2010年6月7日月曜日

シャトル後継ロケット初打ち上げに成功!


※写真はSpaceX社のWebページから転載

米民間企業の商業ロケット、初の打ち上げ試験に成功

6月6日13時18分配信
米民間企業スペースX社は4日、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から
商業ロケット「ファルコン9」の打ち上げ試験を実施し、搭載した宇宙船模型
を地球周回軌道に乗せることに成功したと発表した。

今回の成功で、国際宇宙ステーション(ISS)への飛行士や物資の輸送に、今
後商業ロケットが使用される可能性が出てきた。

同社はインターネット決済サービス「ペイパル」の創設者、イーロン・マスク
氏が設立。マスク氏によると今回の試験では、予定していた高度250キロの地
球周回軌道へほぼ完璧に、「ドラゴン」と呼ばれる宇宙船模型のカプセルを投
入できたという。カプセルは1年間、同軌道を周回したあと、大気圏で燃え尽
きる予定。

オバマ政権は先に発表した宇宙政策で、ISSへの輸送を民間企業に委託するこ
とにより、NASAが予算枠内で火星軌道到達などの大規模な宇宙探査に一層の力
を注ぐことを可能にするとの計画を明らかにしていた。今回の打ち上げ実験は
その一環とされる。民間企業の商業ロケットがコスト面や効率面で有利かどう
かを確認する意味もあり、注目を集めていた。

米航空宇宙局(NASA)はまもなくスペースシャトル後継機開発を打ち切る見通
しで、今後はISSへの輸送を民間企業に委託する意向を示している。

マスク氏によると、一連の打ち上げ試験がすべて成功すれば、同社は来年にも
物資輸送用の宇宙船の運行を開始したい意向だ。またNASAから契約が得られた
場合、3年以内に同社の商業ロケットでISSへの人員輸送を開始することが可能
だという。

(CNN.co.jp 2010/06/06)


シャトルの打ち上げを見慣れた人から見れば、今回の打ち上げは如
何にも貧弱に見えますが、これが本当のシャトル後継ロケットです。
正確に言えば、今回打ち上げられたSpaceX社のFalcon9ロケットと
ドラゴン宇宙機の他に、オービタルサイエンス社のトーラスIIロケ
ットとシグナス宇宙機がシャトルが行っていたISSへの輸送業務を
担う事になっています。

オバマ大統領は、ブッシュ大統領時代に策定されたコンステレーシ
ョン計画と、それに基づいて開発されていたアレスIとアレスVロケ
ットの開発を停止させていますので、シャトルが退役した後、その
輸送業務を担うのは、COTS(商業軌道輸送)サービスのみという事に
なります。

さて、今回打ち上げられたFalcon9ロケットですが、二段式のロケ
ットで、初段にケロシン・液体酸素を燃料とするマーリン・エンジ
ンを9基束ね、二段に同じくケロシン・液体酸素を燃料とするマー
リン・バキュームエンジンを搭載しています。静止トランスファ軌
道への打ち上げ能力は約4500kgで、日本のH-IIAロケット(H2A202型)
に匹敵するサイズです。H-IIAロケットが高さ53m、直径4mであるの
に対し、Falcon9は、各々54mと3.6mで打ち上げ能力も含め良く似て
います。

但し、Falcon9は、商業打ち上げビジネス用に開発された事で、非
常に安価なロケットとして製造でき運用される様に設計されていま
す。比推力の高い、液酸液水エンジンを使わず、実績のあるケロシ
ン、液酸エンジンを9本束ねたクラスタ設計によりエンジンの大量
生産とそれによる質の安定が期待できます。また、打ち上げ要員を
最小化した運用設計を採用する事で、運用費用を抑える事が可能に
なっています。H-IIAもH-IIを廉価にした設計でしたが、Falcon9は
レベルの異なる合理的な設計がなされているのです。その結果、打
ち上げコストは、30億円強で、H-IIAに比べ三分の一と非常に安価
となっています。その上、最初から有人打ち上げ機への発展が考慮
されています。ちなみに、今回の打ち上げでも、有人カプセルのモ
ックアップを含むドラゴン宇宙機を搭載して打ち上げられているの
です。

NASAはCOTS契約に当たって、トン当たりの輸送コストが従来のシャ
トルでの輸送と比べ、ほぼ同程度となる価格設定をしています。
それだけ見れば、NASAは、民間商業打ち上げサービスのメリットを
享受していない様にも見えますが、そうではありません。民間商業
打ち上げサービスは、そのコストで、打ち上げロケット、打ち上げ
施設、宇宙機、ISS側のランデブードッキングインフラといった一
切を賄わなければなりません。その点を考えれば、それでも最初の
COTS契約を結んだSpaceX社やオービタル社のベンチャースピリット
が判る様に思えるのです。宇宙利用を進める為には、輸送手段が安
価である必要があります。宇宙への往還を安価に行える様になる事
で利用範囲は広がります。今回の打ち上げは、その貧弱な外観とは
裏腹に、宇宙への安価なアクセス手段の提供という実質を齎すもの
として将にエポックメーキングな出来事であると思われるのです。


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