※写真はReutersより転載
昨日は、A400Mの開発遅延についてBusiness Weekの記事をご紹介しまし
たが、Aviation Weekにもっと詳細な記事がありましたので、抄訳します。
重量超過という開発遅延の基本線は同じですが、より技術的な見方が強く出て
いる様に思います。
Airbus's A400M May Face Design Overhaul To Meet Performance Targets
A400Mはパフォーマンス目標達成の為、設計をやり直す事になるかもしれない
エアバス社は、A400M軍用輸送機プログラムに関して契約やスケジュール
上の挑戦以上のものに直面しています。同社は、機体のパフォーマンス目標を
達成するために多くの再設計作業をする必要があるかもしれません。
業界関係者によれば、よく知られた新型エンジンのFADEC(全自動デジタルエン
ジンコントロール)の開発遅延によって発生した飛行テスト遅延に加え、多数
の問題により、A400Mの魅力や能力が損われる恐れがでています。
懸念の重要な領域の一つはA400Mの重量超過です。それは搭載能力と航続
距離に否定的に影響を及ぼします。エアバス・ミリタリー社のデータによれば、
最大積載重量は37トンで、最大積載量での航続距離は1,780海里です。しかし、
プログラムに近い消息筋によれば、機体は現在の開発状況としては、かなりの
重量超過となっていると言います。同消息筋によれば、飛行テスト計画で使わ
れる最初の6機は、計画より12トン重くなっています。重量節減キャンペーン
では、7トンの重量削減の可能性が見つかっています。それでも、初期生産機
体は最大でも5トン程度の軽減策が取り入れられるだけです。そして、その場
合の積載能力は30トン以下となります。
エアバス・ミリタリー社は、OCCAR調達機構に、積載能力の削減について通報し
た様です。フランスを含む一部のOCCARメンバーはそれを容認しましたが、空軍
が積載能力と航続距離が共に重要となる域外展開用途に使用する事を考えてい
るドイツはそれを容認していません。A400Mが以前の設計目標を達成でき
ない場合、アフガニスタンのような場所への輸送任務はずっと複雑で高くつく
事になるでしょう。
ドイツは、基本バージョンで31.5トンの重量のあるプーマ装甲戦闘車を輸送す
るためにA400Mを使用する計画をたてていました。エアバス・ミリタリー
社が積載能力を取り戻すことができなかった場合、プーマを搭載した場合には、
大幅な航続距離不足をきたすことになります。
政府高官によれば、ドイツは、英国で評価されているC-17やC-130J
を採用する事で、A400Mの注文を減らすということはありそうもないが、
それは、主に政治的な理由によるものだと語っています。臨時の解決策として
エアバスA330-200Fを使うというEADS社CEOであるルイ・ガロワによる
提案は、気の無い反応を受けています。
「もし民間貨物機が必要だったら、カーゴルックス辺りからすぐチャーターで
きる」とドイツの軍当局者は吐き捨てます。しかし、ドイツは、現在保有する
C-160トランザール輸送隊を、A330Fが使えないアフガニスタン国内
の数多くの近距離輸送の目的地に飛ばしています。ある空軍の当局者によれば、
C-160はよく整備されているので、あと数年は作戦行動を続けることがで
きるとほのめかしますが、ドイツはC-160の能力を越える任務のためにア
ントノフAn-124をリースしています。
A400Mの(全体で192機のうち60機を発注している)最大顧客が、以前の
性能保証の達成を主張するならば、それは機体の再設計(例えば、より多くの
燃料を収容するより大きな翼の採用のようなもの)を強制することになります。
しかし、そういった再設計は、全くありそうもないと思われます。エアバス社
CEOのトーマス・エンダーズが現在のプログラムの条件を「達成不可能な任務」
と表現している様に、既に財政的上もスケジュール上も大きな問題となってい
ます。
1月9日に、EADS社とエアバス社は、A400Mプロジェクトで最大4年の遅れ
になると発表し、OCCAR加盟国との契約内容の再交渉を提案しました。2003年
に締結された当初の条件によれば、EADS社が、プログラムの財務的なリスクの
殆どを負担する事となっており、解決策が見つからない場合、巨額の遅延損害
金を負担する事になります。
1月の始めにエアバス・ミリタリー社とEADS社は、「この第一級軍用機の特定
の技術的な特性を含む契約の変更、及び、それに伴うスケジュール変更につい
て議論したい」と発表しました。さらなる詳細については言及されず、エアバ
ス社/EADS社はさらにコメントするのを辞退しました。
A400Mに対する責任は、管理面の複雑さを減少させ、プログラムに関する
監督能力を改善するために、最近、エアバス社の傘下に移されました。
エアバス社の関係者は、主要なパフォーマンス基準が変更されるというリスク
はないと明かします。プログラム担当の上級副社長であるトム・ウィリアムズ
は、彼がこのプログラムのレビューをすればするほど、「これは、本当に良い
機体だ」という確信が、その度ごとにましたと言います。彼によれば、短距離
離着陸時のパフォーマンスと積載量の目標はクリアしていると言います。
しかしながら、エアバスがA400M原型機生産を「十分な成熟期は達する」
まで停止させたという事実は、この時点での生産の継続に意味がなくなる様な、
大きな機体製造上の変更があるだろう事の間接的証明であると業界人は解釈し
ています。
業界関係者によれば、もはや、エンジンソフトの問題は、主要な問題ではなく
なり、重量軽減問題が、それにとって変わるだろうと言います。オブザーバー
によれば、それ程重要でない部分への炭素繊維材の導入を含む設計変更が行わ
れた後でさえ、A400Mの積載重量は当初目標を、3~4トン下回ると考え
ています。早くとも、最初の飛行と2012年の末の最初の引渡しの間にあるEADS
社によって提案された3年の時間枠は、機体構造の部分修正が可能でもあるこ
とを示唆しています。
しかしながら、ある重量軽減策は、機体の運用に影響を及ぼします。貨物引き
込みランプの平衡を取り、主車輪を地上に降ろす油圧システムは、破棄されま
した。この決定によって、床ビームを補強しなければならないかもしれません。
なぜなら、重戦車を空中投下する際には、重心が積載ランプの端を通り過ぎる
時点で実質的にランプから下に垂れ下がる事になるからです。
Europrop国際エンジンコンソーシアム(EPI)に近い関係者は、TP400のFADEC
問題は6月までに解決されることになっていると語っています。ガロアは、
1月初めに、許容できる受け入れ標準に達したFADECが提供されるならば、
A400Mは、およそ1ヵ月で飛ぶことができると言いました。しかし、ソフ
トウェア問題に加えて、エンジン関係のハードウェア問題もあります。予想外
に高い負荷のため、原設計のエンジンのギアボックスケースにひび割れが見つ
かり、それらは、部分的に強化する必要がありました。改良されたケースは、
最終組立てラインのあるセビリアに届けられ、原型の部品と交換される予定で
す。
詳細な部分に精通している人によれば、いくつかの特別な運用性能のゴールを
達成できるかどうかは不確かです。たとえば、A400Mはプロペラのフラッ
ター問題の為、「サラエボ・プロフィール」の様な急降下アプローチを飛行す
るのが難しいかもしれません。
さらに、プログラムに詳しい当局者は、いくつかのシステムがヨーロッパ航空
安全機構(EASA)によって拒絶されるかもしれないと言います。航空安全機構
は、酸素ビンと火災防護システムが胴体と主車輪格納庫に導入されている方法
に同意しないように見えます。合意が整わない場合は、A400Mは予定され
ている民間機としての耐空証明に必要とされるEASA承認を与えられない事にな
ります。EASA当局者は、進行中の証明プロセスについてコメントしないと述べ
ています。
EADS社は、顧客と、条件引き下げについての議論を行っています。しかし、同
社は、これらは特別の必要についてのものであって、基本的な性能面には関連
がないと主張しています。エンダーズは、顧客も会社自身のエンジニアも共に
「技術的にほとんど不可能であるか、可能であっても、コストと不釣り合いな
方法でのみ対応可能」な追加的な条件をつけていると言っています。
ウィリアムズは、その一つの例として、極端戦術ナビゲーション条件を上げま
す。この要求は、特殊任務を支援する為に、地形追随システムや地形回避シス
テムすら使わない完全な受動的な状態での低空飛行を行う機能を求めています。
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