※王家瑞・中国共産党対外連絡部長との会談で握手する民主党の小沢一郎代表
毎日新聞サイトより転載
小沢代表:対米追随脱却を強調 防衛力強化も言及
日米首脳会談に合わせる形で、民主党の小沢一郎代表は25日、在日米軍削減
論を重ねて示し、「対米追随脱却路線」を鮮明に打ち出した。次期衆院選後の
政権交代をにらみ、「対等な日米同盟」の具体策として持論を強調したものだ
が、日本の防衛力強化にも言及。専門家からは「憲法改正が必要になる論法」
との指摘が出たほか、野党内に困惑や警戒感が広がった。
「グローバルな戦略を米国と話し合って役割分担し、日本に関係の深い安全保
障面は日本が負担すれば、米軍の役割はそれだけ少なくなる」
小沢氏は25日、大阪市で記者団に語った。そのうえで「米国のプレゼンスは
必要だが、おおむね(米海軍横須賀基地に司令部を置く)第7艦隊の存在で十
分だ。米軍が引くことによって日本の防衛に関することは日本が責任を果たせ
ばいい」と改めて指摘した。
小沢氏に近い民主党関係者によると、在日米軍の役割のうち「日本の防衛」に
応分の負担をする分、「極東の安定」は第7艦隊で十分になるという意味だと
いう。
ただ、森本敏・拓殖大大学院教授(安全保障)は「在日米軍には海兵隊と戦略
空軍があり、海軍である第7艦隊だけでは抑止機能の一部しか果たせない」と
指摘。「出ていった米軍の肩代わりを日本がするのであれば、再軍備を意味し、
憲法改正が必要となる」と語った。
こうした中、共産党の志位和夫委員長は「軍拡の道を進むことでイコールのパ
ートナーになるのは間違った道だ。日本が軍事的な力を強めれば強めるほど米
国は利用する」とけん制。社民党の福島瑞穂党首は「『第7艦隊で十分』の後
が『日本でやる』か『基地縮小』かで意味が違う。軍備拡張には反対だ」と戸
惑いを見せた。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は東京都内で記者団に「極東において脅威が増大し
ている状況ではないという発想ではないか。日本の軍備増強という発想ではな
い」と語り、小沢氏の発言への理解を求めた。ただ、その一方で「将来ミサイ
ル防衛網などをしっかり作れば、米国に頼らなくとも専守防衛の中で日本の安
全を保てる」という持論も展開した。【渡辺創、古本陽荘】
(毎日新聞 2009/2/26)
小沢一郎が、一部の支持を集め続ける理由は、こういう事にあるの
かも知れません。「対米追随脱却路線」の論理的な結末が、自主国
防論になるのはある意味当然なのです。その点で、同じ、民主党の
鳩山氏とは一味違う処です。
日米安全保障条約は、米国に日本の防衛義務を課している反面、日
本に米国防衛の義務を課していないのは衆知の事実です。
安保条約が現在の内容になったのは、1960年の改定によるものです
が、片務的内容は条約締結当初から変わっていません。つまり、安
保条約は1950年代の日米関係の現状を反映したものでしかないのです。
ここでいう1950年代の日米関係の現状とは、米国が全世界のGNP
の半分を占め、七つの海を圧する艦隊で、ソ連と対峙していたのに
対し、日本は、まだまだ戦後の焼け野原から脱していない半病人状
態であった事を指します。その様な前提にたてば、日米安保条約の
片務性は、正しく現実の反映であったと言えます。
しかしながら、片務的な条約内容である限り、日本は同盟に対し不
完全な貢献しか期待されず、いつまでも準禁治産者の位置にあり続
ける事になってしまいます。その意味で、「対等な日米同盟」を目
指せば、日米が対等の義務をもつべきであるのも当然なのです。し
かし、ここで現行憲法との矛盾が生じる事になります。つまり、小
沢氏の議論の帰結が憲法改正になってしまう事になるのです。
その一方で、小沢一郎の議論が、「対等な日米同盟」から、更に
「対中傾斜」へ繋がって事も明白に見て取れます。23日に小沢氏は
中国の王家瑞・中国共産党対外連絡部長と会談していますが、その
中で、民主党が政権を取れば、対中関係を重視する意向を伝えてい
ます。
尤も、小沢氏はクリントン国務長官との会談で、中国の共産主義体
制の民主化と世界秩序への取り込みが課題との意見も伝えており、
その点では、民主党の他の政治家との違いが際立っているとは言え
ます。
民主党内の旧社会党系議員は、旧来の、非武装中立程度の考えしか
持っていないと思える節があるのですが、それを党内で正面から持
ち出せば民主党は意見対立で分裂状態を招くので、今まで、まとも
な安全保障の議論は避けてきたとも言えます。
今回の小沢氏の「第7艦隊で十分」という発言が、どの様な認識に
たっているのか疑問があるのは事実ですし、それを明らかにして欲
しいのは勿論ですが、それ以前に、民主党として、どの様な安保、
外交路線を取るのか、もっと明確にして貰いたいと思います。
つまり。民主党が「対米追随脱却路線」で纏まっているのかどうか、
また、民主党が政権獲得後、対米同盟路線を堅持するのか、対中傾
斜路線とするのか、米中等距離路線とするのか、その上で、自主防
衛力を強化するのか、軽武装継続なのか、はたまた、今まで以上に
防衛力を軽減するのかという点です。
小沢民主党が、政権を担当するのであれば、明確にしてもらう事は
安全保障面だけとっても多々あるように思いますし、それが無くて
政権を取ったとしても、結局、村山政権の様に、碌な結果を残さず
に終わらざるをえなくなる様に思うのです。
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