※写真は、公開されたKSLV1ロケット。朝鮮日報サイトより転載
初の韓国産宇宙ロケット「KSLV2」の開発保留へ
-ロシアが技術移転を拒否、来年の予算執行が中断
小型衛星打ち上げロケットKSLV1の発射後すぐに始まる予定となっていた、初
の韓国産宇宙ロケットKSLV2開発事業が、当初予定していたロシアのロケット
技術導入が不可能になったことにより、全面的に保留された。
これに伴い、研究に少なくとも1年以上の空白が生じることが予想され、韓国
産宇宙ロケットを利用した月探査衛星の打ち上げなど、政府が提示した宇宙開
発計画についても修正が避けられなくなった。
本紙が確認した結果、初の韓国産宇宙ロケットKSLV2開発事業は、今年初めの
企画財政部の予備妥当性調査で「事業の妥当性は認定されるが、技術の確保手
段が不足している」と判定され、再調査が決定した。これにより、来年の予算
執行が全面的に中断する。
韓国科学財団のチャン・ヨングン博士は、「KSLV2の開発は、ロシアから1段目
のロケットに関する技術移転が可能な状況を前提としたものだ。ロシアが技術
保護協定(TSA)を持ち出して技術移転を拒否したことで、全面修正が避けら
れなくなった」と語った。
これに対し専門家らは、「韓国の宇宙開発計画は緻密(ちみつ)な事前調査も
なく目標ばかりに固執するが、後になって日程延期を繰り返すことで事業費が
雪だるまのように膨れ上がっている」と批判している。
(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2008/12/8)
韓国は国産という概念が日本より広く、韓国内で製造したものは、
須(すべか)らく韓国国産と表現するので、韓国の新聞社の日本語サ
イトを読んでいると、思わず、それ国産じゃないだろうとツッコミ
を入れたくなる事が多々あります。
この記事も、その一例で、タイトルからして、何でロシアがロケッ
トエンジンの技術移転を拒否すると、韓国国産ロケットが開発保留
になるのと疑問を感じますが、実際には韓国国内製造と読み替えれ
ば納得がし易いと思われます。(勿論、韓国国産と表現する事で、
国民のプライドを満足させている面もあると思います。)
さて、普段は韓国国産技術と理解されているものでも、実は、日本
語でいう国産技術とは異なるものである事が判る事があります。
それは、何らかのトラブルが起こった時です。今回の問題もその一
例と言えます。
今回問題となっているKSLV2ロケットですが、来年第二四半期に科
学衛星の打ち上げが予定されているKSLV1ロケットを一部改良した
もので、KSLV1ロケットと同様、ロシアのアンガラロケットに使わ
れている液体燃料(ケロシン-液酸)エンジンを使う事になっていま
した。ところが自国のロケット技術の流出を懸念するロシアが韓国
が希望する技術移転を拒否した事からKSLV2ロケットの開発が頓挫
する事になったというものです。
韓国は、2008年4月に女性宇宙飛行士をツーリストとして国際宇宙
ステーションにロシアのロケットを使って打ち上げた際、最初の飛
行士候補者(男性)が、飛行士訓練中にアクセス可能であったロシア
の各種資料を韓国に持ち帰ろうとしたとして交替させられる事件を
起こしています。また、KSLVロケットの開発でも、地上試験用に導
入したエンジンをリバースエンジニアリング手法で解析し、同じも
のを作り上げようとしていると報じていた新聞もあったので、宇宙
技術、軍事技術の漏洩で中国に煮え湯を飲まされ神経質になってい
るロシアが、韓国を警戒するのも頷けなくもありません。
韓国では、当初、KSLV1ロケットを第一段に国産開発の液体燃料(ケ
ロシン-液酸)エンジンを、第二段にやはり国産開発の固体燃料ロ
ケットを使用したKSRロケットを発展させる事で衛星打上げを計画
していましたが、実用衛星を打ち上げるには、ロケットの規模が違
いすぎる事から、第一段をロシアからの技術導入に変更する決定を
行っていました。この決定そのものは、日本が実用衛星打ち上げ用
に米国のロケット技術を導入した事と同じ様な現実的な決定であっ
たと思います。
しかしながら、今回、ロシアが技術移転を拒否した事で、韓国のロ
ケット開発は頓挫する事になりました。対策としては、ロシアから
第一段をKSLV1ロケット同様に輸入する方法や、ウクライナ等、ロ
シアと同程度のロケット技術を保有する国から、液体燃料ロケット
技術を技術導入する事が考えられます。但し、輸入に頼れば、ロケ
ット構成部品の8割以上をロシアに頼る事になります。また、別の
国からの技術導入と言う事になると、既に、KSLV1ロケット(ペイロ
ードは地球低軌道に100kg)の韓国国内開発の上段部分は、アンガラ
ロケットとの結合を前提として開発されている事もあり、記事にあ
る様な一年程度のセットバックで済むとは考えにくく、また、上手
く技術導入が行えた場合も、一気にKSLV2ロケットのレベル(ペイロ
ードは地球低軌道に1500kg)に到達できるのか疑問なしとしません。
いずれの方法にしても韓国の宇宙開発は大きな転機を迎えたと言え
そうです。
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