この再交渉の内容は技術的な仕様の詳細な再検討による問題の解消です。もう
一つの議論の焦点は、財務面での交渉です。計画開始時に決められた固定価格
は、数度の開発遅延発生により、恐ろしく高価な負担をエアバス社に課すもの
になっています。「この様なプロジェクトでは、隠れたリスクな必ずあるもの
だ」とエンダーズは言います。巨額の開発コストの増大に加え、引渡しの遅延
による高額の損害金の支払いも、また大きな問題です。EADS社は既に17億ユー
ロを引当てています。A400Mは昨年夏には初飛行を行っている筈でした。
エンダーズは、いまだに初飛行が行われていない事について全責任を引き受け
るつもりはありません。「エンジンがあれば、昨年10月には初飛行が出来た筈
だ」と彼は言います。エンジンは、フランスのSNECMA、英国のロールス・ロイ
ス、スペインのITP、ドイツのMTUアエロエンジンからなるコンソーシアムで開
発されてきました。「エンジンの選択はエアバス社の選択ではなかった」とエ
ンダーズは、この急造チームの事を語ります。プロジェクトをヨーロッパ共同
で行う事は政治的な決定でした。エンダーズは、技術的な問題は克服できると
今も考えています。彼によれば、似たような軍用機プロジェクトと比較した場
合、A400Mプロジェクトの現状は、かけ離れたものではなく、一度完成す
れば、他の軍用輸送機とは比べものにならない「素晴らしい機体」になると彼
は語ります。
A400Mの規模の開発では、問題が発生するのは通常の事だと言います。ド
イツ国防省も、軍用輸送機の開発が、紙の上の計画ほど簡単なものではない事
に気がついています。空軍の高官は、他の輸送機製造メーカーが米国やロシア
にあるといいつつも、「それらの会社も発注が入ってから、一から開発を始め
ないといけない」と語っています。
Airbus A400Mの開発スケジュール
2003年5月 国際共同開発合意
(英,独,仏,伊,西,土,白,ルクセンブルグ8ケ国 生産数212機)
後、伊が脱退。南ア、マレーシアが購入決定(生産数 192機に変更)
2003年5月 開発着手
2004年1月 エンジン開発着手
2005年1月 強度試験機製作開始
2005年10月 エンジン試験運転開始
2007年4月 静強度試験機用パーツが揃い、組立開始
2007年6月 飛行試験用エンジン引渡し (当初予定2006年11月)
2007年8月 飛行試験機生産開始 (当初予定2007年第一四半期)
2008年6月 エンジン飛行試験開始 (当初予定2007年10月-12月)
2008年6月 ロールアウト (当初予定2007年第二四半期)
(当初予定2008年夏 初飛行 リスケ後スケジュールの公表なし)
2009年1月 12tの重量超過発覚 <--現在ここ
2010年第一四半期 引渡開始(計画修正後 現在では2014年引渡しを危ぶむ声も)
※A400Mについて触れた過去のエントリーは以下の通りです。
エアバスA400Mロールアウト 初飛行は静かに三ヶ月延期(2008/7/02)
重大な遅延に直面している?A400Mプロジェクト(2007/8/21)
C-X、P-X遂にロールアウト!(2007/7/05)
P/C-X 零号機 6月中旬にロールアウト(2007/05/17)
意外に頑張っている日本の航空産業-CXプロジェクト(2006/10/29)
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