2008年11月27日木曜日

ロシア原潜事故 消火装置の故障であればありえる事故

ロシア原潜で事故、20人死亡=日本海航行中、放射能漏れなし

9日のタス通信などによると、日本海を航行していたロシア太平洋艦
隊の原子力潜水艦で8日、消火装置が誤って作動し、乗組員ら20人
が死亡、21人が負傷した。艦体に損傷はなく、原子炉も正常に作動
しており、放射能漏れは起きていないという。
事故はセルジュコフ国防相によってメドベージェフ大統領に報告され、
大統領はチャイカ最高検察庁長官に事故原因の捜査を命じた。
海軍当局者によれば、原潜は自力で航行し、9日に極東・沿海地方の
港に入った。原潜の艦名・型式は明らかにされていないが、ロシア
通信は、事故を起こしたのは日本海のロシア領海内で試験航海をし
ていたアクラII級原潜「ネルパ」だと伝えた。
事故当時、原潜には軍人81人と造船企業の関係者ら計208人が乗っ
ていた。最高検察庁当局者は、死者のうち3人が軍人、17人が民間
人で、化学消火装置のフロンガスを吸ったことが死因とみられると
述べた。負傷した21人は軽・中程度の中毒症状で生命に危険はない
という。 

(時事通信 2008/11/9)


アクラ級の原子力潜水艦は、現在12隻が在籍している様
ですが、ロシア攻撃型原潜のワークホース的位置付けの
潜水艦です。「ネルバ」は、インド海軍へリースされる
ことになっており、その試験の為、定員の二倍以上にあ
たる200人以上が乗艦していた模様です。

「ネルバ」は、消火装置として、ハロン1301を使用した
設備を装備していました。ハロン1301は、化学的に安定
した物質ですが、大量に使用されたり(濃度7.5%以上)、
消火時に発生するハロゲン化合物の影響で人体に悪影響
を与える可能性があります。

ハロン1301を使用した消火設備は、陸上でも、水による
消火を避けたいコンピュータ設置用の施設等で、使用さ
れていますが、毒性が低いとは言え、消火設備動作時に
は、警告音が発せられ、それに基づいて緊急避難を行う
手順になっています。(ハロン1301の安全性については
以下のURLを参照して下さい。)


今回の事故では、ハロンが放出される時には、警告音が
発せられたかどうか、放出されたハロンが致死量に達す
る程多くなったのは、どういう理由によるものか、また、
該当区画の要員が脱出可能な状況だったかが問題である
と思います。

一部には、ロシア軍の能力に疑問を呈する向きもありま
すが、こういった消火装置の誤作動は、どの国、どの施
設においても起こる可能性のある問題です。
致死性の低い物質を使用したとしても閉鎖空間である潜
水艦で発生した消火剤放出事故が非常に大きな犠牲者を
齎すものである事を、改めて、認識させた事件である様
に思います。

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