2008年11月27日木曜日

「テロ」は歴史を変えるか?




※写真はムンバイ・テロで炎上するホテル。時事通信から転載

インドで同時テロ、死者80人…邦人1人死亡、1人負傷

【ニューデリー支局】ロイター通信などによると、インド西部ムンバイで26
日夜、ホテルや駅など少なくとも8か所で、ほぼ同時刻に爆発や武装集団によ
る無差別発砲があり、約80人が死亡、250人以上が負傷した。

日本政府筋によると、1人が死亡、1人が負傷したという。地元警察は、組織
的な同時テロの可能性が高いとみている。

AFP通信によると、「デカン・ムジャヒディン」を名乗る組織が、複数のメ
ディアにEメールで犯行声明を出したという。同組織の実態は不明。

AP通信によると、武装集団の一部は27日未明現在も、高級ホテル2か所で、
外国人ら約15人を人質に取って立てこもっており、警察と銃撃戦が続いている。

地元当局は、武装集団のうち4人を殺害、9人を逮捕したと発表したという。

(読売新聞 2008/11/27)

残念な事件が、また起こってしまいました。どういう意図でテロを
行ったのか判りませんが、犯行声明を出した組織の名前から見ると
イスラム過激派を想像させるものです。
パキスタンやインド国内のイスラム過激派は、度々、インドでテロ
活動を行っており、2001年12月にはインド国会襲撃事件を起
こしています。

インドとパキスタン、スリランカは、第二次大戦前は英領インド帝
国を形成していましたが、第二次大戦後の独立時に、ヒンデゥー教
徒、イスラム教徒、仏教徒各々が国家を形成しました。

インドとパキスタンは、特にカシミール地方の帰属(住民はイスラム
教徒だったが、藩王がヒンデゥー教徒であった為、インドに帰属し
た)を巡って、三度に亘って、戦争を行い、特に第三次印パ戦争の結
果、当時、東パキスタンと呼ばれていた地域が「バングラディシュ」
として独立した事から、関係は更に悪化しました。これが、インド
が核武装を行った際に、パキスタンも核武装する原因となっています。

幸いにして、第三次印パ戦争以後は、直接の戦火は交えておらず、
両国共に、核武装を行った事から限定的ながら核抑止が働き、戦争
は起き難くなっていると考えられます。

その一方で、特に、失ったものが大きいパキスタン/イスラム教徒
側の欲求不満が沈潜し、それがテロとなって噴出する結果を招いて
いると言えそうです。

さて、表題の「テロは歴史を変えるか?」という命題ですが、歴史
家、評論家の中には、テロは世界史の大きな流れを変えられないと
いう方もいる様ですが、実際には、テロは明らかに歴史を変えてい
る様に思われます。比較的最近に限っても、アルカイダが911テ
ロを起こさなければ、ブッシュがアフガニスタンやイラクを攻撃し
ていたとは思われませんし、もしイラク戦争がなければ、オバマ氏
が大統領に選出される事もなかったでしょう。

勿論、911事件そのものが、「文明の衝突」という大きな歴史の
流れの表出と捉えれば、遅かれ早かれ、西欧文明とイスラム文明の
衝突が起こっていたと巨視的に見るむきもあるでしょうが、よくよ
く見れば、西欧文明とイスラム文明が、全面衝突している訳ではな
いと考えます。寧ろ、米国一国支配に対するアンチテーゼとしてテ
ロが発生したと言う見方に私は共感を覚えます。(勿論、それも大
きな歴史の流れの表出とも言えますが...。)

テロはある意味で感情の表出でしかありません。大きな政治的社会
的構造を合法的には、思った方向に、希望する速度では動かす事が
できないというある人間やグループの焦燥がテロを生みます。

ただ、テロに影響力がないかと言えば、そんな事はありません。
911事件に見る様にテロを計画した人間が想像した以上の影響を
与える事もありえるのです。また、イスラエルに対するパレスティ
ナのインティファーダの様な継続的なテロ行為は相手側の非理性的
な行為を誘発する事もあり得ます。その点で、テロは対立する両者
の感情をより刺激する事で、対立を更に先鋭化させると言えるかも
知れません。発火点が下がれば、通常であれば、外交努力で沈静化
できた問題も、武力に訴える事になる可能性は高まります。今回の
ムンバイ・テロがそういった悲惨な結果を招来しない事を切に祈り
ます。

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