2008年11月28日金曜日

「悪の枢軸」は生きている


北朝鮮、イラン、シリアが核開発で密接連携 10月に協議

【ワシントン=有元隆志】イランとシリアの代表団が10月下旬、核開発協力
推進のため、北朝鮮を訪れていたことが明らかになった。北朝鮮の核問題に詳
しい情報筋によると、核施設で働く技術者のための3カ国共同の訓練プロジェ
クトなどについて協議したとみられるという。大量破壊兵器拡散阻止に向けた
国際的な包囲網が敷かれているなかでも、3カ国が核開発に向けて、密接な連
携を保っていることを示す動きといえる。

シリア代表団の訪朝は、ロンドン発行のアラビア語紙アッシャルク・アルアウ
サトが10月27日付で報じた。情報筋によると、シリアの代表団は10月23
日から数日間滞在し、イランの核開発を担当する高官らも同じ時期に平壌を訪
れた。共同訓練プロジェクトの拡大の可能性などについて話し合ったもようだ
という。

同筋は共同訓練プロジェクトが2006年後半から始まったと指摘する。

イランやシリアの大学で、工学や化学を学んだ優秀な学生を対象に、核開発に
携わるために理論、実用両面から教育するのがねらい。3カ月から半年にわた
る集中コースの受講者は計20人程度で、機密を守るため、講義はイラン革命
防衛隊の施設内で行われたという。

核開発ではイラン、シリアよりも先行している北朝鮮からは、兵器開発の中心
的な機関である第2自然科学院(国防科学院)からトップクラスの核専門家が
派遣され、さらに、寧辺の核施設で実際に核開発に従事している担当者も参加
し、「核施設の安全対策、放射性物質の人に対する影響、事故の際の対応など
5つの講座を受け持って、指導にあたった」(同筋)。

北朝鮮としてはイラン、シリアに積極的に核開発のノウハウを教えることで、
両国から金銭面などで見返りを受けるメリットがあるという。同筋はこの共同
訓練プロジェクトについて、「3カ国の共同核開発計画の一環」と位置づけて
いる。

講座の「卒業生」たちは、核開発の「最前線」に送り込まれているものとみら
れる。

昨年9月、シリア国内の核開発の拠点とみられる施設がイスラエル軍によって
空爆、破壊された。ドイツ誌シュピーゲルは独情報機関の報告として、原子炉
はシリアと北朝鮮がイランの核開発を支援するため建設していたと報じた。

シリア、北朝鮮ともに核開発協力を否定している。

在日イラン大使館の話「大量破壊兵器開発を目的とした、北朝鮮とのいかなる
2国間あるいは多国間の技術的・軍事的協力関係を否定する」

(産経新聞 2008/11/25)

シリアの砂漠にウランの“痕跡” 核開発疑惑強まる

【ベルリン=黒沢潤】シリアの核開発疑惑を調査している国際原子力機関
(IAEA)は10日までに、疑惑が指摘されている同国内の砂漠地帯で採取
した環境サンプルから、ウランの“痕跡”を発見した。ロイター通信がIAEA
に近い外交筋の話として伝えた。実際に核開発が行われていた決定的な証拠と
は言えないものの、疑惑が一段と深まった形だ。

同疑惑をめぐっては、イスラエルが昨年9月、シリアの砂漠地帯にあった建物
を空爆。米国は、この建物が北朝鮮の寧辺にある実験用黒鉛減速炉(5000
キロワット)に酷似した原子炉の施設だと指摘したうえで、シリアが北朝鮮か
ら極秘に技術支援を受けていたと非難していた。これに対し、シリアは「ばか
げた主張」などと一蹴(いっしゅう)していた。

IAEAは今年6月にシリアに調査団を派遣し、現場で採取した環境サンプル
を慎重に分析。今回、発見されたウランについて、別の外交筋は「人間が作っ
た物質であり、自然のものではない」と指摘しているという。ただ、同筋は
「(製造のための)活動が行われていたことを示すものは何もない」とも述べ
ており、科学者らの衣服や、機器に付着したウランが現場に偶然、持ち込まれ
た可能性もあるという。

このため、IAEAはさらなる調査を進めているが、シリア政府は現在、国内
3つの軍事施設へのIAEA要員の立ち入りを拒絶しており、疑惑の早期解明
は容易ではないという。

(産経新聞 2008/11/11)

おさらいになりますが、「悪の枢軸」とは、アメリカのブッシュ大
統領が、2002年1月29日の一般教書演説で、反テロ対策の対象として
北朝鮮、イラン、イラクの3ヶ国を名指し、これらの国を「悪の枢軸
(axis of evil)」と総称して批判したものです。

もう一つの「ならずもの国家」 (rogue state, rogue regime) とは、
「世界平和に対する脅威を画策する国家(あるいは体制)」という
意味合いでしばしば用いられる表現です。1990年代末において、米
国は北朝鮮、イラク、イラン、アフガニスタンおよびリビアを「な
らずもの国家」としていましたが、イラクとアフガニスタンは体制
が変更され、リビアは核開発を放棄し、対米協調路線を取ったので、
現在では、北朝鮮とイランが残っています。

北朝鮮の核開発問題で米国は六ヶ国協議を通じて抑え込んだ、ある
いは抑え込む約束を取り付けたから、テロ支援国指定を解除した筈
ですが、実際には、北朝鮮は、米国が最も恐れる「ならずもの国家」
で「悪の枢軸」であるイランとシリアへの核拡散の推進者になって
いる事実が明らかになっています。

流石と思えるのは、イスラエルの動きです。過去には、イラクのサ
ダム・フセインが推進していたオシラク電子力発電所を空爆で破壊
した上、上記の記事にもある通り、昨年9月にはプルトニウム製造
用に設置されたシリアの原子炉も空爆で破壊しています。

こういう経緯を見ると、中東の「ならずもの国家」が核武装する事
を徹底して排除するイスラエルの意思が見て取れます。勿論、その
意思は、周囲を敵対国に囲まれたイスラエルの国家生存の意思に他
なりません。その点から類推すれば、イスラエルとの共存を否定す
るイランの核濃縮プラントの運命も定まっているのかも知れません。

もう一段想像を逞しくするならば、中東の「ならずもの国家」の核
武装をサポートしている北朝鮮をイスラエルがそのままにしている
理由もない事になります。

ブッシュ政権がイスラエルと極めて親密な関係を結んでいた事は良
く知られていますが、対北朝鮮外交については、対テロ対策での中
国との協調の必要と日本や韓国の腰の引けた外交的態度もあって、
腰砕けになった事はいなめません。問題の解決は、次期大統領であ
るオバマ大統領に託されたと言えます。
偉大な大統領を目指すオバマ大統領が、「悪の枢軸」や「ならずも
の国家」をどう扱うかで、オバマ大統領が本当の「偉大な」大統領
になれるかどうかが決まるのかも知れません。

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