2009年5月21日木曜日

海自は中国海軍にどこが劣るのか?

※「ひゅうが」を後方からみたCG図 海人社サイトから転載

中国に先駆け空母建造 日本の動き香港誌報道

香港誌「亜州週刊」の最新号が、日本が中国に先駆けて空母を建造しようとし
ていると報じた。19日付中国新聞社電が伝えた。
記事は、今年3月引き渡された海上自衛隊初の空母型ヘリコプター搭載護衛艦
「ひゅうが」などの建造の動きを伝えたもの。「後部のクレーンを改装すれば
固定翼機が搭載できる」とした上、同艦は改良により「小型空母」に変身でき
るとの見方を示した。

空母は政治大国のシンボルで、核兵器、ミサイル、人工衛星と同じく国威のシ
ンボルだと指摘。「当面、巨額の建造費用のねん出は無理で、軍事開発に対す
る『平和憲法』しばりを抜け出せないが、何もしない訳ではない」として、日
本の軍事大国化を警戒している。

同誌によると、海上自衛隊は、原子力潜水艦、通常動力の潜水艦、艦載ミサイ
ルで中国海軍に劣る。中国が空母艦隊を組織すると、陸上航空基地が東シナ海
や西太平洋に移動するのと同じで、日本の戦略的空間は大幅に狭まり、海から
の中国封じ込めは「絵に描いたモチ」になる。(情報提供:東亜通信社)

(サーチナ 2009/5/21)

つっこみ処満載の記事ですが、面白いので、どこが間違っているか
をチェックしてみます。

まず、日本が《中国に先駆け空母建造》という事実がありません。
勿論、ここでいう「空母」とは固定翼機を運用する本格的な「空母」
の事をいうものと考えます。それであれば、イギリスのインビンシ
ブル級の様なSTOVL機を運用する「空母」の事が念頭に浮かびます。
今では、この種の機体を運用する「空母」は、殆どがスキージャン
プ甲板を装備しているのですが、「ひゅうが」は、甲板が短い上、
スキージャンプ甲板を備えていません。従って、「ひゅうが」は
「空母」であるとは言えない事になります。

次に《「後部のクレーンを改装すれば固定翼機が搭載できる」》
いう部分です。そもそも「ひゅうが」の後部にはクレーンがない
です。ですから、これを改装する事もできない事になります。
ちなみに、「ひゅうが」は、大型ヘリコプターであるMCH-101を搭
載できます。MCH-101はSTOVL機であるハリアーIIより重い機体です
から、重量的には、搭載可能と言えます。

ただし、ハリアーIIは着陸の際の甲板に向けジェットを吹き付ける
事になるので、その際の高温に甲板が耐えられる様に対応されてい
る必要があります。その対応が「ひゅうが」にはありませんので、
この点でも「ひゅうが」は「空母」ではないと言えます。

つまり、「ひゅうが」を「空母」に改造する際には、スキージャンプ
甲板の設置と着陸甲板の高熱対策が必要であると言えます。これは
クレーンの改造に比べれば、非常に大きな改装であり、「空母」化
されたかどうかは。外見から簡単に判断できます。ですから中国の
方はスキージャンプが搭載されれば、脅威を感じて頂ければ良いの
ではと思います。

次に《空母は政治大国のシンボルで、核兵器、ミサイル、人工
衛星と同じく国威のシンボルであるという中国的な考えが存在
しうる事は認めますが、国威のシンボルとしての「ひゅうが」は「ヘリ
空母」であっても「空母」であっても、それ程、大きな違いはないと
思うのです。実際、そもそもサイズが6万5千トンと言われる中国の
空母と比べ、「ひゅうが」は2万トンに満たず、長さも200mに届き
ません。実物を見ても、それ程、大きな艦には見えません。
「ひゅうが」の一般公開には、中国人もいっぱい来ていましたから、
そろそろ認識を変えて貰えれば嬉しいですね。
もし、「ひゅうが」を日本の軍事大国化の象徴とするなら、中国の
空母は中国の軍事大国化の赤裸々な具現化であると言えます。

次に《海上自衛隊は、原子力潜水艦、通常動力の潜水艦、艦載
ミサイルで中国海軍に劣るという評価ですが、もしこういう認識を
中国海軍が本当にしているのであれば、私がもし海自の担当者で
あれば、少し安心出来る様に思います。(勿論、皮肉です。)

言うまでもなく、海自が中国海軍に劣るのは、攻撃力に関する部分
です。海自は中国の持つ海兵隊も、戦闘機、攻撃機、爆撃機からな
る海軍航空隊もありませんし、戦略ミサイル原潜も保有しておりま
せん。その意味では、攻撃能力の全ての面で海自は、中国海軍に劣
っていると言えます。その点、原子力潜水艦(SSBN及びSSN)と艦載
ミサイル(潜水艦発射弾道ミサイル)について、劣る事は言うまでも
ありません。但し、通常動力潜水艦についてはどうでしょうか?

宋級は概ね、「ゆうしお」型と同程度の能力を持つと言いますし、
キロ級や元級は、「おやしお」型と同程度の能力と考えると、攻撃
力程には、海自は中国海軍と比べ劣っている様には思えません。
勿論、潜水艦の数では、中国の方が多いのですが、日本では既に除
籍されている旧式潜水艦が数を押し上げているだけです。
運用面も考えれば、通常潜水艦では、パリティというのが私の評価
です。
《海上自衛隊は、海兵隊、海軍航空隊の攻撃戦力、原子力潜水艦、
艦載弾道ミサイルと言った攻撃力の面で中国海軍に劣る》と書くべき
であったと思います。


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