2010年6月11日金曜日

「羅老号」二号機 打ち上げ失敗!

※図は朝鮮日報サイトより転載

燃料調節失敗?配管から燃料漏れ?海に落ちた「5000億ウォンの宇宙の夢」

ロシアが製造した1段目エンジンに異常?
「羅老」空中爆発 なぜ?


人工衛星搭載ロケット「羅老」は離陸から137秒後に通信が途絶えるまです
べてが順調に見えた。10日午前から韓国とロシアの研究陣が総動員され、最
終点検が行われたが、異常はなかった。しかし「羅老」は結局、済州道(チェ
ジュド)南側の公海上に落ちた。羅老宇宙センターから470キロ離れたとこ
ろだ。韓ロ合同調査団はすぐに「羅老」残骸回収作業に着手することにした。

昨年8月の最初の打ち上げでは、韓国が初めて開発した「羅老」2段目を試験
する機会があったが、今回はそれさえも失敗に終わった。科学技術衛星も丸ご
と失った。最初の打ち上げではフェアリング(人工衛星保護カバー)の一つが
分離せず、衛星を軌道に乗せられなかった。最初の打ち上げよりも惨めな結果だ。
「羅老」開発には1・2回目の打ち上げを含めて計5025億ウォン(約400
億円)の費用がかかった。衛星は136億ウォン。

「羅老」の空中爆発原因はまだ確認されていない。しかしいくつかの可能性が
推定できる。通信が途絶えた137秒経過時点の状況は、1段目のロケットが
火を噴きながら上がっている時で、昨年の失敗の原因だったフェアリング分離
段階の78秒も前だ。1段目のロケットには液体酸素と燃料のケロシン(灯油)
を適切に噴き出す噴射口とその量を調節するバルブがあり、関連配管が複雑に
設置されている。発射の瞬間からすべて燃焼するまでエンジンノズルからは瞬
間的に大量の液体酸素とケロシンが噴射される。

140トンの「羅老」を宇宙空間まで送らなければならないうえ、秒速8キロ
の超高速に達する必要があるからだ。この燃料バルブが燃料噴射量調節に失敗
し、問題が生じた可能性がある。

もう一つはエンジン配管に問題が発生して燃料が漏れた可能性だ。漏れた燃料
に火がつき、エンジン内部が過熱され、爆発したということだ。「羅老」の飛
行経路が当初設計されたものより空気の密度が高い低高度をたどり、飛行体内
外部を損傷させた可能性があるというのが専門家らの分析だ。

1段目のロケットはロシアから輸入された。この1段目と国内で開発した2段
目を連結して「羅老」が作られた。まだ空中爆発の原因は把握されていないが、
こうした事故をもたらす兆候はあった。まず1段目のロケットは十分な試験が
行われていない。完全に開発が終わって本格的にロケット市場に投入されたの
ではない。ロシアのロケット製作会社クルニチェフは「アンガラ」という新し
いロケットを開発しているところだ。そのロケットエンジンは推進力が大きく、
「羅老」ではその力を弱めた。このため「羅老」打ち上げはロシア側からすれ
ば、事実上、開発中である「アンガラ」エンジンの飛行試験格ということになる。
「アンガラ」のエンジンはまだ燃焼試験と安定化作業をしている段階だ。

匿名を求めたロケット専門家は「ロケットを開発するには少なくとも3-4回
のエンジン燃焼試験と飛行試験を行うのが常識」と述べた。「羅老」はこうし
た手順の相当部分を省略したまま衛星を搭載した。開発中のロケットの飛行試
験には費用がかかる実際の衛星よりも、衛星の模型を搭載する。こうした過程
をたどらない場合、惨憺たる結果をもたらす場合が多い。

(中央日報 2010/06/11)


前回、2009年8月、最初の打ち上げに失敗し捲土重来を期した羅老
号でしたが、二号機も打ち上げ失敗という事になりました。
前回は衛星フェアリングの分離失敗によるものでしたが、今回は、
ロシア製の第一段の不具合によるものの様に見えます。

失敗原因については未だ調査中ですが、爆発が発生した際のビデオ
映像では、それまでは、一段目の噴射炎が見えていた処に、小爆発
が生じ、白煙が広がり、その後、発射炎は消え(?)進路が90度近く
右に傾き落下していった様子が写っています。

小爆発が発生したのは、発射後137秒後で、最大推力を発生し、
高度も、約90~100kmに達していたと思われます。大爆発を起こし
ていない処から見て、エンジンに燃料と酸化剤を送るターボポンプ
周りの配管が振動で外れ、そこから燃料か酸化剤が洩れて小爆発を
起こした上、燃焼を維持できずに、推力を失った様に見えます。

なお、テレメトリーデータは爆発時点で途切れていますので、小爆
発ではあっても、ロケットのアビオニクスを破壊する程度の爆発規
模であった事が分かります。

羅老号の打ち上げについては、ロシアのクルニチェフ社が開発中の
アンガラロケットの一段目に使用するURM(Universal Rocket
Modules)の推力を若干低下させたデチューンモデルを使用しています。
このアンガラロケットは、まだロシア国内でも打ち上げの実績はな
く、エンジン試験が行われて以外は、羅老号一段目として打ち上げ
が唯一の飛行実験であると言えます。エンジンそのものはエネルギ
アやゼニット他で実績のあるRD-170の系列エンジンですし、ロシア
の次世代ロケットとしては本命と言える機体ですが、単体としての
実績は十分とは言い難いものです。

ただ、これは、不完全なエンジンを選択した韓国の選択の誤りとい
うより最新の技術を使う時に必然的に発生するリスクであるとも言
えます。但し、ロシアのロケットを使用する決定を行った際には、
韓国側は同エンジンの技術導入を期待し、最新技術を採用したので
すが、実際にはロシアはURMのロケット技術を行う意思はなく、
結局、ロシアのロケット開発を有償で支援しただけに終わったとい
う評価もありえます。(美人局の様に、韓国は技術移転の下心をロ
シアに利用されたと言えなくもありません。)

とはいえ韓国は、ロシアとの契約の中で、ロシア側の責任で打ち上
げが失敗した際には、追加で打ち上げる義務があるという条項を入
れている様です。ロシア側からすれば、追加打ち上げ費用も馬鹿に
なりませんが、韓国がロシアに支払った打ち上げ費用2億ドルは、
HーIIAであっても、二基打ち上げが十分可能な金額であり、URM
の信頼性向上の為にも、ここは、追加打ち上げを行っておくべきで
あろうと思われます。

新しいURMの製造と新しい科学衛星の製造には、数ヶ月を要しま
す。韓国は、今まで安易な方法でロケット開発技術の導入を企画し
てきました。しかし、実際には人工衛星打ち上げロケットの熟成に
近道はありません。あらゆる技術開発と同様、開発の失敗と、その
原因追求は開発ノウハウそのものと言えます。韓国は、ロシアの事
故原因追求に協力する事で、ロケット開発のノウハウ蓄積を図るべ
きであろうと思われるのです。


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