2009年2月20日金曜日

「韓国との戦争準備はできている」とは「できていない」と読む


※写真はReutersサイトから転載

韓国との戦争準備はできている=北朝鮮

[ソウル 19日 ロイター] 北朝鮮は19日、韓国との戦争の準備はでき
ていると表明した。クリントン米国務長官はこの日韓国を訪問し、北朝鮮問題
を協議する。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)によると、匿名の軍関係者は「裏切
り者である(韓国大統領の)グループは、(北朝鮮)人民軍が完全に全面対決
の準備ができていることを忘れてはならない」と述べた。
北朝鮮は長距離ミサイルの発射準備を進めているとみられているが、専門家は、
米国の新政権の関心を引き、韓国政府に圧力をかけることが狙いではないか、
との見方を示している。
アジア歴訪中のクリントン国務長官は17日、北朝鮮がミサイルを発射すれば、
非常にマイナスになるとの見方を示している。

(ロイター 2009/02/19)


寝言は寝て言え第二弾です。
しかし、北朝鮮の言う「韓国との戦争準備はできている」という言
葉は戦争準備が出来ていない、あるいは戦争はする気がないと読む
べきであるというのは、私の持論です。逆に、平和攻勢をかけてい
るのに反対給付を求めていない時の方がはるかに危険であるといえ
ます。くれくれ詐欺の常習犯である北朝鮮が見返りを求めない筈が
ないのです。

つまり、本気で戦争をする準備を進めている場合は、当然奇襲効果
を狙う訳で、相手油断させるべく平和攻勢をかけると考えられるの
です。北朝鮮は、朝鮮戦争を開始する際にも、開戦の約一ヶ月前か
ら平和攻勢をとっています。その点でも前科はある訳です。

逆に言えば、北朝鮮が、この手の戦争前夜的な発言をする時は自国
に弱みを抱えている時です。今年の場合は、勿論、オバマ政権が発
足したので、その関心を引き続け、米国との直接交渉に道を開きた
い思惑がありますが、もう一点、食料不足が深刻な割に、国際的な
援助が少ない点があげられます。この為、今年は1997年以来の
食料不足が予想されています。ここで、食糧援助を引き出すために、
緊張を演出しているという訳です。

いずれにせよ、北朝鮮の発言は、裏を読むべきであるというのは、
私の様な一般人にすら常識になっているのですが、そういう事が常
識になってしまっている非常識な国で、その国の中では、だれが政
権を世襲するかで暗闘が続いていると報じられている点、人間の業
の深さを感じてしまいます。



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2009年2月18日水曜日

原潜衝突 英仏の戦略原潜パトロール継続を示す



※写真上段はHMS Vangaurd。下段はLe Triomphant

英仏の原潜、大西洋で衝突 「放射能漏れない」

英仏の原子力潜水艦が今月初めに大西洋で衝突し、双方が破損していたことが
分かった。両国の当局が16日、衝突の事実を認めた。「放射能漏れはなかっ
た」と説明しているが、両原潜は核兵器を搭載していたとみられ、あわや大惨
事となるところだった。

英メディアによると、ぶつかったのは英国のバンガード級戦略原潜(水中排水
量約1万6千トン、長さ約150メートル)と、仏のル・トリオンファン級原
潜(水中排水量約1万4千トン、長さ約140メートル)で、ともに核弾道ミ
サイルを搭載していたとみられる。

仏国防省は当初、「2月6日に巡回から戻っていた原潜が、水中で物体(おそ
らくコンテナ船)とぶつかった。水中音波探知機(ソナー)が壊れたが、乗組
員らにけがはなく、原子力の安全も保たれていた」と報告していた。

ところが、英メディアが16日、衝突したのはコンテナ船ではなく英原潜だっ
たと報道。その後、英仏の国防省がともに事実関係を認めた。英海軍本部のジ
ョナサン・バンド第1武官は「両原潜は低い速度で接触した。負傷者は報告さ
れていない」と説明。英BBCによると、英原潜には大きなへこみと、こすっ
た跡が出来ていたという。

両国が衝突の詳細を調べているが、英紙サンは両原潜ともソナーを備えていた
が、敵に居場所を探知できなくさせる技術のために互いに分からなかったので
はないか、と指摘。BBCは原潜同士の衝突を「大西洋の広さを考えると百万
分の一の確率で、とても信じられないことが起きた」と報じている。

反核団体「核軍縮キャンペーン」(CND、本部・ロンドン)は「平時に原潜
を海に放つことの危険さを浮き彫りにした。核兵器は我々の安全に何の役にも
立たない」と批判した。

(朝日新聞 2009/2/17)


1991年にソ連が崩壊してから、既に、17年が経過したにも係わらず、
英仏という二線級核保有国ですら戦略ミサイル原潜によるパトロー
ルを継続している事が、今回の事故によってはからずも明らかにな
りました。世界は緊張感を決して緩めていないようです。

旧ソ連が崩壊し、核保有国としての地位はロシアが継承しています
が、既に体制の違いがない(?)にも係わらず、英仏は決してロシア
に心を許していない事を示していると言えます。

ソ連崩壊以降、戦略原潜によるパトロールの停止であるとか再開と
いうニュースが流れた事を私は寡聞にして知りません。という事は
G8でロシアを西側体制に取り込んだにも係わらず、完全な武装解
除も同盟関係の構築も行われなかった点で、根本的な処では信頼し
ていなかったと言う事になります。近年、プーチン政権下でロシア
の全体主義的独裁制構築が進んでいるように思えますので、この点
での英仏の正しさが伺えるようにも思えます。

勿論、英仏の事ですから、ロシアが抗議した場合に備え、照準は定
めていなかった位の事は言いそうですが、原潜パトロールが、核抑
止力の根幹になっている事を考えれば具体的な抑止対象を指定して
いないとは考え難いですし、技術的にも一隻当たり、96(仏)~224
(英)近い目標設定を発射する都度行うとも考えられません。
(恐らく目標セットを複数もっており適宜交換可能になっていると
思われます。)
その点からも、具体的な目標としてロシアの大都市を照準していた
と考えるべきでしょう。勿論、これはロシアも同様の意思はあった
と思われます。(現実には、経済状況によっては原潜パトロールを
継続できていたかどうか疑問がありますが、実施できる状況では実
施していた筈です。)

もう一つ、今回の件でわかった事は、両原潜の低速での静粛度が恐
るべき水準に達している事です。潜水艦は、海中での音波探知装置
としては理想的であり、戦略ミサイル原潜はパトロール中、聞き耳
を立てる事が唯一の任務と言える程です。

原子力潜水艦の場合は、海中に停止している時でも、原子炉の冷却
水を循環させる必要があり、冷却水循環ポンプを常時動かしておか
ねばならず、加圧水型原子炉ではこのポンプが大きな騒音発生源と
なっていると言われてきました。また、高速回転する蒸気タービン
で低回転のスクリューを回すため、減速ギヤを介在させる必要があ
り、この減速ギヤも大きな騒音発生源になっていると言われてきま
した。そうであるにも係わらず両原潜共に衝突まで相手側の推進音
を探知する事ができませんでした。

通常動力潜水艦にAIP機関が装備される様になり、静粛度で勝る通
常動力潜水艦が少しは原潜に近づいたと思わせる様になりましたが、
原潜の側も弱点克服を着実に実施していた事を示すものと言える様
に思います。



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2009年2月17日火曜日

北朝鮮 誤解をさけたいなら情報公開が一番


※北朝鮮のプロパガンダポスター

北朝鮮、ミサイル発射準備を否定 「人工衛星」打ち上げと

北朝鮮は16日、ミサイル試射準備を進めているとの観測を否定し、人工衛星の
打ち上げを準備していると主張した。韓国の聯合ニュースが伝えた。

米高官は先週CNNに対し、米偵察衛星が撮影した北朝鮮の画像に、ミサイル発
射準備とみられる動きが写っていたと述べた。撮影地点は以前、長距離弾道ミ
サイル「テポドン2」が発射された場所。

聯合ニュースは16日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)の報道内容として、
北朝鮮が「宇宙開発」を実施すると計画だと伝えた。北朝鮮は「何を打ち上げ
るかは後で分かる」と述べ、ミサイル試射計画を否定。宇宙開発が北朝鮮の権
利であるとしたうえで、海外の報道が、北朝鮮の主権で行われている活動を阻
止しようとする「悪意ある策略」だと批判した。

聯合ニュースは、今週予定されているヒラリー・クリントン米国務長官の訪韓
に先立ち、北朝鮮が米政府にメッセージを送った可能性があると指摘した。

北朝鮮は1998年にミサイル「テポドン1」を発射した際にも、人工衛星を打ち
上げたと発表した。韓国は宇宙開発の権利をめぐる北朝鮮の主張を受け入れな
い姿勢にある。聯合ニュースによると、柳明桓外交通商相は16日の議会審議で
「ミサイルであれ人工衛星であれ、打ち上げは(核開発とミサイル実験の中止
を盛り込んだ)国連安全保障理事会決議第1718号に違反する」と述べた。

(CNN.co.jp 2009/2/17)


一瞬、寝言は寝て言えと言いそうになりましたが、北朝鮮が本気で
人工衛星を打ち上げようというのであれば、北朝鮮が技術輸出した
イランが見事に衛星打上に成功したのですから、技術的な基盤はあ
ると考えて良いと思われます。今であれば、独自のロケットで人工
衛星を打ち上げた10番目の国という事になり、韓国を凌ぐ事が可
能です。これは、北朝鮮にとって、今や殆ど実現不可能になった北
が南を凌駕する得がたい機会であると言えます。
(尤も、北朝鮮では1988年に人工衛星の打ち上げに成功した事にな
っているんですが....)

少なく共、核開発の様な、ご禁制の技術開発ではない、まっとうな
技術開発と言い張れるのです。勿論、ミサイル開発とのデュアルユ
ーズである事は、世界中が判っています。であるからこそ、世界に
信頼されない国である北朝鮮が何を言った処で、「ミサイル発射準
備」という情報が世界を駆け巡る事になります。

そこで、北朝鮮にお勧めなのが、イラン程度には、情報公開を行う
事です。今回に関しても、もし、本当に人工衛星を打ち上げ様とい
うのであれば、ごくまっとうに、発射日時と燃焼が終了した落下物
の予想落下位置等の情報、衛星本体や、打ち上げロケットや打ち上
げ施設の写真などを公開すれば良いのです。

勿論、公表すれば、技術水準が判ってしまうという欠点もあります。
あまりにお粗末で恥ずかしいのが、秘匿する理由である事も判りま
す。それでも、少なくとも、世界は、北朝鮮が人工衛星を打ち上げ
ようとしている事に対し疑念を抱く必要はなくなります。

1988年に北朝鮮が発射したのが、本当に人工衛星であり、それが事
前に公表されたものであったのなら、日本のMD体制がこれ程急速
に整備される事はなかったと言えます。それが、北朝鮮が情報を事
前に公開にしなかった事により、日本向けのミサイル開発と受け取
られた事から、一般の日本人が予想できなかったスピードで整備が
進んだのです。これは、北朝鮮にとっては、日本への影響力の切り
札が封じられた事になり、明らかに国益にマイナスの影響を与えま
した。

情報秘匿は、必ずしも、国防力強化に役立たないという好例ですが、
「何を打ち上げるかは後で分かる」などという寝言ではなく、適切
な情報を公開する事が、北朝鮮が「普通の国」になる上でも重要な
行動である様に思われてなりません。

まあ、それができないから北朝鮮なんでしょうね。


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2009年2月16日月曜日

CRH2C型車輌に見る中国独自技術のレベル


旧聞に属する話ですが、以前に関連するエントリーを書きましたの
で、後日談という事で取り上げます。

中国は、北京・天津高速鉄道の開通に合わせ、JR東日本のE2系をベ
ースとし、中国独自技術で完成させたとするCRH2C型を投入しました。
シーメンスICE3をベースとするCRH3型と共に、2008年8月1日から
世界最高速、350km/hでの営業運転を開始したのです。

北京・天津高速鉄道は、当初から350km/hでの運転が予定されてお
り、CRH3はその為に導入されたタイプであったのに対し、CRH2C型
は、日本においては270km/hの営業運転しか行っておらず、設計速
度すら315km/hでしかなかった処から、いくらポテンシャルがある
車体でM/T比を変更したとは言え、、日本国内でも実現していない
350km営業運転をあっさりと実現した点、驚嘆したものでした。
(4M4T→6M2T、「はやて」は8M2T)

しかしながら、この列車について、朝日新聞GLOBEが2009/2/4付け
で、興味深い事実を報じました。

-前略

京津線を走る和諧号には2種類ある。一つは日本の川崎重工業が造る東北新幹
線「はやて」型。もう一つはドイツのシーメンス型だ。日独メーカーは一部車
両を完成車で輸出したものの、中国の国産政策にもとづいて、その多くは日独
の部品供給を受けて中国メーカーが生産している。
実はこの「はやて」型を巡って、技術協力した日本側と中国との間でひと悶着
(もんちゃく)あった。はやては東北新幹線では時速275キロで走っており、
12年末に時速320キロを達成するため現在、車両を開発中だ。川崎重工は「設
計上の安全走行の上限は時速275キロ」と中国側に伝え、運行技術を教えたJR
東日本の協力条件は「時速200キロまでの走行」だった。

にもかかわらず中国鉄道省は、試験走行で時速350キロ超を出せたことから、
能力いっぱいでの営業運転に踏み切った。五輪観光の目玉の一つにという思惑
もあったのかもしれない。
収まらなかったのが日本側だ。川崎重工幹部は開業の4日後、中国鉄道省の幹
部を訪ねて、抗議した。JR東日本首脳は「もし事故が起きても、これでは責
任は取れない」とカンカン。中国側から「責任は求めない」と確認する文書を
取った。
結局、京津線は2月までにすべて独型車両に置き換えることになった。はやて
型は時速250キロまでしか出さない他路線に移すという。

-後略
(朝日新聞GLOBE 2009/02/4)

http://globe.asahi.com/feature/090202/03_2.html

つまり、この高速運転は、JR東日本の協力範囲を超えた速度である
こと、また、車体製造業者である川崎重工重の設計上の最高速度を
も大幅に超えていることから、両者が中国側に抗議し「責任は求め
ない」という念書を取った様です。このため、2009年2月から、この
路線はすべてCRH3型を使用する事となり、それまでにこれらの車両
は最高時速250km/hの他線区に転属することとなったという訳です。

ここには、どこにも、中国独自の付加技術という要素が入っていま
せん。CRH2Cは、E2系と同じ先頭車両デザインだったCRH2と比べ、
ヘッドライトの位置や、パンタグラフカバーの他、車内デザインも
変更されていると伝えられており、最高速度が変わっているのです
から当然車台にも手が入っていると予想されていたのです。

ですが、実は根本的な処には全く手が入っていない事が判ったので
す。ここからは想像になりますが、中国は恐らく試験走行中にCRH2
で300km/hを優に超える速度がだせた事から、M/T比を変更すれば、
350km/hに達すると計算したのだと思います。そして、実際にCRH2C
を作るとあっさりと350km/hを達成し、恐らくは、400km/hに近いス
ピードが達成されたのだと思います。そこで、350km/hの営業運転
でも問題ないと考えたのでしょう。しかし、それは、試験運転の結
果でしかありません。そこには安全な運行への計算が、全く、入っ
ていませんでした。

一回こっきりの試験運転では、問題が発生しなくても長期間設計速
度以上の運転を行っていれば、車体の殆どの部分に設計以上の加重
がかかります。その結果として、金属疲労により、車台、車輪、構
造部材にすらクラックや破損が生じ、それが、大事故を齎す可能性
のある事は素人にすらわかります。

それをあっさりと無視した中国鉄道当局者はどういう技術的バック
グラウンドを持った人達だったのか、非常に興味があります。

今回は幸いに、大事故が発生する前に技術供与国からチェックが入
りました。しかし、こういったチェックがいつも入るかどうかには、
疑問が残ります。

最近、中国が、原子力空母を建造すると、同じ朝日新聞が報じてい
ましたが、原子力潜水艦と同じ程度の意識で水上艦用の原子炉を考
えているのであれば、近い将来、本当の「チャイナシンドローム」
が発生するのではないかと懸念する処です。


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2009年2月12日木曜日

尖閣問題 中国は日本のナショナリズムに火をつけるか?




尖閣問題:中国の掲示板が“炎上”―日本の巡視船配備で

中国新聞社が主催する掲示板「中新網社区」は12日、尖閣諸島問題で日中両国
が「衝突する可能性が増大。君の見方は」と題するアンケートを掲載した。
武力行使を支持する回答が圧倒的に多い。

同アンケートは、日本の海上保安庁が尖閣諸島周辺にヘリコプター搭載の巡視
船の常置配備したことをきっかけに掲載された。4つの選択肢から1つを選ぶ方
式だ。一般ユーザーが作成して投稿、中国新聞社が審査した上で掲載した。

午前11時55分現在、回答数が最も多い選択肢は「うれしい。日本は我々が(尖
閣諸島を)取り戻す理由を作ってくれた。前から、うずうずしていた」と、武
力行使を支持するもので、投票率は65.40%。第2位も「武力行使は恐れない。
小日本も、“膨張”を選ぶタイミングではないだろう。理解に苦しむ」で
27.47%。また、「日本は虚勢を張っている。実力が一切を決める。見ていよう」
は3.17%。武力行使を容認または求める意見は合計で96.04%にのぼった。
「小日本」は日本の蔑称。

一方、「隣国とは“和をもって貴しとなす”。経済発展が重要であり、外交で
解決しよう」と、平和的解決を求める意見は4.07%だった。

同アンケートに寄せられた書き込みでは「小日本を打ち負かせ 東京まで追い
返せ」、「交渉に必要はなし。必要な時には剣を抜く」など、尖閣諸島が中国
領であることを「前提」に、武力行使を支持する声が並ぶなどで“炎上”。
中には「和を尊ぶ中国人と、暴虐な日本の武士道とは両立できない。この暴虐
が世界に向かって拡張するとき、残された手段は原子爆弾しかない」との極端
な主張もある。(編集担当:如月隼人)

(サーチナ 2009/02/12)

経済的に計算すれば、両国にとって、尖閣列島問題はあまり大きな
問題ではありません。それを鄧小平が日中平和友好条約の交渉過程
で取り上げたのは、米国の石油会社が尖閣諸島に石油が埋蔵されて
いる可能性を指摘していたからでした。現在では尖閣諸島付近では、
少量の天然ガスと中規模のメタンハイドレードが確認されています
が、石油の埋蔵は今も確認されていません。メタンハイドレードに
ついては確かに次世代のエネルギー源ですが、今の処、採掘方法が
確立していない将来の資源に過ぎません。その点から言えば、鄧小
平は、ありもしない石油に目がくらんで、尖閣問題を未解決問題に
するという重大な誤りを犯したと言えます。

その点、日中貿易は中国に数兆円のハードカレンシーを経常的に齎
す金の鵞鳥です。いまや、日本からの中間材料や部品なくして中国
の製品輸出は成り立たなくなっています。中国の糞青は、ナショナ
リズムに酔っ払ってますから、「小日本」に対する軍事的制裁(そ
う言えば、ベトナムに対する懲罰なんてのもありましたが)を叫ん
でますが、日本との間が決定的に悪化した場合に困るのは中国なの
です。勿論、中国内では、尖閣領有に関する中国に不利な事実は知
らされている訳もありませんし、糞青ですから、現実の経済的な相
互依存関係にも無関心です。

日本を中国のナショナリズムのサンドバックにした江沢民の、馬鹿
な政策は、鄧小平の誤りを更に上塗りしたものであり、その前提は、
日本が決して中国を叩き返す事はないというものでした。

しかしながら、中国が尖閣諸島で、軍事力を行使し、巡視船を攻撃
したり、核恫喝を行えば、中国は半覚醒状態の日本のナショナリズ
ムに火をつける事になります。その上、その様な行為は、当然なが
ら日米安全保障条約の発動を連鎖する事になり、中国にとって、極
めて不利益な展開となる事は、中国の為政者にすら明々白々たる事
実であり、それによって日本が軍事力を強化する事は、中国にとっ
て、正しく悪夢に他なりません。

中国が、それを理解しているとすれば、中国の取る政策は大きく分
けて二つあります。一つは日米離反策です。日米安保条約がなくな
れば、日本を中国が攻撃したとしても、日米共同の反撃はありませ
ん。米国と日本が離別した段階で、中国は日本を影響下に治める事
ができ、尖閣問題を中国に有利に解決する事ができます。

もう一つは、中国側の世論の沈静化です。江沢民の政策は、中国共
産党支配を正当化するものでしたが、それが、過度に、中国ナショ
ナリズムを刺激する事は、中国にとっても両刃の剣になってしまい
ます。過去の日中関係は勿論、単純な日本の中国侵略ではありませ
んから、中国に対する日本の貢献を指摘する事はいくらでもできま
す。それを使ってナショナリズムを反日ではなく、克日に指導する
事で、ナショナリズムの変化を期待するというものです。

私は、胡錦濤は、現時点で、この両面を狙っているのではないかと、
想像しています。中国のマスコミは、党の口舌であり、自由なジャ
ーナリズムなど、どこにもありません。その点からすれば、今回の
記事に続いてどの様な論評が出るかで、中国共産党の本音が見えて
くるのではないかと思えるのです。



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2009年2月10日火曜日

エアバスA400Mの開発も遅延が拡大中 補足


※写真はReutersより転載

昨日は、A400Mの開発遅延についてBusiness Weekの記事をご紹介しまし
たが、Aviation Weekにもっと詳細な記事がありましたので、抄訳します。
重量超過という開発遅延の基本線は同じですが、より技術的な見方が強く出て
いる様に思います。

Airbus's A400M May Face Design Overhaul To Meet Performance Targets


A400Mはパフォーマンス目標達成の為、設計をやり直す事になるかもしれない

エアバス社は、A400M軍用輸送機プログラムに関して契約やスケジュール
上の挑戦以上のものに直面しています。同社は、機体のパフォーマンス目標を
達成するために多くの再設計作業をする必要があるかもしれません。

業界関係者によれば、よく知られた新型エンジンのFADEC(全自動デジタルエン
ジンコントロール)の開発遅延によって発生した飛行テスト遅延に加え、多数
の問題により、A400Mの魅力や能力が損われる恐れがでています。

懸念の重要な領域の一つはA400Mの重量超過です。それは搭載能力と航続
距離に否定的に影響を及ぼします。エアバス・ミリタリー社のデータによれば、
最大積載重量は37トンで、最大積載量での航続距離は1,780海里です。しかし、
プログラムに近い消息筋によれば、機体は現在の開発状況としては、かなりの
重量超過となっていると言います。同消息筋によれば、飛行テスト計画で使わ
れる最初の6機は、計画より12トン重くなっています。重量節減キャンペーン
では、7トンの重量削減の可能性が見つかっています。それでも、初期生産機
体は最大でも5トン程度の軽減策が取り入れられるだけです。そして、その場
合の積載能力は30トン以下となります。

エアバス・ミリタリー社は、OCCAR調達機構に、積載能力の削減について通報し
た様です。フランスを含む一部のOCCARメンバーはそれを容認しましたが、空軍
が積載能力と航続距離が共に重要となる域外展開用途に使用する事を考えてい
るドイツはそれを容認していません。A400Mが以前の設計目標を達成でき
ない場合、アフガニスタンのような場所への輸送任務はずっと複雑で高くつく
事になるでしょう。

ドイツは、基本バージョンで31.5トンの重量のあるプーマ装甲戦闘車を輸送す
るためにA400Mを使用する計画をたてていました。エアバス・ミリタリー
社が積載能力を取り戻すことができなかった場合、プーマを搭載した場合には、
大幅な航続距離不足をきたすことになります。

政府高官によれば、ドイツは、英国で評価されているC-17やC-130J
を採用する事で、A400Mの注文を減らすということはありそうもないが、
それは、主に政治的な理由によるものだと語っています。臨時の解決策として
エアバスA330-200Fを使うというEADS社CEOであるルイ・ガロワによる
提案は、気の無い反応を受けています。

「もし民間貨物機が必要だったら、カーゴルックス辺りからすぐチャーターで
きる」とドイツの軍当局者は吐き捨てます。しかし、ドイツは、現在保有する
C-160トランザール輸送隊を、A330Fが使えないアフガニスタン国内
の数多くの近距離輸送の目的地に飛ばしています。ある空軍の当局者によれば、
C-160はよく整備されているので、あと数年は作戦行動を続けることがで
きるとほのめかしますが、ドイツはC-160の能力を越える任務のためにア
ントノフAn-124をリースしています。

A400Mの(全体で192機のうち60機を発注している)最大顧客が、以前の
性能保証の達成を主張するならば、それは機体の再設計(例えば、より多くの
燃料を収容するより大きな翼の採用のようなもの)を強制することになります。
しかし、そういった再設計は、全くありそうもないと思われます。エアバス社
CEOのトーマス・エンダーズが現在のプログラムの条件を「達成不可能な任務」
と表現している様に、既に財政的上もスケジュール上も大きな問題となってい
ます。

1月9日に、EADS社とエアバス社は、A400Mプロジェクトで最大4年の遅れ
になると発表し、OCCAR加盟国との契約内容の再交渉を提案しました。2003年
に締結された当初の条件によれば、EADS社が、プログラムの財務的なリスクの
殆どを負担する事となっており、解決策が見つからない場合、巨額の遅延損害
金を負担する事になります。
1月の始めにエアバス・ミリタリー社とEADS社は、「この第一級軍用機の特定
の技術的な特性を含む契約の変更、及び、それに伴うスケジュール変更につい
て議論したい」と発表しました。さらなる詳細については言及されず、エアバ
ス社/EADS社はさらにコメントするのを辞退しました。

A400Mに対する責任は、管理面の複雑さを減少させ、プログラムに関する
監督能力を改善するために、最近、エアバス社の傘下に移されました。

エアバス社の関係者は、主要なパフォーマンス基準が変更されるというリスク
はないと明かします。プログラム担当の上級副社長であるトム・ウィリアムズ
は、彼がこのプログラムのレビューをすればするほど、「これは、本当に良い
機体だ」という確信が、その度ごとにましたと言います。彼によれば、短距離
離着陸時のパフォーマンスと積載量の目標はクリアしていると言います。

しかしながら、エアバスがA400M原型機生産を「十分な成熟期は達する」
まで停止させたという事実は、この時点での生産の継続に意味がなくなる様な、
大きな機体製造上の変更があるだろう事の間接的証明であると業界人は解釈し
ています。

業界関係者によれば、もはや、エンジンソフトの問題は、主要な問題ではなく
なり、重量軽減問題が、それにとって変わるだろうと言います。オブザーバー
によれば、それ程重要でない部分への炭素繊維材の導入を含む設計変更が行わ
れた後でさえ、A400Mの積載重量は当初目標を、3~4トン下回ると考え
ています。早くとも、最初の飛行と2012年の末の最初の引渡しの間にあるEADS
社によって提案された3年の時間枠は、機体構造の部分修正が可能でもあるこ
とを示唆しています。

しかしながら、ある重量軽減策は、機体の運用に影響を及ぼします。貨物引き
込みランプの平衡を取り、主車輪を地上に降ろす油圧システムは、破棄されま
した。この決定によって、床ビームを補強しなければならないかもしれません。
なぜなら、重戦車を空中投下する際には、重心が積載ランプの端を通り過ぎる
時点で実質的にランプから下に垂れ下がる事になるからです。

Europrop国際エンジンコンソーシアム(EPI)に近い関係者は、TP400のFADEC
問題は6月までに解決されることになっていると語っています。ガロアは、
1月初めに、許容できる受け入れ標準に達したFADECが提供されるならば、
A400Mは、およそ1ヵ月で飛ぶことができると言いました。しかし、ソフ
トウェア問題に加えて、エンジン関係のハードウェア問題もあります。予想外
に高い負荷のため、原設計のエンジンのギアボックスケースにひび割れが見つ
かり、それらは、部分的に強化する必要がありました。改良されたケースは、
最終組立てラインのあるセビリアに届けられ、原型の部品と交換される予定で
す。

詳細な部分に精通している人によれば、いくつかの特別な運用性能のゴールを
達成できるかどうかは不確かです。たとえば、A400Mはプロペラのフラッ
ター問題の為、「サラエボ・プロフィール」の様な急降下アプローチを飛行す
るのが難しいかもしれません。

さらに、プログラムに詳しい当局者は、いくつかのシステムがヨーロッパ航空
安全機構(EASA)によって拒絶されるかもしれないと言います。航空安全機構
は、酸素ビンと火災防護システムが胴体と主車輪格納庫に導入されている方法
に同意しないように見えます。合意が整わない場合は、A400Mは予定され
ている民間機としての耐空証明に必要とされるEASA承認を与えられない事にな
ります。EASA当局者は、進行中の証明プロセスについてコメントしないと述べ
ています。

EADS社は、顧客と、条件引き下げについての議論を行っています。しかし、同
社は、これらは特別の必要についてのものであって、基本的な性能面には関連
がないと主張しています。エンダーズは、顧客も会社自身のエンジニアも共に
「技術的にほとんど不可能であるか、可能であっても、コストと不釣り合いな
方法でのみ対応可能」な追加的な条件をつけていると言っています。

ウィリアムズは、その一つの例として、極端戦術ナビゲーション条件を上げま
す。この要求は、特殊任務を支援する為に、地形追随システムや地形回避シス
テムすら使わない完全な受動的な状態での低空飛行を行う機能を求めています。



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2009年2月9日月曜日

エアバスA400Mの開発も遅延が拡大中


※CGはエアバスミリタリー社サイトから転載

日本でも、ジェット輸送機C-Xの開発に大幅な遅延が生じ、未だ初飛行の日
程が定まらず、量産機取得予算にも2年の遅延が生じていますが、略同規模の
機体を国際共同開発しているプロジェクトであるA400Mの開発にも、大き
な遅延を伴う深刻な問題が生じている様です。

2/4付けのビジネスウィークの記事を抄訳します。

エアバスA400Mは救われるのか?

軍用輸送機A400Mが話題になる時、エアバス社のCEOであるトーマス・エ
ンダーズの反応は、あまり熱が入った様には見えません。
「A400Mを生産したいとは思っているが、幾らかかっても良い訳じゃない」
と彼は語っています。

このコメントはエアバス社の方針転換を示しています。エアバス社は今まで、
プロジェクトが危険に晒されているという噂を一貫して否定してきました。
しかし、巨大な機体は、巨大な問題を引き起こし、開発費用の増大と神経をす
り減らす絶え間ない遅延になやまされてきました。
エアバス社の現在のスタンスは、それでも、プロジェクトが成功する事を必要
としているというものです。

A400Mの開発に熱意を失いつつあるのは、エアバス社だけではありません。
ドイツ国防省の忍耐も限度に近づきつつあります。国防省は記録に残るコメン
トをする事は拒否しています。しかし、ある空軍の高官は、「エアバス社の問
題への対応には、国防省内でも殆ど、熱意を呼び起こす事はなかった」と述べ
ています。

この高官が言及した「問題」は、A380ジャンボ旅客機の開発での大幅遅延
の発生の記憶を呼び起こすものですが現在進行中のものです。
A380の問題とは、機内配線や他の問題により広範囲な遅延が発生したもの
ですが、それによりエアバス社は何億ユーロもの損害を蒙りました。これと同
じ運命がA400Mにも生じている様です。機体のエンジン制御を行うソフト
ウェアの幾つものトラブルの他、進行方向制御のメカニズムも挑戦的である事
が判りました。また、プロペラエンジンの騒音も予想以上でした。そして、新
しい機体開発につきものであり、エンダーズCEOが認めている様に機体が重量
過大である事が判明しました。南ドイツ新聞によれば、機体はこれから12ト
ンもの重量軽減を行う必要があります。この結果、数十億ユーロを要する遅延
が発生しています。

当初、一号機は今年引き渡される予定でしたが、現時点で、2014年の引渡しが
可能かドイツ空軍内では懸念されています。
ファイナンシャルタイムズ ドイツ版で、クラウス・ペーター・スティーグリ
ッツ中将は、それは「破滅的な開発だ」と述べています。空軍内では、代替策
が議論されています。「我々はエアバス社と結婚した訳じゃない」とドイツ空
軍の高官は述べています。空軍は一~二年の遅延であれば、現在のC-160
トランザール輸送機をもたせる事はできるものの、「ある時点で、もし、遅延
が更に続くようであれば、何をすべきか決定する必要があるだろう」と語って
います。

ドイツ空軍が発注を取り止めれば、プロジェクトの継続は困難です。ドイツは
A400Mの最大の顧客で、発注全体190機の内、60機を発注しています。
エアバス社も、オプションについて検討しています。「現在進められている方
法だけでは、継続は覚束ない。それだけだ。」とエンダーズは述べています。
彼は、OCCAR(ドイツ、フランス、英国、イタリア、ベルギー、スペインをメ
ンバーとする防衛コンソーシアム)で再交渉したいと考えています。

この再交渉の内容は技術的な仕様の詳細な再検討による問題の解消です。もう
一つの議論の焦点は、財務面での交渉です。計画開始時に決められた固定価格
は、数度の開発遅延発生により、恐ろしく高価な負担をエアバス社に課すもの
になっています。「この様なプロジェクトでは、隠れたリスクな必ずあるもの
だ」とエンダーズは言います。巨額の開発コストの増大に加え、引渡しの遅延
による高額の損害金の支払いも、また大きな問題です。EADS社は既に17億ユー
ロを引当てています。A400Mは昨年夏には初飛行を行っている筈でした。

エンダーズは、いまだに初飛行が行われていない事について全責任を引き受け
るつもりはありません。「エンジンがあれば、昨年10月には初飛行が出来た筈
だ」と彼は言います。エンジンは、フランスのSNECMA、英国のロールス・ロイ
ス、スペインのITP、ドイツのMTUアエロエンジンからなるコンソーシアムで開
発されてきました。「エンジンの選択はエアバス社の選択ではなかった」とエ
ンダーズは、この急造チームの事を語ります。プロジェクトをヨーロッパ共同
で行う事は政治的な決定でした。エンダーズは、技術的な問題は克服できると
今も考えています。彼によれば、似たような軍用機プロジェクトと比較した場
合、A400Mプロジェクトの現状は、かけ離れたものではなく、一度完成す
れば、他の軍用輸送機とは比べものにならない「素晴らしい機体」になると彼
は語ります。

A400Mの規模の開発では、問題が発生するのは通常の事だと言います。ド
イツ国防省も、軍用輸送機の開発が、紙の上の計画ほど簡単なものではない事
に気がついています。空軍の高官は、他の輸送機製造メーカーが米国やロシア
にあるといいつつも、「それらの会社も発注が入ってから、一から開発を始め
ないといけない」と語っています。


Airbus A400Mの開発スケジュール
2003年5月 国際共同開発合意
     (英,独,仏,伊,西,土,白,ルクセンブルグ8ケ国 生産数212機)
      後、伊が脱退。南ア、マレーシアが購入決定(生産数 192機に変更)
2003年5月 開発着手
2004年1月 エンジン開発着手
2005年1月 強度試験機製作開始
2005年10月 エンジン試験運転開始
2007年4月 静強度試験機用パーツが揃い、組立開始
2007年6月 飛行試験用エンジン引渡し (当初予定2006年11月)
2007年8月 飛行試験機生産開始    (当初予定2007年第一四半期)
2008年6月 エンジン飛行試験開始   (当初予定2007年10月-12月)
2008年6月 ロールアウト       (当初予定2007年第二四半期)  
(当初予定2008年夏 初飛行  リスケ後スケジュールの公表なし)
2009年1月 12tの重量超過発覚                <--現在ここ
2010年第一四半期 引渡開始(計画修正後 現在では2014年引渡しを危ぶむ声も)


※A400Mについて触れた過去のエントリーは以下の通りです。


エアバスA400Mロールアウト 初飛行は静かに三ヶ月延期(2008/7/02)

重大な遅延に直面している?A400Mプロジェクト(2007/8/21)

C-X、P-X遂にロールアウト!(2007/7/05)

P/C-X 零号機 6月中旬にロールアウト(2007/05/17)

意外に頑張っている日本の航空産業-CXプロジェクト(2006/10/29)



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2009年2月6日金曜日

「はやぶさ」地球帰還まであと485日


※写真はJAXAサイトからの転載

<はやぶさ>エンジン再起動成功 軌道を地球に向け

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、世界初の小惑星の岩石採取に挑戦
した探査機「はやぶさ」が、地球帰還に向けたメーンエンジンの再起動に成功
したと発表した。同日午前11時ごろ(日本時間)、4基あるエンジンのうち
1基を再起動し、同35分、正常に動いていることを確認した。はやぶさは軌
道を地球に向けて変え、順調にいけば来年6月、当初予定より3年遅れて地球
付近に帰ってくる予定だ。

はやぶさのメーンエンジンは、電気推進の「イオンエンジン」。燃費がよく長
距離の航行に耐えられる。これまでに設計寿命(1万4000時間)を大きく
超える3万1000時間稼動している。

はやぶさは03年5月に打ち上げられた。05年11月、地球と火星の間を回
る小惑星イトカワに着陸。表面の岩石採取を2度試みた。その「成果」を積ん
で、地球から約3億キロのかなたを航行している。

これまでに姿勢制御装置3台のうち2台が壊れ、姿勢制御用燃料がすべて漏れ
るなどのトラブルに見舞われた。イオンエンジンの燃料となるキセノンは地球
帰還に必要な量があるという。

地球付近まで戻ることができれば、高度数万キロで帰還用カプセルを切り離し、
オーストラリアの砂漠に落下させる。総航行距離は三十数億キロに及ぶという。

(毎日新聞 2009/02/06)

最初にお断りしておきますが、地球帰還までの日数はかなりいい加
減です。「やまと」にひっかけたジョークという事でご容赦下さい。

今まで事実上の冬眠状態であった「はやぶさ」ですが、小惑星「い
とかわ」と地球との位置関係が、帰還に際して燃料を一番節約でき
る関係になった為に、冬眠から目をさまし、地球帰還コースに進路
をとったという事です。(正確に言えば、既に「いとかわ」の軌道
からは離脱していましたので、第二期軌道変換とJAXAでは言ってい
ます。)

小惑星への着陸と離陸を世界で始めて成し遂げた「はやぶさ」です
が、その直後に姿勢制御用の燃料が全て洩れるという大トラブルに
見舞われ、地球帰還は不可能と思われましたが、イオンエンジン用
の燃料であるキセノンガスを直接噴射するという荒業で、緊急姿勢
回復を成し遂げ、地球との交信を回復しました。ただ、この間に、
電気が全て放電され衛星を制御しているコンピュータもリセット状
態になっていたりと満身創痍の状態である事は今も変わりません。

姿勢制御も姿勢制御系の噴射エンジンは使えず、三つの内、ただ一
つ残ったリアクションホイールを騙し騙し使っている状態で、これ
が、故障すれば、地球への帰還は全く不可能となります。その点で、
イオンエンジンの再始動成功は良いニュースではありますが、全く
予断を許さない状況はこれから地球帰還まで続いていきます。「は
やぶさ」の運用を行っているJAXAの「はやぶさ」運用チームは、今
まで同様、気の抜けない日々が続く事になります。

非常な困難の中にある「はやぶさ」ですが、既に、科学専門誌「サ
イエンス」が一冊丸々で、その成果を特集する程の成果を上げてい
ます。その点では、地球帰還とサンプルリターンは、「はやぶさ」
の成功を大成功にするものと言えます。

ISAS広報の任にある的川教授をして、「こんなにrobustでtoughな
のは見たことがない」と言わせた「はやぶさ」であり、「はやぶさ」
運用チームです。数々の困難を克服した実績には既に太鼓判が押さ
れていますが、今後共、頑張って頂き、「はやぶさ」の地球帰還と
サンプルリターンを是非成功させて欲しいものだと思います。


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2009年2月5日木曜日

本来の仕事もちゃんとやってるインド海軍と中国海軍



※写真は「海口」。http://icc.skku.ac.kr/~yeoupx/からの転載

ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊

【香港4日時事】4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、
海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されてい
ることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があっ
た。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。
同紙は潜水艦の国籍には言及していないが、インド海軍が保有するロシア製の
キロ級潜水艦だったことを示唆している。 

(時事通信 2009/02/04)

ソマリアの海賊対策で派遣されていても、平常の仕事はインド海軍、
中国海軍共にちゃんとやっている事を窺わせる事件です。

インドと中国は、国境紛争で戦火を交えた事もある関係であり、ま
たインドは、中国と対立していたソ連と親しい関係であった事もあ
り中国を仮想敵国の一つとして位置づけています。インドの核武装
もパキスタン向けというより中国向けの軍備であると言えます。

その様な関係ですから、今回の事件も、インド海軍にしても、中国
海軍にしても通常の緊張状態を維持していただけと言えるのかも知
れません。仮想敵国であるか否かに関わらず、他国軍艦の音紋を採
取する事は、海軍が平時から行うべき情報収集業務です。指紋で犯
罪者を識別する様に、海軍は、この音紋で艦種、艦名を識別します。
インド海軍は、その音紋採取を行っていたのではないかと思われます。

今回、中国海軍は、海賊対策にミサイル駆逐艦「海口」と「武漢」、
及び補給艦「微山湖」の三隻を派遣しています。「海口」は中華イ
ージスと呼ばれる052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)で、中国海
軍の虎の子であり、「武漢」も052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
の新鋭艦です。しかも、低速の補給艦を随伴しているので艦隊速度
が遅かった事から、インド海軍としては、音紋採取の格好の機会と
判断したのではないかと想像します。

一方の、インド海軍の潜水艦ですが、報道通りであれば、ロシア製
のキロ級潜水艦です。キロ級は通常動力潜水艦であり、本来であれ
ば、チョークポイントでの待ち伏せを得意としています。通常動力
潜水艦は原子力潜水艦程、速力も航続力も出ない替わりに、静粛性
が高い事によるものです。キロ級潜水艦の最高速力は20ktですが、
通常の活動では、この様なスピードを出す事はありません。静粛性
に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピードを出せば、
当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は艦隊速度が
遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断したのではな
いかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉えられたと
言う訳です。

通常型潜水艦が、無音状態に移行すると、水上艦からは探知するの
が殆ど不可能と言われ、演習時には、潜水艦がわざわざ音を出して
探知し易くしないと演習にならないという噂がある位ですから、今
回は、インド海軍の潜水艦は余程盛大に音を出していたのだろうと
思われますが、それにしても、それを逃さずにキャッチした中国海
軍も、ちゃんと緊張状態と維持して仕事をしていたと評価できると
思います。

海上自衛隊のソマリア派遣艦艇も、実戦であるという意識を持って
中印海軍同様の緊張感を持って任務に当たって欲しいと思います。


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2009年2月4日水曜日

イラン人工衛星打ち上げ成功 オバマ政権へのならず者国家のラブコール続く


※写真はReutersから転載

イラン初の国産人工衛星 核絡み強まる懸念

【カイロ=村上大介】イラン政府は3日、初の国産人工衛星の打ち上げに成功
したと発表した。アフマディネジャド大統領は国営テレビで「われわれは公式
に宇宙空間に足場を築いた」と演説し、打ち上げの様子を伝える映像が繰り返
し放送された。衛星打ち上げ技術は長距離弾道ミサイルにも応用が可能で、イ
ランの核開発問題とも関連して、国際社会の懸念をさらに強めることになりそ
うだ。

イラン国営通信など地元の報道によると、「オミド(希望)」と名付けられた
衛星は2日夜、国産ロケット「サフィール2」により衛星軌道に打ち上げられ
た。1日に地球を15回周回して通信実験などのデータを収集し、1~3カ月
後に地球に戻るという。ファルス通信は、イラン航空宇宙局長官が今年3月
20日までに再び人工衛星打ち上げを行うと語った、と伝えた。

イラン側は核開発について、平和利用が目的だと繰り返し強調している。しか
し、イランが核弾頭と長距離弾道ミサイルの両方を保有すれば、イスラエルや
湾岸アラブ産油国だけでなく、いずれは欧州の一部も射程にとらえると懸念す
る声は強い。

オバマ米政権は、ウラン濃縮の即時停止など国連安全保障理事会決議の完全履
行を条件に直接対話の選択肢も除外しないとしているが、アフマディネジャド
大統領は「米国がまず、過去にイランに対して犯した『罪』を謝罪しなくては
ならない」と強気の発言を繰り返しており、歩み寄りが実現する気配はない。

打ち上げは、今月10日に祝われるイラン革命30周年に合わせて「イランの
技術力」を内外に誇示する目的もあったとみられている。イランは昨年2月に
衛星軌道調査用のロケットを打ち上げ、8月には国産ロケットで模擬衛星を軌
道に乗せたと発表した。米国の観測では、8月の打ち上げは「失敗」とされて
いた。

(産経新聞 2009/02/03)

イラン衛星打ち上げに懸念 米政府

【ワシントン=有元隆志】米政府は3日、イランが初の国産人工衛星を打ち上
げたことについて、弾道ミサイル開発にも応用が可能であるとして、懸念を表
明した。

モレル国防総省報道官は3日の記者会見で、「イランの脅威は増している」と
述べ、弾道ミサイルの長射程化に警戒感を示した。

クリントン国務長官は3日のミリバンド英外相との会談後、記者団に対し、米
政府として対話の用意はあるとしたものの、イラン側も挑発的な行為をすべき
でないと指摘した。

米政府当局者はロイター通信に対し、衛星発射はイランにとっては「重要な前
進」としたものの、「最先端の技術は使われていない」として、地域の安全保
障のバランスに変化を及ぼすまでには至っていないとの認識を示した。

「オミド(希望)」と名付けられた衛星は2日夜、イランの国産ロケット「サ
フィール2」により衛星軌道に打ち上げられた。

(産経新聞 2009/02/03)

北朝鮮が前日に、ミサイル実験かと報じられたすぐ後になりますが
今後は、同じならず者国家のイランが初の衛星打上げに成功しまし
た。

米国での報道を読むと、衛星そのものについては、スプートニクか
らそう発展したものではないとの事ですが、自力で衛星を打ち上げ
た国としては9番目になるようです。

上の記事でも米国が既にこの衛星打上げについては懸念を表明して
いる様に、衛星打上ロケットと大陸間弾道弾は同じ技術が使われま
す。実際、今回衛星を打ち上げた「サフィール」ロケットは、北朝
鮮から技術導入したノドンミサイルを改造したものと言われていま
す。イランが独自にウラン濃縮を行っている点から言っても、核弾
頭付きのICBMを開発しているという懸念が持たれるのは当然の事で
す。

有力な産油国であるイランが、その必要性に乏しいにも関わらず、
ロケット開発や原子力発電、核燃料開発に異常な努力を傾けている
事を、イランの国是であるイスラム原理主義革命、イスラエルの国
家としての生存を許さないとする指導者の度々の声明、イスラム原
理主義勢力であるハマスへの援助等を考えると、米国が、ヨーロッ
パにイランの大陸間弾道弾に対抗するMD関連施設を建設するのも
むべなるかなと感じる次第です。

サフィールロケットですが、直径は1.25メートル、長さ24メートル
で、直径がやや細い事を除けば、概ね初期のミューロケットと同程
度の大きさです。二段式、又は三段式で、液体燃料とも固体燃料と
も、言われていますが、公開されている写真を見ると、一段目は固
体燃料で、衛星打上に必要な機体制御を行う二段目には液体燃料を
使っていると考えるのが適当である様に考えます。実際、上の写真
でも、二段目上部に、燃料注入用のチューブが導入されているのが
判ります。

今回の衛星打ち上げについて、イランは「われわれは公式に宇宙空
間に足場を築いた」と評価していますが、米国から見れば、同じ
「ならずもの」国家である北朝鮮のミサイル発射実験と同期を取っ
た動きと見る筈です。つまり「ならずもの」国家の側から、オバマ
政権をその公約通りに直接交渉に引きずり出す戦略に出た様に見え
る様に思われるのです。オバマ政権にしてみれば、直接交渉を行う
場合でも交渉のイニシアティブを確保する上でも、交渉に引きずり
出されたという印象を国際社会に与えるのは避けたい筈です。

北朝鮮については、六ヶ国協議がありますので、その場を使う事で
オバマ政権は対面を保ちつつ直接対話を行う事が可能です。イラン
については、その核開発について米国は、ドイツ、フランス、イギ
リス、ロシア、中国と協議を今週にもフランクフルトで行う事にな
っていました。この協議の中で、イランについても、北朝鮮と同様、
多国間協議の枠組みを発足させる事が議論されるのではないかと観
測する次第です。


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2009年2月3日火曜日

北朝鮮ミサイル発射準備中。テポドンなら米国向けだが



※USA TODAYより転載

北朝鮮がテポドン発射準備 米偵察衛星確認 改良型の可能性

北朝鮮が、核弾頭を搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準
備を進めていることが2日、分かった。複数の政府筋が明らかにした。米国な
どの偵察衛星が発射準備とみられる動きを確認しており、1~2カ月中に発射
準備が完了する可能性が大きい。北朝鮮は日本や韓国の対北強硬姿勢に強く反
発しており、対抗措置としてミサイル発射準備を進めているとみられるが、万
一発射すれば、国際世論の反発は必至で、6カ国協議の行方にも大きな影響を
与えそうだ。

複数の政府筋によると、米などの偵察衛星が、北朝鮮北東部の平安北道東倉里
で新たに建設中のミサイル発射施設に複数のトラックが頻繁に出入りしている
のを確認。ミサイルを格納する大型コンテナも運び込まれていることが分かっ
た。コンテナなどの大きさからミサイルは、テポドン2号と同等以上のサイズ
とみられる。

すでに北朝鮮は昨年秋までに発射施設でエンジンの燃焼実験を行っていること
が確認されている。北朝鮮のミサイルは液体燃料を使用しているため、発射台
への設置や燃料注入にはかなりの時間を要するため、発射は早くても1~2カ
月先になる可能性が大きい。

テポドン2号は北朝鮮が独自開発した弾道ミサイルで、1段目に新型ブースタ
ーを登載し、2段目には旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル「スカッドC」
を改良したノドンを使用しているとされる。射程は約6000キロで、米国の
アラスカやハワイ周辺まで到達するとみられている。

今回のミサイルはテポドン2号の改良型である可能性もある。改良型ならば射
程は1万キロに達するとみられ、米本土も射程圏に入るとされる。

北朝鮮は、韓国・李明博政権の対北強硬姿勢に反発を強めており、先月30日
に朝鮮中央通信は祖国平和統一委員会の声明として「北南間のすべての政治・
軍事的合意を無効化する」と伝えた。麻生政権も「核、ミサイル、拉致問題が
包括的な解決が国交正常化の条件」との立場を崩さず、対北経済制裁を続けて
いる。

北朝鮮は平成5年5月29日、日本海に向けてノドンを発射。18年7月5日
にはテポドン2号やノドンなど7発のミサイル発射実験を実施した。テポドン
2号は空中分解し、実験は失敗したが、国連安保理は7月15日、全会一致で
非難決議を採択し、ミサイル発射再凍結を求めた。2月3日2時54分配信 

(産経新聞 2009/02/03)

韓国向けの限定的な軍事的エスカレーションはあると思っていまし
たが、テポドン2号の発射準備とは、少し意外でした。先日来の南
北合意の一方的破棄とそれに続く恫喝声明は、韓国向けである事が
明らかであっただけに、同時に二正面恫喝を行うとまでは、思って
いませんでした。テポドン2号は射程の長い、初歩的な大陸間弾道
弾です。韓国向けや、日本向けであれば、スカッドやノドンで充分
の筈です。北朝鮮にしても、価格の高い、テポドンの発射実験を行
う事は経済的には避けたい筈です。しかし、そのコストを出してで
も、米国向けにラブコールを行いたいという事なのだろうと思われ
ます。

オバマ政権は選挙期間中は、条件をつける事なく、敵対国との対話
を行うと公約していましたが、政権獲得後は、北朝鮮への態度が当
初考えられていたものよりも硬いという事が判りました。この段階
で、テポドン発射という瀬戸際外交に移行したのは、米国との本質
的な関係改善の為には、タイミングが良いとはいえない様に思いま
すが、一気にミサイル発射や核実験を行う事で軍事的な対決姿勢と
核保有国である事の誇示を行い、その後に柔軟な外交攻勢で行う事
で、戦争を避けたいオバマ政権から宥和策と援助を取り込むという
狙いがあると考えられます。

相撲で言えば、格下が横綱との対戦で、立会い直後に猫騙しをやる
様なものでしょうか。四つに組むと全く相手になりませんが、横綱
の体勢が整う前に奇襲攻撃をかければ、横綱に土をつける事も可能
と言えなくないという訳です。

ここでのポイントは、北朝鮮が本気である事をオバマ政権に信じさ
せる事です。ブラフであると思われてしまうと効果はありませんか
ら、テポドン2号は、米国本土沿岸への着弾に成功させる必要があ
りますし、それに引き続き核実験を行う事で北朝鮮の断固たる対決
姿勢を誇示する事が必要になります。

オバマ政権にとっては、緊急度は異なるもののケネディ政権で起こ
ったキューバミサイル危機に近い状況が政権発足直後に発生する事
になります。六ヶ国協議に参加している北朝鮮を除く5ケ国は、恫
喝に屈して、意味もなく援助をするのも望んでいませんが、北朝鮮
の暴発も望んでいません。勿論、オバマ政権は一面で、それが、北
朝鮮のブラフであるとは判っていても、政権発足直後では、それを
無視をする事もまた出来ないと思われます。その点では、六ヶ国協
議を主導する米国新政権の外交姿勢を知る上で格好試金石を提供し
てくれていると言えるかも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト


2009年2月2日月曜日

北朝鮮またも韓国を恫喝するもロイターは物乞いと報道?


※写真はRoutersサイトからの転載

労働新聞「警告無視すれば軍事衝突につながる」

【ソウル1日聯合ニュース】北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は1日、
祖国平和統一委員会が先月30日に出した声明について言及し、韓国政府は北朝
鮮側の警告を無視しているが、朝鮮半島の休戦状態を考慮すると、軍事的衝突
と戦争につながる可能性もあると主張した。朝鮮中央通信が報じた。
労働新聞は同日の論評で、平和統一委の声明は「南北関係にこれ以上収拾の方
法も正す希望もなくなったという厳重な状態に対処した当然の措置」だと主張
し、李明博(イ・ミョンバク)政権は南北関係を険悪な状態にした責任があり、
代価をしっかり支払わなければならないと強調した。また、「われわれの尊厳
を棄損し無分別な反共和国対決の道に進み続けようとすれば、南北関係の全面
遮断を含む重大な決断を下すしかなくなるという警告を出したのは1、2度では
ない」とし、にもかかわらず韓国政府は「常套的な脅迫」などと警告を無視し、
むしろ反共和国対決と北侵戦争挑発の動きを見せることで返答してきたと非難
した。

さらに「休戦状態にあるわが国で、対決はすなわち緊張激化であり、それは防
ぐことも避けることもできない軍事的衝突、戦争につながり得るものだ」と述
べている。警告を無視し反共和国対決策動にこだわり続ければ、終国の破滅に
つながることもあると肝に銘じなければならないと主張した。
(YONHAP NEWS 2009/02/01)

北朝鮮と韓国、戦争発生の危機にある=朝鮮中央通信社

[ソウル 1日 ロイター] 北朝鮮は1日、韓国との関係悪化により、朝鮮
半島は戦争発生の危機にあると警告した。北朝鮮は30日、韓国が敵対的な政
策を推し進めているとして、和解に向けた両国間の全ての協定を破棄すると表
明している。

今回の北朝鮮による行動について、アナリストの間では同国に対し強硬姿勢を
取る韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領への政策変更を促す狙いがあるほ
か、オバマ新米大統領の関心を引くための戦略ではないかと見る向きもある。

北朝鮮の朝鮮中央通信社(KCNA)は論説で「(韓国による対北朝鮮への)
敵対政策は、軍事衝突、ひいては両国間での戦争を引き起こすものである」と
主張した。

両国は、1950─53年の朝鮮戦争休戦後も平和協定を締結しておらず、国
境付近には100万人超規模の軍備を配置するなど依然事実上の戦争状態にあ
る。また韓国には約2万8000人の米軍兵が駐留している。

李明博大統領は2008年の就任後間もなく、過去10年間続いた対北朝鮮へ
の無償援助を打ち切っており、北朝鮮は最近、同大統領率いる保守政権への攻
撃を強めている。

ただ、李明博政権は北朝鮮による挑発をほぼ取り上げていない。

(Reuters 2009/02/02)

勿論、ロイターには北朝鮮は物乞いとは書いてありませんが、上の
記事の最後の所に、わざわざ、「李明博政権は、~過去10年間続
いた対北朝鮮への無償援助を打ち切っており~、北朝鮮による挑発
をほぼ取り上げていない。」と書いてあって、裏を読めば、北朝鮮
は、援助を打ち切った李明博政権に対して援助の再開を求めて駄々
をこねていると読める様になっています。

こうなると、前回のエントリーにも書いた様に、北朝鮮は限定され
たエスカレーションを実施せざるを得なくなりつつあると言えます。
李明博政権にしてみれば、野党民主党に国会では足を引っ張られて
おり、また、経済大統領と呼ばれたかったのに、現実は、李政権に
なってから、経済は低迷の一途を辿っていることから、国論統一、
人気回復の為には、北との緊張が多少高まる事は寧ろ歓迎であろう
と思われるのです。

韓国からの無償援助が止まってしまうと、北への援助は国際機関か
らのものと中国からのものしかなくなってしまいます。ロシアは元
々北朝鮮に援助する気はありません。日本に対しては、六ヶ国協議
中の悪口雑言で、相手にして貰えなくなっています。米国のオバマ
政権も、発足後間もない上、ブッシュ政権が北に譲歩しすぎた点を
失敗と解釈しており、北朝鮮と対話を再開する体制が整っていません。

これら点から言っても、また、今年は、事の他春窮が厳しくなりそ
うという観測もあり、北朝鮮は韓国に足元を見られていると言って
も過言ではありません。それだけに各国の注目を引こうと刺激度の
高い言葉を連発していると言えます。

朝鮮戦争が始まる直前に北朝鮮は、韓国に平和攻勢をかけた事があ
ります。勿論、開戦に備えて韓国の油断を誘い、韓国の国論を分断
する事が目的であった訳ですが、この時と同様に、北朝鮮が、軟化
したり、平和攻勢をかけてきた時こそが寧ろ危険の兆候と解釈すべ
きであり、逆に、強がりを言っている時は、国内的な弱みがある訳
で、全く怖くないと言える様に思います。


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2009年1月30日金曜日

いつものラブ・コールだが、NLLでの衝突再発はあるかも


※写真は韓国の新型コムクスドリ級ミサイル艇「ユ・ヨンハ」Powercorea.comより転載

北朝鮮「南北合意は無効」と宣言 海上軍事境界線も破棄

【ソウル=山口真典】北朝鮮の対韓国担当機関、祖国平和統一委員会は30日、
韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権の対北朝鮮政策を非難し「南北間の政治
・軍事的対決状態の解消に関するすべての合意事項を無効化する」と宣言する
声明を発表した。1992年に発効した南北基本合意書で規定した黄海(朝鮮半島
西側)の海上軍事境界線に関する条項も破棄すると表明した。

朝鮮中央放送の報道をラヂオプレスが伝えた。北朝鮮は黄海上で南北を分ける
北方限界線(NLL)を「米国が一方的に引いたもの」として独自の境界線を
主張してきたが、今回の声明では「完全に破棄する」と強調。南北銃撃戦など
軍事衝突の懸念が高まりそうだ。南北合意の無効化により、対話・交流だけで
なく開城(ケソン)工業団地など経済協力も一段と冷え込む可能性がある。
声明は南北関係を「もはや収拾する方法も希望もなくなり、戦争の瀬戸際まで
きた」と指摘。「我が方だけ過去の北南合意に拘束される必要がないのは自明
だ」と力説した。

(日本経済新聞 2009/01/29)

こういうのを米国では北朝鮮のストリップ外交と言っています。
見せるぞ、見せるぞという割に、実際には見せる事はないという事
だそうで、聞いた時には、正しくその通りと感心してしまいました。
北朝鮮が現行一致の国であれば、東京もソウルも今までに何度も火
の海になっていておかしくないのですが、幸いな事に朱子学でなら
した朝鮮民族の国である割には、現行不一致が国是になっている事
は、今や日本では気の利いた中学生でも知っている事実になってし
まいました。

今回は、過去の南北合意事項は全て無効というのですが、金剛山観
光事業がストップしている中、開城工業団地が実際に閉鎖されるか
どうかが注目されます。開城工業団地は、進出した韓国企業が支払
う賃金の四分の三が北朝鮮当局によってピンハネされるという酷い
搾取が行われています。それだけに、北朝鮮にとっては、数少ない
合法的なハードカレンシー入手ルートであり、その閉鎖は、自分に
も不利益となって帰ってくる事になります。その貴重な現金入手ル
ートを本当に潰すかどうかで、北朝鮮の覚悟の程を知る事ができる
と言えます。

開城工業団地について、一言説明を加えるなら、材料、技術、工作
機械、資金を韓国から工業団地に持ち込み、北朝鮮の極めて安価な
労働力を使って加工し、製品にした上で、韓国内で販売したり輸出
したりしようというものです。北朝鮮には労賃が支払われ、そのご
く一部が労働者に還元され、多くは朝鮮労働党の懐に入ります。
この工業団地の建設は、韓国でも民主党政権の目玉プロジェクトと
して推進されましたので、進出企業からは、民主党や民主労働党へ
もキックバックが政治献金として流れていると思われます。
その点では、北朝鮮から韓国の民主党や民主労働党に脅しが入った
と言えなくもありません。

さて、今回の声明で、注目したいのは、わざわざ、海上軍事境界線
に関する条項も破棄すると表明している点です。この北方限界線
(NLL)は米軍が朝鮮戦争終結時に設定したもので、制海権を確
保していた事もあって、韓国側に有利な設定になっています。この
NLL付近が好漁場になっていたり、北朝鮮からの工作員の侵入ル
ートになっている事もあり、過去何度も南北の哨戒艇同士の衝突が
発生しています。1999年には北朝鮮の、また、2002年には、韓国の
哨戒艇が撃沈されています。

韓国は、この種の哨戒艇を80隻以上保有していますが、新しい艇
でも、既に建造から20年以上が経過しています。不思議な事に、こ
の処、海軍艦艇の増強が著しい中で、対北朝鮮戦力の先兵とも言う
べき、高速哨戒艇の拡充、更新は、実は遅々として進んでいないの
です。写真の新世代のミサイル艇は、昨年末に一番艇が就役しまし
たが、二番艇以降は来年以降ゆっくりとしたペースで就役する予定
です。

今年は、いわば、韓国の哨戒艇整備の端境期とも言える時期に当た
ります。北朝鮮にしてみれば、韓国が隔絶した実力を持つ新型ミサ
イル艇を投入する前に、比較的エスカレーションがしにくい哨戒艇
で南北が直接戦火を交わす事で、世界の耳目を集めようとする可能
性が高いのではないかと考える次第です。


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2009年1月29日木曜日

供述調書漏洩事件 似非ジャーナリストは情報提供者を守らない



※検察側証人草薙厚子 朝日新聞サイトから転載

「いまも後悔していない」崎浜被告 調書漏洩事件

奈良県田原本町の医師(50)宅放火殺人の供述調書漏洩(ろうえい)事件で、
秘密漏示罪に問われた精神科医、崎浜盛三被告(51)の第6回公判は27日
午後も、奈良地裁(石川恭司裁判長)で続けられた。被告人質問が行われ、崎
浜被告は「医師の長男が殺人者でないことを世間に知ってほしい、という信念
については今も後悔していない」と供述。供述調書を外部に見せた行為の正当
性をあらためて主張した。

「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の著者でフリージャーナリストの
草薙厚子さん(44)に長男(18)の調書などを見せた理由を、崎浜被告は
「長男に殺意がなかったことを世間に広めたかった。しかし、そのことを理解
するには、長男の広汎性発達障害を知ることが必要。草薙さんはこの障害に取
り組んでいるジャーナリストだった」と説明。

一方で「僕パパ」については、「本を出すことは直前まで知らなかった」「表
紙に(長男が取り調べの際に書き、被告宅で草薙さんらが無断で撮影した)犯
行計画書がそのまま使われていて言葉を失った」「内容も私の意図に全く反し
ていた」と述べ、意に反する出版だったことを強調した。

そのうえで草薙さんについて、「調書を撮影するのはコピーするのと同じ。コ
ピーしないという約束を破ったのと、『僕パパ』がこういった形で出版された
ことの両方で、結果的にだまされた」と述べた。

(産経新聞 2009/01/27)

ジャーナリストの全部が全部こんな人間ばかりではないと信じたい
と思いますが、日頃の報道内容を見ると、こういう似非ジャーナリ
ストが多いのも日本のジャーナリズムの特徴ではないかという感じ
がします。

一言で言えば、自分の商売の為ならば、ジャーナリストとしての良
心や倫理観、人権に対する意識など、かけらもないと言う事です。

奈良県で発生した、医師宅放火殺人の調書漏洩事件の裁判で判った
のは、警察が作成した調書を情報提供者である鑑定医の意図と、情
報提供時の約束(①調書のコピーを作らない②調書を直接引用しな
い③公開時の事前チェック)を、この草薙厚子という似非ジャーナ
リストが一方的に破った事で、情報提供者が逮捕される事になった
という事です。

裁判で検察側証人として出廷した草薙氏は、この約束(自分で録音
したICレコーダーの記録で明らかになっているもの)について、言
を左右し、責任のがれをするのみという酷い態度に終始するのです。

この事件が、如何に酷いものであったかについては、
講談社の社内調査委員会の報告
でも明らかになっていますが、
その調査委員会報告に対する草薙氏の反論
裁判での陳述<----必見!
等を見ると、
似非ジャーナリスト達が如何に倫理感に欠ける恥知らずな存在であ
るかこれほど良く判る例はない様に思われます。

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2009年1月28日水曜日

原発廃止から原子炉更新、新設へ道を開け!

原発の出力向上ルール作り 新設厳しい中で供給改善へ

経済産業省は27日、既存の原子力発電所の出力を高める改良工事を促すため、
安全確保に必要なルールづくりに着手した。今後のエネルギーの主軸は原子力
になるとみられているが、原発新設は立地地域の住民の理解を得るのが難しい
うえ、既存の原発も事故や不祥事で検査が長引いて稼働率が60%程度と低い
のが現状。既存原発の出力向上でエネルギー供給の安定化を図るとともに、火
力発電への依存を少なくして二酸化炭素(CO2)排出量削減を目指す。

この日開いた資源エネルギー調査会の小委員会で、ルール作りを検討する原子
力熱出力ワーキンググループの設置を決めた。電力会社が原発の出力向上工事
を行う場合、安全性や保守・運転管理にどのような影響があるかを検討し、今
年半ばに報告書をまとめる。経産省の原子力安全・保安院は、報告書に基づい
て電力会社の出力向上計画を審査することになる。

ワーキンググループでは具体例に沿った検討が必要だとの判断から、出力を5
%向上させる計画を打ち出している日本原子力発電の東海第二発電所(茨城県
東海村、出力 110万キロワット)を取り上げる。

また1970年代以降、米国で91基、欧州で37基が出力向上工事を行って
いることから、こうした事例も参考にする。

出力向上の具体策としては、原子炉で熱した水蒸気で回すタービンの改良など
が想定されている。

東海第二発電所は、2011年のにも出力向上工事を行う計画で、新しいルー
ルに基づき初めて工事を行うケースとなる。このほかにも出力向上の余地があ
る十数基でも工事が行われるとみられている。

(産経新聞 2009/01/28)

原油がピークのバレル140ドルをつけた頃、暖房用に電気ストーブ
やエアコンを使ったら灯油ストーブより安かったという経験をされ
た方が多いのではないでしょうか。
電気で暖房する事は、灯油ストーブで暖房するのに対して、数段の
加工が加わっていますから、値段が高くて当然なのです。
それが、同じか安い値段で提供されているのは、総発電量の20%以
上を占める原子力が、燃料代が原油価格に概ねスライドして値上が
りした石油、石炭、天然ガス火力に比べ、安値で安定しているから
に他なりません。

元々、原子力発電、水力発電、風力/太陽光発電は、火力発電に比
べライフサイクルコストに占める施設関係の費用が大きく、燃料費
の割合が小さいのが特徴となっています。今回は、原油価格が瞬く
間に下落したが、BRICs各国の発展が停止でもしない限り、原油価
格がこのまま安値安定すると考えるのは、お気楽に過ぎるだろうと
思われます。予想される将来の需要増加に対するには、原子力発電
による発電量をより高める必要があります。

ドイツは数年前に原子力発電所を全廃する方針を示しましたが、こ
れは、ロシアからの天然ガス輸入の見込みがたった事と、隣国のフ
ランスが原子力発電大国で、ここからの電力供給が見込まれた事に
よります。しかしながら、ドイツは原油価格の乱高下や、ロシアか
らの天然ガス供給の不安定さ等の理由から、原子力発電所再開に政
策を転換しつつあります。他のヨーロッパ諸国でも同様です。
米国でも、スリーマイルアイランド事故以来停止していた原子力発
電建設が再開されつつあります。

上の記事は、原子力発電所の新規建設が難しい中で、新しい技術を
適用する事で、発電効率を向上しようという試みについて書かれて
いますが、老朽化しつつある原子炉も多い中、原子炉の更新を積極
的に行う事で、安全度がより高い新型原子炉に更新し、安全性、効
率性を向上させると共に、発電量全体に占める原子力発電の割合を
更に高める事が、エネルギー供給の安定化策として必要なのではな
いかと考える次第です。


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