※写真は「海口」。http://icc.skku.ac.kr/~yeoupx/からの転載
ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊
【香港4日時事】4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、
海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されてい
ることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があっ
た。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。
同紙は潜水艦の国籍には言及していないが、インド海軍が保有するロシア製の
キロ級潜水艦だったことを示唆している。
(時事通信 2009/02/04)
ソマリアの海賊対策で派遣されていても、平常の仕事はインド海軍、
中国海軍共にちゃんとやっている事を窺わせる事件です。
インドと中国は、国境紛争で戦火を交えた事もある関係であり、ま
たインドは、中国と対立していたソ連と親しい関係であった事もあ
り中国を仮想敵国の一つとして位置づけています。インドの核武装
もパキスタン向けというより中国向けの軍備であると言えます。
その様な関係ですから、今回の事件も、インド海軍にしても、中国
海軍にしても通常の緊張状態を維持していただけと言えるのかも知
れません。仮想敵国であるか否かに関わらず、他国軍艦の音紋を採
取する事は、海軍が平時から行うべき情報収集業務です。指紋で犯
罪者を識別する様に、海軍は、この音紋で艦種、艦名を識別します。
インド海軍は、その音紋採取を行っていたのではないかと思われます。
今回、中国海軍は、海賊対策にミサイル駆逐艦「海口」と「武漢」、
及び補給艦「微山湖」の三隻を派遣しています。「海口」は中華イ
ージスと呼ばれる052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)で、中国海
軍の虎の子であり、「武漢」も052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
の新鋭艦です。しかも、低速の補給艦を随伴しているので艦隊速度
が遅かった事から、インド海軍としては、音紋採取の格好の機会と
判断したのではないかと想像します。
一方の、インド海軍の潜水艦ですが、報道通りであれば、ロシア製
のキロ級潜水艦です。キロ級は通常動力潜水艦であり、本来であれ
ば、チョークポイントでの待ち伏せを得意としています。通常動力
潜水艦は原子力潜水艦程、速力も航続力も出ない替わりに、静粛性
が高い事によるものです。キロ級潜水艦の最高速力は20ktですが、
通常の活動では、この様なスピードを出す事はありません。静粛性
に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピードを出せば、
当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は艦隊速度が
遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断したのではな
いかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉えられたと
言う訳です。
通常型潜水艦が、無音状態に移行すると、水上艦からは探知するの
が殆ど不可能と言われ、演習時には、潜水艦がわざわざ音を出して
探知し易くしないと演習にならないという噂がある位ですから、今
回は、インド海軍の潜水艦は余程盛大に音を出していたのだろうと
思われますが、それにしても、それを逃さずにキャッチした中国海
軍も、ちゃんと緊張状態と維持して仕事をしていたと評価できると
思います。
海上自衛隊のソマリア派遣艦艇も、実戦であるという意識を持って
中印海軍同様の緊張感を持って任務に当たって欲しいと思います。
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