2009年5月25日月曜日

北の核実験 間接的に協力した盧武鉉へのはなむけ?

※長崎に投下された原爆"Fat man"の分解図。Wikipediaより転載

北朝鮮が地下核実験を実施 朝鮮中央通信を通じ発表

朝鮮中央通信は25日、北朝鮮が核実験を実施したと発表した。核実験は3年
ぶり2回目。

韓国のニュース専門テレビYTNは25日午前11時半過ぎに緊急ニュースを
流し、韓国気象庁が25日午前9時54分にマグニチュード(M)4以上の揺
れを観測、北朝鮮が核実験を実施した可能性が高いと伝えた。北朝鮮が核実験
を実施したかどうかをめぐり米韓両国政府が確認中という。

青瓦台(大統領官邸)関係者がYTNに語ったところによると、25日午前9
時54分、北朝鮮が2006年に核実験を行った北東部の咸鏡北道豊渓里でM
4・5の揺れが観測されたという。

一般的な爆発物だとM4以上の揺れは観測されないことから、地震か核実験の
可能性が高いという。朝鮮半島ではM4以上の地震が発生することはこれまで
ないことから、核実験の可能性が高いといわれる。

北朝鮮が核実験を行う可能性については、7日付の韓国紙・朝鮮日報が、北朝
鮮が2006年に実験を行った北東部の咸鏡北道豊渓里で最近、新たな核実験
の準備とみられる兆候を見せ、関係当局が注視していると伝えていた。

韓国政府筋によると、豊渓里で車両や人の動きが活発になっているのが持続的
に把握されているとされていた。

北朝鮮は4月29日に、核実験と大陸間弾道ミサイルの発射に言及しており、
朝鮮日報は、韓国政府筋の話として「地下核実験は事前予測が難しく、いつ核
実験が可能かは正確にわからないが、北朝鮮がその気になれば近いうちに実施
できる準備をしている状態とみられる」と報じていた。

(産経新聞 2009/05/25)


今しがた得た情報に基づいたものなので分析と言えない様な感想し
か書けませんが、自殺した盧武鉉の支持者にとってはとても皮肉な
結果になったと思います。

金大中も、太陽政策として有名な、北への援助政策を行いましたが、
盧武鉉は、在任中、全存在をかけて北朝鮮への援助を継続しました。
北朝鮮の第一回目の核実験へのコメントとして、「こんな小さな問
題」と、あえて核実験を矮小化する事で、援助を続けようとしたく
らいです。

しかしながら、北朝鮮は、彼の死の翌日に彼の家族には弔意を示し
つつ、核実験を強行しました。盧武鉉の北へのシンパシーを知るも
のには、北朝鮮が核開発への盧武鉉の功績を認めて、お陰で開発で
きましたとお礼の意味を込めて実施した核実験とも見えるものにな
りました。勿論、韓国内の北朝鮮シンパにとっては、虎は死んで皮
を残した様に、盧武鉉は死んで北の核兵器を残したと言うかも知れ
ません。しかし韓国内でも、盧武鉉への捜査を非難する声は、この
核実験で一気にトーンダウンするのではないかと考えます。

さて、今回の核実験の技術的な面についてですが、第一回目の核実
験と比べ、爆発規模で数倍から数十倍になっている様です。(前回
のマグニチュードは3.6。今回は、4.6~5.3。マグニチュードが1
上がるとエネルギーは32倍となる。)
これで、前回の核実験が過早爆発による実験失敗であった事が明白
になりました。もし、前回の核実験が、小型核弾頭用の小規模爆発
実験であったのであれば、今回、この様な大きな爆発を起こさせる
必要はない事になります。大きな爆発を起こす大きな弾頭を作る事
は、小さな爆発を起こす小さな弾頭を作るよりも遥かに容易だから
です。

従って、今回の核実験が前回と同じ規模であれば、北は弾頭小型化
を推進している事になりますが、遥かに大規模な爆発であった事は、
初回も今回同様の規模で企画したが、失敗したのでもう一度、同じ
規模の実験を行ったと推測できるからです。(プルトニウム使用量
4~6kg程度。小型弾頭の場合は2kg程度。)

ただ、北朝鮮が今回の実験で、プルトニウム239の純度の高い兵器
級プルトニウムを使用していると見られる事から、兵器級プルトニ
ウムを製造する原子炉の運転技術や抽出技術には、大きな問題はな
く、どちらかと言えば、核爆発装置そのものの製作に問題があった
のではないかと推測させる様に思います。これは、プルトニウム239
の純度を上げる技術に問題があれば、北朝鮮が2年程度でそれを改
善するのは難しいと考える為です。

今回の核実験の影響は、実は、日本にとっては、それ程大きいもの
ではありません。日本は既に中国やロシアと言った核大国に囲まれ
ている上、北朝鮮のミサイルが米国に届かない事から、米国の核の
傘の有効性に問題はないからです。

しかしながら、米国が、今回も北朝鮮の無法に餌を与える事で、核
拡散を一時的に食い止める政策を続けるのであれば、結局は世界の
核拡散を食い止められず、米国のイラク侵攻の正当性にも疑問を抱
かせる結果になるのではないかと考えます。

世界は北の核とどの様に共存するか?
http://blogs.yahoo.co.jp/ash1saki/59165508.html

何故、北朝鮮の核実験は失敗したのか?(2006.10.13)
http://blogs.yahoo.co.jp/ash1saki/42864695.html



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2009年5月22日金曜日

中国の潜水艦を評価してみると

※写真は、日本周辺国の軍事兵器サイトから転載

昨日は、簡単なコメントで済ませましたが、今日は、中国の潜水艦と日本の潜
水艦を比較し、少し分析を加えてみる事にします。
勿論、日本や中国の潜水艦のスペックが公表されている訳ではありませんので、
主として一般に流れている情報やネットで調べられる範囲の情報に限定した評
価になりますが、一つの参考として見て頂ければと思います。

まず、中国の通常動力潜水艦のラインアップと建造時期、簡単な特徴です。

○元級(Type039A) 1隻+2隻建造中 2006-
スターリング機関装備 フランクアレーソナー、非対称7翼スキュード
プロペラ、無反響タイル
独MTU社製16V-396ディーゼル・エンジン(ドイツ海軍212型の搭載機関)
キロ級静粛化技術の適用
C-801巡航ミサイルまたは、3M-54Eクラブ超音速巡航ミサイル

○キロ級(Type877/636) 12隻 1995-2008
全長74.9m、水中排水量2,250トン
7翼スキュードプロペラ、無反響タイル
C-801巡航ミサイルまたは、3M-54Eクラブ超音速巡航ミサイル
TEST-71有線誘導魚雷及び53-65KE航跡追尾魚雷
OMNIBOMUIBUS-E多機能指揮管制システム、又はLAMA-EKM多機能指揮管制システム
MGK-400EM Rubikon(Shark Teech)統合ソナー
最大潜航深度300m

○宋級(Type039) 10隻以上 1996-2005
全長74.9m、水中排水量2,250トン
仏製フランクアレーソナー、7翼スキュードプロペラ、無反響タイル
C-801巡航ミサイル、YU-4対艦魚雷(魚4)・YU-5対潜魚雷(魚5)
フランス製の統合戦闘システム、独MTU社製16V-396SE84ディーゼル・エンジン
最大潜航深度350m


中国海軍は宋級で西側の技術を大幅に取り入れた近代的通常型潜水艦の整備を
開始しました。武装はソ連製、戦闘システムとソナーはフランス製、主機はド
イツ製です。特に戦闘システムへの中国製兵器とソ連製兵器の取り込みとイン
テグレーションに時間がかかった事から一番艦は1994年の進水から1998年の就
役まで4年を要する事になりました。(Type039)

二番艦と三番艦は、セイルを日本の潜水艦と同様の正方形に近い形に成形した
他、無反響タイルによって海中騒音の低下を図りました。(Type039G)
四番艦以降は更に改装され量産化が図られています。(Type039G1)

日本の潜水艦と比較した場合、宋級は、フランクアレーを除いた性能で、概ね
ゆうしお型の後期型か、ゆうしお型の海中騒音を徹底的に削減したはるしお型
に近い能力があると評価できます。宋級のフランクアレーソナーはフランス製
ですが、日本の潜水艦でフランクアレーソナーが導入されたのは、おやしお型
からですから、フランクアレーソナーや無反響タイルの導入は、中国は日本と
殆ど同じ時期に行われた事になります。

元級は、宋級で十分でなかった海中騒音低減対策にキロ級潜水艦の技術を適用
したものであり、戦闘システムにもキロ級で導入されたロシア製兵器のインテ
グレーションを行った上、スターリング機関を搭載したものです。(一説には
キロ級の中国版コピーという話もあります。)

日本の潜水艦としては、同じスターリング機関を搭載する潜水艦としては、そ
うりゅう型がそれ以外の部分では、おやしお型が相当するのではないかと思わ
れます。

そうりゅう型やおやしお型と元級を比較すると常識的には、静粛さと潜航深度、
ソナーシステムや戦闘システムのインテグレーションで、流石に、日本の方が
上だろうと考えますが、航跡追尾魚雷や超音速巡航ミサイルといった特定の分
野では、中国にも優位な点があるし、日本の潜水艦に比べ、中国の潜水艦の性
能も一般に想像される程の大きな開きがある訳ではないと考える次第です。


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2009年5月21日木曜日

海自は中国海軍にどこが劣るのか?

※「ひゅうが」を後方からみたCG図 海人社サイトから転載

中国に先駆け空母建造 日本の動き香港誌報道

香港誌「亜州週刊」の最新号が、日本が中国に先駆けて空母を建造しようとし
ていると報じた。19日付中国新聞社電が伝えた。
記事は、今年3月引き渡された海上自衛隊初の空母型ヘリコプター搭載護衛艦
「ひゅうが」などの建造の動きを伝えたもの。「後部のクレーンを改装すれば
固定翼機が搭載できる」とした上、同艦は改良により「小型空母」に変身でき
るとの見方を示した。

空母は政治大国のシンボルで、核兵器、ミサイル、人工衛星と同じく国威のシ
ンボルだと指摘。「当面、巨額の建造費用のねん出は無理で、軍事開発に対す
る『平和憲法』しばりを抜け出せないが、何もしない訳ではない」として、日
本の軍事大国化を警戒している。

同誌によると、海上自衛隊は、原子力潜水艦、通常動力の潜水艦、艦載ミサイ
ルで中国海軍に劣る。中国が空母艦隊を組織すると、陸上航空基地が東シナ海
や西太平洋に移動するのと同じで、日本の戦略的空間は大幅に狭まり、海から
の中国封じ込めは「絵に描いたモチ」になる。(情報提供:東亜通信社)

(サーチナ 2009/5/21)

つっこみ処満載の記事ですが、面白いので、どこが間違っているか
をチェックしてみます。

まず、日本が《中国に先駆け空母建造》という事実がありません。
勿論、ここでいう「空母」とは固定翼機を運用する本格的な「空母」
の事をいうものと考えます。それであれば、イギリスのインビンシ
ブル級の様なSTOVL機を運用する「空母」の事が念頭に浮かびます。
今では、この種の機体を運用する「空母」は、殆どがスキージャン
プ甲板を装備しているのですが、「ひゅうが」は、甲板が短い上、
スキージャンプ甲板を備えていません。従って、「ひゅうが」は
「空母」であるとは言えない事になります。

次に《「後部のクレーンを改装すれば固定翼機が搭載できる」》
いう部分です。そもそも「ひゅうが」の後部にはクレーンがない
です。ですから、これを改装する事もできない事になります。
ちなみに、「ひゅうが」は、大型ヘリコプターであるMCH-101を搭
載できます。MCH-101はSTOVL機であるハリアーIIより重い機体です
から、重量的には、搭載可能と言えます。

ただし、ハリアーIIは着陸の際の甲板に向けジェットを吹き付ける
事になるので、その際の高温に甲板が耐えられる様に対応されてい
る必要があります。その対応が「ひゅうが」にはありませんので、
この点でも「ひゅうが」は「空母」ではないと言えます。

つまり、「ひゅうが」を「空母」に改造する際には、スキージャンプ
甲板の設置と着陸甲板の高熱対策が必要であると言えます。これは
クレーンの改造に比べれば、非常に大きな改装であり、「空母」化
されたかどうかは。外見から簡単に判断できます。ですから中国の
方はスキージャンプが搭載されれば、脅威を感じて頂ければ良いの
ではと思います。

次に《空母は政治大国のシンボルで、核兵器、ミサイル、人工
衛星と同じく国威のシンボルであるという中国的な考えが存在
しうる事は認めますが、国威のシンボルとしての「ひゅうが」は「ヘリ
空母」であっても「空母」であっても、それ程、大きな違いはないと
思うのです。実際、そもそもサイズが6万5千トンと言われる中国の
空母と比べ、「ひゅうが」は2万トンに満たず、長さも200mに届き
ません。実物を見ても、それ程、大きな艦には見えません。
「ひゅうが」の一般公開には、中国人もいっぱい来ていましたから、
そろそろ認識を変えて貰えれば嬉しいですね。
もし、「ひゅうが」を日本の軍事大国化の象徴とするなら、中国の
空母は中国の軍事大国化の赤裸々な具現化であると言えます。

次に《海上自衛隊は、原子力潜水艦、通常動力の潜水艦、艦載
ミサイルで中国海軍に劣るという評価ですが、もしこういう認識を
中国海軍が本当にしているのであれば、私がもし海自の担当者で
あれば、少し安心出来る様に思います。(勿論、皮肉です。)

言うまでもなく、海自が中国海軍に劣るのは、攻撃力に関する部分
です。海自は中国の持つ海兵隊も、戦闘機、攻撃機、爆撃機からな
る海軍航空隊もありませんし、戦略ミサイル原潜も保有しておりま
せん。その意味では、攻撃能力の全ての面で海自は、中国海軍に劣
っていると言えます。その点、原子力潜水艦(SSBN及びSSN)と艦載
ミサイル(潜水艦発射弾道ミサイル)について、劣る事は言うまでも
ありません。但し、通常動力潜水艦についてはどうでしょうか?

宋級は概ね、「ゆうしお」型と同程度の能力を持つと言いますし、
キロ級や元級は、「おやしお」型と同程度の能力と考えると、攻撃
力程には、海自は中国海軍と比べ劣っている様には思えません。
勿論、潜水艦の数では、中国の方が多いのですが、日本では既に除
籍されている旧式潜水艦が数を押し上げているだけです。
運用面も考えれば、通常潜水艦では、パリティというのが私の評価
です。
《海上自衛隊は、海兵隊、海軍航空隊の攻撃戦力、原子力潜水艦、
艦載弾道ミサイルと言った攻撃力の面で中国海軍に劣る》と書くべき
であったと思います。


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2009年5月20日水曜日

日本車"禁輸" 日本への影響はないが極東ロシアへは影響大

※写真は富山港で船積みを待つ中古車 読売新聞サイトから転載

露、右ハンドル規制を検討 日本製中古車“禁輸”審議へ

【モスクワ=遠藤良介】ロシア産業貿易省が月内にも、極東部や東シベリアで
主流となっている右ハンドルの日本製中古車を事実上、禁輸とする新たな車検
法規(政令)案を政府に提出する方針であることが明らかになった。ロシアで
はこれまでも、国産車保護を目的に右ハンドル輸入車の規制を求める当局者の
発言が相次いでいた。ただ、極東の沿海州(州都ウラジオストク)などでは中
古車ビジネスの帰趨(きすう)が地方全体の死活問題に直結しているだけに、
政府が新法規の承認に踏み切れるのかが注目される。

産業貿易省関係者によると、新法規案は「安全確保」を目的に乗用車の車体基
準として「右側通行に適合していること」との条項が含まれる。すでに使用さ
れている日本製中古車には適用しないとされるが、この条項が発効した場合は
新たな日本製中古車の輸入や販売が不可能になる。

右ハンドル規制をめぐっては極東部の住民による大きな反発が予想され、政府
はこの条項だけを個別に審議する見通しだ。このため、新法規は政府の承認か
ら12カ月後に発効するものの、右ハンドル条項だけが廃止されたり、保留と
される可能性も高い。

専門家の一人は「新法規案は公聴会を経て政府に提出されなければならないが、
私の知る限り、これまで行われていない」とし、「政府の狙いは安全確保では
なく、競争の排除による国産車関連業界の保護だ」と当局の動きを批判する。

プーチン首相は昨年12月、国産車保護を目的に中古車の輸入関税を2~3倍
に引き上げる政令に署名した。これに対し、ウラジオストクでは昨年末に大規
模なデモが起き、政権はモスクワから治安部隊を派遣してデモを押さえ込んだ
経緯がある。関税引き上げとルーブル通貨下落で極東の中古車ビジネスはすで
に大打撃を受けており、政権は新車検法規案をめぐって難しい判断を迫られそ
うだ。

ソ連崩壊後、ロシアでは現地生産や中古車を含む外車が一貫して増え、国産車
のシェアは3割未満にまで減少した。昨年秋以降の経済危機も関連業界に深刻
な追い打ちをかけている。

(産経新聞 2009/5/20)


現実には、日本への影響がないと言えば嘘になりますが、一般の日
本人には殆ど影響がないのも事実です。
実は、このロシアへ輸出されている中古車は、一部は中古車として
販売されていた車もありますが、多くは日本では廃車となった車が
スクラップとして、ただ同然の値段で極東ロシアに輸出されている
のです。(日本側での集荷にはパキスタン人不法移民が係わってい
ます。)

これがウラジオストックを中心とした中古車の再生市場に回り、中
国製や韓国製、自国製の安価な部品を使って整備された上で、全ロ
シアに、販売、流通しているのです。

ソ連時代は東シベリアや極東ロシアに住む住民には手厚い保護があ
ったと言いますが、ロシアとなってからは、その保護も撤廃され、
安全保障上の考慮から戦略的に配置されていた工場も非効率な為に、
多くが閉鎖され、極東ロシアの重工業は壊滅状態となりました。
多くの技術者、熟練労働者はヨーロッパロシアに再移住し、人口が
大きく減少しました。その産業衰退をストップさせたのが、この中
古車ビジネスなのです。これによりシベリアが息を吹き返したとも
言われています。

貧富の差が著しいロシアでは、モスクワやペテルブルグに住み、政
権や財閥とのコネクションがある人間こそ、近年のロシアの経済成
長の恩恵を受けましたが、それ以外の地域では、政権に繋がる人間
が少ないだけに購買力が遥かに低く、この日本製中古車は、彼らに
とっても支払い可能な割には、旧ソ連製のジグリなどに比べれば遥
かに高性能、高信頼性の車と言えます。それだけに、日本製中古車
はロシアに急速に浸透していきました。(考えてみれば、日本では
本来の使われ方をしていなかったSUVなどは、ロシアでこそ真価を
発揮できるとさえ言えます。)

中古車ビジネスとは言っても裾野の広い自動車産業です。当然なが
ら中古車の再生、整備を行う極東ロシアの地場産業も、この恩恵を
受け急速に成長したのです。

その一方で、国内産業の育成を図るロシア政権にとっては、安価で
高性能な日本製中古車が流通する事により、未熟なロシア自動車産
業の成長が阻害される事も事実です。これの排除を狙った政策を矢
継ぎ早に打ってきました。その第一段が昨年12月の関税引き上げ
です。ただ、元値が廃棄物扱いで極めて安価ですから関税が2~3
倍になった処で、輸入をストップさせるには至りませんでした。
そこで、今回は、右ハンドル中古車の輸入をストップさせる規制を
導入する事になったという訳です。

昨年末は記事にもある通り、ウラジオストクでは大規模なデモが発
生しましたが、今度は、完全に極東の中古車ビジネスをストップさ
せる規制です。今後、短期的には、昨年末以上の混乱が、ウラジオ
ストクで発生する可能性がある他、長期的には極東ロシアから大き
な産業がなくなる事で、地域の人口減少が加速する可能性もでてく
る様に思われます。(勿論、日本製に替わり、韓国製や中国製の中
古車を扱うという事になるかも知れませんが、完全に代替するのは
難しいと考えられます。)

そうなった場合、ロシアにとって日本からの技術移転による極東ロ
シアの産業振興が今以上に大きな課題になる
事は間違いありません。
風が吹けば桶屋が儲かるの類かも知れませんが、ロシアとの平和条
約交渉を考える場合にこういった要素も考える必要があると思われ
るのです。


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2009年5月19日火曜日

「トウキョウフルー(東京インフルエンザ)」を捏造する朝日新聞


学会にも影 渡航自粛で軒並み欠席「なぜ日本だけ…」

新型の豚インフルエンザの感染者が世界各地で確認されている影響で、日本人
研究者が海外の学会を欠席したり、日本国内で予定されていた国際的な学会が
急きょ中止されたりするケースが出ている。仲間に冷静に対応するよう求めて
いる研究者もいる。

「科学的な判断が可能な皆様には、過剰反応ではない客観的な判断をお願いし
ます」。レーザー技術の日本人研究者ら約190人に最近、こんな電子メール
が届いた。31日から米国メリーランド州で開かれる国際学会への参加を呼び
かけるためだ。

メールには、米国にいる学会関係者が、日本の研究者の学会欠席が目立つと指
摘していることが書かれていた。他国の研究者にそのような動きはないらしく、
「なぜ日本だけが……」と不思議がられ、新型インフルエンザを「トウキョウ
フルー(東京インフルエンザ)」と呼ぶ現地の研究者もいるという。

この学会に参加する電気通信大の植田憲一教授は「日本からだけ大量のキャン
セルが出る事態になると、国際舞台での日本の存在感が下がることが心配だ」
と話している。

感染防止のため、教員や学生に渡航の自粛や制限を呼びかける大学も増えている。

東京大は4月末、全学生と教職員に発生国への渡航自粛を要請した。期間は
「当分の間」。5月5日に予定していた南米チリの東大アタカマ天文台の開所
式も延期した。発生国からの帰国者は10日間は体温を記録し、大学内ではマ
スクをするよう求めている。

ほかにも、北海道大、東北大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大が渡航の自
粛や禁止を決めている。

一方、東京都千代田区の城西国際大学キャンパスでは、21~24日に予定さ
れていたアメリカ映画・メディア学会の東京大会が中止された。32カ国から
出席する予定だった約750人のうち、3分の1が欠席を申し出たからだ。

同大メディア学部によると、米国の学会事務局が、日本に行く国際便で新型イ
ンフルエンザの患者が出た場合、ホテルで足止めされる可能性があることを告
げて出欠を取り直したところ、一気に欠席が増えたという。東京大会は50周
年記念大会で、同大キャンパスではシンポジウムや上映会が予定されていた。

(朝日新聞 2009/5/18 17時4分)

この記事を読んで非常に奇異に感じたのは、何故、《新型インフル
エンザを「トウキョウフルー(東京インフルエンザ)」と呼ぶ現地
の研究者》が本当にいるのかという事でした。この記事は5月18
日のものですが、それ以前に電子メールは発信された筈です。それ
を5月17日とすれば、その時点での、日本の感染者数は、多くて
も80人程度でした。メール発信が、それ以前であれば更に感染者
数は少なくなります。その時点で感染者が既に数千人のオーダーに
なっていた米国やメキシコに比べ圧倒的に少なく、「トウキョウフ
ルー(東京インフルエンザ)」と呼ばれる理由は全くなかった事に
なります。感染に過剰反応(?)していると思われる国の名を流行し
ているインフルエンザの名前にしている例など聞いた事がありませ
ん。普通は、最初に感染が見つかった場所か、蔓延が確認された場
所の名前をつける筈です。

本当に新型インフルエンザの事を「トウキョウフルー(東京インフ
ルエンザ)」と海外では読んでいるのかと思って、googleで検索し
てみると5/19 9:30現在でのヒット件数はTokyo Fluで171件、殆ど
は、この記事を読んで書かれたブログ記事でした。英文では、
TokyoとFluの間にコンマやコロンが入っている例が殆どでした。
その一方で、Mexican Fluは、1,090,000件とヒット件数では圧倒的
で、且つ、その使い方も「メキシカンフルー(メキシコインフルエ
ンザ)」というそのものずばりの使用法です。
ちなみに、American Fluは、26,700件この内、North American Flu
が20,000件でした。ただ、Mexican Fluが一般的かと言えばそうで
はなく、何と言っても、Swine Fluが、1,830万件とダントツのヒッ
ト数でした。

つまり、「トウキョウフルー」とは、この記事を書いた朝日新聞記
者の捏造か、百歩譲って朝日記者の取材相手の創作という事であり、
《英語では、Swine Fluが最も一般的で、地名を伴って呼ばれる場
合は、Mexican Fluが多く使われている》というべきだと思います。

それにしても、どういうメンタリティーで、こんな事まで捏造して
自国を蔑もうとするのでしょうか。朝日新聞は、会社として反日を
奨励し、捏造でも歪曲でも、日本を貶める事を社員の義務としてい
る様に見えます。それが果たしてジャーナリズムの良心と結びつく
のか非常に疑問とする処です。


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2009年5月18日月曜日

右派のNHKへの抗議行動を報道しない日本のマスコミ


偏向報道したとしてNHKに1300人が抗議行動


反日的視点によって日本と台湾の歴史を描く、偏向報道を行なったとして、特
別番組『JAPANデビュー』 第1回『アジアの“一等国”』」(4月5日放
送)を制作・放送したNHKに対する抗議行動が16日、東京・渋谷の宮下公園
からNHKまで行われた。デモの主催者は、草莽全国地方議員の会、「NHK
『JAPANデビュー』」を考える国民の会、日本李登輝友の会、台湾研究フ
ォーラム、在日台湾同郷会、台湾団結連盟日本支部などで、約1300人が参加。
「台湾と日本を分断するNHKを許さない」などとシュプレヒコールを上げた。
同日、青森市や名古屋、福岡市でも各NHK支局への抗議デモが行われるとと
もに、台北でもNHK台北支局前で抗議集会が行われた。

(http://www.naruhodo.com.tw/ 2009/5/17)

youtubeにアップされたビデオ画像によれば、田茂神元航空幕僚長
や佐藤守氏も参加されなかなか賑やかな抗議行動であった様です。

しかし、実はこのニュースは台湾ニュースの日本版の記事であり、
国内大手マスコミはこのデモについては一行も報道しませんでした。

実は、その一方で、毎日新聞は以下の様な記事を5/8に出しています。

入管法改正案:反対であす市民団体がデモ 「逆行の動き、納得できない」 /大阪

◇外国籍住民を一元管理
法務省が外国籍住民の在留情報を一元管理する入管法改正案などに対し、府内
の在日外国人や市民団体などが「外国人を監視し、分断・差別や人権侵害を招
く」と反発している。既に国会審議が始まっており、大阪市内で9日、廃案を
訴えるデモ行進をする。

新しい在留管理制度は、短期滞在(90日以内)や特別永住者(在日コリアン
ら)を除く中長期滞在者に、ICチップ内蔵の在留カードを交付。顔写真や氏
名、生年月日、在留資格、期間などの情報を記載させ、さらに外国人が所属す
る企業や大学、日本語学校などに就労・就学状況の報告を義務付け、法務省が
情報を集中的に把握する。

カードの常時携帯や居住地を変更した場合の届け出を怠れば刑事罰を科し、在
留資格取り消し理由になる場合もある。

在日中国人2世で「永住者」の在留資格を持つ徐翠珍さん(62)=大阪市西
成区=は「戦前から日本に溶け込んで生活している私たちが、いまだに住民と
して認められない」と憤り、チラシ配布の活動を続ける。

徐さんはかつて、外国人登録の更新時に指紋押なつ(99年全廃)を拒否して
逮捕された。
「現行の外国人登録証の常時携帯や切り替えがなくなり、地方参政権も得られ
るようになると期待したのに、全く逆行する動きは納得できない」と話す。

デモ行進は、午後3時に同市西区新町1の新町北公園(大阪厚生年金会館南側)
に集合。御堂筋を通って中央区難波5の高島屋大阪店までの約2キロを歩く。
問い合わせは、主催のカトリック大阪シナピス(06・6942・1784)。

(毎日新聞 2009/5/8)


一方は、公共報道機関であるNHKによる、日本を貶める歴史捏造
番組の放送に対する抗議行動であり、もう一方は、犯罪や不法滞在
の増加が懸念されている外国人に対する管理強化に対する抗議行動
です。

似たような政府や公営企業に対する抗議行動ですが、一方が完全に
無視されている反面で、もう一方は恐らくは参加者は少なかったで
あろうにも係わらず、大きく報道され、連絡先も明記され、支援さ
れていると言って良い扱いです。

違いは、一点しかありません。マスコミの判断による右派による活
動なのか、左派による活動なのかです。(親日か反日かと言って良
いのかも知れません。)

この種の選択的な報道は実は、今に始まった事ではありません。
二回目の小泉訪朝の際に、拉致被害者を救う会が東京フォーラムを
使って数千人を集め緊急集会を行い北朝鮮に対するアピールを採択
したのですが、読売、産経は報道したものの、朝日、毎日、NHK
はこの集会を完全に無視し一行も報道しませんでした。

左派の活動は針小棒大に報道するが、右派(?)の活動は矮小化ある
いは無視する事で、国民には左派の活動しか目に入らない事になり
ます。正しくマスコミによる情報統制が暗々裏に戦後60年以上に
亘って継続して実施されているのです。

今までは、こういったマスコミによる偏向は国民には知られる事も
なかったのですが、インターネットによる草の根のメディアの発達
により、その赤裸々な実態が明らかになったと言えます。

日本の危機は深いと思いますが、一点、第四権力であるマスコミを
牽制する力が育っている点が希望であると考えます。


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2009年5月15日金曜日

100年早すぎる天皇訪韓 まずは韓国が非礼を糺せ

※韓昇洙(ハン・スンス)首相 産経サイトから転載

韓国首相、環境分野で日本と協力 部品・素材、中小進出を支援

【ソウル=山口真典】韓国の韓昇洙(ハン・スンス)首相は14日、ソウルの政
府総合庁舎で日本経済新聞と会見した。省エネルギーや新再生エネルギー開発
など環境分野で日本との協力を進める考えを表明。関連の部品・素材産業で日
本の中小メーカーの韓国進出を積極支援する姿勢を示した。新型インフルエン
ザ対策で「韓日中3カ国の間で感染拡大を未然に防ぐシステムづくりを検討す
べきだ」とも提唱した。
李明博(イ・ミョンバク)大統領が昨年4月に来日した際、招請した天皇陛下
の韓国訪問にも触れ「1日も早く実現することを期待する」と強調。「(訪問
実現を通じて)日韓の距離が近くなり、過去の難しい問題を解決する契機にし
たい」と訴えた。

(日経新聞 2009/5/15)


外交の原則の一つにレシプロシティ(返報性、相互性)の原則という
のがあります。何かしてもらったら、それにお返しをするというの
は個人の間でも関係を円滑にする知恵だと思いますが、これが、ち
ゃんと国と国との関係でも外交上の原則にもなっているのです。

その原則からすれば、韓国の国家元首である大統領が既に何度も日
本を公式に訪問しているにも係わらず、日本の国家元首として扱わ
れている天皇が韓国を訪問していないのは、外交上正常な関係では
ない事を端的に示していると言えます。(勿論、その替わりに首相
が訪韓していますので、表面上のレシプロシティは維持されている
と考えられます。)

韓国は天皇訪問を政治的に利用しようとしているという批判があり
ますが、元々、国家元首の外国訪問は国内政治的な目的も見据えて
行われるものですから、これは批判には当たりません。

しかしながら、天皇の訪問が、その国との関係全般を悪化させるの
であれば、訪問する意味がない事になります。
ここでいう関係悪化とは、相手国政府、国民の日本に対する態度が
どうなるかという視点もありますが、日本国民の相手国に対する態
度がどう変化するかという視点もあり、韓国との関係では、この後
者が悪化する可能性が高い点が、天皇訪韓を妨げていると言えます。

つまり、天皇が訪韓した場合、様々な状況で、韓国側から非礼な扱
いを受ける可能性があり、一度、そうした事態が発生すれば、日本
国民の対韓感情が著しく悪化する事が容易に予想されるからです。

過去、韓国は何度も外交上の非礼を日本に対して行ってきました。
日本と外交戦争を行うと宣言し、世界各国で、日本に対する悪口を
撒き散らしていた大統領が一年ちょっと前までいた国であり、国を
上げて、それを支持していたのです。現在の大統領である李明博も、
天皇訪韓時には、土下座させて過去を謝らせたいと述べていた位で
すから、彼らが非礼をしないと約束しようと、そういうチャンスを
与えれば、彼らがその希望が幾分なりと実現させ様とするのは明ら
かです。

韓国は、トーンの変化はあっても、引き続き反日教育を継続してい
ます。また、マスコミも天皇の事を「日王」と表記する非礼を継続
しており、竹島問題や歴史認識問題で百年一日の如く日本を非難す
る態度にも変化は見られません。

そうであるならば、日本側としては、天皇訪韓によって、更なる関
係悪化を予想せざるを得ない事になります。天皇訪韓を韓国が本当
に望むならば、まずは、自国の日本や天皇に対する態度を変えるの
が先であろうと感じる次第です。
(以上敬称略)


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2009年5月14日木曜日

ピースボートも本音は怖かったソマリア海賊

※ピースボートがチャーターしているClipper Pacific号

「反対、でも守って」 ピースボート、海自が護衛 ソマリア沖

海賊対策のためアフリカ・ソマリア沖に展開中の海上自衛隊の護衛艦が、民間
国際交流団体「ピースボート」の船旅の旅客船を護衛したことが13日、分か
った。ピースボートは海賊対策での海自派遣に反対しており、主張とのギャッ
プは議論を呼びそうだ。

海自の護衛艦2隻は11日から13日にかけ、ソマリア沖・アデン湾を航行す
る日本関係船舶7隻を護衛。うち1隻がピースボートの船旅の旅客船だった。
ピースボートは社民党の辻元清美衆院議員が早稲田大在学中の昭和58年に設
立。船旅は寄港地の非政府組織(NGO)や学生らとの交流などを目的として
いる。

ピースボート事務局によると、船旅の企画・実施会社が護衛任務を調整する国
土交通省海賊対策連絡調整室と安全対策を協議し、海自が護衛する船団に入る
ことが決まったという。

ピースボートは市民団体による海自派遣反対の共同声明にも名を連ねている。
事務局の担当者は「海上保安庁ではなく海自が派遣されているのは残念だが、
主張とは別に参加者の安全が第一。(企画・実施会社が)護衛を依頼した判断
を尊重する」と話している。

(産経新聞 2009/5/14)


とっても恥ずかしい話ですが、ピースボートは以下の声明の賛同者
リストに名を連ねています。

共同声明
ソマリア沖に海上自衛艦を出すな! 海賊問題に名を借りた海外派兵新法に反対する!
http://www.annie.ne.jp/~kenpou/seimei/seimei113.html

この共同声明は、まさに、読んで字の如くで、ソマリア海賊は、小
火器しか持っていないので、重武装の護衛艦を出すのは、憲法九条
の精神に反するという主張です。それに加えて、ソマリア海賊問題
は、「ソマリアの内戦による無政府状態と漁民など住民の貧困」が
根本原因であり、「この解決なくして「海賊問題」の解決はない」
のだそうです。

であれば、ピースボートは不要な護衛艦の護衛など受ける事なく
憲法九条の精神に則って"無防備"で海域を航海し、護衛が不要であ
る事を身を持って証明すべきです。また、例え、ソマリア海賊に拿
捕された所で、住民の貧困の解決の為になるのですから、進んで身
代金を提供すべきという議論さえなりたちます。

まあ、自分に降りかかってくるとは思わなかったので、九条カルト
仲間の奉加帳に名前を加えたのだと思います。それが、自分の事と
なった瞬間に、態度を変えて護衛艦による保護を頼むのは、主催メ
ンバーである辻元清美議員が、他人を「疑惑のデパート」などと最
大級の非難を行いながら自分が秘書給与ネコババ事件で罪に問われ
そうになった瞬間に、今までの主張を忘れて逃げ回ったり、会見で
ウソの釈明をした事が思い起こさせます。

しょせん、ピースボートの主義主張はお題目に過ぎない事を、これ
程明確に示した事もないと言えますし、サヨクが所詮ダブルスタン
ダードの使い手である事を、これ程あからさまに示す例も少ないと
思います。これではブサヨと言われても仕方がありません。

他人事ですが、折角の得がたい機会なのですから、憲法9条の精神
を発揮してソマリア海賊と徹底的な話合いを行い、海賊の武装解除
に成功して欲しかったと思います。


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2009年5月13日水曜日

A400Mレスキュー会議は半歩前進

※Reutersのサイトから転載

A400Mレスキュー会議の進捗について

エアバス社の親会社であるEADS社とヨーロッパ各国政府は遅延している軍用機
の製造を元に戻すため、A400M技術仕様を定めることで「前進」を果たしたと、
会談に詳しい消息通は語った。

技術的要求を単純化するのは、その遅延がドイツと英国を怒らせ、EADS社と
NATO加盟欧州7ヶ国政府との間で行われている欧州最大の軍事プロジェクトを
救出する会議での三つの主要な障害の内の一つを解決する事になる。

他の主要な論点は、1億ユーロ(8,960万ポンド)と推定されるA400Mの機体価
格と新しい引渡しスケジュールへの同意の取り付けである。
「技術的性能を定める上では良い進歩があった」と、関係者の一人は率直に語
っている。

A400Mは軍隊と大型装備をアフガニスタンのような不整地に輸送する為に設計
された機体だが、2003年に欧州七ヶ国政府から総費用200億ユーロでの発注を
受け開発がスタートした。

機体は2009年から引渡しが開始される予定になっていたが、まだその処女飛行
も行われていない状態にある。開発は主としてエンジン問題によって遅延して
いる。しかし、製造メーカーは、国毎にカスタマイズされた要求(例えば防御
機能や航法援助機能)についても問題視している。
例えば、ドイツは、60機のA400Mの導入を予定しているが、攻撃を避ける為、
地形にそって飛行する匍匐飛行機能を要求している。

業界筋によると、EADS社は開発上のリスクを減らすために第一段階では機体の
基本的なバージョンを生産したいという意向を持っており、それが軌道に乗っ
た後で、より複雑な機能を加えたいとしている。

契約上の遅延条項を適用させることで、購入政府は4月1日にプロジェクトを
キャンセルし、EADS社に前渡し開発費用57億ユーロを払い戻すよう命令するこ
とができた。しかし、彼らは緊急会談で7月までの支払い猶予を宣言した。

EADS社は、初飛行から3年後に最初のA400Mを引き渡すと述べたが、その具体
的な期日については、重要なエンジンソフトウェアの準備状況によると語った。

遅延に対しキャンセルする事も辞さないとしている英国やフランスのような買
い手は、可能なかぎり早く彼らの発注した機体を入手し、世界的な活動の支援
や、老朽化した輸送機隊の更新を一日も早く行う事を希望している。

スペイン、ベルギー、ルクセンブルク、トルコと言った他のヨーロッパの買い
手国と南アフリカとマレーシアは、輸出仕様のものを購入するのに同意してお
り、現在の契約交渉での役割は特にない。

EADS社は、この何ヵ月にも及ぶ否定的な広報を終え、6月中旬のパリ・エアシ
ョーでプロジェクトの再開を発表する事に熱心になっている様に見える。

(Reuters 2009/5/11)

昨日は、787の進捗について取り上げましたが、今日は同じく泥沼
状態となっているA400Mの開発について取り上げます。

A400Mについては、新開発のプロップ・ファン・エンジンTP400の開
発が難航しており、当初予定通りの出力を得る事が出来ないのが最
大の問題です。最近のエンジンはFADEC(Full Authority Digital
Engine Control)という全自動デジタルエンジンコントロール機能
が搭載されています。エンジン出力が目標通りにいかないのは、こ
のエンジン制御コンピュータの問題でもあるのです。その為、上記
の記事でも、引渡しは、このエンジン管理ソフトの引渡し日によっ
て左右されると書かれている訳です。

これに加えて、新機種開発での古くて新しい問題である機体の重量
過大という問題があります。これは787でも全く同じ現象が生じて
います。

このエンジン出力不足と機体重量過大により、他の問題、ペイロー
ド過少、航続距離過少と言った問題が複合的に発生する事になって
きます。新規開発の機体には既存エンジンまたはその改良型を使う
のが鉄則なのですが、A400Mについては、新規開発のエンジン、機
体の両方で問題が出た事になります。(この点で、XP-1哨戒機の開
発でエンジン、機体両方に問題が出ていない事は、奇跡の様な事と
いう思いを強くします。)

今回のレスキュー会議で技術的な要求仕様について合意が取れたと
書かれているのは、実際には、エンジン出力不足と機体重量過大を
認めて性能要求の切り下げが承認されたという事と解釈できます。
合意された性能は、現状とそうかけ離れたものではなかったでしょ
うから、その点で、A400Mの量産には目処がついたと言えるかも知
れません。

後は、価格と納期についての合意が得られればEADS社=エアバス社
は、パリ・エアショーで大きな顔が出来る事になります。
それでも、計画から比べれば3年から4年の遅延になります。
これに比べればC-Xの2年の開発遅延もかわいく見えますね。


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2009年5月12日火曜日

787は、リスケ後の開発スケジュールを維持できるか?


※塗装工場を出て給油ステーションに向かう試験飛行一号機。
ボーイング社サイトから転載

ボーイングが悲観論に回答。787の開発スケジュールを維持

ボーイング社は、先週発表された悲観的な調査結果にも係わらず、来年第一四
半期の全日空への引渡しを遅らせる事なく形式証明を取得する事に自信を示した。

ボーイング社は、調査会社バーンスタイン社による用心深い評価に対して回答
を示し「過去の787プログラムの達成度を元にすれば悲観的になるのが自然で
あるのは理解できる」としながらも、その調査結果については、いくつか誤り
があると批判した。

その声明でボーイングは、次の様に述べた。「我々は、777プログラムの経験
に基づいた、787の堅実な飛行試験計画を持っている。我々は飛行試験計画の
内の地上試験部分をより良く管理できる可能性がある新しい方法論を確立した。
そして、我々の飛行試験計画では、機体当たりの飛行試験時間は777と同程度
に設定している。我々の飛行試験チームは1日24時間1週7日稼動する事に
なっており、777プログラムと比べ、より多くの専任飛行試験スタッフ、即ち、
より多くのパイロット、テストディレクター、地上作業員、飛行試験エンジニ
アを保有している。」

性能面の懸念に関しては、同社は787は、「すべての顧客に約束した任務ペイ
ロードの条件を満足している」と述べたものの、「量産初期の機体が予定より
重い事から、重量軽減の為に努力している」点を認めた。

バーンスタイン報告に関して、同社の声明は「航続距離に関する結論は、不正
確であり、787-8の航続距離は、7,000nmより8,000nmに近い。」と述べた。
バーンスタイン調査報告では、「顧客や部品メーカーとの議論から得られた理
解では、量産初期の機体については、凡そ8%の重量超過となっており、これに
より航続距離は、予定より10%~15%減少している。これは当初約束されていた
7,700~8,200nmの航続距離に対し約6,900nmとなる事になる。」と述べていた。

ボーイング社は生産計画についても、「生産準備と重大なデザインブロックの
変更について完全にパートナーと一致しており、2012年内に月当たりの10機の
機体を完成させるという目標は満足できる。」としている。これについてバー
ンスタイン報告では、今週までについては正確に生産上の問題と生産の減速を
予測した上で、月産10機の製造目標は2013年中頃までは成し遂げられないと予
想している。
(ATW Online 2009/5/06)


開発が泥沼に陥ってしまっていたボーイング787の開発ですが、
漸く6月末までには試験飛行が開始出来る様になった様です。
5/5のボーイング社の発表では初飛行前の最終地上試験を開始準備
が整い、テスト用の機体が地上点検に向け列線に並んだとしています。

この地上試験では、外部電源供給の確認や、機上補助電源を使用し
た機器点検、燃料補給、着陸脚の取り回し、システム面の最終確認、
地上滑走試験等々が行われる予定ですが、ボーイング社の発表では、
その結果は今の処良好との事です。

その一方で記事にも引用されているバーンスタイン報告は、航空会
社に対し、試験飛行が始まっても、型式証明の取得に遅れが生じる
事で、更に、六ヶ月程度の引渡し遅延が発生する事を警告しています。

元々の試験飛行計画自体も、従来の開発の遅れをキャッチアップす
る為に、非常に野心的に設定されており、8.5ヶ月~9ヶ月で、
型式証明を得る為の全ての飛行試験を終えるとしています。
ただ、787は機体がフルにコンピュータ化している為、地上では、
システムを完全にはテストできない面もあるとの事で、この面の機
能確認は、実際に機体を飛行させないとバグ出しができない事はボ
ーイング社も認めています。

その為、飛行試験で問題点が発生する可能性は従来より高く、更に
1日24時間1週7日のテストが元々予定されているので、トラブル
のリカバリーに対するスケジュール上の余裕が殆どない計画になっ
ている点で、一度齟齬が生じると連鎖的に全体スケジュールに影響
が与える懸念も高くなっていると言えます。

その為に、飛行試験には十分なリソースを取っているとボーイング
社は主張している訳ですが、今までの実績から見る限り、現時点で
は、悲観的な観測の方が、正しい予想である気がしてなりません。

ボーイング社は、この処、いくつものプロジェクトで開発遅延を発
生させてきました。787プロジェクト以外にも、比較的簡単と思わ
れた既存機からの改造プロジェクトである、KC-767プロジェクト、
P-8Aプロジェクトと開発遅延を重ねています。
勿論、競争相手であるエアバス社もA-380、A400Mとボーイング同様
に開発遅延を発生させていますし、日本でも、C-Xの開発が大幅に
遅延しているのは周知の事実です。これらを見ると機体開発が一般
的に難化している様にも思われます。

機体のインテリジェント化が進み、機体を極限まで、軽量化する事
で、所要の性能を達成しつつ、アウトソーシングを多用して生産性
は最高のものを目指すとするアプローチは、正しいと思いますが、
その一方で、機体設計のコンピュータ化の恩恵を過度に評価して、
短く設定された開発期間が機体開発に大きな無理を強いているとい
う思いを強くする処です。その影響が安全面に出ない事を心から祈
念したいと思います。


[現在の787の開発スケジュール]

初飛行  2009年第二四半期末
一号機引渡  2010年第一四半期中



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2009年5月11日月曜日

着実に潜水艦大国への道を歩む韓国


※写真は212級潜水艦の管制コンソール。韓国の214級潜水艦もこれと略同じ。

3千トン級潜水艦、2020年から順次戦力化

【ソウル10日聯合ニュース】国防部が、海軍の3000トン級次期潜水艦
(KSS-III)開発事業などを1~2年遅らせる方向に「国防改革基本計
画」を修正した。

政府消息筋が10日に伝えたところによると、同部は盧武鉉(ノ・ムヒョン)
政権で樹立された国防改革基本計画の戦力導入事業のうち、事業費規模が相対
的に大きいKSS-III開発と空中給油機、高高度無人偵察機の導入事業を
順延する方向で計画を手直しした。2018年からの戦力化が決まっていた次
期潜水艦は2020年に1番艦を戦力化し、2022年と2023年にそれぞ
れ2番艦、3番艦を開発、戦力化することになる。

軍は1隻1兆ウォン(約791億円)近い次期潜水艦9隻を国内企業の主管で
独自に設計・建造し、戦力化する計画だ。2007年に基本設計に着手してお
り、ことしは事業費250億ウォンが反映された。海軍は2018年までに9
隻が建造される214型潜水艦(1800トン級・1隻5500億ウォン)、
次期潜水艦9隻などで潜水艦司令部を創設する案を進めている。

軍はまた、F-15KやKF-16などの作戦半径拡大を目指した空中給油機
の導入を、2013年から2014年に遅らせることにした。政府消息筋は、
米空軍が来年上半期に空中給油機の機種を決定する計画だとし、「米空軍と韓
国空軍は相互運用性を備えているため、米軍が選定した機種を参考に事業を進
める方向に大筋を定めたものと承知している」と説明した。

計画に基づき、空軍は北部戦闘司令部を創設し、戦闘機420機余りと空中給
油機、早期警戒管制機、次期誘導兵器(SAM-X)、短距離誘導兵器(M-
SAM)を確保、精密打撃能力を現在の平壌~元山以南から朝鮮半島全域に拡
大する。

対北朝鮮偵察機の制限的な監視能力を高めるため、2011年ごろ海外から導
入する予定だった高高度無人偵察機は、2015年に導入が先送りされる。軍
消息筋は、高高度無人偵察機は来年から先行研究が開始されるが、海外のデー
タ収集や研究期間などを考慮すると4年の順延が避けられないと伝えた。

国防部は来月末までに国防改革基本計画の修正案を最終確定する予定だ。

(聨合ニュース 2009/5/10)


記事によれば、導入スピードが多少スローダウンする事になります
が、韓国は、現在整備中の214級潜水艦9隻に加えて、三千トン級
潜水艦9隻を整備すると全体で18隻の現代的潜水艦を保有する事
になります。

日本が現在保有している潜水艦の数は16隻、これに加えて2隻程
度の練習潜水艦がありますが、これは実戦向けの戦力ではありませ
んので、韓国の潜水艦建造計画が実現すれば、日本の潜水艦隊は質
量共に韓国に凌駕される事になります。

以前から書いていますが、日本の潜水艦は諸外国の潜水艦との受注
競争がない事から、自動化、コンピュータ化等の最新技術の適用が
10年程度遅れている様に思われます。主機関の管制コンソールな
ど20年進歩がないと言っても過言ではないのです。

勿論、国産技術で全てを賄えれば良いのですが、量産規模に達しな
けば、国産技術はその内容に比べ割高になるケースが多いとは言え
ます。その点、韓国は自国で潜水艦を建造する技術はあっても潜水
艦設計技術が元々ない事から、しがらみなく最新の技術を取り入れ
る事が出来ます。

潜水艦技術は専門性が高い割には、一国では建造数が十分な量産規
模に達しない事から、早くから、世界的にも少数の建造メーカーが
寡占的に輸出するという状態が発生していました。
韓国が技術輸入しているHDW社は、その最も有力な建造メーカーと
言って良い存在です。
韓国の新しい三千トン級潜水艦がHDW社の設計になるかどうかは不
明ですが、建造された段階で世界最新のものになるのは間違いあり
ません。

そろそろ日本も積極的に最新の潜水艦技術を欧米メーカーから導入
すべきではないかと考える次第です。


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2009年5月8日金曜日

悪意の共和国

北朝鮮が米政権を名指しで初非難 「わが国への敵視政策に少しも変化はない」

北朝鮮の外務省報道官は8日、「オバマ米政権がスタートし100日間の政策
動向を見守ったが、わが国への敵視政策に少しも変化はないことが明白になっ
た」と述べ、オバマ政権を名指しで初めて非難した。朝鮮中央通信を通じ語った。

報道官はまた、「われわれを変わりなく敵視する相手と向き合っても、何も生
まれない」と指摘、米国の政策転換がない限り対話する意向のないことを示唆
した。

北朝鮮は4日、外務省報道官が朝鮮中央通信を通じ、「現在の米政権」との表
現でオバマ政権非難を開始した。6カ国協議再開に向け、7日から日中韓など
参加国への歴訪を始めた米国の北朝鮮担当、ボズワース特別代表の動きをけん
制する狙いもあるとみられる。(共同)
(産経新聞 2009/5/08)


黙っていても経済援助を開始してくれるのかと期待していたら残念
ながら、国際ルールを守れと言われたので、今度は拗ねる事にした
という解釈が正しいのかも知れません。

当然、二ヶ国対話を始めるだけで米国の譲歩を迫るといういつもの
外交政策です。

でも、本当に面白いのは、こういうミエミエの北朝鮮の外交手法に
米国って乗っちゃうんですよね。これが、政治と人気を意識しない
といけない米政権の癖の様なものです。米国としては、北朝鮮の為
に一人たりとも米兵の命を失いたくない。でも、放置しておくと
「ならずもの国家」に核拡散をしてしまいそうなのでそれは何とか
したい。となると米国は譲歩するしかないという事になります。

クリントンの時にさっさと攻撃して金正日体制を転覆しておけば、
世界はもう少し安全だったと思いますが、この辺が民主党政権の弱
点です。

バラク・オバマ氏に是非覚えておいて欲しい言葉があります。
地獄への道は善意で舗装されている。(Hell is paved with good intentions.)
というイギリスの古い諺です。

世界には信じられないことに「悪意の共和国」というのがあるんです。


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2009年5月1日金曜日

産経新聞さん、不適切な表現に苦言を呈します


※コリンズ級潜水艦 Australia Dept. of Defenceサイトから転載

豪、中国に対抗 シーレーン防衛、潜水艦・哨戒機など軍備大増強計画

【シンガポール=宮野弘之】オーストラリアのラッド政権が、第二次大戦後、
最大となる軍備増強を計画している。近く発表される国防白書で今後20年間
で潜水艦隊を倍増し、新たにF35戦闘機を100機導入するなど装備の大幅
な刷新と増強の必要性を表明する見通しだ。地元紙オーストラリアンが伝えた
もので、アジア太平洋地域で空母を含む中国海軍の増強に対抗するものとされ
る。ただ、ラッド首相はこれまで「親中派」とみられてきただけに、今回の計
画に中国が強く反発することも予想される。

白書では、アジアにおける中国の着実な軍備の増強により、アジアの大国間で
海軍力の増強競争が起こると分析。その結果、巡航ミサイルを搭載した新世代
の潜水艦や軍艦、さらに対潜水艦戦や電子戦用の基盤整備が進むだろうとして
いる。

こうした地域情勢に対応してオーストラリアとしても海軍力を中心に増強をは
かり、シーレーン(海上交通路)の防衛に努めるのが狙いだ。

ラッド首相も昨年末、「シーレーンを守ろうとするつもりなら、相応の能力が
必要だ。わが国は、そのために必要な海軍力を将来持たなければならない」と
述べていた。

白書では、今後の国防計画について、弾道ミサイル防衛システムを搭載した
7000トン級の戦艦8隻、さらに1500トン級の新型の哨戒艇を2020
年までに導入するとしている。

さらに海軍力を増強するため、対潜哨戒機も旧型のAP3オライオンから、
P8ポセイドンへと更新、少なくとも8機を導入する計画だ。さらに対潜ヘリ
コプターを27機以上導入することが検討されている。

一方、空軍はF18の後継として、F35ステルス戦闘機100機を14年ま
でに調達する。また、C130Jハーキュリー輸送機6機を増強、C27J輸
送機の導入も検討されている。そのほか、陸軍もヘリ部隊の増強や新型の装甲
戦闘車の配備を進める。

白書では、オーストラリア軍は同国周辺、特に南太平洋地域における安全保障
を先頭に立って確保する能力が求められているだけでなく、さらに遠方へ軍を
展開する能力も必要としている。

(産経新聞 2009/4/29)


記事の言わんとしている内容については問題はありません。ラッド
親中政権ですら無制限な軍拡を続ける中国に対して対抗する必要を
感じているというのは、十分大きなニュースです。
また、そういう前提に立てば、ラッド政権の成立で一旦中断状態と
なっている日豪防衛協力を、オーストラリアとしても今後推進せざ
るを得なくなっているとも考えられます。

本音では捕鯨問題で如何に気にいらないにせよ、新興大国意識ムン
ムンの中国に対して、保険として、同じ圧力を受け、民主主義国と
して共通の価値観を持つ国との協力関係を推進すべきであるという
論理的な結論にオーストラリアの労働党政権が漸くたどり着いたの
は、ご同慶の至りとも言えます。

しかしながら、そういう内容を補完すべき記事の細部が頂けません。
産経新聞シンガポール駐在の宮野記者は、もう少し軍事関係の知識
を増やさないと折角、立派な安全保障関係記事を書いても、常識的
な軍事知識もない事が明らかである為、信頼性が失われてしまいま
す。

この記事の元ネタは、2009/4/25付け The Australian紙の
"White paper orders huge military build-up"
http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,,25383010-22242,00.html
であると思われますが、直訳した事による誤訳が散見されるのです。

まず、「7000トン級の戦艦8隻」という表現がありますが、こ
れは、「7000トン級の戦闘艦8隻」と訳すべき部分です。
英語ではWarshipsと書かれていますが、日本語で言う「戦艦」は、
英語ではBattleshipとなります。ちなみに、現在、世界で戦艦を
使用している海軍はありません。ちなみに、ここで書かれているの
は、オーストラリアがスペインに発注しているイージス艦の事です。
日本や米国のイージス艦より一回り小型ですので、艦種としてはミ
サイル駆逐艦という表現が一番正確と思われます。

次に「1500トン級の新型の哨戒艇」という表現が出てきます。
一般的には、哨戒艇という艦種は500トン程度までの小型艦艇を
指す表現です。原語では、1500-tonne corvette-size patrol boats
なっていますが、ここでは、「1500トンのコルベット級新型哨
戒艦」と訳すべきだったと思われます。

また、細かな表記の問題になりますが、F35、AP3、P8等の
記載はF-35、AP-3、P-8という表記が通常使われますし
元の記事ではそうなっています。ハイフンであっても型式名を記者
が勝手に省略すべきではない事はいうまでもありません。細部に対
するこだわりかも知れませんが、記事を書く際にそういう事を踏ま
えているかどうかは、知識があるかないかを示すバロメータにもな
りますので疎かにできないのです。

更に言えば、この誤った表現の記事が編集者による校正もなく通過
してしまう事にも首を傾げてしまうのです。
産経新聞が、安全保障面に強い点を売りにするのであれば、軍事知
識の初歩の部分で読者に疑問を持たせる事はすべきではないと考え
ます。


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2009年4月30日木曜日

北の挑発に乗らず、粛々と経済制裁を続ける


北、安保理議長声明に反発「謝罪なければ核実験」

北朝鮮の外務省報道官は29日、国連安全保障理事会が同国の「衛星」打ち上
げを非難する議長声明を採択し追加制裁を決めたことに関連し、安保理の謝罪
がなければ、核実験や大陸間弾道ミサイル発射実験などを含む「追加的な自衛
的措置を講じざるを得なくなる」との声明を発表した。

また、声明は「軽水炉発電所建設を決定し、その最初の工程として核燃料を自
ら生産、保障するための技術開発を遅滞なく始めるだろう」と濃縮ウランによ
る核開発も示唆した。

北朝鮮は今月25日、使用済み核燃料棒の再処理作業開始を明らかにするなど
緊張を高めており、今回も瀬戸際外交の一環とみられる。韓国の外交安保研究
院の尹徳敏教授は「対米交渉に向け、核武装を既成事実化させるために核実験
を行う可能性が高い。今回の声明もそのために緻密(ちみつ)に練られた手順
の一つだ」と分析している。

(産経新聞 2009/4/30)


関川夏央の「退屈な迷宮」の中に、北朝鮮は、釘一本作れないとい
うくだりが出てきます。北朝鮮は鉄鋼生産はしているが、釘に必要
な軟鋼が生産出来ない事から釘一本も輸入に頼っているという話で
す。実際に釘を生産できないかどうかは、判りませんが、北朝鮮が
工業製品を製造する場合に、その原材料の殆どを輸入に頼っている
事は事実でしょう。

今回の声明の中で、北朝鮮は、核実験、大陸間弾道弾(ICBM)発射実
験、軽水炉発電所の建設、核燃料生産と色々なメニューを並べてい
ますが、これら全ての製造、建設の為の資材は、輸入に頼らざるを
得ないという事を忘れてはなりません。特に、数発の実験兵器とし
てであれば、それ程の巨額ではなかった核兵器も、兵器体系として
頼れるものを配備しようとすると巨額の費用がかかってきます。
北朝鮮の場合は、核ミサイルを配備する事が一番費用がかからない
と思われますが、それであっても核弾頭の生産と配備、発射統制シ
ステムの整備は最低限必要となります。既存のミサイルを改造する
のか新造するのか別にしてミサイル側にも手を入れる必要がありま
す。

更に、核燃料を生産する為には、ウラン濃縮工場が必要になります。
遠心分離式にすれば、北朝鮮の必要とする規模に応じた工場とする
事ができるでしょうが、それでも数百台から1000台規模の遠心分離
機を備える必要があります。遠心分離機の設計図はパキスタンのカ
ーン博士の整えた核の闇市場で既に流通しているようですから、北
朝鮮も既に入手済みでしょうが、遠心分離機そのものはイランが行
った様に設計図にそって自ら生産しなくてはなりません。

それこれ考えると、核兵器体型の整備には、少なくとも数百億から
数千億円の費用を要する事になります。そして、その多くは輸入に
当てなくてはなりません。資材の輸入には、ハードカレンシーが必
要になります。北朝鮮が、なんとしてでも、このハードカレンシー
を入出しようとする筈です。それは、既に切り詰められている食料
等の輸入品に対する割り当ての削減かも知れませんし、覚醒剤や武
器、ニセ札、ニセ煙草、援助食糧横流しによる輸出増によるものか
も知れません。あるいは在日朝鮮人からの送金の増加に頼るかも知
れません。何れにせよ。今まで以上に核兵器に資金を使う以上、そ
れに必要な資金は捻出されねばならない
のです。

日本としては、この資金が日本から北朝鮮に流れる事を絶対に阻止
しなければなりません。そして、その手を打った上で北朝鮮を放置
すれば、軍備への過大投資が原因となったソ連型の体制崩壊に北朝
鮮を導ける可能性が高くなると考えるのです。
北朝鮮には、是非、核兵器体系整備の為に、第二の「苦難の行軍」
を実行して貰いましょう。


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2009年4月28日火曜日

中国海軍のR&Dの焦点


※J-10 keypublishing forumから転載

中国海軍は、超音速巡航能力を持つ戦闘機を要求
by Bradley Perrett

超音速巡航能力を持つ戦闘機の取得は中国海軍で高い優先度にあると、高位の
海軍提督が公式インタビューで明らかにした。この高官はインタビューの中で、
中国海軍の公認されている弱点と将来進むべき方向性について強い手掛かりを
与えている。

中国人民解放軍海軍司令官である呉勝利提督は、また、敵の防御力に打ち勝つ
精密誘導ミサイルの研究を進めなければならないと語ると共に、中国は大型戦
闘水上艦艇-恐らく、ますます差し迫っている空母プログラムを意味すると思
われる(AW&ST 1/5/2009 p22)をより速やかに開発しなければならないと語った。

アフアーバーナーなしで超音速飛行を可能にする超音速巡航能力に対する呉提
督の要求は、J-XXと呼ばれている次世代中国戦闘機がその様な能力を利用可能
である事を示している様に思われる。

「ひとつの可能性は、J-XXが超音速巡航用に設計されており、呉提督がその航
空機の海軍版を作る案をサポートしようとしているということです」と、シン
ガポールのS. Rajaratnam国際研究学校のシニアフェローであるRichard
Bitzingerは語る。

J-XXのデザインは、まだ知られていない。それは全く新しい航空機かも知れな
いし、最近就役したJ-10の発展形とも考えられる。

J-10の構成はEurofighter Typhoonと類似しているが、Typoonは、メーカーに
よればマッハ1.5の超音速巡航能力(有効な外部兵装を装備した場合にはスピー
ドは幾分低下する筈)を保有している。

中国海軍にとっての、超音速巡航能力の優位点は、短い時間で、大きな防御エ
リアをカバーできる事であり、それは、遠距離にある米国の空母戦闘団を想定
目標と考えれば非常に有効である。

重要なことは、呉提督が、中国海軍がここ10年程度で実現できる様に思われる
他の要求事項と同じリストの中に、この超音速巡航戦闘機を含めていると言う
事である。それは、彼が、絵空事のような飛行性能と考えていない事を示唆し
ている。

「洗練された機器は、海軍が地域的な紛争に勝つための重要な基礎的素材です。」
と、呉提督は、明らかに台湾海峡で対立の可能性に言及する。そして、「我々
は、重要な武器に対する取組みに歩速を速めなければなりません。」と語って
いる。更に、それに加えて以下の様に語った。
「我々は大型水上戦闘艦艇、ステルス性能を持つ長持久力潜水艦、超音速巡航
性能を持つ戦闘機、敵の防御力に打ち勝つ精密で長射程のミサイル、深深度性
能を持ち、高速で、インテリジェントな魚雷、互換性と共通性を提供する電子
戦闘装置といった次世代兵器を開発しなければならない。」

(AW&ST 2009/4/27)

中国海軍 大型水上戦闘艦艇など新装備を開発

中国人民解放軍の海軍が成立60週年を迎えるにあたり、中国共産党中央軍事委
員会委員で海軍の呉勝利司令員が13日にメディアの取材に応じ、海軍の60年の
歴史を振り返り今後の発展を展望した。

呉勝利司令員によると、60年の発展で水上艦艇部隊、沿岸防衛兵、航空兵、潜
水艦部隊、陸戦隊の5兵種で編成された戦略的で総合的、国際的な海軍になり、
5兵種は半機械化から機械化へレベルアップし、徐々に情報化へ変更している
という。

キーワード1:新式装備

海軍は新世代の艦載戦闘機を研究開発する計画で、当面、3つの艦隊は駆逐艦と
護衛艦の分隊、モーターボート分隊、上陸用舟艇分隊および作戦支援艇分隊の
数十隊と、3級以上の戦闘艦艇数百隻を擁し、その容積トン数は1980年代に比
べて5倍に達するなど、艦艇の総合的な戦闘力が大いに強まっている。

重点は兵器と装備の開発を迅速に行わなければならない点で、大型の水上戦闘
艦艇、水中での連続潜航時間とステルス性の高いすぐれた新しいタイプの潜水
艦、超音速巡航戦闘機、防衛システムを突破する能力が強い精密な遠距離ミサ
イル、深深度高速人工知能魚雷、通用性と許容性を兼ねた情報戦の装備など、
新しいタイプの兵器と装備を研究開発する必要がある。

また各戦略的方向では、戦略的な母港を中心とする沿岸保障力をしだいに形成
し、海上での修理や遠洋兵力の輸送、大型救援と補給面での整備を強化する。
今後、遠洋機動戦力と戦略的な兵力輸送能力を、軍事力整備システムに組み入
れることにしている。

キーワード2:航空兵

第三世代の戦闘機が配備されるにつれ、航空兵部隊の全ての戦闘旅団は、多地
域間の機動作戦に参加することができるようになり、戦闘準備のパイロットは
全員ミサイルの実戦訓練に参加する。

キーワード3:人材の養成

新しいタイプの総合補給艦に代表される後方勤務の艦艇装備部隊の発足で、保
障艦艇の容積総トン数は80年代の6倍に達している。大型の戦略的な母港や重
点空港、後方の戦略的倉庫を建設し、艦船や航空機、装備の修理基地を十数所
も建設するなどして、遠洋に向かう海軍を強くサポートしている。

近年では高学歴の艦長やパイロット、仕官の養成規模が5年前に比べて10倍に
なり、4カ所の海軍の大学は仕官の訓練を行い、毎年、訓練を受けた仕官と兵
士は5000人に達している。

キーワード4:沿岸部隊

現在、沿岸部隊は全面的にミサイル化を実現し、新世代の沿岸ミサイルも全面
的に配備され、海軍の沿岸部隊は他の兵種による攻撃を支援する新しいタイプ
の兵種になった。

防衛システムを突破する能力が強化され、知能化レベルも向上、射程もより遠
くなり、妨害に対する抵抗力がより強い新世代の沿岸ミサイルが全面的に配備
されるにつれ、要地防空と近海防空能力を備える沿岸防衛部隊は、ほかの兵種
の攻撃に効果的にサポートする新しいタイプの兵種となった。

キーワード5 潜水艦部隊

人民海軍潜水艦部隊の防衛システムを突破する能力は明らかに向上している。
潜水艦は水中での重要な突撃力として海軍にとって重点的に構築する兵種であ
る。新世紀では新しいタイプの通常動力型潜水艦や原子力潜水艦が相次いで配
備され、新タイプの潜水艦には、超長波通信システム、データチェインシステ
ム、戦術ソフトウェア、指揮自動化システム、知能魚雷、精密誘導ミサイルな
どの装備が配置されている。またステルス性や連続潜水時間、生存力が明らか
に高まり、水中での防衛能力が明らかに強まった。

キーワード6 軍事演習と訓練

この10年、海軍は集団での海上作戦や戦役演習を30回以上実施してきた。これ
らの演習によって新しい戦法を検証し、海軍の一体化と総合的戦力、戦略抑止
力が大いに引き上げられた。

海軍の遠洋訓練はすでに日常的になり、海軍の5兵種は毎年数回、遠洋での演
習を実施している。そのうち水上艦艇の昼夜航行訓練は数百ノットから数千ノ
ットになり、潜水艦の水中での待機訓練は十数日から数カ月にわたっている。

(「チャイナネット」 2009/4/16日)
(人民網日本語版 2009/4/26)


中国海軍のR&Dに関する面白い記事がAviation Weekに掲載されてい
たので、ご紹介します。

元ネタがないか探していたら、人民網の4/22の記事の中に該当する
ものを見つけましたので、是非比較して頂ければと思います。

Aviation Weekは航空関係がメインですが、人民網の報道と同程度
の情報から、これだけの推測を行えるというのは流石に専門家と関
心しました。

なお、中国海軍のR&Dの中では、潜水艦のステルス性能と水中での
連続潜航時間向上が出ているのは、原潜を保有する中国でも、主と
して通常動力潜水艦での課題と思われる問題が結構深刻に捉えられ
ている事に興味深く感じました。

少し疑問なのは、対空ミサイルに対する関心の少なさです。対艦ミ
サイルが取り上げられているのに対空ミサイルが課題リストから落
ちているのは、中国が対空ミサイルに自信を持っている表れかも知
れません。


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2009年4月27日月曜日

中国の海軍力は日本を上回る


※晋級SSBN Globalsecurity.orgより転載

海軍能力「世界の6強」 中国紙報道、日本上回る

【北京23日共同】中国国営通信、新華社系の時事週刊紙「国際先駆導報」は
23日、中国海軍の総合的な実力について「米国、ロシア、英国には及ばない
が、日本を上回り、インド、フランスと並ぶ」と指摘し、世界の6強に入って
いると報じた。

同紙は主要国の海軍(日本は海上自衛隊)について、作戦行動が実施できる範
囲を3分類し(1)世界各海域=米国(2)自国近海と一部遠洋海域=ロシア、
英国(3)自国近海=中国、フランス、インド、日本-と分析。

日中の比較では、中国海軍が戦略ミサイル原子力潜水艦などで「一方的な優位」
にあると指摘。原潜以外でも、中国が先進的なミサイル駆逐艦や通常型潜水艦、
戦闘機を相次ぎ就役させ、日本が優位といえなくなったとしている。

(共同通信 2009/4/23)


この「中国の海軍力は日本を上回る」という結論を否定してかかる
方も多いと思うのですが、私は逆に、中国人民解放軍海軍の方がバ
ランスの取れた構成であると思います。勿論、装備の多くは旧ソ連
設計、中国製造で旧式化しているものも多いと思いますが、20年継
続した国防費二桁増加は確実に装備の近代化に回っています。

米国国防総省発行の2009年版「中国の軍事力」によれば水上艦艇の
25%、潜水艦の47%が"近代化"されています。近代化されたものだけ
とっても、決して過小評価は出来ません。

空母はまだ計画段階であるにせよ艦艇は主要水上艦艇74隻で、ここ
数年の間に051C級及び052C級ミサイル駆逐艦各二隻、054A級ミサイ
ルフリゲート4隻を取得しています。これらの国産水上艦艇は有力
な長中射程の対空ミサイルを装備しており、ロシアから輸入したソ
ブレメンヌイ級と合わせ来るべき空母機動部隊の構成要素と目され
ています。

潜水艦では夏級戦略ミサイル原潜に加え、後継の晋級戦略ミサイル
原潜の配備が進められており戦略抑止力を備えています。攻撃型原
子力潜水艦も漢級に代わって商級が配備されています。
これらの原子力潜水艦は、日本では政治的に配備できませんが、中
国海軍が日本を凌駕する大きな要素であると言えます。

また、海上自衛隊が、対潜哨戒機しか持たないのに比べ、機数だけ
を数えれば、航空自衛隊を凌駕する戦闘機、爆撃機からなる海軍航
空隊を保有しており、旧型機に代わって爆撃機はTu-22Mバックファ
イア、戦闘機も新型のSu-30MK2の配備も開始されています。

さらに二個旅団1万人からなる海兵隊を有し、37隻の両用戦艦艇を
保有している点も、台湾侵攻の為とは言え、総合的な海軍力強化に
役立っています。

これらを装備する人民解放軍海軍の要員数は、約29万人と見積もら
れていますが、4.5万人の海上自衛隊の比べ、六倍以上になってい
ます。

勿論、軍備や兵力の多寡が実力を決定する訳ではなく、装備の性能
と数、それと要員の錬度との乗数になりますから、一概に中国の方
が上とは言い切れませんが、闇雲に海上自衛隊の方が上とも言い切
れる訳ではないと認識するのが正しい情報評価の態度ではないかと
思われるのです。

例えば、ソマリアの海賊対策では、日本が護衛艦を派遣するより数
ヶ月前に中国は、略同規模の艦隊を派遣しています。中国が全体主
義国で政策決定に時間を要しない事を考えても、艦艇がいつでも海
外派遣に出せる状態であった事、海賊制圧用の特殊部隊の準備も含
め、高いレベルの臨戦態勢が出来ていた事も事実であると思われる
のです。その点でも、海上自衛隊はうかうか出来なくなっている様
に思えてなりません。


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2009年4月23日木曜日

取材相手に「北京の手先」と罵倒されたNHK


「恣意的編集ない」 NHKスペシャルへの抗議に放送総局長

5日に放送された「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー 第1回
『アジアの“一等国”』」の放送内容が偏向していたとして、「日本李登輝友
の会」(小田村四郎会長)が同局に抗議したことをめぐり、同局の日向英実放
送総局長は22日の会見で「台湾の人たちが親日的であることは当然、十分承
知していて、それを前提にして伝えた」との認識を示した。
その上で「番組の趣旨、文脈がある。全要素を平等に個別の番組で伝えねばな
らないとなると、クリアに物事を申し上げられない。(NHKの)放送全体の
中で考えていただきたい。恣意(しい)的に編集することはない」と説明した。
NHK広報局によると、同番組に対し、21日までに電話やメールなどで
1900件を超える反響が同局に寄せられ、「戦前の台湾統治の状況をよく伝
えていた」「日本は台湾によいこともしており、一方的に悪いという描き方は
納得できない」などがあるという。

(産経新聞 2009/4/22)


NHKが放送した「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュ
ー」ですが、性格としては、昭和天皇を一方的に裁いた女性国際法
廷をNHKが取り上げたのと同じ目線を感じます。
今回、詳細は明らかになっていませんが、企画段階で北朝鮮の息の
かかったVOWW-NETのシンパが、またも入っているのではないかと思
われるのです。

Youtubeにチャネル桜が、今回の件について台湾を取材したものが
ノーカットで掲載されています。

1/8【台湾取材レポート】台湾取材の経緯などについて[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=dDMxsesr3TY 
2/8【台湾取材レポート】座談会・日本語族達の番組批評[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=s0xWSlGhCMM 
3/8【台湾取材レポート】蒋松輝氏インタビュー[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=tAL0FzMAwks 
4/8【台湾取材レポート】藍昭光氏インタビュー[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=s0xWSlGhCMM
5/8【台湾取材レポート】柯徳三氏インタビュー・1/3[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=eXvmpZbfooA
6/8【台湾取材レポート】柯徳三氏インタビュー・2/3[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=e9rYQ7ndA4I 
7/8【台湾取材レポート】柯徳三氏インタビュー・3/3[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=9lO3fbu508A 
8/8【台湾取材レポート】片倉佳史氏インタビュー[桜 H21/4/21]
http://www.youtube.com/watch?v=m76GwZ9PNoA 

その中で、台湾を取材したNHKの担当ディレクターからの釈明の
電話に対し、取材され、ネガティブな発言だけを放送され、日本の
友人から非難された台湾人の老人が「お前は北京の手先なのか」と
問質した様子が出てきます。それに対しこのディレクターは、それ
を否定した様ですが、こんな取り上げ方をするのは、サヨク反日分
子に違いがありません。

共産党独裁下で腐敗の度合いの激しい中国がバラ色の国で、自国を
極悪非道の国と報道する公営放送がある国は、日本以外にはちょっ
と思いつきません。

もともと公正中立な報道などありえないのですが、米国のNew York
Timesを含め、著名な海外報道機関が日本をみる目が事の外冷たい
事も、日本人が肝に銘ずべき事であると思います。特に、日本に駐
在経験のある報道関係者が殆ど、サヨク的洗脳を受け反日論者にな
って帰国している傾向が強い事は誠に憂慮すべき現象です。

学界、教育界、マスコミというトライアドが、冷戦時代同様、反日
サヨクの支配下にあり、反日思想が、国内的にも、国際的にも、日
々、拡大再生産されていると思われてなりません。そして、その影
響は、予想以上に長く継続すると考えざるをえません。世界の反日
の視線の中で、日本の進路には極めて暗い暗雲が立ち込めていると
言わざるを得ないのです。


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2009年4月22日水曜日

中川(酒)さん、北朝鮮相手に核武装は不要です


※写真は産経新聞サイトから転載

「核に対抗できるのは核」 北朝鮮情勢で中川前財務相

中川昭一前財務相は19日、北海道帯広市での会合で、ミサイル発射を非難す
る国連安全保障理事会議長声明に反発して北朝鮮が核開発再開を宣言したこと
に関連し「純軍事的に言えば核に対抗できるのは核だというのは世界の常識だ」
と述べ、日本として核武装を議論すべきだとの考えを表明した。

中川氏は安倍政権で自民党政調会長を務めていた平成18年10月にも「憲法
でも核保有は禁止されていない」と発言している。

中川氏は、北朝鮮が日本のほぼ全土を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノド
ン」を多数保有し、ミサイル搭載できる小型化した核爆弾を保有しているとの
見方を強調。「彼らは予告なしにいつでも撃ってくるという態勢に一歩近づい
た。対抗措置を常に議論しておかなければならない」と訴えた。

ただ、現時点での日本の核兵器保有の必要性については「核(武装)の論議と
核を持つことはまったく別問題」と述べ、当面は国民レベルでの議論に委ねる
のが望ましいとした。

(産経新聞 2009/4/19)


既に何度か取り上げていますが、「純軍事的に考えて」北朝鮮相手
に、日本が核武装を行う事は不要です。日本は現時点では、MDの
信頼性を高め、また、一方で日米安保条約の有効性を維持、強化す
る対策を取る事が正解であると思われます。

「純軍事的」に考えると、A国が核兵器を保有していて、それをB
国に対して使用した場合に、B国あるいは、その同盟国である核保
有国C国からA国に対して同程度の核兵器による報復があると信じ
るべき十分な根拠があれば、A国がB国を攻撃する事は抑止されま
す。これを抑止力と言います。また、C国がA国を核攻撃した場合
に、A国またはその同盟国である核保有国D国から同程度の報復が
予想される場合は、C国もA国を核攻撃する事が抑止されます。こ
の関係を相互抑止の状態と言います。(相互抑止の典型はA国、B
国が、米ソ冷戦時の様に互いに同程度の核保有国であるケースです。)

では、A,B,C,D国に各々、北朝鮮、日本、米国、中国と当て
はめた場合にはどうなるでしょうか。

日本は米国との間に日米安全保障条約があり、中朝の間には、中朝
友好協力相互援助条約がありますので、大きく見た場合は、相互抑
止が働いている状況にあると言えます。

ただし、モデルと比べ、北朝鮮と中国による日本と米国に対する核
攻撃は日米のMDによってミサイルが一定割合撃ち落されるので友
効性が減殺されています。また、北朝鮮が日本を核攻撃し、米国が
北朝鮮を報復した時、中国が米国を本当に攻撃するかという点につ
いては疑問が残ります。つまり六ヶ国協議で緊張の緩和努力を払っ
ている中国の意図を無視して北朝鮮が日本を核攻撃する事は、米国
の北朝鮮に対する報復に対する中国の米国に対する核報復の信頼性
を低下させる事になるからです。

日本国内でも、日本が核攻撃された場合に、米国はロサンゼルスを
犠牲にしてまで報復攻撃をするのだろうか?という疑問が出る事が
ありますが、それと同様に、中国が、その意図に反して核戦争を仕
掛けた北朝鮮との同盟の為に北京や上海を犠牲にするのかという疑
問は、より深刻に北朝鮮に問いかけられる事になります。


つまり、北朝鮮が六ヶ国協議で、ごねればごねるほど、中国の北朝
鮮に対する核の傘は相対的に破れ傘になっていくという訳です。

また、北朝鮮は自国の核の傘を整備している訳ですから、中国の核
の傘は何れ不要という事になります。中国から見れば、いずれは自
国の影響圏から離脱するであろう国に自国の犠牲による庇護を与え
ている訳です。つまり、皮肉な事に、北朝鮮の核兵器庫が充実すれ
ばするほど、中国の北朝鮮に対するコミットメントは、逆に不安定
なものになってくるのです。


冷戦時代に米国の核の傘に疑問を感じたフランスは独自の核武装に
走り、その結果、フランスが独自の外交政策を展開した事は、北朝
鮮にとっても良き先例に見えるかも知れません。しかし、実は大き
な違いがあります。フランスには、陸、海、空に核兵器システムを
展開する経済力がありましたが、北朝鮮はそれを欠くという厳然た
る事実です。
北朝鮮は、小さな再処理工場を動かせるかも知れませ
んし、数個の核兵器を製造する事もできるかも知れません。しかし、
米国を射程に収め、米国のMDを突破できる能力を有するICBM
を十分な数(恐らく数十基)展開できるかどうかと言う点です。
私は、北朝鮮には、それを行う経済力はないと考えます。

それが出来なければ、日本自体に核抑止力がなくても北朝鮮は日本
を核攻撃する事はできません。米国は、中国による報復を気にせず
に、北朝鮮を報復攻撃する事ができるからです。
従って、日本とすれば、米国による核の傘がいつでも機能する様に
しておく事、及び、万一の事態に備え、核ミサイルを撃ち落す能力
を高める事で、北朝鮮に備えた核武装を行う必要はないと言えるの
です。

中川昭一代議士は、保守派としては得がたい人材だと思いますが、
アルコール依存を止めると共に、軍事についても、もう一段勉強し
て貰いたいものだと思います。


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2009年4月21日火曜日

H-IIAを撃墜するのにPAC-3は必要か?民主党議員の疑問に答える



※画像は、H-IIA14号機と15号機のロケット落下物の落下予想区域
H-IIAロケット14号機、15号機の「ロケット打ち上げ及び追跡管制計画」から転載

政界24時】原川貴郎 安保で民主党に“期待”

創造力にあふれ、発想も大変ユニーク。民主党の安全保障論議を取材している
と、しばしばこんな皮肉を言いたい衝動に駆られる。

北朝鮮によるミサイル発射を受けて開かれた民主党の外務防衛部門会議。防衛
省から、発射の誤探知の経緯や秋田、岩手両県に配備された地対空誘導弾パト
リオット(PAC3)の説明を受けると、リベラル系のある議員はこんな意見
を真顔で言ったのだという。

「種子島から発射するロケットも、日本の島の上を通るのだろうから、これに
もPAC3を配備すべきだ」

出席者の一人は、「あきれるというか…。『世界観』が違い過ぎてとても議論
にはならない。でも、これが民主党の実態だ」とため息をついていた。

保守系から旧社会党左派までを抱え、「寄り合い所帯」「混ぜご飯」と揶揄
されることが多い民主党にとって、安全保障問題はアキレス腱(けん)だ。

そういえばソマリア沖の海賊対策をめぐって飛び出した意見にも首をかしげた
ことがあった。2月初旬の部門会議では、自衛隊の派遣に極めて後ろ向きの議
員が「イラクで日本人3人が人質になったとき盛んに『自己責任』といわれた
ように、ソマリアを航行するのは海運会社の自己責任ではないのか」と主張し
たのだった。それを伝え聞いた官邸関係者が「自衛隊を派遣させないための議
論で、国民の生命、財産をどう守るのかの視点が欠落しているのではないか」
と訝(いぶか)ったのも無理はない。

しかし、ソマリア沖では3月22日、商船三井の船が高速艇2隻から銃撃を受
けた。海上自衛隊の護衛艦が、外国船から救援要請を受け、不審船に対処した
事案も3月30日以降、すでに2件あった。求められているのは実態に即した
現実的な対応だ。

政府の海賊対処法案に対し、民主党は15日、自衛隊派遣に国会の事前承認を
義務付けた修正案の骨子を「次の内閣」で了承した。今後、法案作成と与党と
の修正協議を同時並行に進めていく考えだ。

最終的には政権政党たりうる海賊対策をまとめてくれると、民主党には期待し
たいが、もしいまだに党内で「海賊というのは漫画で見たことはあるが、イメ
ージがわかない」(平田健二参院幹事長、1月20日の記者会見)といった認
識があるのならば、望み薄だ。

(NIKKEI BUSINESSi 2009/4/20)


上掲の地図は、14号機のものは、静止軌道に乗せる場合の、また、
15号機のものは、極軌道に載せる場合の落下物予想範囲です。地球
低軌道のものは、静止軌道に載せる場合と同様になります。

飛行経路は書かれていませんが、落下予想範囲の中心を線で結ぶこ
とで想像ができます。この図は、各々、「ロケット打ち上げ及び追
跡管制計画」からの抜粋ですが、計画書には飛行経路図も含まれて
いますので、参照して下さい。こんな事まで公開されているのかと
驚かれると思います。勿論、計画書には、打ち上げ時の安全確保や
関係機関への通報なども含まれています。

14号機「ロケット打ち上げ及び追跡管制計画」
http://www.jaxa.jp/press/2007/11/20071128_sac_h2a-f14.pdf

15号機「ロケット打ち上げ及び追跡管制計画」
http://www.jaxa.jp/press/2008/10/20081022_sac_h2a_f15.pdf

上記の記事の中で引用されている民主党議員は、
「種子島から発射するロケットも、日本の島の上を通るのだろうか
ら、これにもPAC3を配備すべきだ」

と述べていますが、簡単にそれに対する回答を書くと、種子島から
打ち上げられるロケットの飛行経路上に日本の島はありません。

落下物予想区域の方が範囲は大きくなりますが、その中にも、日本
及び外国の島は含まれていません。(図には第二段の落下位置が記
載されていませんが、H-IIAは第二段が軌道に残る為、打ち上げ時
には落下しません。)

また、ロケットが飛行計画から逸脱した場合には、自爆させる為に
司令破壊と呼ばれる機能が備わっています。
実際、H-IIA 6号機は、燃料の燃え尽きたSRB(固体ロケットブース
ター)を切り離せなかった事から司令破壊されています。
従って、日本のロケットの場合は、PAC-3やSM-3によって迎撃破壊
する必要はない事になります。

こんな事は、全て情報が公開されているのですから、自分で少し調
べてみれば良いのです。防衛省から説明を受ける立場にいるのです
から、民主党の中でも防衛関係に興味を持っている方である筈です。
そういう方であれば、私の様な一般国民でも、ものの15分で調査が
出来る内容なのですから、ネットをググレば簡単に正解に辿り着く
事が可能である筈です。

であるにも係わらず、この様なトンチンカンな質問をしているのは
実は、日本のロケットにも国民の安全にも興味はなく、ただ、反日
イデオロギーに凝り固まって政府の足を引っ張る事しか考えていな
い輩であるからに他なりません。

ソマリア沖の海賊についても「イラクで日本人3人が人質になった
とき盛んに『自己責任』といわれたように、ソマリアを航行するの
は海運会社の自己責任ではないのか」
と主張した議員がいるようで
すが、この議論も実は全く同じ文脈であり、不勉強極まりないとし
か言い様がないのです。原川氏のいう通り、こういった事を言って
いる様では、民主党が政権政党として国民の信頼を得るには、まだ
まだ時間がかかるのではないかと感じた次第です。


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http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年4月20日月曜日

海賊を追い返した護衛艦を批判するのは日本のマスコミだけ!

警護対象外、3回目の救助 ソマリア海賊対策で海自護衛艦

防衛省によると、ソマリア沖で海賊対策活動中の海上自衛隊の護衛艦「さざな
み」が18日午後8時(現地時間同日午後2時)ごろ、海上警備行動の警護対
象外となっているカナダ船籍とみられるクルーザーから「不審な小型船に追跡
されている」と無線を受けた。艦載ヘリコプターが発進して近づくと、不審船
は停止したという。

海上警備行動は警護対象を日本関連船舶に限定しているが、防衛省は「船員法
の『遭難船舶等の救助』に基づく人道的な措置」として警護対象外船舶の救助
活動をしており、今回で3回目。“脱法的”との批判もある。

防衛省によると、クルーザーはさざなみから約35キロ離れた海域で無線を発
信した。海自の艦載ヘリは約40分後、クルーザーの数キロ先にいる3隻の不
審な小型船を発見したが、近づくと停止したという。

3隻はいずれもイエメン国旗を掲げ、防衛省は「武器の有無は確認しておらず、
海賊船かどうかは不明」としている。

さざなみは15日に7回目の警護活動を終えた後、ジブチに寄港。8回目の活
動のためジブチ沖で待機中だったという。

(共同通信 2009/04/19)


この記事を読んで、海自の護衛艦は、派遣の目的を果たしていると
感じる人が圧倒的多数であると思いますが、共同通信は、わざわざ
「"脱法的"との批判もある」と記しています。

しかしながら、批判を行っているのは、記事を書いている記者です
から、具体的な発言ソースの記載がないという訳です。
勿論、このサヨク頭の記者に同調する政治家は社民党辺りからいく
らでも探し出せるでしょうが、ここは匿名で批判した方が効果的と
いう判断なのだろうと思います。共同通信は、恐らくは海賊の犠牲
者より海賊の人権を重視する輩なのでしょうが、それ以上に、自衛
隊という違憲武装組織が、成果を上げている事が我慢がならないの
だろうと思われます。

勿論、この様なメンタリティは、日本のサヨク反日分子のみに見ら
れるものです。

ちなみに、護衛艦が二回目に救助したのは、マルタ船籍の貨物船で
したが、Times of Maltaのインターネットサイトは、4/14付けで以
下の記事を掲載しました。

Japanese frigate helps Maltese ship off Somalia
(日本のフリゲート艦がソマリア沖でマルタ船を援助)
http://www.timesofmalta.com/articles/view/20090414/local/japanese-destroyer-helps-maltese-ship-off-somalia

この記事に対する読者コメントは当然の事ながら、海自と日本に対
し、感謝の意を呈するもので溢れています。
マルタは、地中海の小国であり、リベリア等と同じ節税対策の便宜
地籍国で、実際には、マルタの船ではない可能性が高いのは、マル
タ人もわかっている筈ですが、それでも、自国船籍の船を救助して
くれた事に対する感謝の念には変わりが無いのです。

護衛艦は、日本関係船舶ではない外国船を救援する時には、武力を
行使せずに海賊船を追い払っています。勿論、海賊船が武力を行使
すれば、護衛艦の側も正当防衛として武力を行使できるのですが、
そうでない限りは、現状では、武力行使が法制上困難です。

ソマリア人が、そういった制約を知っているかどうか不明ですが、
この状態が長く続けば続くほど、知られる可能性は高くなります。
一度、制約事項が知れ渡れば、海賊にとって、海自の護衛艦は怖い
存在ではなくなります。護衛艦の鼻先で、商船を拿捕する様な事態
も、想定されるのです。そして、護衛艦が、放置できずに武器を使
用した場合は、防衛省は、マスコミの非難には敏感ですから、当然、
艦長は処分対象という事になるのです。

もし、そうなった場合は、自衛隊の実戦部隊のモラルに破壊的な影
響が懸念される訳であり、そうならない為にも、海賊対処法を可及
的早期に成立させる必要があると思われるのです。


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