2008年12月12日金曜日

日韓通貨スワップ枠拡大。激変緩和措置としては理解できる




ウォン安対策、韓国に2.8兆円融通 日本政府方針、通貨危機防止

日本政府は通貨ウォン相場の急落で外貨不足の恐れのある韓国を支援するため、
日韓で結んでいる協定を拡充する方針を固めた。ウォンと引き換えに円やドル
を韓国に融通する通貨交換(スワップ)協定の資金枠をいまの130億ドル
(約1兆2000億円)から300億ドル(2兆8000億円)規模に広げる方向で最終調
整しており、中国も人民元の供給枠を増額する方向。13日の日中韓首脳会議で
正式合意する。金融危機の打撃でウォンがアジア通貨危機以来の安値に急落す
る中で、連携強化により危機再発を防ぐ。

日韓が結んでいる現在の通貨交換協定には、中央銀行間でいつでもウォンと引
き換えに円を融通する協定と、国際通貨基金(IMF)が緊急融資を発動する
ような「危機」時にドルを供給する協定の2種類がある。それぞれの枠は円が
30億ドル分、ドルが100億ドルで、合わせて130億ドル相当になる。これを2.3
倍に引き上げる方向だ。
(日本経済新聞 2008/12/11)

通貨交換(スワップ)協定

▽…国や地域が互いに外貨準備を活用して外貨(主に米ドル)を融通し合う
取り決め。ある国や地域の通貨の為替レートが急落し、貿 易決済や為替介入
のために必要な外貨が不足した場合などに、その国の通貨と引き換えにほかの
国が外貨を一時的に貸し出すことで、通貨の安定や経済の安定をめざす。 

▽…東アジア地域では1997年に発生したアジア通貨危機の反省から、日中韓と
東南アジア諸国連合(ASEAN)が2000年に外貨を融通し合う「チェンマイ
・イニシアチブ」の構築に合意、協定を広げてきた。さらに体制を強化するた
め、2国間協定のネットワークを多国間協定に束ねる「マルチ化」を進めてい
る。 

(日本経済新聞朝刊 2008年11月22日付)

まあ、常日頃、反日粘着されている訳ですから、こういう時こそ、
自分の尻は自分で拭けとほっぽり出したいのはやまやまであり、韓
国経済の崩壊を薄ら笑いを浮かべて眺めていたいとは思います。
しかしながら、そういう感情だけに流されるのでは、奴らと変わら
なくなってしまいます。(これを通称フォースの韓国面に堕ちると
言います。) という訳で冷静に評価すれば、今回のスワップ枠拡
大は悪くないと考えます。

今回、検討されている二国間通貨スワップ協定ですが、上手くいけ
ば使われずに済みますし、使われた処で、それ程、悪い話にもなり
ません。円借款を行うより余程ましと言えます。

つまり、円借款の場合は、その返済を期待しなくてはならない訳で
すが、こういう時ですから、借金のカタは恐らくはなしです。期間
も通常は長期(一年以上)という事になります。返せて貰えても、散
々恩着せがましい態度を取った上で返してくるのは目に見えていま
す。

しかしながら、通貨スワップの場合は、あくまで両国通貨の交換に
なります。今回の場合は、日本円とコリアンWonを交換します。
(日本が持っているドルをWonと交換する事もあります) 細かい所
はこれから決めるのでしょうが、基本的には日本側はWonを市場に
放出するのではなく、凍結します。運用すれば良さそうですが、
Wonをどこかの銀行に預けると、銀行から銀行を巡って、Won売りの
資金になってしまう可能性があるからです。それでは通貨スワップ
を行った意味がなくなります。そこで、LIBOR等をベースにして期
間、利息等の条件をつけた上で凍結する訳です。
日本円の方は、当然の事ながら、市場に放出され、ドルに交換され
そのドルを元にWon買介入の為の資金源になるという訳です。

実際にスワップが行使される様な時はWonが売り込まれている場面
ですから、決済される時の交換レートは、行使時に比べると円安
Won高になっているので、円建ての返済金額は、充分利益が乗る事
になります。買い戻し時のレートが予め決められている場合も考え
られますが、そういう場合は、日本側が不利になるように決定され
る事はありません。悪くても、利息なしの同額での返却が期待でき
ます。

では、何故、Wonの売り叩きによる韓国の経済破綻を防ぐ手伝いを
日本がするのでしょうか?
韓国の経済構造は、製品を製造し輸出する事でなりたっていますが
製品製造の為の中間財や原料の多くを日本からの輸入に頼っていま
す。日韓の貿易収支は日本側の経常的な黒字で年間2~3兆円もの
莫大な金額に上っています。つまり、日本は韓国に対し莫大な債権
を保有している事になります。ここで、韓国の外貨繰りが付かずデ
フォルトを起こした場合、日本にいる債権者は、韓国に対する債権
(輸出した製品の代金であったり、直接投資の配当や利息です)を回
収できなくなってしまいます。これでは日本にとっては大きなマイ
ナス要素になります。場合によっては、日本側の企業が倒産する事
も考えられます。

更に、一旦デフォルトを起こした場合、Wonが長期間に亘って、安
値になる可能性があります。こういう不自然な、Won安は、韓国の
交易条件を大きく改善します。韓国は日本と競合する製品を多く作
っていますが、デフォルトによるWon安で、企業努力なく、安値輸
出が可能になってしまいます。こういった場合、日本も同様の円安
政策で対抗できるのですが、恐慌時の通貨の引き下げ競争は過去第
二次大戦を遠因になっており、日本の様な国際経済に大きな影響力
と責任を持つ国が行えるものではないのです。
この為、Won安が長期に及べば日本は、みすみす輸出産業の競争力
を落とすことになり、企業のそれに対する対応はリストラを経由す
る事で、日本の景気を大きく引き下げる方向に働きます。

既に一年前と比べるとWonは円に対し4割以上下落しており、大き
な円高となっています。これ以上の円高は日本経済の競争力を損な
う可能性があります。円高に対する輸出企業の抵抗力は一朝一夕で
作られる訳ではありません。円高抵抗力をつけるには時間が必要で
す。その時間を稼ぐ為には、今、二国間通貨スワップ枠の拡大を行
うべきと考えます。


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