「海賊対策先送り」国際協調足かせも 改正新テロ法成立
インド洋での給油活動を1年間延長する改正新テロ対策特別措置法が成立した
ことで、政府は国際社会が一致して取り組むアフガニスタンでの「テロとの戦
い」の一翼に踏みとどまることができた。ただ、インド洋周辺での各国の活動
が「海賊取り締まり」へとシフトする中で、海賊対策への取り組みは十分な議
論もないまま先送りされた。オバマ新大統領の誕生で米国がさらなる貢献を求
めてくることも確実で、政府は難しい対応を迫られそうだ。(赤地真志帆)
海上自衛隊の補給艦は、インド洋でテロリストや武器・麻薬の流入を防ぐ海上
阻止活動(OEF-MIO)に従事する各国艦艇に補給を実施してきた。だが、
海自の補給海域がある東アフリカ・ソマリア沖のアデン湾では1月以降、海賊
被害が激増。米国は8月から海上阻止活動に従事する艦船・航空機を同海域の
パトロールにあてたほか、各国も活動の軸足を海賊対策に移し始めている。
これに対し、成立した改正法は給油対象を海上阻止活動に限定したままで、厳
密には海賊対策任務船への給油は認めていない。自民党では法目的に海賊対策
を加える意見もあったが、政府は任務拡大を嫌う公明党に配慮し改正案に盛り
込まなかった。
10月末には北大西洋条約機構(NATO)が海上阻止活動とは別に7隻の艦
艇をソマリア沖に派遣、国連関係船舶を警護する作戦を開始した。こうした艦
船への給油は改正法では不可能で、国際協調の足かせとなる可能性もある。
改正法の審議では民主党議員から海賊対策で海自護衛艦を派遣すべきとの提案
がなされ、麻生太郎首相も検討を表明した。ただ、その後に民主党が「衆院選
後、正統な政府ができた上での議論」(直嶋正行政調会長)と態度を硬化、中
身は煮詰まらなかった。
日本の商船を護衛するため、海自艦艇をソマリア沖に派遣することは自衛隊法
の海上警備行動発令で可能だが、「公共の秩序維持」を名目とした同命令での
海外派遣は本来の立法趣旨に反するとの批判も強い。政府・与党は海賊対策に
関する一般法や特措法の検討を進めているが、参院で多数を占める民主党が同
調する見通しは立っていない。
一方で、アフガンへの米軍増派を掲げ、来年1月に大統領に就任するオバマ次
期大統領の関心は「海上より地上作戦にある」(日米関係筋)。ブッシュ現政
権下で日本に対し、大型輸送ヘリCH47などの派遣を求めてきた国防総省の
トップにゲーツ国防長官が留任し、地上派遣圧力はさらに強まるとみられる。
(産経新聞 2008/12/12)
ソマリアの海賊が周辺海域で暴威をふるっている事が世界に知られ
てから久しい。現代の商船は、図体だけは大きいものの、運航の自
動化・合理化が進んでいるので、30万重量トンの超大型タンカーで
も、乗組員の数は40名を切るレベルであり、しかも、航海速度は時
速30キロ程度の低速で、一旦、海賊に小型の高速艇から乗り移つら
れると簡単に制圧されてしまう状態となっている。
海軍が存在する理由は、この様な海賊を取り締まる事にあるし、商
船が、軍艦と出会った時に、掲揚している商船旗を下げ挨拶するの
は、海軍が商船を守る為に存在するからに他ならない。
但し、戦後民主教育の行き届いた日本人乗員の乗る日本船は、自衛
艦に対する礼を行わないことで知られているし、日本漁船や遊漁船
は、自衛艦の進路を妨害する非礼を行う事に抵抗は感じておらず、
それが原因で海難事故を起こしても自衛艦側を非難する事しかしな
い事でも知られているが、皮肉にも、日頃の態度がたたってか、自
衛艦側でも、日本船を海賊を守らない事にしたらしい。
皮肉はここまでにして置くとしても、世界の各国が、ソマリア周辺
海域に海軍艦艇を派遣しつつあるにも関わらず、安全な海上交通の
最大の受益者である日本が、猛威を振るう海賊に対し、まったく何
もしないのでは、諸国の軽蔑しか得られないだろう。政府自民党は、
自衛隊の任務拡大を嫌う公明党に配慮しているつもりだろうが、配
慮せねばならないのは日本の非常識を苦々しく感じている国際社会
ではないか?
勿論と面と向かって問えば、日本の国内事情は斟酌していると答え
てくれるのだろうが、汗を流さない日本が国際社会の尊敬を集めら
れる訳がないのである。
特に、事は侵略でも軍事行動でもない警察行動である。出せる能力
があるならば、海保でも良いのだが、距離がありすぎて、海保のロ
ジスティック能力の手に余るのは明らかである。更に、海賊が既に
得た莫大な身代金で武装しているのが判明しているのであれば、海
上自衛隊が出るべきなのは言うまでもない事である。この様な国際
社会に対する当たり前の貢献活動が出来ないのならば、自民党は公
明党との無用な連立を切るべきなのである。
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