2010年9月3日金曜日

日本オプションを捨てる愚を犯すロシア

露で対日戦勝記念日 極東各地で65周年式典を開催 
「日本は歴史をねつ造」と上院議長


日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日をロシアが事実上の対日戦勝
記念日に制定したのを受け、極東各地では同日、戦勝65周年を祝う式典や軍
事パレードが行われた。サハリン(樺太)の行事では、ソ連の対日戦を「解放」
戦争だったとする発言が政官界から相次ぎ、ミロノフ上院議長は日本の北方領
土返還要求を「歴史の捏造(ねつぞう)だ」と断じた。

新記念日の正式名称は法制定の過程で、「第二次大戦終結の日」と和らげられ
た。しかし、その狙いが、ソ連による日ソ中立条約を破っての対日参戦や北方
領土占拠の正当化にあることが改めて鮮明になった。

北方領土を事実上管轄するサハリン州の州都ユジノサハリンスクでは2日、軍
事パレードを含む式典が行われて市民ら数千人が参加したほか、「第二次大戦
の教訓と現代」と題する「国際学術会議」が開かれた。

ミロノフ議長はこの会議で、「ソ連軍は中国東北部や北朝鮮、南サハリン、ク
リル諸島(千島列島と日本の北方四島)を解放した」と主張し、「勝利を祝う
ことは、戦争の結果見直しを許さないとの警告でもある」と述べた。また、州
高官は式典で、ソ連は対日戦で「ロシア固有の領土を取り戻した」などと演説
し、「偉大な勝利」を祝福した。

この日は極東の沿海州やカムチャツカ地方などでも式典や軍事パレードが行わ
れ、中露国境のアムール川沿岸では中国側との合同行事も予定されている。

(産経新聞 2010/09/02)


ロシアが対日戦勝記念日を改めて制定するのは、日本の北方領土返
還要求を断ち切る為です。しかしながら、いくらロシアが日本の主
張を「歴史のねつ造」と強弁しようとソ連が日ソ中立条約を破って
侵攻した上、ポツダム宣言受諾に基づき降伏しようとした日本軍を
騙まし討ちにし、占領地を拡大しようとした事実に蓋をする事はで
きません。

勿論、次世代のロシア人を反日教育で洗脳するのは、ロシアの自由
です。しかし、日本がそれに付き合う必要は毛頭ありません。ロシ
アはそうする事で、日本との蜜月という格好の経済発展の機会を投
げ捨てていると言えます。日本にとっては、ロシアとの関係が現状
レベルに留まるだけですから、実際には、それ程、大きな影響はな
いと言えます。つまり、日本にとってロシアは繁栄にとっての必須
条件ではありません。

ロシアが経済発展する為には、シベリア、極東ロシアを開発する必
要があります。市場、技術、資金が不足しているロシアにとってパ
ートナーは日本以外にも中国や韓国が考えられます。しかし、中国
の場合は、技術面で不安な上、協力の名の下の資源収奪、大規模な
中国人不法入国に悩んでいる状態であり、韓国の場合は、経済規模
と資金力の点で見劣りがする事は否めません。ロシアにすれば、東
シベリアの資源開発の為には、中国と日本を両天秤にかけ、好条件
を引き出す事が一番望ましいと思われますが、北方四島の領有にこ
だわる事で、日本オプションを捨て去る事になるわけで、それがロ
シアの意思なのであれば、日本としては、ロシアと積極的に協力し
なけらばならない理由がある訳ではありません。

実際、日本の経済は、マクロ的に言えば、その成長に資源を要する
事が非常にすくない効率的な経済となっており、この点は、資源浪
費型経済の為、経済成長率と同率かそれ以上の資源を必要とする中
国や韓国とは好対照をなしています。この為、資源確保という側面
から、あえて日本が北方領土問題をあきらめてまでロシアの資源開
発に参加しなければならないという理由はないのです。

それに加え、サハリン1,2の開発でも分かる様に、ロシアでの資
源開発は常に、政治介入により開発採算や資源の安定供給が脅かさ
れるリスクがあります。リスクのある資源を輸入するのであれば、
余程条件が良くなければ輸入する意味がありません。

日本からの距離の近さによる輸送コスト面での有利さがあるのでは
という議論がありますが、海運のコストは距離の大小で極端な違い
がなく、寧ろロシア内陸からの資源輸出港までのコストの方が問題
であり、他の地域からの輸入と比べ特段の有利さはありません。

つまり、日本にとって、ロシアは資源供給国とての重要性はそれ程
大きなものではなく、輸出市場としてしかロシアとの経済協力を進
める誘引に乏しいと言わざるを得ないのです。しかも輸出市場とし
てのロシアは、確かに成長著しいBRICs諸国の一つに数えられてい
ますが、ブラジル、中国、インドに比べ、ロシアの人口規模は一番
小さく、また、成長市場としての有利さも特にありません。

この様に考えると、平和条約も締結されていない日ロ関係を改善す
るボールは、ロシア側にあるのであり、ロシアが現状を維持したい
のであれば、日本側から日ロ関係の改善する強い理由はないと言え
る様に思われるのです。


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