春秋(12/6)
アルバニアの女がベルギー人の重症麻薬中毒患者と偽装結婚してベルギー国籍
を得る。男にもう用はない。女は次にベルギー国籍を欲しがるロシア人の男と
偽装結婚して……。近く公開される映画「ロルナの祈り」が、ヤミの国籍ビジ
ネスの実態を描いている。
▼日本でも似たような悪事が跋扈(ばっこ)する。きのう成立した改正国籍法
をめぐり、そんな危惧が国会審議の土壇場で噴出した。外国人女性の子を日本
人のニセの父親が自分の子と認めれば、子に日本国籍が与えられてしまわない
か。ウソの認知によって国籍を売買する犯罪が横行する可能性は、もちろん絵
空事ではない。
▼驚いたのは先月下旬の1週間、インターネットのブログ(日記風の簡易型ホ
ームページ)に記された話題の断然トップが「国籍法」だったということだ。
背景は判然としないが、大半は改正反対論や慎重論だった。国会の動きを見る
と、ネット上を行き来する大量の情報も圧力団体になりうる時代になったらし
い。
▼改正法にはウソの届け出に対する罰則が盛り込まれた。不正に対処するに厳
しくあって当たり前である。ただ、本来日本国籍を取れるはずだった子供を救
うための法改正だ。コインの表裏のような話だが、「悪用される恐れ」ばかり
が強調されるのでは、角を矯めて牛を殺すことにもなる。
(日経新聞 2008/12/6)
12/5に国籍法が改正されましたが、その翌日、日経新聞の名物コラ
ムである春秋に、日経新聞としては珍しく、国籍法に関するコラム
が掲載されました。
日経新聞は子会社の日経BP社を使って、日本企業の中国進出ブーム
を無から有を生み出す手法で作り上げた過去がありますが、それは、
それとして横に置いたとしても、見過ごせない、論理的におかしな
文章に仕上がっています。
まず、第一段で、ベルギーでの国籍ビジネスの実態を描く映画を示
し、第二段では、今回の改正国籍法を巡る議論で、同様の国籍を売
買する不正の横行を懸念します。処が、第三段では、先週のインタ
ーネットのブログの話題のトップが国籍法だった事を示し、同時に、
それが意図的に形成されたものである事と、ネット世論の政治的影
響度の高さを圧力団体という言葉で懸念しています。
そして第四段では、不正対処は当然としつつ「悪用される恐れ」ば
かりが強調されるのでは、改正の意図が生かされない恐れがあると
結んでいます。
ここで、問題であると私が感じるのは、マスコミのネット世論に対
する恐れとそれでも、自分(マスコミ)の意見が正しいという傲慢で
す。
春秋子が書きたかった事は、国籍売買ビジネスの懸念を示す事では
なく、ネット世論が実際の法案成立に対して与えた影響に対する懸
念であり、且つ、そのネット世論が特定の背景の元に意図的に捻じ
曲げられて形成されたと言いたい様です。
しかしながら、私の見る限り、春秋子の懸念は杞憂である様に思わ
れます。ネット世論では、法律的な議論も踏まえて行われており、
最高裁判決についても、多数意見のみならず、少数意見についても
解説されており、また、海外での同様の法改正と、その結果として
国籍売買ビジネスが横行し、DNA鑑定が導入された事も簡単な判る
様になっています。インターネットは、その意味公正なアリーナと
も言えます。国籍法改正賛成派は、充分な反論ができず論破された
と言うべきです。
それは、このコラムでも同様です。論理的には、第一段と第二段は
つながりますが、それに対する回答や説明もないまま「改正の意図
が生かされない恐れがある」では、素直に納得できる人は少ないと
思われます。
今まではマスコミが良いといえば良いのだという「バカボンのパパ」
的傲慢が許されたのかも知れませんが、ポスト・インターネットの
世界では、マスコミにも相応の説明責任が求められている様に思わ
れます。
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