2009年2月16日月曜日

CRH2C型車輌に見る中国独自技術のレベル


旧聞に属する話ですが、以前に関連するエントリーを書きましたの
で、後日談という事で取り上げます。

中国は、北京・天津高速鉄道の開通に合わせ、JR東日本のE2系をベ
ースとし、中国独自技術で完成させたとするCRH2C型を投入しました。
シーメンスICE3をベースとするCRH3型と共に、2008年8月1日から
世界最高速、350km/hでの営業運転を開始したのです。

北京・天津高速鉄道は、当初から350km/hでの運転が予定されてお
り、CRH3はその為に導入されたタイプであったのに対し、CRH2C型
は、日本においては270km/hの営業運転しか行っておらず、設計速
度すら315km/hでしかなかった処から、いくらポテンシャルがある
車体でM/T比を変更したとは言え、、日本国内でも実現していない
350km営業運転をあっさりと実現した点、驚嘆したものでした。
(4M4T→6M2T、「はやて」は8M2T)

しかしながら、この列車について、朝日新聞GLOBEが2009/2/4付け
で、興味深い事実を報じました。

-前略

京津線を走る和諧号には2種類ある。一つは日本の川崎重工業が造る東北新幹
線「はやて」型。もう一つはドイツのシーメンス型だ。日独メーカーは一部車
両を完成車で輸出したものの、中国の国産政策にもとづいて、その多くは日独
の部品供給を受けて中国メーカーが生産している。
実はこの「はやて」型を巡って、技術協力した日本側と中国との間でひと悶着
(もんちゃく)あった。はやては東北新幹線では時速275キロで走っており、
12年末に時速320キロを達成するため現在、車両を開発中だ。川崎重工は「設
計上の安全走行の上限は時速275キロ」と中国側に伝え、運行技術を教えたJR
東日本の協力条件は「時速200キロまでの走行」だった。

にもかかわらず中国鉄道省は、試験走行で時速350キロ超を出せたことから、
能力いっぱいでの営業運転に踏み切った。五輪観光の目玉の一つにという思惑
もあったのかもしれない。
収まらなかったのが日本側だ。川崎重工幹部は開業の4日後、中国鉄道省の幹
部を訪ねて、抗議した。JR東日本首脳は「もし事故が起きても、これでは責
任は取れない」とカンカン。中国側から「責任は求めない」と確認する文書を
取った。
結局、京津線は2月までにすべて独型車両に置き換えることになった。はやて
型は時速250キロまでしか出さない他路線に移すという。

-後略
(朝日新聞GLOBE 2009/02/4)

http://globe.asahi.com/feature/090202/03_2.html

つまり、この高速運転は、JR東日本の協力範囲を超えた速度である
こと、また、車体製造業者である川崎重工重の設計上の最高速度を
も大幅に超えていることから、両者が中国側に抗議し「責任は求め
ない」という念書を取った様です。このため、2009年2月から、この
路線はすべてCRH3型を使用する事となり、それまでにこれらの車両
は最高時速250km/hの他線区に転属することとなったという訳です。

ここには、どこにも、中国独自の付加技術という要素が入っていま
せん。CRH2Cは、E2系と同じ先頭車両デザインだったCRH2と比べ、
ヘッドライトの位置や、パンタグラフカバーの他、車内デザインも
変更されていると伝えられており、最高速度が変わっているのです
から当然車台にも手が入っていると予想されていたのです。

ですが、実は根本的な処には全く手が入っていない事が判ったので
す。ここからは想像になりますが、中国は恐らく試験走行中にCRH2
で300km/hを優に超える速度がだせた事から、M/T比を変更すれば、
350km/hに達すると計算したのだと思います。そして、実際にCRH2C
を作るとあっさりと350km/hを達成し、恐らくは、400km/hに近いス
ピードが達成されたのだと思います。そこで、350km/hの営業運転
でも問題ないと考えたのでしょう。しかし、それは、試験運転の結
果でしかありません。そこには安全な運行への計算が、全く、入っ
ていませんでした。

一回こっきりの試験運転では、問題が発生しなくても長期間設計速
度以上の運転を行っていれば、車体の殆どの部分に設計以上の加重
がかかります。その結果として、金属疲労により、車台、車輪、構
造部材にすらクラックや破損が生じ、それが、大事故を齎す可能性
のある事は素人にすらわかります。

それをあっさりと無視した中国鉄道当局者はどういう技術的バック
グラウンドを持った人達だったのか、非常に興味があります。

今回は幸いに、大事故が発生する前に技術供与国からチェックが入
りました。しかし、こういったチェックがいつも入るかどうかには、
疑問が残ります。

最近、中国が、原子力空母を建造すると、同じ朝日新聞が報じてい
ましたが、原子力潜水艦と同じ程度の意識で水上艦用の原子炉を考
えているのであれば、近い将来、本当の「チャイナシンドローム」
が発生するのではないかと懸念する処です。


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