2009年3月3日火曜日

「拉致はカネで」論理的には正しい。しかし.....



※写真は民主党関係サイトからの転載

「拉致はカネで」…危うさ露呈「小沢首相」、ささやかれる総・代分離論

2月上旬、都内で開かれた民主党議員と支持者による会合。党代表、小沢一郎
が発した言葉に会場は一瞬凍りついた。

「拉致問題は北朝鮮に何を言っても解決しない。カネをいっぱい持っていき、
『何人かください』って言うしかないだろ」

日本人の人権と日本の主権を蹂躙(じゅうりん)した北朝鮮の犯罪をカネで決
着させる-。あまりにもドライな小沢発言は、当然のごとく、箝口(かんこう)
令が敷かれた。

外交・安全保障をめぐる小沢の「危うさ」が露呈し始めている。

2月24日、記者団に「米海軍第7艦隊で米国の極東の存在は十分だ」と語り、
波紋を広げた。「対等の日米同盟」を土台に、日本の防衛力増強を志向すると
受け取れる発言の真意を、側近は「安保論議を活性化させようとして投じた一
石だ」と代弁する。だが、党内にも「先を見据えない、浅はかな言葉だ」(幹
部)との批判が出ている。

「民主党に国民は不安も抱いている」。1月18日、民主党大会で国民新党代
表、綿貫民輔はこう指摘した。民主党が政権に王手をかけたいま、小沢が唐突
に繰り出す持論は、野党の足並みも乱している。
-以下略

(産経新聞 2009/3/02)

「拉致問題は北朝鮮に何を言っても解決しない。カネをいっぱい持
っていき、『何人かください』って言うしかないだろ」

拉致問題の解決方法は、基本的には二つしかありません。
一つは、日本が主体的に解決する方法であり、小沢氏が述べたカネ
で解決する方法です。
もう一つは、日本が主体的に解決するのではなく、経済制裁を続け
ながら、北朝鮮の体制崩壊を待つ方法です。

ソ連が衛星国を支配していた東欧圏とモンゴルは、ソ連の崩壊に前
後して体制崩壊が実現しましたが、残念ながら東アジアの共産圏は、
中心となる中国が、社会主義市場経済の採用という事実上の体制変
更を行っていながらも、共産党独裁体制を変えていないので、北朝
鮮やベトナムに見る様に体制崩壊は起こしてしませんし、最終的に
は中国の介入が予想される事から今後も起こる可能性は非常に少な
いと考えるべきかも知れません。

勿論、一見堅固に見える中国の共産党独裁体制も、ソ連のそれと同
様意外にあっけなく倒れる可能性があります。そうなれば、北朝鮮
でもかなりの高い確率で体制崩壊のドミノ現象は発生するかも知れ
ません。

とはいえ、現時点でそれがいつになるか判りませんから、拉致問題
を日本が「主体的に」解決するには、小沢氏の言う通り、「カネで
解決」しか方法がない事になります。最終的な解決になるかどうか、
また、拉致被害者の全員が帰ってくるかどうか判りません。死去し
た被害者の事情も不明のまま、巨額の経済援助という身代金が支払
われ、事件の再発防止すら口約束しか期待できないかも知れません。
しかし、それが現実なのです。ある日突然、米軍が北朝鮮を空爆す
るなどという幻想は発生しない事を肝に銘ずるべきなのです。

現憲法下では、国際間の紛争解決に武力は行使する事はできないの
ですから、それでも、拉致被害者が帰ってくるのであれば、日本と
しては、無力さを噛み締めながらでもそれを甘受するしかないので
す。日本国で北朝鮮による拉致を防止できなかった日本の体制の弱
さ故に発生した拉致事件の被害者を主体的に「救出するのか」、そ
れとも、北朝鮮の体制崩壊まで「放置するのか」が問われていると
換言できるのかも知れません。

ある意味で、小沢氏は、正直な政治家と言えるでしょう。北朝鮮と
の妥協を拒否する世論に従って問題が先送りにするのが一番政治的
な危険が少ないからです。加害者におべっかを使ってでも、拉致被
害者を救出するという選択は、国民の総スカンを引き起こす可能性
が極めて高いと言えますし、政治生命を絶たれるかもしれない選択
であるとも言えます。その様な凡百の政治家にはできない選択を小
沢氏が拉致被害者の生還の為に、強いて行うのであれば、小沢氏は
歴史に残る政治家であると言えるのかも知れません。

しかしながら、政治資金で後援会に不動産を購入させていた様な今
までの小沢氏の行動を見ていると、小沢氏には、そういう利他的な
行動を期待しがたく思われてならないのです。その点で、今回の発
言も、信念に基づく発言というよりも、拉致被害者よりも、寧ろ、
北朝鮮との国交回復に伴う経済援助の利権に力点の置かれたドライ
な考えの表れと考えた方が良いのかも知れません。
小沢氏の考えは確かに論理的には正しくはあるんですが....。



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2009年3月2日月曜日

インド国産空母「ヴィクラント」起工!


※写真はNHKサイトからの転載

印 初の国産空母建造へ起工式

急速な経済成長を背景に軍備の近代化を進めるインドが、初めての国産空母の
建造に乗り出し、28日、起工式が行われました。初めて建造される空母は、
排水量4万トン余り、全長260メートルで、戦闘機など30機を搭載できます。

インド南部、コチの海軍基地に併設された造船所で28日に行われた空母の起
工式には、アントニー国防相やインド海軍の関係者が出席しました。インド独
自の技術で初めて建造される空母は、排水量4万トン余り、全長260メート
ルで、戦闘機など30機を搭載できます。完成は5年後を目指しており、ロシ
アから新たに購入する予定の空母とあわせ、インド洋の海上交通路、いわゆる
シーレーンの安全確保を担うことになっています。インドが国産空母の建造に
乗り出す背景には、経済発展を続けるうえで欠かせない中東・アフリカ諸国か
らの石油の輸送路を守るだけでなく、同じく軍備増強を続ける中国が、海賊対
策でソマリア沖のインド洋に艦船を送るなど、南アジア周辺地域での影響力を
強めていることがあります。このため、インドとしては、空母の建造をあえて
公開することで、軍備の近代化をアピールし、中国をけん制するねらいもある
ものとみられます。

(NHKニュース 2009/3/1)

この処、中国の空母建造計画ニュース等でマスコミの関心が高まっ
ている事を感じさせられる報道です。このインド初の国産空母です
が、名前も決まっていて、ヴィクラント (Vikrant) と命名される
ことになっています。

ヴィクラントという名前はインド空母としては、二代目となります。
先代は、英国海軍のマジェスティック級軽空母ハーキュリーズで第
三次印パ戦争で活躍しましたが、1997年に老朽化が進んだ事から除
籍されています。

現在、インドは、これも英国海軍でフォークランド紛争時に活躍し
た、セントー級軽空母ハーミーズを改装したヴィラート(Viraat)を
保有しています。当初は、2000年代初頭に除籍される予定でしたが
ロシア海軍の航空巡洋艦アドミラル・ゴルシコフを、ロシアで改装
中のヴィクラマディティアの完成が大幅に遅延している事から10年
程度の延命工事を行っています。

延命されたヴィラートと2011~13年に完成するヴィクラマディティ
ア、2013年に完成予定の国産空母のヴィクラントとインドは、空母
三隻体制を構築する計画です。なお、艦命が長くないヴィラートに
代えてヴィクラントの同型艦が建造されるとの報道もあります。

ヴィクラントは、当初はフランスの CSN社が建造コンサルを行って
いましたが、途中でイタリアのフィンカンティエーレ社に交代しま
した。その為か、全体の印象はイタリアのヘリ空母である、イタリ
ア海軍の「ジョゼッペ・ガリバルディ」に似た印象を受けます。
ヴィクラマディティアと同様、ヴィクラントもSTOBAR方式
(Short Take-Off But Arrested Recovery) でロシア製のMig-29Kを
搭載する予定です。

このMig-29Kですが、ロシア海軍は、Su-33を艦載機に使用していま
すので、インド海軍のみが使用する機体となります。米軍には、艦
載機は陸上機として成功できるが、陸上機は艦載機として成功でき
ないという教訓があります。Su-33が艦載機として成功しているか
どうかは定かではありませんが、Mig-29Kが成功できるかどうかに、
インド空母の成功がかかっていると言っていいのかも知れません。
(尤も、Mig-29Kが成功しなかった場合は、最近の米印関係が良好な
事から、F-35が将来、空母艦載機に改めて選定される可能性も考え
られます。)

ヴィクラントは、珍しいX字型の飛行甲板レイアウトを採用してい
ますが、これはスキージャンプ式でもMig-29Kの発艦時には相当の
滑走距離が必要となる事によるものです。この為、ヴィクラントで
は、米海軍の空母の様な、アングルドデッキを生かした、離発艦同
時実施は、不可能となっています。

これ以外にも、ヴィクラントの建造に関しては、造船所設備問題等
各種のハードルがあります。その為、起工式も当初の2008年から約
半年の遅延になっています。ロシアで建造中のヴィクラマディティ
アにも同様の各種問題が発生しているのですが、その様な障害にも
係わらず断固として空母取得を推進しているインドの姿勢を我々は
重視するべきではないかと考える次第です。


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2009年2月27日金曜日

テポドン発射は、得がたいMD演習の機会 大いに利用すべし


※画像は防衛庁サイトから転載

テポドン迎撃を検討 防衛省、MDシステム初実戦

北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型を日本に向けて発射す
れば、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する検討を防衛省が始めたことが
26日、分かった。迎撃するのはイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイ
ル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で、導入から初の運用
となる。ただ、迎撃は重大な政治決断を伴うため、首相官邸などと慎重に調整
を進める。

政府は平成15年、米国が開発したMDシステムの導入を決定した。MDによ
る対処は2段構えで、まず海上自衛隊のイージス艦がSM3で大気圏外で弾道
ミサイルを撃ち落とし、失敗した場合は航空自衛隊が地上で運用するPAC3
で迎撃する。

海自はSM3を搭載したイージス艦として19年度に「こんごう」、20年度
に「ちょうかい」を配備。空自も19年3月に入間基地(埼玉県)へPAC3
を配備したのを皮切りに、昨年3月までに首都圏の4カ所に配備を終え、26
日には岐阜基地にも配備した。

こんごうは19年12月に米ハワイ沖で発射試験に成功したが、ちょうかいは
昨年11月、より難易度の高い試験に失敗。空自は昨年9月、米ニューメキシ
コ州でPAC3の初の発射試験を行い、模擬ミサイルの迎撃に成功している。

北朝鮮が18年7月にテポドン2号を含む弾道ミサイル7発を発射した際、自
衛隊は迎撃システムを備えていなかった。こんごうとちょうかいの2隻も日本
海と太平洋側に展開したものの、弾道ミサイルの探知・追尾だけが任務だった。

テポドン2号改良型の迎撃に踏み切る場合、MDシステム導入で自衛隊法に新
たに規定した「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を初適用することになる。
破壊措置には、(1)燃料注入など発射の兆候がある場合、防衛相が首相の承
認を得て自衛隊の部隊に迎撃を命令(2)明確な兆候はないものの、ミサイル
実験などへの警戒が必要な際、防衛相はイージス艦などを展開させておき、あ
らかじめ作成された「緊急対処要領」に沿って迎撃する-の2つの運用方式が
ある。

北朝鮮は24日、実験通信衛星「光明星2号」の打ち上げ準備を行っていると
の談話を発表。人工衛星発射を“隠れみの”にテポドン2号改良型を発射して
くる可能性が高いため、迎撃に向けた政治決断とともに、どちらの運用方式で
迎撃を命じるかも今後の政府内の調整の焦点となる。

(産経新聞 2009/2/27)

昨年、「ちょうかい」がハワイ カウアイ島沖でMD訓練するのに約
60億円の訓練費用がかかりました。このJFTM-2というコードネー
ムのついたそのテストでは、実戦に近い条件を想定し、「ちょうか
い」に対して、いつ発射するかを事前に知らせる事なく標的ミサイ
ルを発射し、それを「ちょうかい」のイージズシステムで探知し、
SM-3ミサイルを発射、誘導し、標的ミサイルに直撃させるとい
うシナリオになっていました。
「ちょうかい」は、米軍の早期警戒衛星からの情報を元に、標的ミ
サイルの探知、誘導を正確に行いましたが、最終フェーズでSM-3
に搭載された標的を識別し誘導するセンサーが標的を見失い、結果
的に標的撃破に失敗しました。しかし2007年に行われた「こんごう」
の演習(JFTM-1)がミサイル発射時に発射通知されたものであった事
と比べると実戦に即した演習となっていたのは事実です。

今回の北朝鮮のテポドン発射と、上記のJTFM-2演習を比べると、当
然ではありますがシナリオが一致する事に気がつきます。
今回のテポドン対応でイージス艦がどこに配置されるかにもよりま
すが、打ち落とすべきミサイルがミッドコースフェーズ(巡航中)なのか
ターミナルフェーズ(降下中)なのかの違いこそあるものの、米軍早
期警戒衛星情報→イージス艦によるミサイル探知→ミサイル追跡→
ミサイル照準→SM-3発射→SM-3誘導→撃破という基本的な
対応手順は全く変わらないのです。いつ発射されるかわからないと
いう状況まで同じです。あとは、実際にSM-3を発射するか、し
ないかだけの違いでしかないのです。テポドンを打ち落とすという
決定がでれば(実戦でもないのに手の内を全て晒すのは私は愚策と
思いますが)、全く同じになってしまいます。

寧ろ、ハワイへわざわざ艦艇を派遣する必要もなく、実戦時に必要
とされる海上自衛隊の艦艇をはじめとするリソース全てが利用でき
ますから、更に実践的な総合的演習が可能とすら言えます。しかも、
ミサイルもダミーではなく、本物のテポドンが使われ、訓練費用も
請求されないのですから、これ以上お誂えの演習は考えられない程
です。

勿論、北朝鮮が本物の弾頭をつければ実戦になってしまいますが、
今回については、人工衛星を打ち上げると北朝鮮自らが宣言してお
り、米軍も既に動き出していますので、北朝鮮が戦術的な奇襲を行
う事はまず考えられません。従って、自衛隊は、テポドン発射を全
てが整ったお誂えのむきのMD演習の機会と捉えて問題ない事にな
ります。

今回のテポドン演習を演習と捉えれば、色々とやって欲しい事があ
ります。自衛隊、米軍だけでなくミサイル発射時の政府首脳や各関
係省庁への連絡体制等も含め、今まで整備してきた実戦に即した手
順等の確認を是非やって欲しいと思います。この点は正に実戦なの
ですから当然と言えます。

この得がたい無償の訓練機会を是非実戦に生かし、北朝鮮の費用で
対北朝鮮ミサイル防衛を実のあるものにするという痛快な機会を、
是非ものにして欲しいと考えます。



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2009年2月26日木曜日

唐突?突出? 小沢一郎の自主国防論


※王家瑞・中国共産党対外連絡部長との会談で握手する民主党の小沢一郎代表 
毎日新聞サイトより転載

小沢代表:対米追随脱却を強調 防衛力強化も言及

日米首脳会談に合わせる形で、民主党の小沢一郎代表は25日、在日米軍削減
論を重ねて示し、「対米追随脱却路線」を鮮明に打ち出した。次期衆院選後の
政権交代をにらみ、「対等な日米同盟」の具体策として持論を強調したものだ
が、日本の防衛力強化にも言及。専門家からは「憲法改正が必要になる論法」
との指摘が出たほか、野党内に困惑や警戒感が広がった。

「グローバルな戦略を米国と話し合って役割分担し、日本に関係の深い安全保
障面は日本が負担すれば、米軍の役割はそれだけ少なくなる」

小沢氏は25日、大阪市で記者団に語った。そのうえで「米国のプレゼンスは
必要だが、おおむね(米海軍横須賀基地に司令部を置く)第7艦隊の存在で十
分だ。米軍が引くことによって日本の防衛に関することは日本が責任を果たせ
ばいい」と改めて指摘した。

小沢氏に近い民主党関係者によると、在日米軍の役割のうち「日本の防衛」に
応分の負担をする分、「極東の安定」は第7艦隊で十分になるという意味だと
いう。

ただ、森本敏・拓殖大大学院教授(安全保障)は「在日米軍には海兵隊と戦略
空軍があり、海軍である第7艦隊だけでは抑止機能の一部しか果たせない」と
指摘。「出ていった米軍の肩代わりを日本がするのであれば、再軍備を意味し、
憲法改正が必要となる」と語った。

こうした中、共産党の志位和夫委員長は「軍拡の道を進むことでイコールのパ
ートナーになるのは間違った道だ。日本が軍事的な力を強めれば強めるほど米
国は利用する」とけん制。社民党の福島瑞穂党首は「『第7艦隊で十分』の後
が『日本でやる』か『基地縮小』かで意味が違う。軍備拡張には反対だ」と戸
惑いを見せた。

民主党の鳩山由紀夫幹事長は東京都内で記者団に「極東において脅威が増大し
ている状況ではないという発想ではないか。日本の軍備増強という発想ではな
い」と語り、小沢氏の発言への理解を求めた。ただ、その一方で「将来ミサイ
ル防衛網などをしっかり作れば、米国に頼らなくとも専守防衛の中で日本の安
全を保てる」という持論も展開した。【渡辺創、古本陽荘】

(毎日新聞 2009/2/26)

小沢一郎が、一部の支持を集め続ける理由は、こういう事にあるの
かも知れません。「対米追随脱却路線」の論理的な結末が、自主国
防論になるのはある意味当然なのです。その点で、同じ、民主党の
鳩山氏とは一味違う処です。

日米安全保障条約は、米国に日本の防衛義務を課している反面、日
本に米国防衛の義務を課していないのは衆知の事実です。

安保条約が現在の内容になったのは、1960年の改定によるものです
が、片務的内容は条約締結当初から変わっていません。つまり、安
保条約は1950年代の日米関係の現状を反映したものでしかないのです。

ここでいう1950年代の日米関係の現状とは、米国が全世界のGNP
の半分を占め、七つの海を圧する艦隊で、ソ連と対峙していたのに
対し、日本は、まだまだ戦後の焼け野原から脱していない半病人状
態であった事を指します。その様な前提にたてば、日米安保条約の
片務性は、正しく現実の反映であったと言えます。

しかしながら、片務的な条約内容である限り、日本は同盟に対し不
完全な貢献しか期待されず、いつまでも準禁治産者の位置にあり続
ける事になってしまいます。その意味で、「対等な日米同盟」を目
指せば、日米が対等の義務をもつべきであるのも当然なのです。し
かし、ここで現行憲法との矛盾が生じる事になります。つまり、小
沢氏の議論の帰結が憲法改正になってしまう事になるのです。

その一方で、小沢一郎の議論が、「対等な日米同盟」から、更に
「対中傾斜」へ繋がって事も明白に見て取れます。23日に小沢氏は
中国の王家瑞・中国共産党対外連絡部長と会談していますが、その
中で、民主党が政権を取れば、対中関係を重視する意向を伝えてい
ます。

尤も、小沢氏はクリントン国務長官との会談で、中国の共産主義体
制の民主化と世界秩序への取り込みが課題との意見も伝えており、
その点では、民主党の他の政治家との違いが際立っているとは言え
ます。

民主党内の旧社会党系議員は、旧来の、非武装中立程度の考えしか
持っていないと思える節があるのですが、それを党内で正面から持
ち出せば民主党は意見対立で分裂状態を招くので、今まで、まとも
な安全保障の議論は避けてきたとも言えます。

今回の小沢氏の「第7艦隊で十分」という発言が、どの様な認識に
たっているのか疑問があるのは事実ですし、それを明らかにして欲
しいのは勿論ですが、それ以前に、民主党として、どの様な安保、
外交路線を取るのか、もっと明確にして貰いたいと思います。

つまり。民主党が「対米追随脱却路線」で纏まっているのかどうか、
また、民主党が政権獲得後、対米同盟路線を堅持するのか、対中傾
斜路線とするのか、米中等距離路線とするのか、その上で、自主防
衛力を強化するのか、軽武装継続なのか、はたまた、今まで以上に
防衛力を軽減するのかという点です。

小沢民主党が、政権を担当するのであれば、明確にしてもらう事は
安全保障面だけとっても多々あるように思いますし、それが無くて
政権を取ったとしても、結局、村山政権の様に、碌な結果を残さず
に終わらざるをえなくなる様に思うのです。


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2009年2月25日水曜日

米民間衛星打上げ会社 炭素観測衛星打ち上げに失敗



※写真は、TaurusロケットとOCO衛星 Wikipediaから転載

炭素観測衛星打ち上げ失敗 NASA、衛星分離せず

米航空宇宙局(NASA)は24日未明、カリフォルニア州のバンデンバーグ
空軍基地から大気中の温室効果ガスを測定する「炭素観測衛星」を打ち上げた
が、衛星分離に失敗した。
打ち上げは、NASAとして初めて米オービタル・サイエンシズ社(バージニ
ア州)の固体ロケット「トーラス」を使用。打ち上げ約10分後の3段目の点
火までは順調だったが、その数分後、衛星を大気から保護するケースが開かず、
衛星を軌道に投入できなかった。
炭素観測衛星は、地球大気の二酸化炭素(CO2)の濃度分布図を作製、排出
や吸収の実態を解明するのが目的だった。
日本は1月に世界初の温室効果ガス観測衛星「いぶき」の打ち上げに成功した。

(産経新聞 2009/2/24)


今回、衛星打ち上げに失敗したのは、ISS(国際宇宙ステーション)
への補給ミッションの実施業者に選定された二社の内の一社である
オービタル・サイエンス社です。
オービタル・サイエンス社は、1982年に民間衛星打ち上げビジネス
の走りとして設立された企業ですが、今では、打ち上げシステム以
外に衛星そのものの製造でも有力な企業です。またMD(ミサイル
防衛)関係のビジネスにも参加しており、特に標的ミサイルを一手
に製造していて、昨年「ちょうかい」がハワイで実施したミサイル
迎撃試験でも、オービタル社の標的ミサイル(Ballistic Target
Vehicles)を使用されています。

オービタル・サイエンス社のロケットとしては、低価格の小型衛星
打ち上げ用空中発射ロケットとして有名なペガサス・ロケットがあ
りますが、今回の打ち上げで使用された打ち上げロケットは、中規
模衛星打ち上げ用の四段式固体燃料ロケットであるトーラス・ロケ
ットです。

このトーラス・ロケットですが、一段目はPeaceKeeperICBMの一段
固体燃料ロケットであるCastor 120を、二段~四段には、自社製小
型ロケットを使用しています。コンセプトも、規模的にも日本の
J-1ロケットに近いものであると言えます。

トーラス・ロケットは、今回の打ち上げも含め、過去8回打ち上げ
られており、成功は6回、失敗2回、2009年には、あと1回の発射
が予定されています。

今回の打ち上げでは、炭素観測衛星(OCO)が打ち上げれる予定で
したが、衛星そのものもオービタル・サイエンス社の製品であり、
打ち上げ費用も含め、273百万ドルがかかったと言われています。
OCOの機体重量は440kg(972lb)で、同様のミッションである
JAXAのGOSAT「いぶき」(1.5t)に比べ、約三分の一の規模
です。観測装置もGOSATと似たものが搭載されていますが、GOSAT
が二酸化炭素とメタンの排出場所の調査を目的にしているのに対し、
OCOは、二酸化炭素の大気中の分布状況の調査を目的にしていま
した。また、OCOは同じ軌道を回っている他のシリーズ衛星と共
同で、全球の立体的調査を行う事となっていました。

オービタル社はISS(国際宇宙ステーション)への補給ミッション
に選定された企業ですし、数十回の衛星打ち上げをこなしているの
で、経験的にも充分。ロケットのコンポーネントも実績充分なもの
を使用しているのですが、良く見ると成功率ではH-2A以下であ
り、この種の限界まで、コストを削減したロケットによる衛星打上
げの難しさを示している様に思われます。



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http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年2月24日火曜日

神谷不二教授の逝去を悼む 「正論」論説リンク集



※筆者が学生だった頃の神谷不二教授。産経新聞サイトより転載

昨日、逝去された神谷不二教授のお通夜に行ってきました。

1966年に神谷教授が中公新書「朝鮮戦争―米中対決の原形」(現在は中公文庫
に収録)を書かれた頃は、左翼一色の日本では、朝鮮戦争が北朝鮮から仕掛け
られたものであった事すら、まともに指摘できる雰囲気ではありませんでした。
その様な中で、学界から反発や総連からの物理的攻撃を恐れる事なく、明確に
それを指摘し続けた神谷教授の知的誠実さと剛毅さは、いくら評価しても評価
しすぎることはないでしょう。

私が大学で国際政治学/国際関係論を学んだ頃には、既に大阪市立大学から慶
応義塾大学に移られていましたが、左翼的な国際政治学者が多い中、京大の高
坂正堯、東工大の永井陽之助と並ぶ現実主義派の政治学者として夙に高名でした。

当時、グータラ学生にとっては、お三方共寡作であった為、読む本が少なくて
助かったのですが、亡くなってしまうと(永井教授はご存命ですが)、残された
ものの少なさに戸惑う思いがします。ただ、神谷教授の場合は、産経新聞の正
論に執筆されていた関係でネット上でも読める論説が多い点は救いと言えます。

なお、2007年12月に慶応義塾大学150周年記念「復活!慶応義塾の名講義」の
一つとして行われた講義「日本の国家戦略」は、神谷教授が日本外交の将来に
対し残された遺言とも言える内容でしたが、探し方が悪いのか私のブログ以外
には、講義内容が殆ど収録されていません。その点、神谷教授の該博な知識の
詰まった名講義を万分の一でも収録できた事を幸せに思います。

ここに、ネット上で読める神谷不二教授の著作の一部を纏める事で、氏の業績
を讃えると共に、哀悼の意に代える事にします。晩年まで知的活動に衰えを見
せなかった氏の最後の活動をお楽しみ下さい。


著書、共著、編著、共編著、訳書
http://ja.wikipedia.org/wiki/神谷不二 参照

【正論】複眼で視るオバマ政権と世界 2008.12.31
http://sankei.jp.msn.com/world/america/081231/amr0812310258002-n1.htm

【正論】神谷不二 「核」と「拉致」の日米ギャップ 2008.10.17
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/187501/

【正論】北独裁の3代世襲は難しい 2008.8.1
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080801/kor0808010244000-n1.htm

【正論】東アジア新潮流 イデオロギーから「実利主義」へ 2008.6.12
http://www.sankei.co.jp/seiron/opi-sern/0806/0612opi-se1.html

【正論】66歳になった金正日氏の今 2008.2.20
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080220/plc0802200310001-n1.htm

【神谷不二教授講演会】「日本の国家戦略」 2007.12.15
http://blogs.yahoo.co.jp/ash1saki/52888059.html
http://ysaki777.iza.ne.jp/blog/entry/424968/

【正論】南北会談その後 北の核「無能力化」の虚妄 2007.11.06
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071106/kor0711060341001-n1.htm

【正論】米の核融和策と拉致強硬策の両立 2007.8.10
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/070810/kor0708100501000-n1.htm

【正論】核ならんと欲すれば拉致ならず 2007.5.18
http://www.geocities.jp/daruma002jmhs/syasetu-colom07.05.html
(ページ内要検索)

【正論】6者合意の「譲歩圧力」に屈するな 2007.2.26
http://www.geocities.jp/daruma002jmhs/syasetu-colom07.02.html
(ページ内要検索)

【正論】6者協議の不毛の連鎖を断て 2007.1.14
http://kamomiya.ddo.jp/\Souko\C01\Kamiya_F\Fumou.html

【正論】アメリカの対北外交に落胆 2006.11.23
http://www.geocities.jp/daruma002jmhs/syasetu-colom06.11.html
(ページ内要検索)

【正論】新政権が対北政策で心すべきこと 2006.10.02
http://www.geocities.jp/daruma002jmhs/syasetu-colom06.10.html
(ページ内要検索)

【正論】国際政治の動向判断で肝心なこと 2006.8.21
http://www.geocities.jp/daruma002jmhs/syasetu-colom.06.08.html
(ページ内要検索)

【正論】日中間には関係悪化の歯止めなし 2005.4.28
http://sv3.inacs.jp/bn/?2005050012726649003961.3407

【正論】親中派と戦後進歩派に見る相似性 2004.12.25

【正論】韓国に育つ親北路線への憂国ムード 穏健自由路線を取り戻す正念場 2004.9.27 
(ページ内要検索)

【正論】太陽政策でマントを脱いでしまった韓国 2003.10.16

【正論】平和と戦争の二分法を排す 2003.4.22

【正論】韓国新政権と小泉路線の協調と矛盾 2002.12.27

【正論】北朝鮮を修復不能にした男 「軟着陸」は果たして可能なりや 2002.11.09


神谷不二慶応義塾大学名誉教授 最近論説集 2009.2.24
-ここに掲示した神谷不二教授の論説をpdfファイルに纏めたものです。


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2009年2月23日月曜日

韓国艦艇への給油拒否は当然


※写真は、韓国が派遣する駆逐艦の同型艦。
www.militarypictures.infoより転載

韓国、海自に給油を打診 ソマリア沖で 日本は拒否

ソマリア沖の海賊対策に海軍艦船派遣を計画している韓国が、日本政府に海上
自衛隊から給油を受けられないか打診していたことが分かった。日本側はイン
ド洋での補給活動はテロ対策に限定されているとして拒否。防衛省内には3月
初めに国会に提出する海賊対策新法に外国艦船への給油を盛り込む案もあるが、
首相官邸は消極的で、実現性は低いとみられる。

11日に行われた日韓外相会談では海賊対策の協力で合意したが、海自の活動
の制約もあって、実際に何ができるかは手探り状態が続いている。

韓国政府関係者などによると、韓国側は外相会談前の実務協議で、海軍駆逐艦
「文武大王」を近くソマリア周辺に派遣する計画を説明。「最も助かるのは給
油支援だ」と日本側に打診した。国際テロ組織「アルカイダ」がソマリアで活
動していることから、補給支援特措法を適用できるのでは、との期待もあった。

しかし、日本側は、特措法での給油対象はテロ対策の海上阻止活動に参加して
いる艦船に限定されているため、不可能だと説明した。

防衛省は一方で、各国艦船の給油の需要が多いとして、海賊対策新法に、派遣
される海自の任務に給油を加えることを検討。政府関係者によると、13日の
官房長官、外相、防衛相の会合で浜田防衛相が提案したが、「海賊対策と直接
関係ない」「審議が混乱する」などの理由で受け入れられなかった。

韓国国防省によれば、ソマリア沖で護衛が必要な韓国の関係船舶は年間150
~160隻。韓国側が韓国人乗組員のいる日本の関係船舶を護衛する代わりに、
海自に韓国船の護衛を期待する声もある。しかし、海自が派遣する護衛艦は2
隻で、保護対象に想定している日本関係船舶は少なくとも年間2300隻以上。
新法が成立して日本と無関係の外国商船を保護できるようになっても、日本船
の護衛で手いっぱいなのが実情だ。(牧野愛博=ソウル、石松恒)

(朝日新聞 2009/02/22)


島根県の「竹島の日」に韓国政府が「遺憾表明」をしたり、韓国人
が式典に殴りこみをかけたというニュースを聞いりすると、韓国が
一体どういう根拠で、日本に給油を打診してきたのか盗人猛々しい
思いがするというのが本音です。

韓国は隣国ではあっても、別段同盟国ではなく、前大統領の時には
一方的に外交戦争を宣言された事もあった程で、とても友好国とは
言えないというのが、一般的な国民感情であると思います。

韓国では異なる様ですが、外交に感情を持ち込むのはご法度ですか
ら、感情を交えずに考えてみましょう。

日本が対テロ活動を行っている各国艦艇への給油活動を行っている
のは、武力を伴う活動が憲法で禁止されている日本が、直接的なテ
ロ対策の海上防衛活動に参加できない事から、それに見合う国際貢
献活動を行う必要からです。

それに対し、ソマリアでの海賊対策の活動に関しては、日本も出足
は本当に遅いですが、海賊対策特措法ができた段階で実施する内容
は他国と全く同様であり、なんら負い目を感じる必要はありません。

そして韓国が、自国にも給油艦があるにも係わらず、無償の給油活
動を日本に求めるのは、常には敵対姿勢を取るにも係わらず、自国
の都合の良い時には日本に擦り寄ってくる韓国の伝統的な甘えの姿
勢以外解釈のしようがありません。

防衛省の一部には、韓国艦への給油に前向きな意見もあるようです
が、韓国の根拠の無い要望に、好意的に対処をした事で、それに付
込まれ後々問題の火種になった事も、「従軍慰安婦」を始め、枚挙
にいとまがないのです。今回の件も、一度こういった韓国への補給
活動を行うと、今後も国際的な貢献活動で、際限なく韓国からの補
給要求に応じなければならない事になりかねないと言えます。

そういう点からも、この種の韓国の根拠のない無理の押し付けには
断固として拒否する態度を明確にすべきであると考える次第です。


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2009年2月20日金曜日

「韓国との戦争準備はできている」とは「できていない」と読む


※写真はReutersサイトから転載

韓国との戦争準備はできている=北朝鮮

[ソウル 19日 ロイター] 北朝鮮は19日、韓国との戦争の準備はでき
ていると表明した。クリントン米国務長官はこの日韓国を訪問し、北朝鮮問題
を協議する。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)によると、匿名の軍関係者は「裏切
り者である(韓国大統領の)グループは、(北朝鮮)人民軍が完全に全面対決
の準備ができていることを忘れてはならない」と述べた。
北朝鮮は長距離ミサイルの発射準備を進めているとみられているが、専門家は、
米国の新政権の関心を引き、韓国政府に圧力をかけることが狙いではないか、
との見方を示している。
アジア歴訪中のクリントン国務長官は17日、北朝鮮がミサイルを発射すれば、
非常にマイナスになるとの見方を示している。

(ロイター 2009/02/19)


寝言は寝て言え第二弾です。
しかし、北朝鮮の言う「韓国との戦争準備はできている」という言
葉は戦争準備が出来ていない、あるいは戦争はする気がないと読む
べきであるというのは、私の持論です。逆に、平和攻勢をかけてい
るのに反対給付を求めていない時の方がはるかに危険であるといえ
ます。くれくれ詐欺の常習犯である北朝鮮が見返りを求めない筈が
ないのです。

つまり、本気で戦争をする準備を進めている場合は、当然奇襲効果
を狙う訳で、相手油断させるべく平和攻勢をかけると考えられるの
です。北朝鮮は、朝鮮戦争を開始する際にも、開戦の約一ヶ月前か
ら平和攻勢をとっています。その点でも前科はある訳です。

逆に言えば、北朝鮮が、この手の戦争前夜的な発言をする時は自国
に弱みを抱えている時です。今年の場合は、勿論、オバマ政権が発
足したので、その関心を引き続け、米国との直接交渉に道を開きた
い思惑がありますが、もう一点、食料不足が深刻な割に、国際的な
援助が少ない点があげられます。この為、今年は1997年以来の
食料不足が予想されています。ここで、食糧援助を引き出すために、
緊張を演出しているという訳です。

いずれにせよ、北朝鮮の発言は、裏を読むべきであるというのは、
私の様な一般人にすら常識になっているのですが、そういう事が常
識になってしまっている非常識な国で、その国の中では、だれが政
権を世襲するかで暗闘が続いていると報じられている点、人間の業
の深さを感じてしまいます。



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2009年2月18日水曜日

原潜衝突 英仏の戦略原潜パトロール継続を示す



※写真上段はHMS Vangaurd。下段はLe Triomphant

英仏の原潜、大西洋で衝突 「放射能漏れない」

英仏の原子力潜水艦が今月初めに大西洋で衝突し、双方が破損していたことが
分かった。両国の当局が16日、衝突の事実を認めた。「放射能漏れはなかっ
た」と説明しているが、両原潜は核兵器を搭載していたとみられ、あわや大惨
事となるところだった。

英メディアによると、ぶつかったのは英国のバンガード級戦略原潜(水中排水
量約1万6千トン、長さ約150メートル)と、仏のル・トリオンファン級原
潜(水中排水量約1万4千トン、長さ約140メートル)で、ともに核弾道ミ
サイルを搭載していたとみられる。

仏国防省は当初、「2月6日に巡回から戻っていた原潜が、水中で物体(おそ
らくコンテナ船)とぶつかった。水中音波探知機(ソナー)が壊れたが、乗組
員らにけがはなく、原子力の安全も保たれていた」と報告していた。

ところが、英メディアが16日、衝突したのはコンテナ船ではなく英原潜だっ
たと報道。その後、英仏の国防省がともに事実関係を認めた。英海軍本部のジ
ョナサン・バンド第1武官は「両原潜は低い速度で接触した。負傷者は報告さ
れていない」と説明。英BBCによると、英原潜には大きなへこみと、こすっ
た跡が出来ていたという。

両国が衝突の詳細を調べているが、英紙サンは両原潜ともソナーを備えていた
が、敵に居場所を探知できなくさせる技術のために互いに分からなかったので
はないか、と指摘。BBCは原潜同士の衝突を「大西洋の広さを考えると百万
分の一の確率で、とても信じられないことが起きた」と報じている。

反核団体「核軍縮キャンペーン」(CND、本部・ロンドン)は「平時に原潜
を海に放つことの危険さを浮き彫りにした。核兵器は我々の安全に何の役にも
立たない」と批判した。

(朝日新聞 2009/2/17)


1991年にソ連が崩壊してから、既に、17年が経過したにも係わらず、
英仏という二線級核保有国ですら戦略ミサイル原潜によるパトロー
ルを継続している事が、今回の事故によってはからずも明らかにな
りました。世界は緊張感を決して緩めていないようです。

旧ソ連が崩壊し、核保有国としての地位はロシアが継承しています
が、既に体制の違いがない(?)にも係わらず、英仏は決してロシア
に心を許していない事を示していると言えます。

ソ連崩壊以降、戦略原潜によるパトロールの停止であるとか再開と
いうニュースが流れた事を私は寡聞にして知りません。という事は
G8でロシアを西側体制に取り込んだにも係わらず、完全な武装解
除も同盟関係の構築も行われなかった点で、根本的な処では信頼し
ていなかったと言う事になります。近年、プーチン政権下でロシア
の全体主義的独裁制構築が進んでいるように思えますので、この点
での英仏の正しさが伺えるようにも思えます。

勿論、英仏の事ですから、ロシアが抗議した場合に備え、照準は定
めていなかった位の事は言いそうですが、原潜パトロールが、核抑
止力の根幹になっている事を考えれば具体的な抑止対象を指定して
いないとは考え難いですし、技術的にも一隻当たり、96(仏)~224
(英)近い目標設定を発射する都度行うとも考えられません。
(恐らく目標セットを複数もっており適宜交換可能になっていると
思われます。)
その点からも、具体的な目標としてロシアの大都市を照準していた
と考えるべきでしょう。勿論、これはロシアも同様の意思はあった
と思われます。(現実には、経済状況によっては原潜パトロールを
継続できていたかどうか疑問がありますが、実施できる状況では実
施していた筈です。)

もう一つ、今回の件でわかった事は、両原潜の低速での静粛度が恐
るべき水準に達している事です。潜水艦は、海中での音波探知装置
としては理想的であり、戦略ミサイル原潜はパトロール中、聞き耳
を立てる事が唯一の任務と言える程です。

原子力潜水艦の場合は、海中に停止している時でも、原子炉の冷却
水を循環させる必要があり、冷却水循環ポンプを常時動かしておか
ねばならず、加圧水型原子炉ではこのポンプが大きな騒音発生源と
なっていると言われてきました。また、高速回転する蒸気タービン
で低回転のスクリューを回すため、減速ギヤを介在させる必要があ
り、この減速ギヤも大きな騒音発生源になっていると言われてきま
した。そうであるにも係わらず両原潜共に衝突まで相手側の推進音
を探知する事ができませんでした。

通常動力潜水艦にAIP機関が装備される様になり、静粛度で勝る通
常動力潜水艦が少しは原潜に近づいたと思わせる様になりましたが、
原潜の側も弱点克服を着実に実施していた事を示すものと言える様
に思います。



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2009年2月17日火曜日

北朝鮮 誤解をさけたいなら情報公開が一番


※北朝鮮のプロパガンダポスター

北朝鮮、ミサイル発射準備を否定 「人工衛星」打ち上げと

北朝鮮は16日、ミサイル試射準備を進めているとの観測を否定し、人工衛星の
打ち上げを準備していると主張した。韓国の聯合ニュースが伝えた。

米高官は先週CNNに対し、米偵察衛星が撮影した北朝鮮の画像に、ミサイル発
射準備とみられる動きが写っていたと述べた。撮影地点は以前、長距離弾道ミ
サイル「テポドン2」が発射された場所。

聯合ニュースは16日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)の報道内容として、
北朝鮮が「宇宙開発」を実施すると計画だと伝えた。北朝鮮は「何を打ち上げ
るかは後で分かる」と述べ、ミサイル試射計画を否定。宇宙開発が北朝鮮の権
利であるとしたうえで、海外の報道が、北朝鮮の主権で行われている活動を阻
止しようとする「悪意ある策略」だと批判した。

聯合ニュースは、今週予定されているヒラリー・クリントン米国務長官の訪韓
に先立ち、北朝鮮が米政府にメッセージを送った可能性があると指摘した。

北朝鮮は1998年にミサイル「テポドン1」を発射した際にも、人工衛星を打ち
上げたと発表した。韓国は宇宙開発の権利をめぐる北朝鮮の主張を受け入れな
い姿勢にある。聯合ニュースによると、柳明桓外交通商相は16日の議会審議で
「ミサイルであれ人工衛星であれ、打ち上げは(核開発とミサイル実験の中止
を盛り込んだ)国連安全保障理事会決議第1718号に違反する」と述べた。

(CNN.co.jp 2009/2/17)


一瞬、寝言は寝て言えと言いそうになりましたが、北朝鮮が本気で
人工衛星を打ち上げようというのであれば、北朝鮮が技術輸出した
イランが見事に衛星打上に成功したのですから、技術的な基盤はあ
ると考えて良いと思われます。今であれば、独自のロケットで人工
衛星を打ち上げた10番目の国という事になり、韓国を凌ぐ事が可
能です。これは、北朝鮮にとって、今や殆ど実現不可能になった北
が南を凌駕する得がたい機会であると言えます。
(尤も、北朝鮮では1988年に人工衛星の打ち上げに成功した事にな
っているんですが....)

少なく共、核開発の様な、ご禁制の技術開発ではない、まっとうな
技術開発と言い張れるのです。勿論、ミサイル開発とのデュアルユ
ーズである事は、世界中が判っています。であるからこそ、世界に
信頼されない国である北朝鮮が何を言った処で、「ミサイル発射準
備」という情報が世界を駆け巡る事になります。

そこで、北朝鮮にお勧めなのが、イラン程度には、情報公開を行う
事です。今回に関しても、もし、本当に人工衛星を打ち上げ様とい
うのであれば、ごくまっとうに、発射日時と燃焼が終了した落下物
の予想落下位置等の情報、衛星本体や、打ち上げロケットや打ち上
げ施設の写真などを公開すれば良いのです。

勿論、公表すれば、技術水準が判ってしまうという欠点もあります。
あまりにお粗末で恥ずかしいのが、秘匿する理由である事も判りま
す。それでも、少なくとも、世界は、北朝鮮が人工衛星を打ち上げ
ようとしている事に対し疑念を抱く必要はなくなります。

1988年に北朝鮮が発射したのが、本当に人工衛星であり、それが事
前に公表されたものであったのなら、日本のMD体制がこれ程急速
に整備される事はなかったと言えます。それが、北朝鮮が情報を事
前に公開にしなかった事により、日本向けのミサイル開発と受け取
られた事から、一般の日本人が予想できなかったスピードで整備が
進んだのです。これは、北朝鮮にとっては、日本への影響力の切り
札が封じられた事になり、明らかに国益にマイナスの影響を与えま
した。

情報秘匿は、必ずしも、国防力強化に役立たないという好例ですが、
「何を打ち上げるかは後で分かる」などという寝言ではなく、適切
な情報を公開する事が、北朝鮮が「普通の国」になる上でも重要な
行動である様に思われてなりません。

まあ、それができないから北朝鮮なんでしょうね。


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2009年2月16日月曜日

CRH2C型車輌に見る中国独自技術のレベル


旧聞に属する話ですが、以前に関連するエントリーを書きましたの
で、後日談という事で取り上げます。

中国は、北京・天津高速鉄道の開通に合わせ、JR東日本のE2系をベ
ースとし、中国独自技術で完成させたとするCRH2C型を投入しました。
シーメンスICE3をベースとするCRH3型と共に、2008年8月1日から
世界最高速、350km/hでの営業運転を開始したのです。

北京・天津高速鉄道は、当初から350km/hでの運転が予定されてお
り、CRH3はその為に導入されたタイプであったのに対し、CRH2C型
は、日本においては270km/hの営業運転しか行っておらず、設計速
度すら315km/hでしかなかった処から、いくらポテンシャルがある
車体でM/T比を変更したとは言え、、日本国内でも実現していない
350km営業運転をあっさりと実現した点、驚嘆したものでした。
(4M4T→6M2T、「はやて」は8M2T)

しかしながら、この列車について、朝日新聞GLOBEが2009/2/4付け
で、興味深い事実を報じました。

-前略

京津線を走る和諧号には2種類ある。一つは日本の川崎重工業が造る東北新幹
線「はやて」型。もう一つはドイツのシーメンス型だ。日独メーカーは一部車
両を完成車で輸出したものの、中国の国産政策にもとづいて、その多くは日独
の部品供給を受けて中国メーカーが生産している。
実はこの「はやて」型を巡って、技術協力した日本側と中国との間でひと悶着
(もんちゃく)あった。はやては東北新幹線では時速275キロで走っており、
12年末に時速320キロを達成するため現在、車両を開発中だ。川崎重工は「設
計上の安全走行の上限は時速275キロ」と中国側に伝え、運行技術を教えたJR
東日本の協力条件は「時速200キロまでの走行」だった。

にもかかわらず中国鉄道省は、試験走行で時速350キロ超を出せたことから、
能力いっぱいでの営業運転に踏み切った。五輪観光の目玉の一つにという思惑
もあったのかもしれない。
収まらなかったのが日本側だ。川崎重工幹部は開業の4日後、中国鉄道省の幹
部を訪ねて、抗議した。JR東日本首脳は「もし事故が起きても、これでは責
任は取れない」とカンカン。中国側から「責任は求めない」と確認する文書を
取った。
結局、京津線は2月までにすべて独型車両に置き換えることになった。はやて
型は時速250キロまでしか出さない他路線に移すという。

-後略
(朝日新聞GLOBE 2009/02/4)

http://globe.asahi.com/feature/090202/03_2.html

つまり、この高速運転は、JR東日本の協力範囲を超えた速度である
こと、また、車体製造業者である川崎重工重の設計上の最高速度を
も大幅に超えていることから、両者が中国側に抗議し「責任は求め
ない」という念書を取った様です。このため、2009年2月から、この
路線はすべてCRH3型を使用する事となり、それまでにこれらの車両
は最高時速250km/hの他線区に転属することとなったという訳です。

ここには、どこにも、中国独自の付加技術という要素が入っていま
せん。CRH2Cは、E2系と同じ先頭車両デザインだったCRH2と比べ、
ヘッドライトの位置や、パンタグラフカバーの他、車内デザインも
変更されていると伝えられており、最高速度が変わっているのです
から当然車台にも手が入っていると予想されていたのです。

ですが、実は根本的な処には全く手が入っていない事が判ったので
す。ここからは想像になりますが、中国は恐らく試験走行中にCRH2
で300km/hを優に超える速度がだせた事から、M/T比を変更すれば、
350km/hに達すると計算したのだと思います。そして、実際にCRH2C
を作るとあっさりと350km/hを達成し、恐らくは、400km/hに近いス
ピードが達成されたのだと思います。そこで、350km/hの営業運転
でも問題ないと考えたのでしょう。しかし、それは、試験運転の結
果でしかありません。そこには安全な運行への計算が、全く、入っ
ていませんでした。

一回こっきりの試験運転では、問題が発生しなくても長期間設計速
度以上の運転を行っていれば、車体の殆どの部分に設計以上の加重
がかかります。その結果として、金属疲労により、車台、車輪、構
造部材にすらクラックや破損が生じ、それが、大事故を齎す可能性
のある事は素人にすらわかります。

それをあっさりと無視した中国鉄道当局者はどういう技術的バック
グラウンドを持った人達だったのか、非常に興味があります。

今回は幸いに、大事故が発生する前に技術供与国からチェックが入
りました。しかし、こういったチェックがいつも入るかどうかには、
疑問が残ります。

最近、中国が、原子力空母を建造すると、同じ朝日新聞が報じてい
ましたが、原子力潜水艦と同じ程度の意識で水上艦用の原子炉を考
えているのであれば、近い将来、本当の「チャイナシンドローム」
が発生するのではないかと懸念する処です。


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2009年2月12日木曜日

尖閣問題 中国は日本のナショナリズムに火をつけるか?




尖閣問題:中国の掲示板が“炎上”―日本の巡視船配備で

中国新聞社が主催する掲示板「中新網社区」は12日、尖閣諸島問題で日中両国
が「衝突する可能性が増大。君の見方は」と題するアンケートを掲載した。
武力行使を支持する回答が圧倒的に多い。

同アンケートは、日本の海上保安庁が尖閣諸島周辺にヘリコプター搭載の巡視
船の常置配備したことをきっかけに掲載された。4つの選択肢から1つを選ぶ方
式だ。一般ユーザーが作成して投稿、中国新聞社が審査した上で掲載した。

午前11時55分現在、回答数が最も多い選択肢は「うれしい。日本は我々が(尖
閣諸島を)取り戻す理由を作ってくれた。前から、うずうずしていた」と、武
力行使を支持するもので、投票率は65.40%。第2位も「武力行使は恐れない。
小日本も、“膨張”を選ぶタイミングではないだろう。理解に苦しむ」で
27.47%。また、「日本は虚勢を張っている。実力が一切を決める。見ていよう」
は3.17%。武力行使を容認または求める意見は合計で96.04%にのぼった。
「小日本」は日本の蔑称。

一方、「隣国とは“和をもって貴しとなす”。経済発展が重要であり、外交で
解決しよう」と、平和的解決を求める意見は4.07%だった。

同アンケートに寄せられた書き込みでは「小日本を打ち負かせ 東京まで追い
返せ」、「交渉に必要はなし。必要な時には剣を抜く」など、尖閣諸島が中国
領であることを「前提」に、武力行使を支持する声が並ぶなどで“炎上”。
中には「和を尊ぶ中国人と、暴虐な日本の武士道とは両立できない。この暴虐
が世界に向かって拡張するとき、残された手段は原子爆弾しかない」との極端
な主張もある。(編集担当:如月隼人)

(サーチナ 2009/02/12)

経済的に計算すれば、両国にとって、尖閣列島問題はあまり大きな
問題ではありません。それを鄧小平が日中平和友好条約の交渉過程
で取り上げたのは、米国の石油会社が尖閣諸島に石油が埋蔵されて
いる可能性を指摘していたからでした。現在では尖閣諸島付近では、
少量の天然ガスと中規模のメタンハイドレードが確認されています
が、石油の埋蔵は今も確認されていません。メタンハイドレードに
ついては確かに次世代のエネルギー源ですが、今の処、採掘方法が
確立していない将来の資源に過ぎません。その点から言えば、鄧小
平は、ありもしない石油に目がくらんで、尖閣問題を未解決問題に
するという重大な誤りを犯したと言えます。

その点、日中貿易は中国に数兆円のハードカレンシーを経常的に齎
す金の鵞鳥です。いまや、日本からの中間材料や部品なくして中国
の製品輸出は成り立たなくなっています。中国の糞青は、ナショナ
リズムに酔っ払ってますから、「小日本」に対する軍事的制裁(そ
う言えば、ベトナムに対する懲罰なんてのもありましたが)を叫ん
でますが、日本との間が決定的に悪化した場合に困るのは中国なの
です。勿論、中国内では、尖閣領有に関する中国に不利な事実は知
らされている訳もありませんし、糞青ですから、現実の経済的な相
互依存関係にも無関心です。

日本を中国のナショナリズムのサンドバックにした江沢民の、馬鹿
な政策は、鄧小平の誤りを更に上塗りしたものであり、その前提は、
日本が決して中国を叩き返す事はないというものでした。

しかしながら、中国が尖閣諸島で、軍事力を行使し、巡視船を攻撃
したり、核恫喝を行えば、中国は半覚醒状態の日本のナショナリズ
ムに火をつける事になります。その上、その様な行為は、当然なが
ら日米安全保障条約の発動を連鎖する事になり、中国にとって、極
めて不利益な展開となる事は、中国の為政者にすら明々白々たる事
実であり、それによって日本が軍事力を強化する事は、中国にとっ
て、正しく悪夢に他なりません。

中国が、それを理解しているとすれば、中国の取る政策は大きく分
けて二つあります。一つは日米離反策です。日米安保条約がなくな
れば、日本を中国が攻撃したとしても、日米共同の反撃はありませ
ん。米国と日本が離別した段階で、中国は日本を影響下に治める事
ができ、尖閣問題を中国に有利に解決する事ができます。

もう一つは、中国側の世論の沈静化です。江沢民の政策は、中国共
産党支配を正当化するものでしたが、それが、過度に、中国ナショ
ナリズムを刺激する事は、中国にとっても両刃の剣になってしまい
ます。過去の日中関係は勿論、単純な日本の中国侵略ではありませ
んから、中国に対する日本の貢献を指摘する事はいくらでもできま
す。それを使ってナショナリズムを反日ではなく、克日に指導する
事で、ナショナリズムの変化を期待するというものです。

私は、胡錦濤は、現時点で、この両面を狙っているのではないかと、
想像しています。中国のマスコミは、党の口舌であり、自由なジャ
ーナリズムなど、どこにもありません。その点からすれば、今回の
記事に続いてどの様な論評が出るかで、中国共産党の本音が見えて
くるのではないかと思えるのです。



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2009年2月10日火曜日

エアバスA400Mの開発も遅延が拡大中 補足


※写真はReutersより転載

昨日は、A400Mの開発遅延についてBusiness Weekの記事をご紹介しまし
たが、Aviation Weekにもっと詳細な記事がありましたので、抄訳します。
重量超過という開発遅延の基本線は同じですが、より技術的な見方が強く出て
いる様に思います。

Airbus's A400M May Face Design Overhaul To Meet Performance Targets


A400Mはパフォーマンス目標達成の為、設計をやり直す事になるかもしれない

エアバス社は、A400M軍用輸送機プログラムに関して契約やスケジュール
上の挑戦以上のものに直面しています。同社は、機体のパフォーマンス目標を
達成するために多くの再設計作業をする必要があるかもしれません。

業界関係者によれば、よく知られた新型エンジンのFADEC(全自動デジタルエン
ジンコントロール)の開発遅延によって発生した飛行テスト遅延に加え、多数
の問題により、A400Mの魅力や能力が損われる恐れがでています。

懸念の重要な領域の一つはA400Mの重量超過です。それは搭載能力と航続
距離に否定的に影響を及ぼします。エアバス・ミリタリー社のデータによれば、
最大積載重量は37トンで、最大積載量での航続距離は1,780海里です。しかし、
プログラムに近い消息筋によれば、機体は現在の開発状況としては、かなりの
重量超過となっていると言います。同消息筋によれば、飛行テスト計画で使わ
れる最初の6機は、計画より12トン重くなっています。重量節減キャンペーン
では、7トンの重量削減の可能性が見つかっています。それでも、初期生産機
体は最大でも5トン程度の軽減策が取り入れられるだけです。そして、その場
合の積載能力は30トン以下となります。

エアバス・ミリタリー社は、OCCAR調達機構に、積載能力の削減について通報し
た様です。フランスを含む一部のOCCARメンバーはそれを容認しましたが、空軍
が積載能力と航続距離が共に重要となる域外展開用途に使用する事を考えてい
るドイツはそれを容認していません。A400Mが以前の設計目標を達成でき
ない場合、アフガニスタンのような場所への輸送任務はずっと複雑で高くつく
事になるでしょう。

ドイツは、基本バージョンで31.5トンの重量のあるプーマ装甲戦闘車を輸送す
るためにA400Mを使用する計画をたてていました。エアバス・ミリタリー
社が積載能力を取り戻すことができなかった場合、プーマを搭載した場合には、
大幅な航続距離不足をきたすことになります。

政府高官によれば、ドイツは、英国で評価されているC-17やC-130J
を採用する事で、A400Mの注文を減らすということはありそうもないが、
それは、主に政治的な理由によるものだと語っています。臨時の解決策として
エアバスA330-200Fを使うというEADS社CEOであるルイ・ガロワによる
提案は、気の無い反応を受けています。

「もし民間貨物機が必要だったら、カーゴルックス辺りからすぐチャーターで
きる」とドイツの軍当局者は吐き捨てます。しかし、ドイツは、現在保有する
C-160トランザール輸送隊を、A330Fが使えないアフガニスタン国内
の数多くの近距離輸送の目的地に飛ばしています。ある空軍の当局者によれば、
C-160はよく整備されているので、あと数年は作戦行動を続けることがで
きるとほのめかしますが、ドイツはC-160の能力を越える任務のためにア
ントノフAn-124をリースしています。

A400Mの(全体で192機のうち60機を発注している)最大顧客が、以前の
性能保証の達成を主張するならば、それは機体の再設計(例えば、より多くの
燃料を収容するより大きな翼の採用のようなもの)を強制することになります。
しかし、そういった再設計は、全くありそうもないと思われます。エアバス社
CEOのトーマス・エンダーズが現在のプログラムの条件を「達成不可能な任務」
と表現している様に、既に財政的上もスケジュール上も大きな問題となってい
ます。

1月9日に、EADS社とエアバス社は、A400Mプロジェクトで最大4年の遅れ
になると発表し、OCCAR加盟国との契約内容の再交渉を提案しました。2003年
に締結された当初の条件によれば、EADS社が、プログラムの財務的なリスクの
殆どを負担する事となっており、解決策が見つからない場合、巨額の遅延損害
金を負担する事になります。
1月の始めにエアバス・ミリタリー社とEADS社は、「この第一級軍用機の特定
の技術的な特性を含む契約の変更、及び、それに伴うスケジュール変更につい
て議論したい」と発表しました。さらなる詳細については言及されず、エアバ
ス社/EADS社はさらにコメントするのを辞退しました。

A400Mに対する責任は、管理面の複雑さを減少させ、プログラムに関する
監督能力を改善するために、最近、エアバス社の傘下に移されました。

エアバス社の関係者は、主要なパフォーマンス基準が変更されるというリスク
はないと明かします。プログラム担当の上級副社長であるトム・ウィリアムズ
は、彼がこのプログラムのレビューをすればするほど、「これは、本当に良い
機体だ」という確信が、その度ごとにましたと言います。彼によれば、短距離
離着陸時のパフォーマンスと積載量の目標はクリアしていると言います。

しかしながら、エアバスがA400M原型機生産を「十分な成熟期は達する」
まで停止させたという事実は、この時点での生産の継続に意味がなくなる様な、
大きな機体製造上の変更があるだろう事の間接的証明であると業界人は解釈し
ています。

業界関係者によれば、もはや、エンジンソフトの問題は、主要な問題ではなく
なり、重量軽減問題が、それにとって変わるだろうと言います。オブザーバー
によれば、それ程重要でない部分への炭素繊維材の導入を含む設計変更が行わ
れた後でさえ、A400Mの積載重量は当初目標を、3~4トン下回ると考え
ています。早くとも、最初の飛行と2012年の末の最初の引渡しの間にあるEADS
社によって提案された3年の時間枠は、機体構造の部分修正が可能でもあるこ
とを示唆しています。

しかしながら、ある重量軽減策は、機体の運用に影響を及ぼします。貨物引き
込みランプの平衡を取り、主車輪を地上に降ろす油圧システムは、破棄されま
した。この決定によって、床ビームを補強しなければならないかもしれません。
なぜなら、重戦車を空中投下する際には、重心が積載ランプの端を通り過ぎる
時点で実質的にランプから下に垂れ下がる事になるからです。

Europrop国際エンジンコンソーシアム(EPI)に近い関係者は、TP400のFADEC
問題は6月までに解決されることになっていると語っています。ガロアは、
1月初めに、許容できる受け入れ標準に達したFADECが提供されるならば、
A400Mは、およそ1ヵ月で飛ぶことができると言いました。しかし、ソフ
トウェア問題に加えて、エンジン関係のハードウェア問題もあります。予想外
に高い負荷のため、原設計のエンジンのギアボックスケースにひび割れが見つ
かり、それらは、部分的に強化する必要がありました。改良されたケースは、
最終組立てラインのあるセビリアに届けられ、原型の部品と交換される予定で
す。

詳細な部分に精通している人によれば、いくつかの特別な運用性能のゴールを
達成できるかどうかは不確かです。たとえば、A400Mはプロペラのフラッ
ター問題の為、「サラエボ・プロフィール」の様な急降下アプローチを飛行す
るのが難しいかもしれません。

さらに、プログラムに詳しい当局者は、いくつかのシステムがヨーロッパ航空
安全機構(EASA)によって拒絶されるかもしれないと言います。航空安全機構
は、酸素ビンと火災防護システムが胴体と主車輪格納庫に導入されている方法
に同意しないように見えます。合意が整わない場合は、A400Mは予定され
ている民間機としての耐空証明に必要とされるEASA承認を与えられない事にな
ります。EASA当局者は、進行中の証明プロセスについてコメントしないと述べ
ています。

EADS社は、顧客と、条件引き下げについての議論を行っています。しかし、同
社は、これらは特別の必要についてのものであって、基本的な性能面には関連
がないと主張しています。エンダーズは、顧客も会社自身のエンジニアも共に
「技術的にほとんど不可能であるか、可能であっても、コストと不釣り合いな
方法でのみ対応可能」な追加的な条件をつけていると言っています。

ウィリアムズは、その一つの例として、極端戦術ナビゲーション条件を上げま
す。この要求は、特殊任務を支援する為に、地形追随システムや地形回避シス
テムすら使わない完全な受動的な状態での低空飛行を行う機能を求めています。



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2009年2月9日月曜日

エアバスA400Mの開発も遅延が拡大中


※CGはエアバスミリタリー社サイトから転載

日本でも、ジェット輸送機C-Xの開発に大幅な遅延が生じ、未だ初飛行の日
程が定まらず、量産機取得予算にも2年の遅延が生じていますが、略同規模の
機体を国際共同開発しているプロジェクトであるA400Mの開発にも、大き
な遅延を伴う深刻な問題が生じている様です。

2/4付けのビジネスウィークの記事を抄訳します。

エアバスA400Mは救われるのか?

軍用輸送機A400Mが話題になる時、エアバス社のCEOであるトーマス・エ
ンダーズの反応は、あまり熱が入った様には見えません。
「A400Mを生産したいとは思っているが、幾らかかっても良い訳じゃない」
と彼は語っています。

このコメントはエアバス社の方針転換を示しています。エアバス社は今まで、
プロジェクトが危険に晒されているという噂を一貫して否定してきました。
しかし、巨大な機体は、巨大な問題を引き起こし、開発費用の増大と神経をす
り減らす絶え間ない遅延になやまされてきました。
エアバス社の現在のスタンスは、それでも、プロジェクトが成功する事を必要
としているというものです。

A400Mの開発に熱意を失いつつあるのは、エアバス社だけではありません。
ドイツ国防省の忍耐も限度に近づきつつあります。国防省は記録に残るコメン
トをする事は拒否しています。しかし、ある空軍の高官は、「エアバス社の問
題への対応には、国防省内でも殆ど、熱意を呼び起こす事はなかった」と述べ
ています。

この高官が言及した「問題」は、A380ジャンボ旅客機の開発での大幅遅延
の発生の記憶を呼び起こすものですが現在進行中のものです。
A380の問題とは、機内配線や他の問題により広範囲な遅延が発生したもの
ですが、それによりエアバス社は何億ユーロもの損害を蒙りました。これと同
じ運命がA400Mにも生じている様です。機体のエンジン制御を行うソフト
ウェアの幾つものトラブルの他、進行方向制御のメカニズムも挑戦的である事
が判りました。また、プロペラエンジンの騒音も予想以上でした。そして、新
しい機体開発につきものであり、エンダーズCEOが認めている様に機体が重量
過大である事が判明しました。南ドイツ新聞によれば、機体はこれから12ト
ンもの重量軽減を行う必要があります。この結果、数十億ユーロを要する遅延
が発生しています。

当初、一号機は今年引き渡される予定でしたが、現時点で、2014年の引渡しが
可能かドイツ空軍内では懸念されています。
ファイナンシャルタイムズ ドイツ版で、クラウス・ペーター・スティーグリ
ッツ中将は、それは「破滅的な開発だ」と述べています。空軍内では、代替策
が議論されています。「我々はエアバス社と結婚した訳じゃない」とドイツ空
軍の高官は述べています。空軍は一~二年の遅延であれば、現在のC-160
トランザール輸送機をもたせる事はできるものの、「ある時点で、もし、遅延
が更に続くようであれば、何をすべきか決定する必要があるだろう」と語って
います。

ドイツ空軍が発注を取り止めれば、プロジェクトの継続は困難です。ドイツは
A400Mの最大の顧客で、発注全体190機の内、60機を発注しています。
エアバス社も、オプションについて検討しています。「現在進められている方
法だけでは、継続は覚束ない。それだけだ。」とエンダーズは述べています。
彼は、OCCAR(ドイツ、フランス、英国、イタリア、ベルギー、スペインをメ
ンバーとする防衛コンソーシアム)で再交渉したいと考えています。

この再交渉の内容は技術的な仕様の詳細な再検討による問題の解消です。もう
一つの議論の焦点は、財務面での交渉です。計画開始時に決められた固定価格
は、数度の開発遅延発生により、恐ろしく高価な負担をエアバス社に課すもの
になっています。「この様なプロジェクトでは、隠れたリスクな必ずあるもの
だ」とエンダーズは言います。巨額の開発コストの増大に加え、引渡しの遅延
による高額の損害金の支払いも、また大きな問題です。EADS社は既に17億ユー
ロを引当てています。A400Mは昨年夏には初飛行を行っている筈でした。

エンダーズは、いまだに初飛行が行われていない事について全責任を引き受け
るつもりはありません。「エンジンがあれば、昨年10月には初飛行が出来た筈
だ」と彼は言います。エンジンは、フランスのSNECMA、英国のロールス・ロイ
ス、スペインのITP、ドイツのMTUアエロエンジンからなるコンソーシアムで開
発されてきました。「エンジンの選択はエアバス社の選択ではなかった」とエ
ンダーズは、この急造チームの事を語ります。プロジェクトをヨーロッパ共同
で行う事は政治的な決定でした。エンダーズは、技術的な問題は克服できると
今も考えています。彼によれば、似たような軍用機プロジェクトと比較した場
合、A400Mプロジェクトの現状は、かけ離れたものではなく、一度完成す
れば、他の軍用輸送機とは比べものにならない「素晴らしい機体」になると彼
は語ります。

A400Mの規模の開発では、問題が発生するのは通常の事だと言います。ド
イツ国防省も、軍用輸送機の開発が、紙の上の計画ほど簡単なものではない事
に気がついています。空軍の高官は、他の輸送機製造メーカーが米国やロシア
にあるといいつつも、「それらの会社も発注が入ってから、一から開発を始め
ないといけない」と語っています。


Airbus A400Mの開発スケジュール
2003年5月 国際共同開発合意
     (英,独,仏,伊,西,土,白,ルクセンブルグ8ケ国 生産数212機)
      後、伊が脱退。南ア、マレーシアが購入決定(生産数 192機に変更)
2003年5月 開発着手
2004年1月 エンジン開発着手
2005年1月 強度試験機製作開始
2005年10月 エンジン試験運転開始
2007年4月 静強度試験機用パーツが揃い、組立開始
2007年6月 飛行試験用エンジン引渡し (当初予定2006年11月)
2007年8月 飛行試験機生産開始    (当初予定2007年第一四半期)
2008年6月 エンジン飛行試験開始   (当初予定2007年10月-12月)
2008年6月 ロールアウト       (当初予定2007年第二四半期)  
(当初予定2008年夏 初飛行  リスケ後スケジュールの公表なし)
2009年1月 12tの重量超過発覚                <--現在ここ
2010年第一四半期 引渡開始(計画修正後 現在では2014年引渡しを危ぶむ声も)


※A400Mについて触れた過去のエントリーは以下の通りです。


エアバスA400Mロールアウト 初飛行は静かに三ヶ月延期(2008/7/02)

重大な遅延に直面している?A400Mプロジェクト(2007/8/21)

C-X、P-X遂にロールアウト!(2007/7/05)

P/C-X 零号機 6月中旬にロールアウト(2007/05/17)

意外に頑張っている日本の航空産業-CXプロジェクト(2006/10/29)



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2009年2月6日金曜日

「はやぶさ」地球帰還まであと485日


※写真はJAXAサイトからの転載

<はやぶさ>エンジン再起動成功 軌道を地球に向け

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、世界初の小惑星の岩石採取に挑戦
した探査機「はやぶさ」が、地球帰還に向けたメーンエンジンの再起動に成功
したと発表した。同日午前11時ごろ(日本時間)、4基あるエンジンのうち
1基を再起動し、同35分、正常に動いていることを確認した。はやぶさは軌
道を地球に向けて変え、順調にいけば来年6月、当初予定より3年遅れて地球
付近に帰ってくる予定だ。

はやぶさのメーンエンジンは、電気推進の「イオンエンジン」。燃費がよく長
距離の航行に耐えられる。これまでに設計寿命(1万4000時間)を大きく
超える3万1000時間稼動している。

はやぶさは03年5月に打ち上げられた。05年11月、地球と火星の間を回
る小惑星イトカワに着陸。表面の岩石採取を2度試みた。その「成果」を積ん
で、地球から約3億キロのかなたを航行している。

これまでに姿勢制御装置3台のうち2台が壊れ、姿勢制御用燃料がすべて漏れ
るなどのトラブルに見舞われた。イオンエンジンの燃料となるキセノンは地球
帰還に必要な量があるという。

地球付近まで戻ることができれば、高度数万キロで帰還用カプセルを切り離し、
オーストラリアの砂漠に落下させる。総航行距離は三十数億キロに及ぶという。

(毎日新聞 2009/02/06)

最初にお断りしておきますが、地球帰還までの日数はかなりいい加
減です。「やまと」にひっかけたジョークという事でご容赦下さい。

今まで事実上の冬眠状態であった「はやぶさ」ですが、小惑星「い
とかわ」と地球との位置関係が、帰還に際して燃料を一番節約でき
る関係になった為に、冬眠から目をさまし、地球帰還コースに進路
をとったという事です。(正確に言えば、既に「いとかわ」の軌道
からは離脱していましたので、第二期軌道変換とJAXAでは言ってい
ます。)

小惑星への着陸と離陸を世界で始めて成し遂げた「はやぶさ」です
が、その直後に姿勢制御用の燃料が全て洩れるという大トラブルに
見舞われ、地球帰還は不可能と思われましたが、イオンエンジン用
の燃料であるキセノンガスを直接噴射するという荒業で、緊急姿勢
回復を成し遂げ、地球との交信を回復しました。ただ、この間に、
電気が全て放電され衛星を制御しているコンピュータもリセット状
態になっていたりと満身創痍の状態である事は今も変わりません。

姿勢制御も姿勢制御系の噴射エンジンは使えず、三つの内、ただ一
つ残ったリアクションホイールを騙し騙し使っている状態で、これ
が、故障すれば、地球への帰還は全く不可能となります。その点で、
イオンエンジンの再始動成功は良いニュースではありますが、全く
予断を許さない状況はこれから地球帰還まで続いていきます。「は
やぶさ」の運用を行っているJAXAの「はやぶさ」運用チームは、今
まで同様、気の抜けない日々が続く事になります。

非常な困難の中にある「はやぶさ」ですが、既に、科学専門誌「サ
イエンス」が一冊丸々で、その成果を特集する程の成果を上げてい
ます。その点では、地球帰還とサンプルリターンは、「はやぶさ」
の成功を大成功にするものと言えます。

ISAS広報の任にある的川教授をして、「こんなにrobustでtoughな
のは見たことがない」と言わせた「はやぶさ」であり、「はやぶさ」
運用チームです。数々の困難を克服した実績には既に太鼓判が押さ
れていますが、今後共、頑張って頂き、「はやぶさ」の地球帰還と
サンプルリターンを是非成功させて欲しいものだと思います。


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2009年2月5日木曜日

本来の仕事もちゃんとやってるインド海軍と中国海軍



※写真は「海口」。http://icc.skku.ac.kr/~yeoupx/からの転載

ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊

【香港4日時事】4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、
海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されてい
ることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があっ
た。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。
同紙は潜水艦の国籍には言及していないが、インド海軍が保有するロシア製の
キロ級潜水艦だったことを示唆している。 

(時事通信 2009/02/04)

ソマリアの海賊対策で派遣されていても、平常の仕事はインド海軍、
中国海軍共にちゃんとやっている事を窺わせる事件です。

インドと中国は、国境紛争で戦火を交えた事もある関係であり、ま
たインドは、中国と対立していたソ連と親しい関係であった事もあ
り中国を仮想敵国の一つとして位置づけています。インドの核武装
もパキスタン向けというより中国向けの軍備であると言えます。

その様な関係ですから、今回の事件も、インド海軍にしても、中国
海軍にしても通常の緊張状態を維持していただけと言えるのかも知
れません。仮想敵国であるか否かに関わらず、他国軍艦の音紋を採
取する事は、海軍が平時から行うべき情報収集業務です。指紋で犯
罪者を識別する様に、海軍は、この音紋で艦種、艦名を識別します。
インド海軍は、その音紋採取を行っていたのではないかと思われます。

今回、中国海軍は、海賊対策にミサイル駆逐艦「海口」と「武漢」、
及び補給艦「微山湖」の三隻を派遣しています。「海口」は中華イ
ージスと呼ばれる052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)で、中国海
軍の虎の子であり、「武漢」も052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
の新鋭艦です。しかも、低速の補給艦を随伴しているので艦隊速度
が遅かった事から、インド海軍としては、音紋採取の格好の機会と
判断したのではないかと想像します。

一方の、インド海軍の潜水艦ですが、報道通りであれば、ロシア製
のキロ級潜水艦です。キロ級は通常動力潜水艦であり、本来であれ
ば、チョークポイントでの待ち伏せを得意としています。通常動力
潜水艦は原子力潜水艦程、速力も航続力も出ない替わりに、静粛性
が高い事によるものです。キロ級潜水艦の最高速力は20ktですが、
通常の活動では、この様なスピードを出す事はありません。静粛性
に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピードを出せば、
当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は艦隊速度が
遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断したのではな
いかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉えられたと
言う訳です。

通常型潜水艦が、無音状態に移行すると、水上艦からは探知するの
が殆ど不可能と言われ、演習時には、潜水艦がわざわざ音を出して
探知し易くしないと演習にならないという噂がある位ですから、今
回は、インド海軍の潜水艦は余程盛大に音を出していたのだろうと
思われますが、それにしても、それを逃さずにキャッチした中国海
軍も、ちゃんと緊張状態と維持して仕事をしていたと評価できると
思います。

海上自衛隊のソマリア派遣艦艇も、実戦であるという意識を持って
中印海軍同様の緊張感を持って任務に当たって欲しいと思います。


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