2010年10月14日木曜日

祝 新造護衛艦「あきづき」進水!

※写真は、産経新聞Webサイトより転載

海自新型護衛艦あきづき進水 三菱重工長崎造船所

三菱重工長崎造船所(長崎市)で建造されている海上自衛隊の5千トン型護衛
艦の命名進水式が13日、現地であり、あきづきと命名された。電子機器など
を取り付ける艤装(ぎそう)作業を経て、2012年3月に就役する。

防衛省海上幕僚監部によると、あきづきは対水上、対空、対潜水艦能力を高め
た新型護衛艦の1番艦。現時点で、あきづきを含め4隻の整備計画が進んでい
て、3隻目まで長崎造船所で建造される。

レーダーに捕捉されにくいステルス性能に配慮した艦体が特徴で、最新鋭レー
ダーシステムの搭載で防空能力も向上させたという。

全長約151メートル、幅約18メートル。推進系統にはガスタービン4基を
備え、最大速力30ノット。建造費は約750億円。

式典には防衛省代表として海自トップの杉本正彦海上幕僚長、三菱重工の大宮
英明社長をはじめ関係者3千人が出席した。

あきづきは、旧日本海軍の防空駆逐艦の1番艦(秋月)や約50年前に海自護
衛艦隊の旗艦(あきづき)だった艦船に採用された伝統ある名称という。

(長崎新聞 2010/10/14)


従来、19DDと呼ばれていた新型護衛艦が、「あきづき」と命名
され進水しました。

記事にもある通り、「あきづき」という名前の自衛艦は、二代目で
先代の「あきづき」は、米国の域外調達艦として米国の予算で取得
され、僚艦「てるづき」と共に、当時は、2000トンを越える初めて
の大型汎用護衛艦でもあった事から、護衛艦隊旗艦、護衛隊群旗艦
として活躍しました。

「あきづき」の名前は、旧日本海軍でも、駆逐艦の名称として使わ
れており、太平洋戦争中に日本海軍初の対空戦闘用護衛艦として完
成した秋月型駆逐艦のネームシップとしても有名です。

ちなみに秋月型駆逐艦とあきづき型護衛艦は、一番艦の艦名が「あ
きづき」、二番艦の艦名が「てるづき」である事が共通しており、
新型護衛艦「あきづき」型も二番艦が「てるづき」となる事が強く
予想されるところです。

さて、新型護衛艦「あきづき」型の特長ですが、FCS-3A射撃指揮シ
ステムを中核として、僚艦防空(Local Area Defence)が可能な
対空戦闘システムを構築している点につきると言えます。

実際、表面上のスペックは、先代の護衛艦である「たかなみ」型と
殆ど同じです。(但し、表面的なスペックは同じでも装備の内容は
一新されています。)艦形も、「むらさめ」型、「たかなみ」型と
ほぼ共通です。上部構造物こそ舷側まで拡大されており、ステルス
性に対する考慮が払われていますが、欧州各国の新造駆逐艦と比べ
るとステルス性の徹底が十分とは言えません。また、平面形状のア
クティブ・フェーズド・アレーレーダの装備位置も、艦橋上部とは
言え、アンテナマストのトップに装備する欧州とはその徹底度合い
が不十分とも考えられます。(尤も、アーレイバーク級のSPY-1レー
ダーの装備位置は、「あきづき」型より低いので、それ程決定的な
違いではないのかも知れません。)

「あきづき」型は、「こんごう」型がミサイル防衛の配置について
いる際には、「こんごう」型に変わって、艦隊防空指揮艦の役割を
担う事になっていますので、「こんごう」型に近い対空目標識別能
力と同時対処能力を持っているものと思われます。その点では、表
面的なスペック以上の能力を保有する艦に仕上がっているものと思
われるのです。


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2010年10月13日水曜日

5カ国国防相との会談で日本の主張に全面賛同なし

北沢防衛相の「尖閣は日本の領土」に全面賛同なし 5カ国国防相

北沢俊美防衛相は11日、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、タイ、
シンガポールの国防相と滞在先のハノイ市内で相次ぎ会談、尖閣諸島について
「日本固有の領土だ。歴史的にも国際法上も疑いようがない」と説明した。
しかし、全面的に賛同した国防相はなく、「国際法に基づき平和的に解決する
ことを望む」(インドネシア)など慎重な対応を求める発言が相次いだ。
北沢氏は各国との会談で、中国の活発な海洋進出に触れ「連携して対処するこ
とが重要だ。緊密に意見交換したい」と提案したが、いずれの国も「広い意味
での連携」(同行筋)への賛意にとどまり、中国を名指しする発言はなかった
という。
南沙、西沙諸島の領有権を中国と争うベトナムのフン・クアン・タイン国防相
は南シナ海情勢に一切言及しなかった。(共同)

(産経新聞 2010/10/12)


日本の主張に全面的に賛同してくれる国がないのは当たり前の事で
す。そもそも北沢防衛相は、日本の立場の説明しかしていません。
今回の尖閣問題での中国との対立の中で、日本が腰砕けに陥ったの
は、世界が認める処です。当事国が毅然とした態度も取れないのに、
よその国が、その国の立場を無責任に支持する事などそもそも期待
すべくもないのです。下手をすると日本の替りに大中国の圧力を一
手に引き受けるのが自国になるかも知れませんし、そういう事にな
った時、日本が中国といっしょになって非難している事すら現政権
だったら考えられる話です。(オバマ大統領が日本を訪問していた
時に、さっさと中国様に尻尾振りにAPECに行ったルーピーとかいう
失礼な首相がいた事を思い出しましょう。)

これが、各国と利害関係を調整の上、尖閣問題を西沙、南沙問題に
絡めて会談に臨んでいるのだったら話は違っていたのかも知れませ
ん。実際、本番の五カ国防衛相会議では、(事前の予想と中国の圧
力に反して)南シナ海問題が議論されたのですから、事前に、危機
感を共有する点を個別に合意していたのであれば、五カ国会議の議
題に上った事はありえる話です。また、それで外交的には十分成功
であったのかも知れません。

それにも係わらず、そういう大切なタイミングで北沢防衛相は本番
の五カ国防衛相会議は欠席しているのですからお話になりません。
日本に戻ってから「断腸の思い」とか言っても何をか言わんやと言
わざるを得ません。もともと国会の最中に閣僚が国際会議に参加す
る事を散々非難し、国会を空転させたのは民主党の手口です。

腰砕けをはじめ既にやった事は仕方がありません。覆水盆に返らず
です。日本としては、まずはきちんと領土保全を出来る体制を構築
する意思を示しつつ他国に働きかけるべきであると思います。それ
が見えないどころか、中国に屈服して国民に対してすらビデオ画像
を公開できないでいる現状では外に働きかけてもマイナス効果にし
かならないと思えてならないのです。


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2010年10月12日火曜日

リベラルではなく単なるアカである事を露呈した菅直人

【劉氏に平和賞】ノーベル平和賞に菅首相「受け止める」

菅直人首相は8日夜、中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞決定
に関し、「普遍的価値である人権について、ノルウェーのノーベル賞委員会が
そういう評価をし、メッセージを込めて賞を出した。そのことをしっかりと受
け止めておきたい」と述べるにとどめた。中国国内で劉氏の受賞を伝えるNHK
の海外テレビ放送のニュース番組が突然視聴できなくなったことには「事実関
係を把握していない。ノーコメントだ」と答えた。

(産経新聞 2010/10/08)


もはや民主党政権はその存在意義すらなくしたと言うべきだろうと
思います。民主党政権がリベラル政権である限り、人権侵害に対し
て戦う人々に対して無関心であってはならないし、それと共感でき
る人道主義的思想がなければなりません。菅首相の「しっかりと受
け止める」という言葉に劉氏に対するどんなシンパシーや人道主義
があるのでしょうか?これが市民運動で鳴らした総理大臣の台詞と
は情けない限りとしか言い様がありません。
米国のオバマ大統領が、「一刻も早い釈放を」と述べた言葉と比べ
ればその違いは一層際立ちます。

民主党の全て構成員とは言いませんが、少なく共、その多くはリベ
ラリストであった筈であり、だからこそ政権を得る事ができた筈で
す。しかし、菅政権は似非リベラルであり、実際には権力至上主義
のコミュニスト活動家集団でしかありません。であればこそ、コミ
ュニスト政権であり、人権弾圧国家である中国や北朝鮮に対するま
ともな批判ができないのです。

思えば日本の左翼は、もともとリベラルではありませんでした。そ
の創生期からソ連の影響を受け、人道主義者は、隅に追いやられ、
目的の為に手段を選ばない権力亡者の巣窟が日本の左翼であり、中
立を装ったべ平連をはじめとする市民運動した。

それ故に、社会主義諸国による人権侵害に無関心であった事は、拉
致事件で、国民の目の前に赤裸々に暴かれてしまいました。その結
果、国民の批判が集中し、過去、左翼運動の中心であった社会党は
現在では泡沫勢力になっています。
しかし、今回の劉氏にノーベル平和賞が与えられた事に対する菅首
相のコメントには、日本特有の左翼メンタリティが社会党から、民
主党に脈々として受け継がれ、全く変わっていない事が表れている
様に思われてならないのです。

人道主義のバックボーンの無い左翼政権は、単なる売国政権にすぎ
ません。民主党政権の一日も早い崩壊と菅首相の退陣を願ってやみ
ません。


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2010年10月8日金曜日

中国が嫦娥2号を月軌道に投入

※CGはCNSA製作のものをSpaceflight Nowから転載

日本でも、中国の月探査機が月軌道に投入された事が簡単に報じら
れましたが、Spaceflight Nowに少し詳しい記事が掲載されました
ので抄訳します。

中国が嫦娥2号を月軌道に投入

地球を離れて五日、中国の二番目の月探査機は、水曜日の早朝、月を巡る初期
の軌道にすべりこみ、少なくとも半年に亘る科学観測の為の準備を整えた。
国営新華社通信によれば、無人の嫦娥2号オービターは、推進システムの噴射
をグリニッジ標準時で水曜の午前3時06分(東部夏時間火曜日午後11時06分)か
ら約30分行った。この噴射により、月の重力が嫦娥2号を捉え、周期12時間の
楕円軌道に載せる事になった。運用軌道である月面上空100km(60マイル)の軌
道に載せるまで、あと二回の減速操作が計画されている。

中国の報道機関によると、嫦娥2号は、最終的に月面から15km(9マイル)以内
に接近する予定である。

嫦娥2号は、グリニッジ標準時の10月01日11時に西昌発射場から長征3Cロケッ
トで打ち上げられたが、これによって5500ポンドの衛星を地球から月に到達さ
せる事になった。なお、10月01日は、中国共産党政権による61回目の建国記念
日であった。

嫦娥2号は112時間で地球から月に到達したが、これは2007年に嫦娥1号が月
に到達した時と比べ、半分以下の時間となっている。中国の先駆的なオービタ
ーである嫦娥1号は、月への旅に12日を要した。

嫦娥2号の打ち上げには、地球軌道から脱出する為の余分のエネルギーを供給
する液体燃料ブースター二基を搭載し、より強力な長征3Cロケットが使用され
た。長征3Cは、探査機をより高い軌道に投入したが、これは、嫦娥2号が、月
への旅の間に少ない燃料しか使用しないという事を意味する。
余分の燃料が、探査機のタンクに残された事で、6ヶ月の基本探査計画の期間
を超えて探査機の運用を行う事ができるようになる。

嫦娥2号は、嫦娥1号が失敗した場合の地上予備機として製作された。
新華社の報道によれば、嫦娥1号の解像度が400フィートであったのに対し、
嫦娥2号の画像の最高解像度は10m(32.9フィート)に達する見込みである。嫦
娥2号は、低い軌道を周回する事でよりシャープな映像を取得する事ができる。
中国当局は、嫦娥月探査計画の名前を月の女神からとった。

嫦娥2号は、2013年に予定されている中国の次の月探査計画であるロボット探
査機を月表面に軟着陸させる計画の着陸候補地の地図を作成する予定である。
中国の長期計画には、その他探査計画として、月から土壌や岩石を持ち帰るプ
ロジェクトがある。

新華社によれば、134百万ドルの月面探査の基本計画が終われば、嫦娥2号は
拡張探査フェーズに入る。中国当局は嫦娥2号の拡張探査フェーズについて三
つのシナリオを検討している。その中には、中国の技術者に地球から遠く離れ
た場所での探査機運用を経験させる為、探査機を月から離脱させ深宇宙へ送る
事が含まれている。また、新華社が、主任設計者として紹介しているHuang
Jiang chuan氏は、探査機の推進材は、嫦娥2号を地球軌道に帰還させる事も
できるとしている。また、嫦娥2号は、引き続き、月にあって、科学データを
送り続け、その後、月表面への着陸や衝突を行う事もできる。

なお、嫦娥1号は、2009年3月にその使命を終え、月に衝突させられている。

(Spaceflight Now 2010/10/06)



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2010年10月7日木曜日

下地島にE-2C配備を!

※尖閣諸島周辺地図。朝日新聞より転載

空飛ぶレーダーサイト、E2Cの沖縄展開を検討 防衛省

防衛省は航空自衛隊三沢基地(青森県)に配備されているE2C早期警戒機を、
定期的に空自那覇基地(那覇市)に展開させ同基地を拠点に一定期間運用する
検討を本格的に始めた。中国漁船の衝突事件が起きた尖閣諸島をはじめ南西諸
島に低空で航空機の侵入があった場合、沖縄県・宮古島にある最西端のレーダ
ーでは捕捉できないためだ。ただ、沖縄の基地負担が増えないように常駐配備
は見送る方針だ。

領空侵犯を警戒するため空自は、全国28カ所に置かれたレーダーサイトと
E2C早期警戒機、E767早期警戒管制機などにより24時間態勢で日本周
辺の空域を監視。最西端にあるレーダーが沖縄本島から約300キロの宮古島
に置かれている。

ところが、例えば、宮古島から約210キロ離れた尖閣諸島の上空では、低い
空域に航空機が侵入してきても、水平線の下になり宮古島のレーダーで探知で
きない「死角」が生じてしまう。防衛省幹部によると、尖閣諸島上空では高度
約2千メートル以下の空域が死角になっているという。宮古島から約230キ
ロ離れた日本最西端の与那国島周辺でもほぼ同様という。

このため、機体背面のレーダーで数百キロ離れた超低空での機体の動きを上空
から探知できるE2Cを3機程度、定期的に三沢基地から那覇基地に展開し、
上空から南西諸島の監視を強化する検討を本格的に始めた。沖縄側に部隊展開
への理解を求め、できるだけ早期に実施したい考えだ。

防衛省によると、南西諸島では沖縄本島以外には陸上自衛隊の常駐部隊がおら
ず、宮古島以西は「防衛上の空白地帯になっている」(同省幹部)という。
E2Cの展開は、9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船と石垣海上保安部の巡視
船の衝突事件の前から検討が進められていたが、省内では事件後、海上だけで
なく周辺の空域の警戒監視も一層警戒すべきだとの意見が強まっている。

空自機のほか海自機、民間航空機などと共用している手狭な那覇基地の実情に
加え、米軍基地が集中する沖縄の基地負担に配慮し、部隊を完全に那覇基地に
移すことは見送り、一定期間、三沢基地から那覇基地に展開する「ローテーシ
ョン」配備にとどめる方針だ。

空自幹部は「三沢基地を拠点に北海道周辺のロシア機への警戒監視も引き続き
必要だ。部隊ごと沖縄へ移すことはしない」と話している。

南西諸島周辺では07年9月、中国軍の中距離爆撃機が東シナ海で日本の防空
識別圏に入って日中中間線付近まで飛行したり、今年3月には同じ東シナ海で
Y8早期警戒機が飛行したりするなど活動が活発だ。09年度に沖縄を拠点と
する空自南西航空混成団の所属戦闘機が緊急発進(スクランブル)した回数は
101回で、過去5年で最も多かった。

「南西諸島の海空域の警戒・監視の充実」は年末までに策定される新たな防衛
計画の大綱でも重要項目の一つとして位置づけられ、首相の私的諮問機関「新
たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書も、離島の周辺海空域
での警戒監視の強化を答申している。

防衛省は8月31日に締め切られた11年度の概算要求の中で、日本近海での
中国軍の活発な活動を念頭に、沖縄県・与那国島などに陸上自衛隊を配備する
ための調査費(3千万円)を計上するなど南西諸島の警戒監視の強化を打ち出
している。

(朝日新聞 2010/10/06)


沖縄本島より尖閣諸島に近いのは宮古諸島ですが、実は、そこに
3000m級滑走路と計器着陸設備を備えた第一級の立派な飛行場があ
ります。それが下地島空港です。下地島は、宮古島の隣にある伊良
部島の西隣に位置し、6本の橋で伊良部島と繋がっており、事実上
伊良部島の一部となっています。

下地島空港は、日本国内唯一のパイロット訓練用の飛行場として設
けられた空港で、現在は国交省の管理下にあります。
近年は、航空会社はパイロット訓練にシミュレータを使う事が多く
費用がかかる実機訓練を行う機会は減少しているので、この空港が
使われる事は少なくなっています。

それもあって地元は、過去、自衛隊を誘致しようとした事もありま
す。隣の宮古島に空自のレーダーサイトがある事もあり、自衛隊へ
の感情は、悪くはなさそうです。

上記の記事では、那覇基地への配備が、今まで以上に地元負担が増
加するので「ローテーション」配備にとどめるとありますが、下地
島であれば、空港の利用度が低下しているだけに、那覇基地の様に
地元負担が問題になる事もありません。

位置的には、沖縄本島から尖閣諸島まで410kmあるのに対し、下地
島からは210kmであり、240kmも近く、基地から進出するのに1時間
近い差が出ます。E-2Cの無給油飛行時間は6時間ですので、 那覇
基地からだと二時間進出、二時間哨戒、二時間帰還というフライト
になりますが、下地島であれば、一時間進出、四時間哨戒、一時間
帰還というフライトが可能になります。

下地島に配備すれば、同じ一回のフライトで哨戒時間では二倍とな
り非常に効率が高い上、恒久配備とする事で、三沢基地との間でロ
ーテーションの必要もないのでE-2Cの本土との定期的な往復も発生
しません。その点でも、機材の効率的な運用が可能となる筈です。

この様に、国が保有する既存設備を有効利用する事は、民主党が目
指す行政の無駄を省く事と全く同じ意味があります。また、防衛省
が次期防で目指す、島嶼防衛の推進の上でも、下地島に自衛隊の航
空基地設置する事により先島諸島全体の防衛を、安価な費用で効率
高く実現する事ができると思われるのです。


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2010年10月5日火曜日

日本は中国を有人月面着陸に向かわせるべき?

中国人の95%が「月面有人着陸は日本より中国が先」探査衛星打ち上げで自信高揚 

中国は1日の国慶節(建国記念日)に合わせ、月探査衛星「嫦娥2号」を打ち
上げたが、これにより自国の宇宙開発技術に対する中国人の自信がおおいに高
揚したようだ。インターネットを通じたアンケート調査によれば、約95%の
中国人が「中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸できる」と考えているこ
とが明らかになった。

調査を実施したのは、中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時
報が運営するウェブサイト、環球ネット。

調査は打ち上げ当日の1日午後から始まり、4日未明までに約1万7千人から
回答が寄せられた。そのうち、中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸する
と考えている人は約1万6200人にものぼった。

アンケートの設問で、宇宙開発の競争相手として、最先端の技術を持つ米国で
はなく、日本が選ばれたのは、9月7日に尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突
事件以降、中国国民の間で日本へのライバル意識が高まったためとみられる。

中国の有人宇宙船が日本より先に月面着陸する理由としては「中国の宇宙開発
技術はすでに世界のトップレベル」「日本の技術は米国からもらっているので、
いつも最先端なものではない」など、いささか首をかしげざるを得ないような
主張も少なくない。

その一方で、「今の日本は確かに技術面で優れているが、中国には発展の勢い
があるので必ず追い越せる」「これからは日本と軍備競争が始まるので負ける
わけいかない」といった“冷静”な意見もある。

(産経新聞 2010/10/04)


日本も将来の人間型ロボット利用による有人月面探査をその長期宇
宙計画に含んでいます。しかし、その有人月面探査は、米国のコン
ステレーション計画を前提としたもので、自前で有人月ロケットを
打ち上げる事は、全く念頭にありません。その意味で、オバマ政権
がコンステレーション計画を破棄した事で、日本の有人月探査計画
はお蔵入りになったと言って過言ではありません。

米国が有人月探査を放棄した事により、有人月探査の長期計画を持
つ国は中国だけになっています。私は、個人的には、中国に是非、
有人月探査を実施して貰いたいと考えています。また、それ以前に
中国が無人探査を重ね、月周回探査から、月面軟着陸、そしてサン
プルリターンを是非実行して欲しいと思います。その様なステップ
を踏むことで、中国国内でも、宇宙計画の次の目標として有人月探
査への期待が高まり、実際にそれが実現する蓋然性が高くなると思
われるからです。また、中国にとってその国威発揚の効果は非常に
大きいと考えられるからです。

高い効果が望まれる有人月探査は、また、非常に多額の費用を要す
るものになる事が確実です。米国のアポロ計画は極めて合理的な計
画でしたが、当時の値段で100億ドル以上を要しました。現在の貨
幣価値に直せば、その数倍に達すると思われます。これは中国でも
変わりません。他国では、社会保障の要求もあるので有人月探査の
予算捻出は実現が難しいかも知れませんが、中国であれば、社会保
障を抑えても有人月探査を実現してくれるに違いありません。

月探査の実現をする事で、中国は、非常に多くの宇宙開発のノウハ
ウを獲得する事になります。しかし、その殆どは、宇宙開発用の突
端技術として、閉ざされた領域での技術開発となると思われます。

また、その技術を利用したスピンアウトも考えられますが、既に、
米国はアポロ計画を経験しており、中国が新たに保有する事になる
技術やノウハウも西側では既知のものである可能性が高いと思われ
ます。言い換えれば、アポロのスピンアウト技術で有用なものは既
に汎用化、商用化が実現されてしまっていると考えて差し支えない
筈です。

つまり、中国は、有人月探査を行う事で、アポロを追体験する事に
巨額の費用支出する事になりますが、それによって技術的な突破が
発生する可能性はかなり低いと思われます。そうであれば、中国の
月探査計画は日本にとって安全であり、中国にその国力を浪費させ
る事ができる訳で、日本にとって望ましい計画であると言えます。
ついでに言えば、米国がそうであった様に、中国が有人月探査と同
時に、地球上でも、ベトナム戦争の様な泥沼に足を突っ込む様なア
レンジが非常に望ましいと思われるのです。


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2010年10月4日月曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (3)


中国の軍事戦略

人民解放軍の理論家達は、情報化の条件下での局地的な戦争で、戦闘を行い勝
利できる時間のかかる軍隊の建設を目標とするドクトリンに基いて改革への枠
組みを開発している。それらは、とりわけ不朽の自由作戦とイラクの自由作戦
を含む合衆国が率いた戦役での軍事的経験、ソ連とロシアの軍事理論、人民解
放軍自身の戦闘経験を踏まえた青写真に基づいた、軍事力の全ての領域を亘る
改革である。

改革のペースと規模は、広範囲で余す所のないものである。しかしながら、人
民解放軍は、近代的な戦闘を経験していないままである。作戦経験の欠如は、
中国の軍事改革の進展についての外部からの評価を難しいものにしている。
それと同様の理由で、中国内部から自身の軍事的能力を評価する事も難しいも
のとなっている。中国の軍人ではない指導者達は、近代的な戦闘の直接的経験
のない司令官達のアドバイスや、近代的な戦場の真実味を欠く「科学的」戦闘
モデルに頼らなくてはならない。

権威ある講話や文書の分析によれば、中国は、軍事力の使用と展開を計画し管
理する為の全体的な原則とガイドラインとして「新時代国家軍事戦略ガイドラ
イン」(新時期国家軍事戦略方針)に、従っている事を示唆されている。

作戦可能な、あるいは、ガイドラインの積極防衛の構成要素は、防衛的な軍事
戦略であり、中国は戦争を仕掛ける事や、侵略戦争を行う事はなく、国家主権
と領土保全の場合のみ戦争に関与すると定めている。

海上戦闘

「積極防衛」の海軍の構成要素は、「沿海積極防衛」と呼ばれている。2008年
の防衛白書は人民解放軍海軍を戦略的任務として記述し、「遠海」での作戦能
力を開発中であるとしている。人民解放軍海軍は三つの任務がある。海を経由
する侵攻に対する抵抗、国家主権の防衛、海上権益の保護の三つがそれである。
海洋作戦に対する人民解放軍海軍のドクトリンは、6つの攻撃と防御戦闘に焦
点をあてている。封鎖、海上交通路対する攻撃、海洋からの陸上攻撃、艦船攻
撃、海上輸送保護、海軍基地防衛の六つである。

胡錦濤主席は、2006年の海軍共産党会議での講話で、中国は「シーパワー」で
あり、「力強い人民の海軍は海洋の権利と利益を擁護する」と主唱した。
他の政治指導者や人民解放軍海軍士官の発言、政府の文書、人民解放軍報道機
関は、中国の経済的政治的な力は、海洋への接近と利用が可能であるかによっ
て左右され、強力な海軍は、海洋への接近を保証する上で求められるとしている。
中国から遠く離れた場所での任務に対する考慮が求められてきているが、海軍
は、台湾をめぐる合衆国軍隊との紛争の可能性を強調しながら第一列島線や第
二列島線の内部における作戦への準備に焦点が当てられている。これは北京が
受け入れ可能な形で台湾問題が解決しない限りは、正しい選択であろうと思わ
れる。

地上戦闘

「積極防衛」の下で、地上軍は、中国の国境を守り、国内の安定を確かなもの
とし、地域レベルの戦略展開を試みる事をその役割としている。地上軍は、割
り当てられた軍区の中で、地点確保戦闘、運動戦闘、都市部戦闘、山岳地戦闘、
沿岸防衛戦や上陸戦を行う静的な防衛軍としての存在から、中国の周辺地域で
戦闘可能な装備を持った、より積極的で大きな運動性を持った攻撃的存在に移
行している最中である。

2008年の防衛白書では、地上軍を地域防御軍から地域間移動な可能な軍隊に変
化してきていると記述している。地上軍の変革は、小さく、モジュール式で、
多機能、空陸共同作戦や遠距離移動が可能で、迅速な攻撃と特殊攻撃が可能な
能力を保有する単位を作り上げる事を目標にしていると述べている。人民解放
軍の地上軍の改革はロシアのドクトリンと合衆国軍隊の戦術にならって作られる。
地上軍は、統合した共同作戦を実行する臨時で、多機能な統合戦術編成の実験
を主導している様に見える。2009年の8月と9月に、各地の軍区から集められた
合計5万人以上の軍隊が、人民解放軍のこの種のものとしては、最初の大規模
機動演習となるKuayue(跨越)2009に参加した。

航空戦闘

人民解放軍空軍は、限定的な領土防衛用の軍隊から、合衆国とロシアの空軍を
モデルにした、沿海での攻撃的防御作戦が可能で、より柔軟で機敏な戦力に変
化している。焦点が当てられている主要な領域には、攻撃、対空対ミサイル防
御、早期警戒と偵察、戦略的機動が含まれている。人民解放軍空軍には、統合
対空戦での指導的な役割が割り当てられている。「統合対空戦」は、接近拒否
や地域利用拒否に関する中国の作戦計画の基礎を形作るものである。人民解放
軍の理論では、攻撃と防御の曖昧さを強調して、統合対空戦は、自ずから戦略
的防衛戦であるが、作戦レベルや戦術レベルでは、敵基地攻撃や敵艦船攻撃が
求められるとしている。

人民解放軍の新しい任務は、人民解放軍空軍の将来に関する議論を導く。即ち
中国の世界的な利益を保護する為には、人民解放軍空軍の遠距離輸送能力と補
給能力の増強が必要であるという全般的な合意が形成されている。中国から遠
隔地に航空戦闘部隊を展開するという要件については、あまり議論が行われて
いない。海軍の場合と同様に、次の10年における空軍の主要な焦点は、台湾と
東アジアの合衆国軍隊に対し、確実な軍事的脅威を齎す事ができ、台湾の独立
を変更し、あるいは北京の条件によって紛争を解決するよう台湾に影響を与え
る事ができる様な能力を建設する事である。

宇宙戦闘

人民解放軍の戦略家は、宇宙を近代的な情報戦闘の中心と見ている。しかし、
人民解放軍のドクトリンは、宇宙での作戦を、それ自体独立した作戦可能な
「戦闘」とは考えていない。寧ろ、宇宙作戦は、全ての戦闘に枢要な構成要素
であるとしている。人民解放軍の軍事理論誌「中国軍事科学」は、「情報化時
代の戦争の焦点は、宇宙に集中する事になる」と述べ「特に、宇宙に基礎を置
く通信、情報収集、航法システムは、多軍種共同戦闘を可能とし、更に調整を
可能とする事で、近代戦争を勝利する為に重要である」としている。

それと同時に、中国は敵の宇宙資産を攻撃する能力を開発しており、宇宙の軍
事化を加速している。人民解放軍の文書は、「敵の偵察、通信衛星を破壊し、
損害を与える」必要性を強調しており、偵察衛星、通信衛星、航法衛星、早期
警戒衛星を初期攻撃の対象とし、それへの攻撃により敵の目と耳を奪う事を推
奨している。合衆国と同盟国の軍事作戦についての人民解放軍の分析は、「衛
星や他のセンサーを破壊または捕獲する事は、敵が戦闘のイニシアティブを取
る能力を奪い、精密誘導兵器がその能力をフルに発揮できなくする事ができる」
と主張している。

統合電子ネットワーク戦闘

中国の軍事関係文書では、戦場での成功を確実とするためには、作戦開始後早
期に電磁気的な優勢を獲得しなければならない点を強調している。
人民解放軍の理論家達は、敵側が戦闘継続と兵力展開に使用する戦場情報シス
テムの利用を中断させる為に、電子戦、コンピュータネットワーク運用、運動
弾による攻撃を意味する統合電子ネットワーク戦闘(网電一体戦)という用語を
作りだした。多軍種共同活動の将来のモデルに関する人民解放軍の文書では、
「統合ネットワーク電子戦」を「多軍種統合共同活動」の基本的な形態の1つ
と認識している。そして、人民解放軍の作戦理論では電磁気的な優位の獲得を
戦場支配の中核として提案している。

人民解放軍の機密保持と偽装

人民解放軍の文書は、戦略的偽装の定義として「相手側を誤認させ、そして、
最小の兵力と資材で、計画的組織的に各種の偽情報を作りだし、自身を戦略的
に有利な位置に置くこと」と定義している。情報操作に加え通常のカモフラー
ジュや隠蔽や否定も、戦略と偽装が中国の政治的手法の中で果たした歴史的経
験と伝統的な役割から有効な策としている。

今日、中国の戦略文化に固有の緊張が発生している。軍事的能力や軍事開発計
画を隠し、ごく一部しか認めない根深い傾向は、中国の勃興する力に対する地
域的、世界的な不安に油を注いでおり、それを維持困難にしてきている。

十年以上の間、中国の指導者は、この不安を「中国脅威論」として、中国に反
対する地域的、世界的な強国の聯合を形成する中国の国際的な立場への深刻な
危険と認識している。それに加え、過剰な機密保持は、透明性と情報の自由な
流れを成功する為の要件とする統合された世界経済での中国の役割と一致させ
る事がますます困難になっている。

非対称戦闘

1991年の湾岸戦争と1999年の同盟軍作戦(NATOのユーゴースラビア空襲の作戦名)
以来、人民解放軍の戦略家達は、新しい予想外の可能性に対する軍事機構や戦
略と戦術の構築の緊急性を強調している。彼らは技術的に優越した敵と対する
に当たって、既存の技術と武器システムで戦場での格差を無くす為の革新的な
戦略や戦術を開発する事も強調している。1999年に解放軍報は「絶対的な優勢
を持つ強力な敵であっても弱点が無い訳ではない。我々の軍事敵準備は、強力
な敵の弱点を利用する為の戦術を見つける事に努力を集中する必要がある。」
と記している。

人民解放軍には米国のアプローチと同様の要求があるにも係わらず、その適用
としての作戦要求が米国のそれとは非常に乖離した領域がいくつもある。その
一例として、強力に防御された空域内の目標を攻撃するに当たって、ステルス
機よりも弾道弾と巡航ミサイルにより多くを期待する事が挙げられる。また、
米国の宇宙での優位を中立化する為に情報収集衛星、通信衛星、航法衛星を攻
撃する一連のシステムやコンピュータネットワークから莫大な量の情報を抽出
するアプローチ、近年の攻撃、防御両面での電子戦の強調、それに、「三つの
戦闘」ドクトリンが挙げられる。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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2010年9月30日木曜日

中国の月探査機「嫦娥2号」10月1日打ち上げへ

※CGはsorae.jpから転載

中国の月周回衛星・嫦娥2号、10月1日打ち上げか

27日の中国紙、南方日報(電子版)によると、中国の月周回衛星「嫦娥2号」
のプロジェクト関係者は、嫦娥2号が10月1日に打ち上げられる可能性が高
いとの見通しを明らかにした。

10月1日は中国の建国記念日に当たる国慶節で、同日に打ち上げることで国
威発揚の効果を高める狙いがあるとみられる。四川省の西昌衛星発射センター
で行われている嫦娥2号の打ち上げ準備はほぼ整ったという。

中国は2007年10月、初めて月探査を目的とした月周回衛星「嫦娥1号」
を打ち上げた。2号は1号よりも月に近づいて周回し、月面の撮影を行う予定。

(産経新聞 2010/09/27)


三年前に日中は相前後して月探査機を打ち上げました。「かぐや」
と「嫦娥1号」です。

日本の月探査機の方が高度で多彩な調査を行いましたが、残念なが
ら単発で後続の予定はありません。一方、中国は、前回は写真撮影
が中心の比較的簡素な探査に留まりましたが、今回は前回に比べ着
実に進歩した観測を予定しています。また、中国は、2013年に月面
ローバーを「嫦娥3号」に搭載して打ち上げ、月面軟着陸を目指す
事を予定しています。その為、今回の「嫦娥2号」では、より低高
度を周回する事で着陸候補地の詳細な写真撮影や3D写真撮影を行
うと共に、月面に向けて衝突体を発射し、月の土壌も探査する予定
です。

この様に探査機をシリーズ化して計画的に打ち上げる事は、探査機
を開発し打ち上げるノウハウを蓄積する上で極めて有効です。日本
の場合は、極端に言えば科学衛星は、宇宙開発が目的ではなく、科
学者が論文を書くために打ち上げている面があります。その為、継
続的な観察が必要な地球観測衛星や天文台衛星は、シリーズ化され
ているものの、月惑星探査機は、単発ものとなっています。
その僅かな例外が、「はやぶさ」ですが、これも、確たる国家的な方
針がある訳ではなくどこまでシリーズ化できるか疑問なしとしません。

その点、中国は、国策として長期的な探査機打ち上げ計画が策定さ
れており、着実に探査スキルを改善する事が計画されています。
そして、その点で日本にはない継続性と一貫性が見て取れる様に思
われます。
中国に探査機や打ち上げロケットが日本に比べ安価であるという利
点があるのは勿論ですが、それ以前に宇宙政策レベルでも日本に比
べ遥かに合理的に宇宙開発を進めているように思われてなりません。


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2010年9月29日水曜日

今回の事件からどの様な「教訓を日本はくみ取るべき」なのか

「日本は教訓くみ取るべき」中国・人民日報論評

27日付の中国共産党機関紙「人民日報」は、沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚
島)沖の日本領海内での中国漁船衝突事件について、「日本政府は事件を通し
て教訓をくみ取るべきだ」とする論評記事を掲載し、日本国内で中国脅威論が
一段と高まることをけん制した。

記事は、「日本の一部政治勢力が事件を契機として勢力拡大を狙い、策略を練
ろうとしている」と分析。「(中国脅威論をあおる)政治勢力に対中政策を主
導させてはならない。中日関係の悪化を利用する言動を放置すべきではない」
と主張した。

また、「日本の発展と繁栄は中国と切り離すことはできない。中国と対抗し続
けるなら、その代償に日本は耐えられない」と論じ、対中経済依存が進む日本
に警告した。

(読売新聞 2010/09/27)


日本政府が汲み取るべき教訓

日本側が釣魚島海域で違法に中国漁船を拿捕し、乗組員を拘束したことで、中
日関係の良好な発展基調は深刻に破壊された。事件発生以来の日本側の一部言
動は、日本国内に厳然として存在する一部政治勢力の、事態に乗じて力を振る
い、ある種の目的を達成するために騒ぎを大きくしようとする企みを反映して
いた。我々はこれを存分に暴露しなければならない。

この「企み」には2つの「みみっちい計算」があった。1つは、観念論的な「現
実に背を向けた政策」を講じ、日本の国内法によって事件を処理することで、
いわゆる「裁判の前例」を作り、中国に「既成事実」の受け入れを迫ること。
もう1つは、中国との対立激化を利用して、いわゆる「中国脅威論」を誇張し、
さらに勢いに乗じて「米軍抑止力論」によって普天間飛行場移設問題の解決と
日米同盟の強化を推し進め、防衛戦略と軍事力の配備を調整すること。特に中
国を標的にした南西諸島の防衛強化だ。

中国政府が当初から日本側に、誤った情勢判断をするなと明確に戒告してきた
にも関わらず、日本の一部勢力は過ちを押し通して非を悟らず、独断専行を続
けた。最後になってようやく、彼らはこのような「取らぬ狸の皮算用」が上手
くいかぬことに気がついた。第1に、中国は当初から彼らの「みみっちい計算」
を看破していた。主権、統一、領土保全に関わる問題において中国の立場は断
固たるもので、決して譲歩も妥協もしない。第2に、現在中日は深いレベルの
協力関係にある。日本の発展や繁栄は中国の発展や繁栄と切り離せず、中国と
力比べを続ける事による代償に日本は耐えられない。第3に、米側は日本側に
「強心剤」や「安心薬」を度々与えてはいるものの、自国と中国との関係にも
配慮しなければならない。日本は重大な時期に米国を頼りにできるのかどうか、
十分な自信がないのだ。

歴史上、日本が「対外事件」を利用して騒ぎを起こした先例は決して少なくな
い。その目的は2つしかない。「外を以て内を補う」と「外を以て外を補う」だ。

「外を以て内を補う」例には、菅直人と小沢一郎が選挙演説で共に釣魚島に言
及し、中国を挑発する発言をして、国内の民意を煽動し、丸め込んだ事が挙げ
られる。これがいわゆる「選挙政治」だ。また、2009年に当時民主党副代表の
前原誠司が衆議院で時の首相麻生に「尖閣諸島(注:我々の釣魚島およびその
附属島嶼を指す)に第三国が侵入した場合、日本はどう対応するか」と計算高
く質問し、麻生から「尖閣諸島には日米安保条約が適用される」との発言を引
き出した事も挙げられる。これがいわゆる「議会闘争」だ。

「外を以て外を補う」典型的な例には、今回の事件における右翼保守派と若手
戦略派を中心とする日本の一部勢力による一連の言動が挙げられる。彼らの意
図は、これを機に外交・安全保障政策の調整と突破を達成することにあった。
こうしたやり方の結果、日本の民族主義感情が極端に煽動され、中日両国民の
民意と世論の雰囲気が悪化し、釣魚島問題は一層複雑化した。

今回の事件について日本メディアは、菅直人首相および重要閣僚には外交事件
の処理経験が不足しており、事態を十分に重視しなかった上、場当たり主義の
「近視眼的」対応をとったとの見方で一致している。民主党内の重要議員から
も同様の発言が上がっている。樽床伸二前国対委員長は25日の演説で、現内閣
のやり方については議論が必要だとし、中国漁船を拿捕し、船員を拘束したこ
と自体が「間違っていた」と指摘した。

日本政府は今回の事件から教訓を汲み取るべきだ。一部政治勢力が常に対中政
策を操り、主導することを許してはならない。中日関係を悪化させる言論や行
動を放置または利用し、いわゆる民意を丸め込むことはさらにしてはならない。
このような「みみっちい計算」を続けた場合、最後に壁にぶつかるのも自分な
のだ。(編集NA)

(人民網日本語版 2010/09/27)


一般的な日本人には、多かれ少なかれ中国に対する贖罪意識があり
中国に対しては一歩引き気味の態度を取る事が多いのですが、これ
は戦後のマスコミの偏向報道と日教組と左翼官僚による偏向教育に
よるものであると言えます。勿論、戦前国策を誤らせた一部日本軍
の暴走という要素も大きいのですが、何故、当時の日本国民の間に
「暴支膺懲」のスローガンに対する、一定の支持と理解があったか
を考える必要があります。

つまり、中国は満州事変から日華事変に至る過程で、中国は日本と
の関係で条約上の日本の権利を暴力的に侵害した事が多々あるのです。
つまり、当時列強や日本が中国に持っていた権益に対し、その改定
を交渉によって行う事なく、暴力や軍事力を使って主張をしていた
のが中国なのです。今回の事件で、そういう中国の戦前と変わらな
い姿(北朝鮮の態度にも共通の姿)が多くの日本人の前に赤裸々にな
ったと言えるでしょう。

上に揚げた記事は、読売新聞が報じた中国人民網日本語版の記事で
すが、読売新聞が報道している内容より遥かに居丈高で偏向した主
張である事が判ります。昔、中ソ対立が華やかだった頃、中国がこ
の様な言葉使いでソ連を誹謗中傷していた事を思い出しますし、同
時に、日本に対しても同様の汚い言葉使いで自己主張を行っていた
事を思い出しました。当時、その様な中国の主張に喝采していたの
が、菅総理や仙石官房長官がそうであった様な過激派学生であり、
多くの日本人は、その一方的な主張に辟易していました。

日中国交回復以降、日本は満腔の好意を中国に寄せました。誠に鷹
揚に資本と技術を経済援助やODAの名の下に中国に注ぎ込みました。
しかし、中国はそれに対し、悪意と反日教育で答えたのです。
百年余り前、福沢諭吉は、「脱亜論」の中で東亜の悪しき隣人とは、
距離を置くべきである事を主張し、寧ろ、日本が目指すべき公正と
正義は欧米諸国にある事を論じました。勿論、欧米諸国が無垢であ
る訳もありませんが、中国と比較すれば、まだしも正論と常識とル
ールが通用する土壌が存在する事は事実です。

我々は、それから百年を経た現代においても福沢と同じ感慨を抱か
ざるを得ず、中華民族の性格が百年変わっていないことを改めて認
識せざるを得ず、そういう隣人とは関わり合いを低くせざるを得な
いというのが今回の事件の教訓と思わざるを得ないのです。


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2010年9月28日火曜日

抗議やり過ぎ ここまでする奴を護りたいとは誰も思わない

※ビーチ清掃で市民からの抗議に反応せず作業するアンドリア・スラウ艦長
23日午前8時半ごろ、宮古島市平良のパイナガマビーチ

抗議に反応なく 米兵、浜清掃や観月会 平良港寄港

21日から宮古島市の平良港に寄港している米海軍佐世保基地所属の掃海艦デ
ィフェンダー(1312トン、乗組員80人)は、23日も引き続き同港第1
埠頭(ふとう)に接岸している。アンドリア・スラウ艦長ら乗組員は、市民団
体の抗議の中、午前8時すぎから同市平良のパイナガマビーチを清掃。夜には
同市上野の航空自衛隊宮古島分屯基地で開催された観月会に出席した。掃海艦
は24日正午ごろ出港予定。

ビーチ清掃時には反対派住民らが「NO BASE」などと書かれたプラカー
ドを手に抗議。乗組員らは市民に目を合わさず、反応はなかった。スラウ艦長
は「言論の自由があり、皆さんはそれを行使している」と話した。

航空自衛隊宮古島分屯基地の観月会にはスラウ艦長、レイモンド・グリーン在
沖米総領事らが参加。地元住民や自衛官らと酒を酌み交わした。
「下地島空港の軍事利用に反対する宮古郡民の会」など複数の市民団体は23
日、宮古島市の繁華街で買い物客らに抗議集会への参加を呼び掛けるチラシを
配り、平良港第1埠頭ゲート前で抗議集会を開いた。24日の出港時も抗議行
動をする。寄港を伝える新聞を見て初めて集会に参加した古謝幸宏さん(16)
=宮古高1年=は「軍艦を生で見ると怖い。宮古に米軍が来たら、事件・事故
が起こると思う。来ないでほしい」と話した。

(琉球新報 2010/09/24)


尖閣諸島事件で決議=日本の領土「疑問の余地なし」-沖縄県議会

沖縄県議会は28日、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を「領海侵犯」として中
国政府に抗議し、再発防止などを求める決議を可決する。決議は「尖閣諸島が
わが国固有の領土で沖縄県の行政区域であることは疑問の余地がない」として
いる。

県議会はまた、中国漁船の船長が処分保留のまま釈放されたことを受け日本政
府に抗議する決議も可決する。決議は、尖閣諸島が日本の領土であることを国
外に示すよう政府に求めている。

(時事通信 2010/09/28)


KYと言えば、ここまでKYである事もないでしょう。
9月23日は民主党政権が、中国に対して屈服する前で、中国から
の圧力が高まっていた時です。日本は単独で核保有国である中国に
対抗する事ができません。その意味で、同盟国である米国のバック
アップが真に必要なタイミングでした。尖閣列島に近い宮古島に停
泊していた米国の掃海艦は、同盟国を支援する米国の象徴とも成し
得る存在でした。可能であったかどうかは別として、艦の運用に関
してかなりの自由を持つ米艦艇の艦長が日本に対するシンパシーを
感じていれば、海保艦艇と轡を並べて、星条旗を掲げる掃海艦が、
尖閣諸島の水域で、中国船に無言の圧力をかける事も可能であった
かも知れません。残念ですが、その様な事態は発生しませんでした。

たらればの話になりますが、もし、この艦長に対する非礼の極とも
言える行動、ボランティアでビーチ清掃を行う掃海艦のスラウ艦長
の鼻先に、プラカードを突きつけるという無礼を宮古島の官憲が制
止していれば、それが実現していたかも知れなったのかも知れませ
ん。艦長も人間です。無礼を敢えてする活動家とそれに便乗してコ
メントを強要する報道陣に好意が抱ける筈もありません。彼女が沖
縄や日本に好意を持てたかどうかは、誰でも想像できるでしょう。

勿論、抗議活動をする人間には抗議をする自由はあるでしょうが、
他人の善意に対し、それを否定する権利はない筈です。日本国は、
また沖縄県はこういう事をする人間(同盟関係を損なうハラスメン
トを行う人間)を排除する権利も必要がある筈です。こういう事を
させてしまった事を日本は恥じるべきであると思われてなりません。

沖縄県議会は、上記の様な実質的な意味がない愚にもつかない決議
を行うくらいなら、まずはスラウ艦長に対する謝罪決議を可決すべ
きでしょうし、それが尖閣諸島を護る実質的な活動であろうと思わ
れるのです。


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2010年9月27日月曜日

日本は中国の横暴の被害者である事をアピールできるのか?

中国人船長釈放 日本に謝罪と賠償を要求 対立長期化も

中国外務省は25日未明、沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺海域で起き
た漁船衝突事件について、「中国の領土と主権、中国国民の人権を著しく侵犯
したことに対し強烈な抗議を表明する」などとする声明を発表し、日本側に謝
罪と賠償を求めた。これにより、閣僚級以上の対日交流停止などの対抗措置の
解除が遅れ、日中間の対立が長期化する可能性が出てきた。

声明は、処分保留のまま釈放された中国漁船の●其雄(せん・きゆう)船長の
帰国を待って発表された。日本側による船長らの拘束を改めて「違法」と批判。
「釣魚島と付属の島は古来、中国固有の領土で、中国は争う余地のない主権を
有している」と従来の主張を繰り返した。

24日の時点では、中国側は「日本側が取ったいかなる司法手続きも違法かつ
無効である」などと抑制した談話を発表するにとどめていた。しかし、インタ
ーネット上には「謝罪と賠償」を求める声が殺到した。

「中日両国が戦略的互恵関係発展の方向を堅持することは両国民の根本的利益
に符合する。対話と協調を通じて問題を解決し、両国関係の大局を維持すべき
だ」としつつも、国内向けに強硬姿勢を取る必要に迫られたとみられる。

(産経新聞 2010/09/25)


今回の事件で特徴的なのは、日本側が淡々と司法手続きを進めよう
としたのに対し、中国側が、尖閣諸島に日中間の領土問題がある事
を大声でアピールしようとした点です。
元々、尖閣諸島は日本が実効支配しているのですから、日本側が、
領土問題は存在しないとして、中国漁船を公務執行妨害で逮捕拘留
する事は当然の事です。中国に合わせて大声で主張する必要はあり
ませんでした。これに対して中国は、尖閣諸島が日中の係争地であ
る事を世界に示したい訳ですから、大騒ぎをする事そのものに意味
があったと言えます。

ただ、中国は、レアアースの輸出制限を行ったり、旧日本軍遺棄化
学兵器廃棄プラント応札の為の事前調査に派遣された日本人を抑留
するなど、論争以外の手法によるエスカレーションを進めてしまい
ました。

本来であれば、日本は、静かにエスカレーションを進めるのが、正
しい対策であった筈ですが、実際には、政治が介入してべた降りに
降りた形になってしまいました。これでは、中国側のエスカレーシ
ョンの脅しに屈した事になってしまい、中国側の更なるエスカレー
ションを招く事になります。その第一弾が、謝罪と賠償の要求です。

中国は、恐らく、第二、第三のエスカレーションを続けて、尖閣諸
島の領有権に関する交渉を開始する事を日本に認めさせるようとす
るのではないかと考えます。交渉は相互の譲歩が必要になる訳です
から、今までの様に「領土問題は存在しない」という日本の立場は
大きく損なわれる事になります。また、それが中国の狙いである訳
です。

実際、民主党は、鳩山前総理をはじめとして、尖閣問題に関する理
解が現状に関する認識が浅く、日中間の領土係争問題として安易に
認めてしまう態度を諒とするメンタリティが存在するようです。

今回の件では、例え、中国に屈服するにしても、中国の不正不当を
世界に訴え、国際世論を味方にする策を提案したいと思いましたが、
残念ながら、民主党政権では、それを期待する事自体が無駄である
様に思われてなりません。それにしても鳩山元総理は、日米同盟関
係を弱体化し、今回の屈辱事件の遠因を作った点を猛省すべきであ
り、「自分の時は、対中関係は上手くいっていた」とか「自分であ
れば対中関係を良好にできる」と言った雑音発言は厳に慎むべきで
あろうと思われてなりません。


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2010年9月17日金曜日

国産ジェット旅客機「MRJ」製造フェーズに移行

※写真は産経新聞サイトから転載

国産ジェット旅客機「MRJ」製造段階に移行

三菱重工業の子会社、三菱航空機(名古屋市港区)は15日、開発中の国産初
のジェット旅客機「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」が詳細設
計の段階から製造段階に移行したと発表した。今後、部品メーカー各社の製造
作業が本格化する。最終的な組み立ては愛知県飛島村にある三菱重工の工場で
行う。

MRJは中・近距離用を想定した70~90席の小型機。全日空に納入される
第1号機の試験飛行は2012年4~6月、納入が2014年初めに予定され
ている。

MRJについて三菱航空機は現在、全日空から25機、米トランス・ステイツ
航空から100機の受注を得ている。

(産経新聞 2010/09/15)


三菱航空機のMRJが、設計フェーズを終了し、いよいよ製造フェ
ーズに入りました。今年7月のファーンボローエアショーでは、全
く受注を得る事ができなかったMRJですが、当初8月末に予定し
ていた設計フェーズの終了のスケジュールと比べると、半月遅れで
終了した事になります。この業界は開発スケジュールが遅延するの
は常態ですので、半月遅れというのは、まずまずの進捗と思います。

今後は、試作一号機と強度試験機が製造された上、飛行テスト用に
追加試作機が一、二機が製作された後、量産機一号機が製作される
事になる筈です。この量産一号機も当初は、テスト用に用いられ、
実際に、キックオフカストマーである全日空に引き渡される機体は
量産二号機か三号機になるものと思われます。

今の処、MRJを正式発注しているのは全日空だけで、報道された
トランスステーツホールディングスとは、覚書レベルでは50機の発
注と50機のオプション契約を結んでいますが、まだ正式契約に至っ
ていません。ただ、Flightglobalの最近の記事では、トランスステ
ートはMRJの優位性に自信を持っているとの事であり、この契約
が実行されれば北米での販売保守補修のネットワークが確実に形成
されるので、世界最大の市場に対する足がかりになる事は間違いあ
りません。

とはいえ、この処の円高もあって、実機が完成するまでは、余程の
原油価格の高騰でもなければ、他社から発注を得るのは難しいかも
知れません。それでも、我慢していれば円安にも振れるでしょうし、
原油高になる局面も確実に出てきます。MRJはグリーン化が一番
進んだリージョナルジェットですから、その特徴が生かせる営業環
境を待つ我慢が三菱重工にあるかどうかが一番の問題である様に思
います。

三菱重工には、MU-300の販売の不調に我慢できず、一切の権利合切
をビーチクラフト社に売却した処、ビーチ社のヒット商品になって
しまったという苦い過去があります。今回はその轍を踏まない様を
祈りたいと思います。


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2010年9月16日木曜日

中国網は日本の軍事関連技術をこう評価した

中日の陸海空技術の比較

現在、一部のいわゆる軍事マニアはやはり10年前の視線で中国を見ており、と
くに日本との比較では自らを低く評価しているが、実際、中国と日本の軍事技
術面での格差は、想像するほどではない。人民網軍事コラムが伝えた。

一、航空宇宙技術

中日はいずれもすでに自身の第3世代戦闘機を生産している。日本はF-2、中
国はJ10とJ11。研究・開発と模造を通して、中国は第3世代戦闘機の設計・生
産技術を完全に掌握すると同時に、第4世代戦闘機の研究・製造能力をも備え
た。一方、日本はある技術で世界の先進的地位にあるものの、第3世代戦闘機
の設計・生産技術はまだ完全には掌握しておらず、日本はいかなる新しい戦闘
機であれ、やはり米国に依存しなければならない。次に、具体的な技術上の分
析を通して、中日両国の格差は一体どれほどなのか見ることにする。

第1は、空気動力の設計だ。中国はすでに先進戦闘機の空気動力設計の問題は
基本的に解決している。数多くの型を設計することで、経験を備えた航空エン
ジニアと設計士を育成。日本はエンジニアリングの設計では経験不足であり、
F-2の外型の設計はF-16を模倣しており、同時に大量の設計は米国に依存して
いる。従って、現在のところ日本はまだ、先進空気動力外型では独立した設計
能力は有していない。

第2は、構造と素材だ。両国のレベルは大体相当する。設計ではすでに既成の
設計ソフトがあり、コンピューターを使用した機体の3次元デジタル設計で、
中国はすでに日本を先行している。日本の複合素材技術は比較的先進的であり、
機翼複合素材一体高温固体化技術で世界をリードしている。だが、この技術は
まだ成熟しておらず、製造された翼に亀裂が生じたことがある。中国はロシア
の最先端のチタン合金加工技術を導入、同時に中国の複合素材技術もすでに比
較的成熟しており、先進戦闘機の素材技術は完全に掌握していると言える。

第3は、電子システムだ。日本の航空機搭載のアクティブ・フェイズド・アレイ・
レーダー(APAR)は世界の先端を行く。中国はこの分野で差を付けられている
が、一体化電子システムの設計と整合性の面では差はない。中国はデジタル電
送技術を掌握しているが、日本はまだ掌握していない。

第4は、動力システムだ。中国は先進的なターボファンエンジンを自力で設計・
製造できるが、日本は相応する能力は持たない。

上述の分析から、中国の優位性は完ぺきな航空工業システムを備え、システム
の整合能力も強いということが分かる。一方、日本は基礎工業力が厚く、とく
に電子工業の基礎が厚いことで航空電子の面で優位性を持つ。だが、日本のソ
フト設計技術は中国より遅れており、航空機を自力開発する能力はない。

航空技術上、日本のH2ロケットは中国が現在使用している長征ロケットより先
進的である。だが、中国はロケットの信頼性と宇宙観測・制御、有人飛行で日
本をリードしている。日本は衛星技術で優位性があり、この面で日本の電子工
業の基礎は厚く、一方、中国は西側の技術的制限を受けている。だが、中国の
衛星の応用は日本よりずっと幅広い。総体的に言えば、中国は日本をややリー
ドしている。中国は新世代のロケットに成功すれば、全面的に日本を追い抜こ
すことになるだろう。

二、海上面の技術

日本の最先端の金剛級を中国の170艦と比較してみる。(注:170艦とは旅洋
(LU-YANG)II型を指す)確かな情報によると、170艦が使用するのは航空機搭載
のAPAR。一方、金剛級が使用するのは米国のパッシブ・フェイズド・アレイ・
レーダー(PPAR)だ。ミサイル技術上、170艦は自動主導防空ミサイルを使用し
ており、金剛級は半主動制御ミサイルである。対艦ミサイルの格差はより顕著
であり、170艦はすでに世界の先端レベルに達している。中国は現在、世界先
進レベルの戦艦を完全に自力で製造することができる。一方、日本は作戦シス
テムや艦船用主要機体の面でまだ米国に依存しなければならない。もちろん、
金剛級の優位性はミサイル搭載数で170艦を遥かに上回っていることであり、
対潜能力でも中国より優れている。

潜水艦では、中国は専用のディーゼルエンジンはまだ輸入に頼らなければなら
ない。国産ディーゼルエンジンは騒音が大きく、比較効率も低い。日本の技術
は進んでいるが、中国が使用するドイツ製ディーゼルエンジンに比べ技術上の
優位性はない。中国はAIP技術で世界をリードしており、燃料電池の技術でも
世界の先端にある。一方、日本はこの技術は有していない。潜水艦の素材で中
国はすでに世界の先進レベルにあり、騒音制御でも中国は日本に遅れておらず、
ただソナー(水中音波探知器)でやや差がある。フランスやロシアの技術を導
入して以降、この差はやや縮小した。

このほか、中国は2世代の原子力潜水艦を有しているが、日本はない。

以上の分析から、中国は海軍の技術ですでに日本を追い越したようだ。だが過
去、長期にわたり遅れを取り、また債務が過多であることから、中国海軍はそ
の実力でまだ日本に追いついてはいない。中日の海上面での技術の格差は同様
に、中国は完ぺきかつ全面的な軍事工業システムを備え、軍事装備の設計・製
造を自力で完成させることができる。一方、日本は基礎工業力が厚く、ディー
ゼルエンジンやその他の電子技術面でリードしている。だが、米国の一部の技
術サポートに依存しなければ、近代的な軍艦を完ぺきに製造することはできず、
海上での戦闘力をつけることはできない。

三、陸上面の装備・技術

主戦用タンクを例にすれば、大砲や装甲技術で中国は先端を行く。日本は高圧
力大砲を生産する技術は有しておらず、ドイツが生産を許可するタンク砲を導
入するしかない。だが中国はこの面で完全に自主技術を有しており、それはド
イツの技術に匹敵する。日本の優位性は動力システムにあるものの、仮に中国
が1100キロワットエンジンで難関を突破した場合、この分野でも日本に追いつ
くことになる。

四、電子情報技術

日本は世界で電子技術の最も発達した国であり、その基礎工業力は極めて厚い。
これが軍事用の先進的な電子技術をもたらした。だが、日本のハードウエアは
先進的であっても、ソフトウエアは遅れており、かなりの程度、米国に依存し
ている。日本の電子エンジニアのレベルは一般的である。

中国の電子工業の基礎は遅れており、一部の軍用電子デバイスは生産できない、
または低品質、または価格が高すぎることが、軍事電子技術の発展に影響を及
ぼしており、同時に陸海空軍と衛星の電子システムのレベルにも影響を与えて
いる。だが、この数年の間にこうした状況は根本的に変わった。

(中国網日本語版(チャイナネット) 2010/09/14)


上の記事は中国網日本語版の記事です。中国網(チャイナネット)は、
中華人民共和国・国務院直属の中国外文出版発行事業局が管理・運
営するニュースサイトという事になっています。中国では、マスコ
ミは共産党の口舌という事になっていますので、中国国務院は、人
民に、日本の軍事技術について、この様に知って欲しいと思ってい
る事になります。

中国が本当に日本の軍事関連技術をこう評価しているのであれば、
我々は、日本人として少し胸を撫で下ろせるのかも知れません。技
術を正確に評価できる敵とそうでない敵どちらが好ましいかと言え
ば、後者の方が組みやすいと言えるからです。

ただ、中国の軍事専門家に技術評価ができない訳はなく、今回の記
事は、この処、尖閣列島での中国漁船拿捕問題で反日姿勢を強めて
いる中国の世論に迎合した中国政府の「日本恐れるに足らず」キャ
ンペーンの一環と評価すべきではないかと思われます。

評価軸も、自国が導入した外国製兵器については中国の技術として
いるのに対し、日本がライセンス生産や輸入している技術について
は、日本の技術としては評価しておらず、その点で典型的なダブル
スタンダードとなっています。

従って、一部で、首肯できる項目もありますが、全体としては、意
味のある技術比較になっていない様に思われます。
ただ、中国の人民一般には、今後、日本の軍事関連技術を軽視する
見方が広がると考えるべきであると思われます。


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2010年9月15日水曜日

遅かれ早かれ民主党は分裂へ向かう

菅代表再選 バラ色ポスト、一転「白紙」 党内融和へ方向性なく

民主党代表選で再選を果たした菅直人首相は14日夕の記者会見で、「たくさ
んの国民が(代表選に)実質的に参加した。その結果、私が選任された」と胸
を張った。しかし、国会議員票では小沢一郎前幹事長に12ポイント(6票)
差まで迫られたのも事実で、首相は巨大な「党内野党」を抱えたことになる。
党内融和に向けた第1関門は当然、人事だ。ところが、記者会見を通じて首相
の口からは、その方向性すら語られなかった。(船津寛)

代表選中の首相は「小沢氏に勝つ」ことしか考えていなかったようだ。そのこ
とは、後先を考えない人事の“空手形”を党内にばらまき続けたことでも明ら
かだ。

若手議員には「(党所属議員のほぼ全員にあたる)400人で内閣を作る発想
で行こう」とささやき、女性議員に対しては「半分を超える閣僚が女性という
国が北欧などにはあり、豪州は女性首相だ」と、閣僚ポストまでちらつかせた。

首相は14日午後の投票を前にした政見演説でも「民主党の原点は参加型民主
主義とそれを支える自由闊達(かったつ)な議論だ。全員参加の内閣で本当の
政治主導を実現する」と語った。

この約束を“誠実”に果たそうとすれば、閣僚や副大臣、政務官の大幅な定数
増は避けられないだろう。

党運営に関しても「50~100の特命チームをつくり、みなさんに得意なチ
ームに入ってもらう」と提言。自らが唱える「居場所と出番のある社会の実現」
を、国会議員相手に実践しようというのだろうか。

ところが、首相は再選後の記者会見で、人事構想について質問されると、苦虫
をかみつぶしたような表情で「全く白紙」とのみ語った。代表選ではあれだけ、
バラ色の人事構想を披瀝(ひれき)しながら、再選が決まった途端に「白紙」
とは…。首相の構想に淡い期待を寄せ、「菅直人」と一票を投じた議員は、さ
ぞかし肩を落としたのではないか。

現実を見据えると、首相は週内に具体的な閣僚・党役員人事を固めなければな
らない。首相本人が記者会見で言っていたように、国連総会に出席するため、
21日から米ニューヨークに出かけるためだ。首相の勝利に貢献したと自負す
る議員からはさっそく、「幹事長は中立派から」「首相補佐官はベテランに代
えたほうがいい」といった意見具申が相次いでいる。激戦を生き残った首相だ
が「勝利のツケ」に悩まされそうだ。

(産経新聞 2010/09/15)


端的に言えば、今回の代表選は、民主党に覆う事のできない亀裂を
生じさせたと考えるべきであると思います。代表選に勝利する事の
出来た菅代表ですが、今後の人事では、誰一人満足させる事はでき
ません。菅代表を支持した人も、小沢氏を支持した人も等しく不満
を抱く筈です。

その理由は、上記の記事からも明らかです。代表選の期間中、菅代
表は、バラ色の人事構想をばら撒きました。菅代表を支持した人は
菅氏が当選した事で、当然、ポストが得られるものと期待している
筈です。しかし、現内閣の政務三役は、ほぼ菅代表支持であった事
を忘れてはなりません。代表選で、菅代表を積極的に支持した人を
登用しようとすれば、同じく、菅代表を支持した人を現在のポスト
から外さなくてはならなくなるのです。外された人からすれば支持
したにも拘わらず、人事で外される事になるので恨みを含まざるを
得ません。

加えて、挙党体制の約束があります。今回の代表選で国会議員票は
ほぼ半分に割れました。双方とも、ポストの約束をばら撒きながら
支持を獲得しようとしました。処が、開票後は、挙党体制という事
になります。具体的に言えば、小沢氏を支持した人も、きちんと処
遇しなければ、挙党体制とは言えない事になります。つまり、菅氏
は、挙党体制を実現しようとすれば、現在の政務三役や党役員の半
分のポストを、自陣営の犠牲の下に自分の再選に反対した連中に渡
さないといけません。そう出来なければ、挙党体制にはならず、小
沢支持派は、恨みを託(かこ)つ事になります。

全ての人を満足させようとすれば、菅代表を支持した人、しなかっ
た人を全て人事的に処遇する必要があります。その為には、現状の
ポストを少なくとも二倍にしなくてはなりません。具体的には政務
官を一人から三人四人と増員するとか、無任所の大臣を増加させる。
あるいは、幹事長補、政調会長補といった党役員を大幅に増員する
といった対応です。

人事的には、これでなんとかなるかも知れません。しかし、菅内閣
は、今度は国会で立ち往生をする事になります。衆議院で300議席
を占めるものの三分の二を確保するに至っていない上、参議院では
過半数を大幅に割り込んでいます。予算案は通せても、政策を実行
する為の法案は、国会を通過させる事はできません。政府は、ねじ
れ国会に対して無策を続ける事になります。

当然の事ながら、菅内閣の支持率は趨勢的に低下し、民主党支持も
それに引きづられて低下していく事になります。三年後の衆議院選
挙では、民主党の惨敗が確実と予想される様になれば、特に、今回
小沢氏を支持した一年生議員は、保身に走らざるを得なくなります。
「一兵卒」という事で政権と距離を置く小沢氏は、格好のお神輿に
なります。

自民党は小沢新党に嫌悪感を隠さないでしょうが、公明党は、小沢
新党との連携を拒否しないでしょう。小沢氏が、衆議院議員を150
人引き連れて新党を立ち上げれば、比較第一党あるいは野党第一党
が簡単に出来上がります。後は数合わせになります。
衆議院、参議院で共に多数になる組み合わせを確立する為の合従連
衡が始まる事になります。

では、小沢新党は何時頃、立ち上げる事になるのでしょうか?菅内
閣に対する国民の支持が溶け去り、衆議院議員の絶望感が広がるの
には、今後半年~一年程度が必要になります。その上、衆議院選挙
に合わせた地方組織を確立するにも時間がかかります。地方組織確
立には、最低でも二年は欲しい処です。その一方、有権者に対して
新党をアピールできる期間はそれ程長くはありません。この両者を
合わせて考えれば、一年後を目処に、小沢新党立ち上げの工作が始
まる事になるのではと考えられます。

ただ、ここで立ち上げられる小沢新党は、国会議員が自己保身の為
に立ちあげる政党であり、みんなの党程の理念的なバックボーンや
大義名分がありません。民主党からの分派行動ですから、イデオロ
ギー的には、民主党と自民党を結んだ中間点より、民主党寄りにな
る筈です。その立ち位置で、はたして国民の支持を集められるかと
いう問題があります。

民主党は、菅代表の下で、人事で失敗すれば、直ぐにでも、また、
人事が上手く収まっても、半年から一年程度で、やはり新党を模索
する動きが出、場合によっては新党が絡んだ再度の政権交代が実現
する可能性があります。ただ、そこで出来る新党の寿命は、それ程、
長くはならないのかも知れません。

政界の混乱≒日本の混乱は、今後も、ますます振幅を大きくしなが
ら続いていくように思われてなりません。


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2010年9月14日火曜日

民主党政権の中国に対する認識の甘さが事を大きくした

中国側の軟化期待し船員帰国さす…「違った状況」

沖縄県・尖閣諸島付近で海上保安庁巡視船と中国トロール漁船が衝突した事件
で、日本政府は中国側の軟化を期待し、中国人船員の帰国を認めた。民主党代
表選(14日投開票)を控える菅直人首相らが軟着陸を模索しているためだ。
だが中国側は足元を見るかのように態度を硬化させている。
 「しつこいな」
仙谷由人官房長官は中国の戴(たい)秉(へい)国(こく)国務委員(副首相
級)が12日午前0時(日本時間同1時)に丹羽宇一郎駐中国大使を呼び出し
たことについて、苛立ちをあらわにした。中国側は7日に衝突事件が発生して
から、何度も丹羽氏に抗議したうえ、戴(たい)氏まで乗り出してきたからだ。
外務省幹部は「中国側から丹羽氏が抗議を受けたことばかり報じられているが
おかしなことだ。丹羽氏は自ら2回出向き、抗議している」と強調する。
もっとも程永華駐日中国大使は8日に外務省を訪れたが、日本側は公表しなか
った。武正公一外務副大臣は13日の記者会見で未明の丹羽氏呼び出しを「遺
憾」としたが、今後程大使を呼びつけることは否定した。

仙谷氏は7日の事件発生時、代表選に追われる首相に代わり、官邸に外務省や
海上保安庁の幹部を呼んで指揮をとった。弁護士出身の仙谷氏が最も懸念した
のが、法的手続きの瑕(か)疵(し)で外交問題に発展することだったという。
事件発生から半日後に船長逮捕を決めたのはそのためだ。

翌8日午前の記者会見で、仙谷氏は「日本国内もヒートアップ(過熱)しない
で冷静に対処していくことが必要だ」と答えている。中国政府が対応を過熱さ
せることは、予想していなかったようだ。

しかし今月中旬に日中両政府が予定していた東シナ海ガス田共同開発に関する
条約締結交渉第2回会合は、船長逮捕に抗議する中国側の都合で延期された。

日本政府は13日昼、船長を除く中国人乗組員14人を帰国させた。仙谷氏は
同日の記者会見で「漁船の違法操業との関係でガス田協議を中止するといわれ
ても困る。私の予測では、14人と船がお帰りになれば、また違った状況が開
かれてくる」と述べ、中国側の対応の変化に期待感を示した。

首相も13日夜、記者団に「日中双方の努力により戦略的互恵関係がしっかり
と発展することが必要だ」と述べた。首相らの姿勢について、外務省幹部は
「代表選があるので今は中国と荒波を立てたくないのだろう」との見方を示した。

(産経新聞 2010/09/13)


仙石官房長官の8日の発言にはあきれ返ってしまいます。日本のEEZ
内で不法操業を行い、取締りの巡視船に船をぶつける横暴を行った
中国船を拘束した事への中国の反応を気にするのではなく、日本国
内のヒートアップを気にしたというのは如何にも国民を馬鹿にして
いると言わざるを得ません。

仙石氏は、余程、日本国民が中国に対して悪感情を抱くのが心配で
あった様です。実際には、中国の反応の方が余程感情的であり、不
当であると言えます。海上保安庁は、中国船が巡視船に船を意図的
に衝突させたビデオを持っているのですから、それを堂々と公開し、
日本側が当該船を拘束した事の正当性を明示すれば良かったにも関
わらず、中国に配慮して、そうしなかった事が、逆目に出て中国側
の傘にかかった反応を招きよせてしまった訳です。

仙石氏の頭の中では、中国は「平和愛好勢力」ですから、日本の
「官憲」を押さえさえすれば、平和が回復されると思い込んでいた
のでしょうが、残念ながら中国は、仙石氏のお花畑的見解とは異な
り、非常に狡猾です。中国国内世論を扇動しながら、それを理由に
日本側の更なる譲歩を求める事は確実です。

それに加え、東シナ海ガス田共同開発に関する条約締結交渉への影
響についても「困った」などという馬鹿な事をマスコミ相手に言っ
ている様では、外交交渉にも何もなりません。相手が困っていれば
それに付込むのが外交の常道である事は常識ですが、官房長官とい
う要職を拝命している割には、仙石氏はそういう常識にも欠ける様
です。

今日、開票が行われている民主党の代表選挙について、悪い言い方
をすれば、便秘を選ぶか下痢を選ぶかみたいなものであって、私は
全く不毛の選択であると考えていますが、それにしても、自らの売
国的行動に関して全く反省のない政府首脳は、代表選の如何に係わ
らず即刻交代すべきと言わざるを得ないのです。


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2010年9月13日月曜日

日本版GPS補完衛星打ち上げ成功

※写真はJAXA Webサイトから転載

衛星「みちびき」搭載 H2Aロケット打ち上げ成功

全地球測位システム(GPS)の精度向上をめざす準天頂衛星「みちびき」を
載せた大型ロケットH2A18号機が、11日午後8時17分、鹿児島県の種
子島宇宙センターから打ち上げられた。約28分後、みちびきを高度約270
キロで正常に分離し、地球を回る軌道への投入に成功した。H2Aの打ち上げ
成功は12回連続、通算で17回。

みちびきは、縦横約3メートル、高さ約6メートルの箱形で重さ約4トン。日
本のほぼ真上の空(準天頂)を通る軌道からGPSを補う信号を送り、山間部
やビルの谷間などでも精度よく利用できるようにする準天頂衛星システムの1
号機。宇宙航空研究開発機構によると、正確な軌道への投入と太陽電池パネル
の展開が確認された。

みちびきは今後、地球を回りながらエンジン噴射を繰り返し、約2週間かけて
平均高度3万6千キロの所定の軌道へ移る。順調にいけば年末ごろから測量や
カーナビなどの実証試験が始まる。地上設備や打ち上げ費用を含む総開発費は
約735億円。文部科学、国土交通、総務、経済産業の4省で開発した。

準天頂衛星システムは、米国が運用するGPSの機能を補完するために日本が
開発している。現在10メートル程度あるGPSの誤差を1メートル以下にす
る狙いもあり、交通、観光、防災などさまざまな分野での活用が期待されてい
る。ただ、衛星1機が日本上空にとどまれるのは1日8時間で、24時間態勢
の運用には最低3機が必要。2機目以降の見通しはたっていない。

(朝日新聞 2010/09/11)

H2Aも18回目の打ち上げとなり、見ていて本当にハラハラ感
のない安心できる見ものとなってきました。これで打ち上げ成功
率は94.1%から94.4%になり、数字上は僅かな上昇ですが、実感の
上では、また、一歩地歩を固める事ができた様に感じられます。

今回の打ち上げでは、米国のGPS衛星を補完する準天頂衛星が搭載
されています。GPS衛星は地上二万キロの軌道を飛行するのに対し
準天頂衛星は、地上四万キロの軌道を飛行し、一日の内8時間は
日本では、ほぼ頭の真上に停留する軌道を取ります。この為、GPS
衛星が地形や建物が障害になって見えない場合でも、天頂付近の準
天頂衛星がGPS衛星を補完する事ができるという訳です。例えば、
東京の銀座通りでは、両側がビルになっているので、10%程度の場
所でしかGPS衛星4機からの信号が得られませんが、準天頂衛星を
使うと90%の場所で衛星4機からの信号が得られる様になります。

更に、準天頂衛星は、信号の精度が高いので、通常のGPS信号では
10m程度の精度しか得られないのに対し、1m程度の精度(理論的に
はcm級の精度)を実現できる事になります。衛星測位システムとし
ては、米国のGPS以外に、ロシアのグロノス、中国の北斗が構築中
ですが、軍事用途もあり、この1m級の精度の獲得を目標にしていま
す。日本は、GPSを補完する事で、いち早く、高精度の測位精度を
獲得する事になります。

準天頂衛星については、これまで、785億円の巨費が投じられてい
ます。この内、衛星そのものは打ち上げ費用も含め、200億円程度
であり、それ以外の600億円弱は、運用施設や利用サービスなどへ
の投資です。今回の「みちびき」だけだと一日8時間しかサービス
できませんが、あと2機あれば、24時間サービスが可能となりま
す。つまり、GPS補完機能だけであれば、あと衛星2機、400億円~
500億円程の投資で、また、軌道予備を含めても600~700億円程度
でプロジェクトを完成させる事ができるのです。

そう考えると今回の打ち上げで準天頂衛星プロジェクトを止めてし
まう事は、実験を行う為だけに、完成形の半分もの予算を消費して
しまう事であり、非常に無駄が多いプロジェクトという事になって
しまいます。税金の無駄使いを防ぐという点からも、是非、完成形
の実現を目指して欲しいと思われてなりません。


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2010年9月3日金曜日

日本オプションを捨てる愚を犯すロシア

露で対日戦勝記念日 極東各地で65周年式典を開催 
「日本は歴史をねつ造」と上院議長


日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日をロシアが事実上の対日戦勝
記念日に制定したのを受け、極東各地では同日、戦勝65周年を祝う式典や軍
事パレードが行われた。サハリン(樺太)の行事では、ソ連の対日戦を「解放」
戦争だったとする発言が政官界から相次ぎ、ミロノフ上院議長は日本の北方領
土返還要求を「歴史の捏造(ねつぞう)だ」と断じた。

新記念日の正式名称は法制定の過程で、「第二次大戦終結の日」と和らげられ
た。しかし、その狙いが、ソ連による日ソ中立条約を破っての対日参戦や北方
領土占拠の正当化にあることが改めて鮮明になった。

北方領土を事実上管轄するサハリン州の州都ユジノサハリンスクでは2日、軍
事パレードを含む式典が行われて市民ら数千人が参加したほか、「第二次大戦
の教訓と現代」と題する「国際学術会議」が開かれた。

ミロノフ議長はこの会議で、「ソ連軍は中国東北部や北朝鮮、南サハリン、ク
リル諸島(千島列島と日本の北方四島)を解放した」と主張し、「勝利を祝う
ことは、戦争の結果見直しを許さないとの警告でもある」と述べた。また、州
高官は式典で、ソ連は対日戦で「ロシア固有の領土を取り戻した」などと演説
し、「偉大な勝利」を祝福した。

この日は極東の沿海州やカムチャツカ地方などでも式典や軍事パレードが行わ
れ、中露国境のアムール川沿岸では中国側との合同行事も予定されている。

(産経新聞 2010/09/02)


ロシアが対日戦勝記念日を改めて制定するのは、日本の北方領土返
還要求を断ち切る為です。しかしながら、いくらロシアが日本の主
張を「歴史のねつ造」と強弁しようとソ連が日ソ中立条約を破って
侵攻した上、ポツダム宣言受諾に基づき降伏しようとした日本軍を
騙まし討ちにし、占領地を拡大しようとした事実に蓋をする事はで
きません。

勿論、次世代のロシア人を反日教育で洗脳するのは、ロシアの自由
です。しかし、日本がそれに付き合う必要は毛頭ありません。ロシ
アはそうする事で、日本との蜜月という格好の経済発展の機会を投
げ捨てていると言えます。日本にとっては、ロシアとの関係が現状
レベルに留まるだけですから、実際には、それ程、大きな影響はな
いと言えます。つまり、日本にとってロシアは繁栄にとっての必須
条件ではありません。

ロシアが経済発展する為には、シベリア、極東ロシアを開発する必
要があります。市場、技術、資金が不足しているロシアにとってパ
ートナーは日本以外にも中国や韓国が考えられます。しかし、中国
の場合は、技術面で不安な上、協力の名の下の資源収奪、大規模な
中国人不法入国に悩んでいる状態であり、韓国の場合は、経済規模
と資金力の点で見劣りがする事は否めません。ロシアにすれば、東
シベリアの資源開発の為には、中国と日本を両天秤にかけ、好条件
を引き出す事が一番望ましいと思われますが、北方四島の領有にこ
だわる事で、日本オプションを捨て去る事になるわけで、それがロ
シアの意思なのであれば、日本としては、ロシアと積極的に協力し
なけらばならない理由がある訳ではありません。

実際、日本の経済は、マクロ的に言えば、その成長に資源を要する
事が非常にすくない効率的な経済となっており、この点は、資源浪
費型経済の為、経済成長率と同率かそれ以上の資源を必要とする中
国や韓国とは好対照をなしています。この為、資源確保という側面
から、あえて日本が北方領土問題をあきらめてまでロシアの資源開
発に参加しなければならないという理由はないのです。

それに加え、サハリン1,2の開発でも分かる様に、ロシアでの資
源開発は常に、政治介入により開発採算や資源の安定供給が脅かさ
れるリスクがあります。リスクのある資源を輸入するのであれば、
余程条件が良くなければ輸入する意味がありません。

日本からの距離の近さによる輸送コスト面での有利さがあるのでは
という議論がありますが、海運のコストは距離の大小で極端な違い
がなく、寧ろロシア内陸からの資源輸出港までのコストの方が問題
であり、他の地域からの輸入と比べ特段の有利さはありません。

つまり、日本にとって、ロシアは資源供給国とての重要性はそれ程
大きなものではなく、輸出市場としてしかロシアとの経済協力を進
める誘引に乏しいと言わざるを得ないのです。しかも輸出市場とし
てのロシアは、確かに成長著しいBRICs諸国の一つに数えられてい
ますが、ブラジル、中国、インドに比べ、ロシアの人口規模は一番
小さく、また、成長市場としての有利さも特にありません。

この様に考えると、平和条約も締結されていない日ロ関係を改善す
るボールは、ロシア側にあるのであり、ロシアが現状を維持したい
のであれば、日本側から日ロ関係の改善する強い理由はないと言え
る様に思われるのです。


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2010年9月2日木曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (2)


将来戦略に関する議論

国務委員戴秉国は、2009年7月に、中国の「中心的な利益」を、国家の安全と
国家主権、領土の保全という基本的な仕組みを保護し、安定した経済的、社会
的な発展を継続する事であると定義している。

中国の現在の戦略は、自身の経済発展の助けになることを確実とするために外
部の環境を管理することである。この戦略は、北京の外交政策や安全保障政策
の関係者によって共有されているように見える。しかし、中国がこれらのゴー
ルを達成する方法やそれを近隣国や合衆国との紛争なしに実現する方法につい
て、中国の中の意見の違いが、時折、特に学術的な集まりで表面化する。

ある人は、1990年代初期に元最高指導者の鄧小平によって提供された伝統的な
方針を好む。「静かに観察し、位置を守り、静かに対処し、能力を隠し、時節
を待つ、低姿勢を保ち、リーダーシップを決して要求しない。」
この指示は、鄧小平の中国の外交政策と安全保障戦略についての認識を反映し
たものである。そして、中国が地域や国際的な問題に対処することでより活発
で建設的役割を演じさせようとする人々の注意をそらし、その間に、野心を排
除して国内の発展を促進して中心的な国益を補強しなければならないという鄧
の確信を表したものである。

しかし、別のグループは、中国の国力の成長に伴い、この限定的関与手法は、
もはや適切とは言えないと考えている。このグループは、中国が中国の影響力
を強化し、隣人とより遠い場所にいる列強に対し、中国の台頭が彼らの安全保
障に対して不安定化の脅威をもたらさないことを保証するために地域の国家や
合衆国と活発に協力しなければならないと主張する。

その他の人々は、中国は、その国益を確保し、中国の影響力を束縛しようとす
る合衆国による圧力に抗する為に、他の諸国(例えば台湾、日本、韓国や他の
東南アジア諸国)に対して、より強圧的で断定的に振舞うべきであると信じて
いる。

人民解放軍は伝統的な要請である中国を攻撃から守り、台湾の独立を阻止し、
紛争解決を北京の望む方針で行う様に影響力を行使すること、そして、南シナ
海やその他の場所での領土紛争では中国の主張を防衛すると言う役割を担って
きたが、人民解放軍が、中国の国益を守り発展させる為に、どの様な新しい能
力を発展させるかについて、中国の軍や民間の理論家の間での活発な議論があ
る。幾人かの上級士官や民間の理論家は、人民解放軍の軍事力の展開能力の増
強を主張する。同時に、他のグループは、国際平和維持や人道支援や、災害救
援や海上交通路保護と言った分野の能力をゆっくりと増強する事を主張してい
る。中国の現在の防衛政策と兵力計画に、これらの考慮点がどの様に反映され
ているかは不明である。しかし、これらの考慮点が防衛計画についての中国の
考えに影響を及ぼすであろうことは、ますます明らかになっている。

新しい歴史的任務

中国の指導者は、2004年に軍事部門の基礎的な任務を確立した。公式には、「
新世紀の新段階に於ける軍事部門の歴史的使命」(新世紀新階段我軍歴史使命)
いう表題がつけられている。この新歴史的使命は、主として国際安全保障環境
や国家安全保障の拡張的定義についての中国指導者による評価や調整に焦点が
当てられている。これらの任務は、2007年には、中国共産党憲章の修正として
体系化された。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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2010年9月1日水曜日

韓国 イージス艦二番艦「栗谷李珥」就役


※写真上は朝鮮日報Webサイトから、下は聯合ニュースWebサイトからの転載

韓国軍:イージス艦「栗谷李珥」が就役
昨日、大宇造船から韓国海軍へ引き渡し 1000個の標的を同時に追跡可能


韓国にとって2隻目のイージス艦となる「栗谷李珥(イ・イ)」が、本格的な
任務に就いた。
大宇造船海洋は31日、玉浦造船所(慶尚南道巨済市)で7600トン級イージス駆
逐艦、栗谷李珥を韓国海軍に引き渡した。イージス艦は、目標物の探索から破
壊までを同時に行う「イージスシステム」を搭載した軍艦だ。これで韓国海軍
は、韓国初のイージス艦「世宗大王」に続き、2隻のイージス駆逐艦を保有す
ることになった。

栗谷李珥は、およそ1000個の標的を同時に探知・追跡し、このうち約20個の標
的を同時に攻撃可能だ。また、広域対空防御、地上作戦支援、航空機・ミサイ
ルや弾道ミサイルの自動追跡など、さまざまな技術を備えている。最大速力は
30ノット(時速55.5キロ)で、およそ120発の対艦・対空ミサイルと長距離対
潜魚雷などを搭載し、乗組員は約300人。

大宇造船海洋は、2006年6月に韓国海軍と契約を結び、設計・建造には4年2カ
月を要した。同社の関係者は、「栗谷李珥には、イージス関連の戦闘装備だけ
でも300以上の人員が導入され、高い技術水準が必要だった。韓国初の戦闘潜
水艦・張保皐(チャン・ボゴ)から、忠武公李舜臣(イ・スンシン)、大祚栄、
姜邯賛(カン・ガムチャン)など、最新鋭の艦艇を建造してきた経験が、今回
の建造にも大いに役立った」と語った。

栗谷李珥という艦名は、韓国海軍将兵によって命名され、壬辰倭乱(文禄・慶
長の役)が起こる前から「十万養兵説」を主張した李珥の「備えあれば憂いな
し」の精神を盛り込んだ、と大宇造船海洋側は説明した。

(朝鮮日報 2010/09/01)

韓国2隻目のイージス艦「栗谷李珥」、海軍に引渡

韓国2隻目のイージス駆逐艦「栗谷李珥」(7600トン級)が試運転を終え、
31日に海軍に引き渡された。
慶尚南道・巨済の大宇造船海洋玉浦造船所で同日午前、海軍関係者ら100人
余りが出席するなか、引渡式が行われた。2006年に建造契約が結ばれ、4
年2カ月の工程を経て完成し、これまで国防技術品質院や海軍、業界関係者な
ど約150人からなる試運転評価チームが、戦闘システムなどのテストを実施
してきた。

(後略)

(聨合ニュース  2010/09/01)


韓国の二番目のイージス艦である「栗谷李珥(ユルゴク・イイ)」
が就役しました。2008年11月14日に進水しましたから、艤装に約2
年を要しています。一番艦と比べるとほぼ同程度の時間がかかって
います。通常は、二番艦は一番艦に比べ建造期間は若干早くなるの
が通例ですが、イージスシステムを搭載する場合は、その調整を米
国からの技術者が行いますので、予定した時間をきっちり使ったの
かも知れません。

日本のイージス艦との違いですが、イージスシステムにあたご級と
同じベースライン7を使っている点は同じですが、対潜ミサイルと
国産巡航ミサイル用に国産開発の垂直発射装置を80基のMk41VLSと
は別に40基搭載している事、及び、対潜システムとして浅海に対応
した別開発のシステムを採用しているのが主要な相違点ですが、細
かく見ると同じ、米国のアーレイ・バーク級をもとにしたのにこれ
程違うのかと思える程の違いがあります。

一番艦の世宗大王は、この8月に行われたリムパックの際に、米国
でのイージスシステムの能力評価試験を受けた様です。その一番艦
で作成された運用手順に基づいて、栗谷李珥は就役後の慣熟訓練が
行われる事になります。この点、一から運用手順を作成しなければ
ならなかった世宗大王に比べ、一定水準の運用レベルの到達する期
間は短くて済むものと思われます。

韓国のイージス艦は、今年中に三番艦が進水する予定であり、2012
年には就役予定です。それに加え、更に三隻を追加建造する計画が
あります。韓国のイージス艦建造計画は、仮想敵として日本を強く
意識していた金大中・盧武鉉政権下に推進されたものであり、北朝
鮮を主敵と考える李明博政権の下で、この三隻の追加建造が実現す
るかどうかは、不明です。一隻1000億円以上を要する高価な艦が、
韓国にとって本当に使いでのある装備か否か、きちんと評価して貰
いたいものだと思われてなりません。


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2010年8月31日火曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (1)


第二章 中国の戦略の理解

概観


中国は、米国における「国家安全保障戦略、国家防衛戦略、国家軍事戦略」に
相当するものを出版しておらず、その代わりに白書や、講話、記事を、政策や
戦略の議論を交換する主要なメカニズムにしている。中国の軍事、安全保障問
題に関する透明性は、二年置きの防衛白書の発行や、2009年の国防省公式Web
サイトの設置によりここ数年改善している。一番最近の防衛白書(2008)は、中
国の防衛戦略を国家安全保障と統一に対する支持、及び、国家発展の利益を以
下によって確保すると要約している。

●オールラウンドな調整により中国の国防と軍隊の発展を維持する事を達成する。
●主要な測定基準として情報化を用いる事で、軍隊の効率を拡張する。
●積極防衛の為の軍事戦略を実行する。
●自衛の為の核戦略を推進する。
●中国の平和的発展の助けとなる安全保障環境を促進する。

しかしながら、中国は軍事的な投資、戦略や軍事投資の目的がわかる様な選択
の理由、開発中の軍事能力について、より多くを開示する必要がある。
人民解放軍の戦略的な見方の研究は、不確かなままであり、外部の観察者にと
って、中国の軍事建設の基礎となっている公式の戦略、指導者の武力使用に対
する考え方、人民解放軍の編成やドクトリンを形作る非常事態計画、平時と非
常時における戦略的表明と実際の政策決定、等々については、直接的な洞察は
殆どない。しかしながら、伝統、歴史的パターン、公式見解、報告書類、特定
の軍事的側面の強調、主導的な外交努力によって中国の戦略についていくつか
の一般化を行う事は可能である。

中国の戦略的な優先順位

中国の指導者は、いくつかの優先順位の組み合わせに基づいて国家的な意思決
定を行っている様に見える。その優先順位とは、
・中国共産党による支配の継続
・経済成長と発展の継続
・国内の政治的安定の維持
・中国の主権と領土統一の防衛
・強国としての中国の国際的な地位の確保
等である。中国の戦略は、その時々にこれらの優先順位の間でバランスを取る
事である。中国の指導者は、21世紀の最初の10年を「戦略的な機会の窓」と表
現しているが、この意味は、地域あるいは国際的な条件が、概ね、地域的な優
越性や国際的な影響力の面での中国の台頭に好意的であり、この機会の窓を出
来るだけ長期にする事を探っているのである。

中国の指導者は、1978年から始まった中国の全体的な戦略と政策である「改革
と開放」を継続し、支援する事を約束している。しかし、中国の上級指導者達
の声明や論評を見ると、この二つの中核的認識は、いくつかの矛盾と挑戦を生
んでいる様に思われる。

その第一は、改革は、中国の経済的、政治的、軍事的な急速な発展を実現する
が、政治的安定に対しては大きな挑戦となる。
第二に、中国の改革は、もはや孤立しておらず、だんだんと国際的な安全保障
環境に対して影響をあたえる様になっており、また、その逆もある。

この二重の認識は、共産党指導者に、2020年までは、外部との緊張、特に、列
強との関係を管理して、中国の発展に有利な環境を維持する事を結論づけた。

北京の経済力の拡大は、紛争を解決し、地域協力を推進すると同時、部分的に
は、その国益に対する意欲を示す事で、より活発な対外的な姿勢を導く事になる。

中国の2008年の防衛白書は、それ以前の立場から大きく異なり、「中国は、国
際的なシステムと将来に対する重要なメンバーとなっており、中国の運命は、
国際的な共同体により密接に関連する様になっている。他の世界から孤立して
は中国の発展はなく、中国なしでは、世界が繁栄と安定を享受する事もない」
と記している。

それにも関わらず、中国には、指導者さえもコントロールできない力がある。
それらは、内向きで、徐々に強まっており、中国を平和的な路線から引き離す
力がある。

●ナショナリズム
共産党指導者は、中国の経済的な達成と国際的な存在感の増加を基礎として、
党の正当性を、引き続きナショナリズムに頼っている。しかしながら、この手
法は危険性を伴っている。中国の指導者は、世論を操作し、共産党に対する批
判をそらす為に愛国心を煽っているが、これらの力は一度始まれば、制御が困
難で、容易に国に背を向ける事に気がついている。

●経済
経済発展の継続は、党の一般的な正当性の基礎となり、軍事力の裏づけになっ
ている。しかし、資源に対する要求の予期しない増加や、国際的な資源不足や
価格ショック、資源の入手への制約は中国の戦略的な方向性や行動に影響を与
え指導者に対し、軍事力を含む、資源配分の優先順位付けの再評価を行わせる
かも知れない。

●国内的な政治的圧力
体制維持や中国共産党支配の維持の必要は、中国の指導者の戦略的な方向性を
形作り、彼らの多くの選択を導く。共産党は政府の責任を改善したり、透明性
や説明責任と言った体制を弱める事になる長期的な人民の要求に直面する事に
なる。

●人口学的な圧力
人口学的な圧力は将来増加する。そして、高い成長率を支える中国の能力への
構造的な制約となる。

●環境
中国の経済発展は、大きな環境的な犠牲の下に達成された。そして、中国の指
導者は、この問題が経済発展、公衆衛生、社会的安定性と中国国際的イメージ
を脅かすことによって体制の正当性を徐々にむしばむことを気にかけている。

●海峡をまたぐ政治変動
2008年3月に台湾総統に馬英九が選出され、緊張が緩和したにもかかわらず、
台湾との軍事紛争の可能性と米国の軍事介入は、人民解放軍の最も緊急の長期
的関心事のままである。海峡を挟む潜在的な紛争は、中国の指導者が、台湾の
永久的な喪失が深刻な体制の政治的合法性と政治的地位を徐々にむしばむと判
断する事で、人民解放軍の近代化を推進する誘因となる。

●地域的な関心
世界的な「発火点」(例えば、北朝鮮、南沙群島、尖閣諸島、アフガニスタン、
パキスタン)に中国が近接しており、それへの介入によって、地域的な不安定が、
中国の国境全体に広がり、経済的な発展と国内の安定が損なわれる事を防ぎた
いと中国の指導者は考えている。外国の資源を入手し、輸送する中国の能力に
対する脅威や朝鮮半島の混乱といった地域的変動は、中国の軍事力の発展と配
備パターンの変動につながる。そして、近隣の国々もその影響を受ける事になる。

(Department of Defence 2010/08/16)

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2010年8月30日月曜日

ボーイング787 六回目の納入延期 今度はエンジン

※写真は、Boeing社Webページから転載

これで3年遅れ、ボーイング787納入延期

米航空大手ボーイングは27日、2010年10~12月期に予定していた次
期主力中型旅客機「787」の第1号機の納入時期が、11年1~3月期に遅
れると発表した。

延期は6回目で、当初予定の08年5月から3年近く遅れることになる。燃費
効率の高い787への入れ替えを予定する全日本空輸や、会社更生手続きを進
める日本航空のコスト削減計画にも影響を与えそうだ。

ボーイングは納入延期の理由について「最終段階となる今秋の飛行テスト用の
エンジン供給状況を精査した結果」と説明している。

世界で最初の納入先となる全日空は55機の購入契約を結び、11年3月まで
に8機、12年3月までに計20機を導入する計画を公表していた。今回の延
期で変更を迫られる可能性が高く、コスト削減が計画通り進まない恐れもある。

一方、35機の購入を決めている日航も11年3月に1号機を導入する予定だ
が、ずれ込む可能性が出てきた。更生計画案ではボーイング747など大型機
の一斉退役を盛り込み、787などに機種数を絞り込む方針を打ち出していた。
納入延期が長期化すれば、日航の経営再建にも影響が及ぶ恐れもある。

(読売新聞 2010/08/27)


ボーイング社の発表では、ロールス・ロイス社からのエンジン引渡
しスケジュールを詳細に検討した結果、引渡し時期の延期を決めた
との事ですが、それ以前にも、水平尾翼の加工精度が、期待したレ
ベルに達していないとの事で2~3週間程度、引渡しが延期される
と予想されていました。それに加え、エンジンの引渡しスケジュー
ルの問題が出た事で、二ヶ月以上の遅延を已む無しとボーイング社
も判断したものと思われます。これに対し全日空は、「遅延は遺憾
であるが、最高の機体の引渡しを最短の遅延で行える様努力が払わ
れるものと信じている」と多少開き直った様なコメントを出してい
ます。

更に、この引渡し遅延の問題について、FlightGlobalは以下の通り、
テスト飛行にも使用される9号機体用のエンジンの引渡し遅延によ
るものであると報じています。

FlightGlobalの記事を抄訳します。

9号機体向け量産エンジンの欠如が787の遅延を招く

ボーイング787 9号機体用のロールス・ロイス社のトレント1000エンジン
が間に合わなかった事が、今回の遅延の最大の要因となった。9号機体は、三
番目の量産機で最初の商用機となる機体となる予定だった。

「我々は、ETOPSのテストを9号機体で行う為にエンジンが必要だった。」と
ボーイング社の民間機部門の長であるジム・アルバーCEOは語った。

トレント1000エンジンの不足は、最初に全日空に引き渡される予定であった7
号機体にも影響を与え、2010年第四四半期だった引渡し予定は、2011年第一四
半期になる見込みとなっている。

ETOPSのテストに加え、9号機体は、今年第三四半期の末~第四四半期にかけ
て行われる、システム機能テストや信頼性テストにも使用される事が予定され
ていた。

ボーイング社の6機のテスト機の内、ZA001を除く5機が、3,100時間テスト飛
行キャンペーンの一環としてETOPSテストに参加する予定だった。

ボーイング社もロールス・ロイス社も、Aパッケージエンジンの将来計画につ
いて詳細を公表していない。とはいえ、両社は、8月2日のエンジン故障がその
エンジンで発生し、また、9号機体に搭載される予定であった事は認めている。
Aパッケージエンジンは全日空向けの最初の数機に搭載され、計画燃料消費の
1%以内の燃費を実現するBパッケージに交換されるまで使用される事になって
いた。

ロールス・ロイス社は、密閉不良問題から距離を置こうとしている様に見える。
「我々は、ボーイング社からトレント1000の現時点での引き渡しスケジュール
が、ボーイング社のテスト飛行計画の要請と合致していないと連絡を受けた。
我々は、ボーイング社のテスト計画に間に合わせるのにどうすれば良いか緊密
に協議している。」とエンジンメーカーは述べているものの、エンジン不足問
題が、8月始めに発生したエンジンテストでの故障問題とは関連が無い事を強
調している。

関係者全てに不明な点は、その故障問題がどの様にスケジュール遅延に関係し
たのかという点だ。この点について、ボーイング社は、エンジン不足が、この
秋の最終飛行テスト計画に影響する見込みという外面的な問題しか公表してい
ない。

(FlightGlobal 2010/08/28)



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2010年8月27日金曜日

日本の有人宇宙開発は是か非か


※CGはJAXA Webサイトから転載

無人補給機に帰還カプセル搭載へ 宇宙機構、有人を視野

有人宇宙船に近い形態を採用した「HTV-R」の想像図。機体右側の白い部
分が帰還カプセルにあたる(JAXA提供) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
は11日、昨年9月に初飛行を成功させた国際宇宙ステーション(ISS)無
人補給機「HTV」の改修型で、ISSからの物資回収を可能とする「HTV-R」
の開発計画を文部科学省の宇宙開発委員会に報告した。来年度概算要求に盛り
込む方針で、JAXAはHTV-Rを日本独自の有人宇宙船の開発につなげて
いくという。

HTV-Rは大型バス程度の大きさの機体に帰還カプセルを搭載。ISSへの
物資補給後、帰還カプセルに実験試料などを積み込んでISSを離れた機体か
ら分離し、大気圏再突入後に海上で回収する。複数の改修案があり、有人宇宙
船に近い形態を採用した場合、約1.6トンの物資が回収可能。開発費は数百
億円で、平成28年度にも国産最強の大型ロケット「H2B」で打ち上げる。

日米露欧など計15カ国で運用するISSからの物資回収手段は、来年2月に
予定される米スペースシャトルの退役後、少量しか運べないロシアのソユーズ
宇宙船だけとなる。大気圏で燃え尽きる現在のHTVと異なり、多量の物資を
持ち帰ることができるHTV-Rへの各国の期待は高い。
JAXAはHTV-Rを有人宇宙船の実現につなげる方針で、HTVの機体改
修も有人化につながる範囲内で実施。一方、厳しい財政状況の下、「現状では
HTV-Rの打ち上げは、今後10年間で1基が精いっぱい」(JAXA関係
者)との声もある。

(産経新聞 2010/08/11)


日本の有人宇宙計画ですが、確かに夢のある計画だと思いますが、
日本の現状を見ると、それ程優先度が高くないのではないかと考え
ざるを得ません。

時期的にも、2011年のシャトル退役と商業有人打ち上げ開始(2015
年頃)までの隙間に間に合えばそれなりのニーズがあったかも知れ
ませんが、今から開発したのでは到底間に合う事はありません。

上記の記事では、HTV-Rは平成28年(2016年)度に完成ですから、更
に5年間かけるとして平成33年(2021年)に有人飛行が実現する事に
なりますが、その頃には、SpaceX社のドラゴン宇宙機により、宇宙
飛行士一人当り20億円程度での打ち上げが実用化されている事にな
ります。もし、4名の宇宙飛行士をカプセル込みで80億円で打ち上
げる事が可能であれば、SpaceX社に対抗できますが、80億円では、
H2Bの打ち上げ費用もまかなえません。従って、日本に有人宇宙飛
行士を軌道に打ち上げるニーズがあったとしても、SpaceX社等の商
業打ち上げサービスを利用するのが合理的であると言えます。

では、そもそも有人宇宙飛行士を軌道に送り込むニーズはどの程度
あるのでしょうか。国際宇宙ステーションは、2015年に、閉鎖され
落下する予定でしたが、取敢えず2020年まで退役は延期され、引き
続き使用される事になりました。その為に、宇宙飛行士を軌道に送
るニーズは存在します。しかし、それ以降に、宇宙飛行士を宇宙に
送るニーズはまだありません。

国際宇宙ステーションを建設し、維持する為には、宇宙飛行士を軌
道上に打ち上げる必要があるのは自明ですが国際宇宙ステーション
が退役した後、有人宇宙飛行が必要なるプロジェクトは必ずしも明
確になっていないのです。オバマ大統領によって、有人月着陸計画
はキャンセルされてしまいましたが、それに変わる計画は、まだ姿
を見せていないのです。日本が、米国の主導する次の有人宇宙計画
に参加するかどうか、また、その時に、日本が独自に宇宙飛行士を
打ち上げる必要があるかどうかは不明確であるとしか言えません。

では、中国の天宮計画の様に、日本独自に宇宙ステーションを作る
必要があるのでしょうか?今は、トーンダウンしていますが、2015
年に国際宇宙ステーションが退役する予定であった時、それに合わ
せて、その一部を使って日本用の小型宇宙ステーションを作り運用
するという構想がありました。しかし、それも構想だけで、そこで
何をするのかという議論は行われませんでした。実際、国際宇宙ス
テーションで当初予定されていた実験の多くが、その建設遅延の中
で、コンピュータシミュレーションで行われてしまい、宇宙実験の
為に、宇宙ステーションを維持するニーズは少なくなってしまって
います。

確かに宇宙飛行士にしか出来ない作業はあります。例えば、ハッブ
ル宇宙望遠鏡の保守作業の様なものがそれです。しかし、ハッブル
望遠鏡の後継機は、ラグランジュ点に設置される予定で、宇宙飛行
士による保守・補修は予定されていないのです。つまり、近い将来
有人宇宙飛行は、自己目的化してしまう可能性が高いと言えるので
はないかと思えるのです。

それに加えて、日本の場合は予算上の問題があります。日本は中国
と違って有人宇宙計画を国家威信の発揚という目的ではどんどん資
金をつぎ込む事は出来ません。現状、国際宇宙ステーションの維持
費用は、HTVの費用も含め、毎年4百億円と言われていますが、
有人計画となった場合、日本用の宇宙ステーション建設が無償で出
来たとしても、有人宇宙機の打ち上げコスト等を考えると、少なく
共、現状の二倍程度の予算が必要となる筈です。日本の宇宙開発予
算の枠は、情報収集衛星も含め毎年二千億円程度しかありません。
追加予算の4百億円は僅かな予算の様に見えますが、JAXAの予算の
二割程度の大きさであり、財政再建の必要性が高まる中で、今後
JAXA予算の二割増しが容易に実現できると考えるのは楽観的に過ぎ
るのではないかと思われます。そうなれば有人宇宙計画で4百億円
が出っ張れば唯でさえ少ない他の予算から4百億円を削るしかあり
ません。それでは、日本が世界に先んじている無人宇宙機によるサ
ンプルリターンであったり、ソーラーセイル衛星による小惑星探査、
外惑星探査などが不可能になってしまいます。勿論、科学観測衛星
のみならず地球観測衛星等の実用衛星にも影響が出てくるでしょう。

そうであるならば、何の役に立つか判らない有人宇宙計画に色気を
見せるのではなく、寧ろ、日本の独自性が発揮できる無人探査機に
よる宇宙探査計画を優先して推進すべきであると思われるのです。


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2010年8月24日火曜日

中国の軍事力 2010 第一章要約(2)




人民解放軍のドクトリンの発展

2009年、人民解放軍は引き続き、より現実的でハイテクな条件下での戦争に対
する訓練と同様に非戦争任務を強調した最近のドクトリンの発展にそった訓練
を強調している。情報武装した各軍種の共同訓練を達成しようとする人民解放
軍の努力は、2008年の防衛白書で強調されたものであり、改正された軍事訓練
評価の枠組みを実現する継続した取り組みとして示されている。この新たな評
価基準は2008年央に出版され、2009年1月1日に人民解放軍全体の標準となった。

軍事能力を拡大する新技術を開発、調達、獲得する中国の努力の発展

中国は外国の技術、軍民両用部材の獲得、及び特定部門に焦点を当てた国内研
究開発によって軍事近代化を推進している。

中国は、大規模で、良く組織された企業、軍事品生産工場、提携された研究所
のネットワークを保有している。また、機密情報と輸出制限技術の収集を容易
にするコンピュータ・ネットワークを運用している。これらの実体は、必ずし
も中国の情報機関や安全保障サービスと常に連携している訳ではない。

中国の軍産複合体を形成する多くの企業や研究所には、軍事と民間、両方の研
究開発機能を持っている。この商業と政府と連携した企業と研究機関のネット
ワークは、しばしば、人民解放軍が、機密技術や軍民両用技術、あるいはそれ
に関する専門家に民間の研究開発の装いの下で接触する事を可能としている。
これらの企業と研究所は、技術会議やシンポジウム、合法的な契約や共同のベ
ンチャー企業、外国企業との提携、特定の共同技術開発の形式でこれを行って
いる。

国家安全保障に関わる核心技術や輸出統制機材、通常の商業ルートや学術ルー
トで獲得できない材料に関しては、中国は、合衆国の法律や輸出管理に違反し
て情報機関や合法活動以外の手段によって獲得している。2008年以降、合衆国
の報道機関は、中国が、技術開発の軍事力の近代化に真に重要と判断した部材
を獲得した方法について幾つかの事例にスポットライトを当てた報道をしてい
る。これらの事例では、合衆国から中国へ、合衆国に在住する個人が違法な技
術移転を起こしたものが主体だが、伝統的なスパイ活動によるものも発生して
いる。

台湾抑止戦力の変化

2009年には、台湾海峡とその周辺では、武力紛争は発生しなかった。また、全
体的な状況は2008年同様安定していた。しかしながら、台湾に対する中国の軍
事力増強と先進兵器の配備は、緊張を緩める事を許さない。

2008年5月に就任以降、馬英九総統は、軍隊を合理化し、プロ化する為のいく
つかの重要で広範囲な改革を実施している。台湾は、いくつかの分野で進歩し
ており、全体的な非常事態対応訓練を改善している。しかしながら、戦力バラ
ンスは引き続き中国本土に優位に傾いている。

中国の宇宙戦、サイバー戦についての能力の変化

宇宙戦、対宇宙戦能力

中国は、情報収集衛星、偵察衛星、調査衛星、航法衛星、通信衛星の編隊を拡
大している。それと併行して、中国には、危機や紛争時に潜在的敵が宇宙空間
に設置した資産(衛星)を使用する事を制限したり妨害する複数のプロジェクト
がある。中国の商業宇宙計画には、非軍事の研究施設があるが、非軍事用の施
設でも軍事用に使用可能な打ち上げや管制能力がある事を示している。

サイバー戦能力

2009年に、合衆国政府が保有しているものを含む、世界中の数多くのコンピュ
ータが、引き続き、中国を発信基地とする侵入攻撃の標的となった。この侵入
攻撃は、情報を取り出そうとするものであったが、その内のいくつかは戦略的
あるいは軍事的な情報だった。これらの侵入攻撃に必要な接近方法やスキルは、
コンピュータネットワークを攻撃する場合に必要とされるものと類似している。
これらの侵入攻撃が人民解放軍や中国政府の他の機関によるものであったり、
支援されたものであるかどうかは判っていない。しかしながら、サイバー戦能
力を開発する事は、権威のある軍事的著作に示された方針と一致している。

中国の海外での軍事的関与

中国の他の国々に対する軍事的関与は、中国が外国との関係改善し、国際的な
イメージを高め、中国の台頭に対する他の国々の懸念を減ずる事による国力の
発展を意図したものである。人民解放軍の活動は、先進的な兵器システムの獲
得やアジア内外での作戦経験の増加、外国の軍事管理訓練、作戦ドクトリン、
訓練方法への参加を通じて、その近代化を促進する事になる。

共同演習

中国の二国間または多国間演習への参加が増大している。人民解放軍は影響力
の拡大とパートナー国や組織との紐帯を強化する事で政治的利益を引き出した。
その様な演習は、テロ対策、機動作戦、補給と言った領域で能力を改善する事
で人民解放軍の近代化に対しても貢献している。人民解放軍は、戦術や命令の
意思決定、先進国の軍隊で使われている機器を観察する事で、実務的な洞察を
得る事が出来る。

平和維持、人道支援、災害救助活動


2002年以降、国連が後押しする平和維持活動への中国の貢献が拡大している。
現在では、全体で22の任務に12,000人が派遣されている中で、2,100人以上の
中国人要員が国連の任務に参加している。中国は、国連安保理常任理事国五ヶ
国の中では平和維持活動に対する最大の貢献国となっている。中国の貢献には、
技術支援、補給、医療部隊、民間警察、監視任務等が含まれている。

中国の軍民の指導者は、人道支援(HA)と災害救助(DR)を地域や世界的なパート
ナー諸国と協力する領域として指定している。

合衆国の関与と安全保障面での協力

軍対軍の紐帯

合衆国と中国の軍と軍との関係は、オバマ大統領と胡主席の合衆国と中国の軍
隊の関係を深め改善し、継続的且つ信頼できる軍軍関係に発展させる為の具体
的な処置を取るというコミットメントにより2009年には改善した。この様な、
指導者レベルでの対話は、国際的安全保障環境と関連する安全保障上の挑戦に
対する共通する見方を創り上げる上での重要な基盤を提供する。

国防総省は、国益の衝突や相違が生じた場合に建設的に討議できる継続的な対
話ルートを構築するよう務め、中国と対話や協議の複数のメカニズムの構築に
努力した。

これらのプラス面の発展にも係わらず、2010年1月にオバマ政権が台湾へ防御
兵器を売却する意図を発表した後、北京は、軍と軍の関係を中断する事を選んだ。

非軍事的な安全保障面での紐帯

合衆国と中国の戦略経済対話の最初のラウンドが、ワシントンDCで2009年7月
27日~28日に行われた。戦略経済対話は、両国が直面する二国間、地域的、全
世界的な短期長期の戦略的経済的利益についての広範囲な挑戦と機会に焦点が
当てられ強調された。戦略経済対話は、米国側は国務長官と財務長官が、中国
側は、戴秉国国務委員と王岐山副総理が主導したが、エネルギー長官や、政務
担当国防副長官、合衆国太平洋軍司令官等、米国の閣僚レベルの高官多数が参
加した。

合衆国と中国は2008年10月に台湾に米国の武器輸出発表の後で中止されていた
核不拡散二国間対話を、2009年9月にワシントンで再開した。双方は、北京で
2009年12月に再会した。国務次官補レベルの討議は全体的な核拡散防止への協
力を強化するものである。

(Department of Defence 2010/08/16)

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/










2010年8月23日月曜日

中国の軍事力 2010 第一章要約(1)





第一章 年次更新

台湾海峡における安全保障状況の展開

2008年3月に馬英九大統領が当選して以降、中華人民共和国(中国)は、台
湾海峡を跨る関係強化を促進している。
北京も台北も、半当局者と半当局者、人民と人民、党と党の接触の拡大や、経
済や文化の紐帯の拡大を強調している。しかしながら、本土側には、台湾の対
岸での中国の軍事的存在感を減らす意味のある動きは全くない。

中国軍事力の規模、位置、能力に関する展開

中国軍事力の長期的で広範囲な変革は、兵力展開能力や、アクセス拒否/地域
利用拒否能力を改善している。台湾海峡での緊急事態への準備に関する短期的
な焦点と整合させながら、中国は、台湾の対岸にあたる軍区(MRs)に最新のシ
ステムを展開している。

弾道ミサイルと巡航ミサイル

中国は、世界で最も活発な地上発射の弾道ミサイルと巡航ミサイルの計画を推
進している。数種類の新型や派生型のミサイルが開発、テストされており、ミ
サイル部隊が追加設置されている。いくつかのミサイル部隊では質的改善が行
われており、弾道ミサイルに対する防衛方法も開発中である。

●人民解放軍は、国産開発で地上発射のDH-10地上目標巡航ミサイル(LACM)、
国産開発の旅洋II型ミサイル駆逐艦(DDGs)に装備された同じく国産の、陸上/
海上発射のYJ-62対艦巡航ミサイル(ASCM)といった、多くの非常に精密な巡航
ミサイルを調達している。また、ロシア製のSS-N-22/サンバーン超音速対艦ミ
サイルが、同じくロシアから調達された中国のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐
艦に搭載されている。そして、ロシア製のSS-N-27B/シズラー超音速対艦巡航
ミサイルがロシアで建造された中国のKILO級ディーゼルエレクトリック潜水艦
に装備されている。

●2009年12月までに、人民解放軍は、台湾の対岸に1,050基~1,150基のCSS-6
とCSS-7短距離弾道ミサイル(SRBM)を配備した。これらのミサイルには、射程、
命中精度、弾頭が改良された三種類の派生型が含まれており、破壊力が向上し
ている。

●中国は、CSS-5準中距離弾道弾(MRBM)の派生型を基にした対艦弾道ミサイル
(ASBM)を開発している。このミサイルは1,500kmを上回る射程を備えており、
終末運動可能な弾頭を装備している。そして、適当な指揮管制システムと統合
されれば、西太平洋で、空母を含む艦船を攻撃する能力を人民解放軍に与える
事になる。

●中国は、より生存性の高い運搬手段を付加する事で、その核戦力を近代化し
ている。例えば、最近、道路移動が可能で固体燃料の大陸間弾道弾(ICBM)であ
るDF-31とDF-31Aの部隊配備が行われている。DF-31Aは、11,200kmを超える射
程があり、米国大陸本土の殆ど場所を標的としてカバーする事ができる。

●中国は、また、新しい道路移動が可能な新型ICBMを開発しているが、これに
は、多目標独立誘導弾頭(MIRV)を搭載可能としているものと思われる。

海軍

人民解放軍海軍は、主要戦闘艦艇、潜水艦、両用艦艇からなるアジアで最大の
戦力を保有している。中国海軍の戦力は、約75隻の主要水上艦艇、60隻以上の
潜水艦、55隻の中型または大型の両用戦艦艇、約85隻のミサイル装備の哨戒艇
からなっている。

●海南島に建設されている人民解放軍海軍の新しい基地の主要部は完成してい
る。この基地は、攻撃型潜水艦と戦略ミサイル潜水艦及び、先進的な水上艦艇
の全てを収容するのに十分な大きさがある。この基地は地下施設で、人民解放
軍海軍に主要な国際海上交通路への直接的なアクセスを提供しており、南シナ
海へ潜水艦を密かに配備する事を可能としている。

●中国には、活発な空母研究開発計画がある。そして、中国の造船産業は、今
年末には国産空母の建造に着手できるものと思われる。中国は、2020年には、
空母と支援艦艇からなる艦隊を複数建造する事に興味を示している。

●人民解放軍海軍は、空母から発進する固定翼機のパイロットを50人養成する
プログラムを開始すると決定したと伝えられている。この最初のプログラムで
は、恐らく、地上での訓練がまず開始され、その後、四年間は、現在、大連の
造船所で近代化改装中の旧ワリヤーグ(ソ連クズネツォフ級空母)を使用した海
上での訓練が行わるものと思われる。

●人民解放軍海軍は、Sky WaveレーダやSurface Waveレーダを用い超水平線(OTH)
目標能力を改善している。超水平線レーダは、偵察衛星と協同し、中国の海岸
線から遠く離れた目標に精密誘導された攻撃、例えば、対艦弾道ミサイルを使
用した攻撃を行う事に用いられるものと思われる。

●中国は、引き続き最新の晋級(094級)原子力推進の戦略ミサイル潜水艦(SSBN)
の建造を継続している。中国は五隻程度まで新型SSBNを配備するかもしれない。
一隻の晋級戦略ミサイル原潜が、二隻の商級(093級)攻撃型原潜、四隻の漢級
攻撃型原潜、及び、それまで中国のただ一隻のSSBNだった夏級SSBNと舷を接し
て就役している。

●中国は、攻撃型ミサイル原潜を更に強化しており、ここ数年中に五隻程度ま
で095級攻撃型原潜(SSN)を追加するものと思われる。

●中国は13隻の宋級(039級)ディーゼルエレクトリック推進攻撃型潜水艦を保
有している。この宋級潜水艦はYJ-82対艦巡航ミサイルを装備している。宋級
の後継は元級で、合計4隻が既に就役しているものと思われる。中国は、この
クラスを更に15隻建造する可能性がある。元級潜水艦は宋級潜水艦と類似し
た武装だが、AIP(大気非依存型推進)機関を装備しているものと思われる。宋
級潜水艦、元級潜水艦及び商級原潜は、現在、開発試験中の新型のCH-SS-NX-13
対艦巡航ミサイルを発射する能力をもっている。

●人民解放軍海軍は、引き続き国産建造の水上艦艇の調達を続けている。これ
らの中には、国産の長射程対空ミサイルであるHHQ-9を装備した旅洋II級(052C級)
ミサイル駆逐艦2隻、ロシア製の長射程対空ミサイルSA-N-20を装備した旅洲
級(051C級)ミサイル駆逐艦2隻、現在開発中の中射程垂直発射型対空ミサイル
であるHHQ-16を装備した江凱II級(054A級)ミサイルフリゲート4隻~6隻が含
まれている。これらの艦艇は、過去、艦隊の弱点とされてきた対空戦闘能力を
強化するという指導部の優先順位付けが反映されている。

●中国は、新型の波浪貫通型カタマラン船体を持つ紅稗級(022級)ミサイル艇
を60隻配備している。各艇は、8発のYJ-83対艦巡航ミサイルを装備している。

空軍及び防空軍

中国は台湾を燃料補給なしで作戦行動半径に収める490機の戦闘用航空機を基
地に配備している。それらの基地は更に数百機を収容する離着陸能力がある。
多くの機体は、古いモデルの機体を能力強化したものである。しかしながら、
新型機や、より先進的な機体の割合が増加してきている。

●人民解放軍空軍は、2009年11月11日に、創設60周年を祝った。その式典の中
で、中央軍事委員会第一副主席である郭伯雄将軍は、人民解放軍空軍が新兵器
の開発を加速し、補給システムを改善し、多軍種共同作戦行動訓練を改善する
事を訴えた。また、記念日でのインタビューで、人民解放軍空軍司令員許其亮
将軍は、宇宙空間を含む軍備競争は避けられないものであり、本土防衛中心か
ら統合された航空宇宙空間での攻撃防御両面の能力を備えるよう人民解放軍空
軍の変革を強調した。

●中国は、B-6爆撃機戦隊(オリジナル機体は、ロシアのTu-16)の新しい派生型
を開発しており、作戦行動が可能になった時には、新型の長射程巡航ミサイル
を装備する事となる。

●人民解放軍空軍は、長射程で先進的な対空ミサイルシステムの装備を拡大し
ており、現在では、その分野では世界最大の軍隊となっている。過去5年間に
亘り、ロシアが輸出可能な最新の対空ミサイルであるSA-20 PMU2大隊の調達を
図ってきた。また、国産設計開発のHQ-9システムも導入されている。

●中国の航空産業は数タイプの空中早期警戒管制機(AEW&C)を開発している。
これには空中早期警戒管制と同時に情報収集と海洋哨戒を行うY-8型輸送機を
元にしたKJ-200や、IL-76輸送機の改造型が含まれている。

地上軍

人民解放軍の陸上戦力は125万人の兵員からなっており、その内、40万人が、
台湾の対岸に当たる三つの軍区(MR)に配置されている。中国は、地上部隊に近
代的な戦車や装甲兵員輸送車、火砲を配備する事で改善を図っている。人民解
放軍陸軍が新たに獲得または開発中の能力としては、第三世代の99式主力戦車、
新世代の水陸両用戦闘車、200mm、300mm、400mm多連装ロケット発射システム
がある。

●2009年に、人民解放軍は指揮管制、空陸共同、情報戦についての可動性と動
員、攻勢作戦に関して焦点を当てた訓練と演習を行った。

●それに加えて、現役の地上部隊の他、中国は2008年度で50万人の予備役兵力
を保有しており、更に戦時には自身の居住地域での戦闘に動員される大規模な
民兵組織がある。中国は、11次五カ年計画(2006-2010)の終わりには、近代的
に組織された民兵の規模を10百万人から8百万人に縮小する計画だが、18才~
35才までの全ての男性が、現在は軍事組織に属していなくても、技術的には民
兵システムの一部となっている。

(Department of Defence 2010/08/16)

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf

環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/