2009年12月4日金曜日

North Korea denomination will crash civilian economy? 北朝鮮のデノミ 市民経済には破滅的効果?

北朝鮮デノミ:後遺症深刻、物価が10倍以上急騰

北朝鮮が2日午前から一人当たり最大10-15万ウォンの旧貨幣を1000-1500ウ
ォンの新貨幣に交換する作業を開始した、と北朝鮮内部の消息筋が伝えた。貨
幣交換は6日まで朝鮮中央銀行の各支店で行われ、7日から新券が流通するとい
う。今回のデノミネーション(デノミ、通貨呼称単位の変更)が完了すれば、
北朝鮮の「市場勢力(市場商取引で富を蓄積した人々)」は、自分が保有する
現金のうち10万-15万ウォンを除いた残り全部を、事実上、奪われることになる。

脱北者団体の北韓民主化ネットワークなどによると、北朝鮮の中間層は通常、
1世帯で100万ウォンほど保有しているという。商売で金を稼ぐ人の中には数百
万-数千万ウォンを家で保管する場合も多いという。北朝鮮で10万ウォンは4
人家族が2カ月ほど生活できる金額だ。10万ウォンを市場の闇ドル商で交換す
ると、35-40ドル(約3000-3500円)ほどになる。北朝鮮の住民は4000ウォン
-1万ウォン水準の月給のほか、商売などを通じて足りない生活費を補てんする。

北朝鮮内部の消息筋などによると、北朝鮮当局は一人当たりの交換限度額を超
える金は銀行に貯蓄するよう指示している。しかし、貯蓄額も30万-300万ウ
ォンまでに制限されている上に、北朝鮮の銀行は預金者が自由に金を下ろせな
い「強制貯金所」のため、住民の不満が急激に高まっているという。1992年の
貨幣改革時は、一人当たり2万ウォンまで貯蓄できたが、後で手にすることが
できたのは数千ウォンにすぎなかったとのことだ。1ウォンも帰ってこなかっ
た住民も多いという。北朝鮮専門メディアのデーリーNKは同日、「10万ウォン
までは100対1で交換するが、それ以上は1000対1で交換するか、銀行に無制限
で貯蓄できるようにした」と報じた。ある北朝鮮内部消息筋は「貯蓄額が多け
れば保衛部がその出所を調べるのに、誰が全額貯金するだろうか」と語った。
現在、北朝鮮当局が物価を100対1のデノミ比率に合わせて強制的に引き下げる
のか、為替レートも調整するのかについては確認されていない。

このように経済の不確実性が高まるや、北朝鮮の市場物価は従来の10-20倍に
上昇していることが分かった。1キロ2000ウォン水準だったコメの価格は4万ウ
ォン(韓国ウォンで約2万ウォン=約1500円)に上昇した。咸境北道会寧市の
市場で500ウォンだった豆腐1丁も1万ウォン(韓国ウォンで約5000ウォン=約
380円)で売られているという。保衛部要員の取り締まりが大幅に強化された
にもかかわらず、北朝鮮の住民は公然と怒りをあらわにしていると、内部消息
筋は伝えた。主要都市の市場では、不特定の人に向かって暴言を吐く人が増え
ているという話も聞かれた。

北朝鮮政権が今回のデノミを通じて事実上「宣戦布告」した闇市場では、取引
が違法とされている軍需物資・石炭・石油・機械なども売られているという。
食糧も2005年10月に専売制が実施されて以降売買が禁止されたが、市場では最
も活発に売買されているという。工業製品の価格は決められているが、それを
守る商店はない。

市場関連の新用語も生まれた。商品を市場に出す人を「跳躍人」、小規模の行
商人を「走り人」、機関の車を利用した卸売業者を「車仕入れ人」、バスに乗
る商売人を集める人を「運び人」と呼ぶ。ある消息筋は「韓国製品は北朝鮮市
場で高級ブランドとして扱われている」と語った。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2009/12/3)


流石は北朝鮮と言った感じです。資本主義国であれば、到底できな
い事をバッサ、バッサとやってくれます。勿論、経済的な効果は破
壊的なのですが、それでも良いと割り切っている処が怖いですね。

デノミというのは本来は、通貨の表示変更ですから、経済成長や物
価に対しては中立的であるとされています。しかし、通常は、今回
の北朝鮮のデノミもそうですが、大きな旧通貨表示を小さな新通貨
表示にします。その際、値段を切り上げて丸める事が横行する事に
なるので、インフレ傾向を助長する事になると言われています。

今回の北朝鮮では、実はデノミとは別の効果を狙っています。それ
は、富の再配分です。デノミとは言っても、旧通貨から新通貨への
転換は金額によって交換レートが変わっています。一人当たり10万
~15万ウォン迄は1000~1500新ウォンにすると言う通常の百分の一
デノミなのですが、それ以上の場合は千分の一の交換レートでしか
新通貨に変更できないのです。

この変更の結果、新通貨への交換前にも係わらず物価が10から20倍
に跳ね上がったと記事には書かれていますが、これは当然の事です。
売る様なものを持っている人は、小金持ちでしょうから、新通貨へ
の交換レートは千分の一になります。従って、今売る場合の価格は
10倍にしないと合わない事になります。その上、今の内にお金では
なく物に変える事で、損失を抑えたいというニーズも発生しますか
ら、新通貨への交換が行われるまでは、インフレは更に亢進し、20
倍にもなることがあると言う訳です。

一人当たりの限度額以上にお金を持っている人は、一夜にして、自
分の貯蓄の価値が十分の一になった事になり、更にインフレに痛め
つけられる事になります。こうして、貯蓄を人民元や米ドルやユー
ロで持つこ事ができる朝鮮労働党関係者以外の金持ちは、資産を一
気に搾取された事になります。

では、貯蓄が、限度額内である人はどうでしょうか。社会全体の通
貨供給量が概ね財の量と釣り合っていると考えると、今回の処置で、
通貨供給量が大幅に減少したのですから、単位通貨量当たりの財の
量は増加した事になります。
つまり、旧通貨では、従来の10倍のインフレですが、新通貨では、
デフレになる事になります。つまり、交換後の新ウォンの持つ価値
は従来に比べはるかに大きくなるという事です。つまり、富裕層が
国家に収奪された通貨量は、貧困層に再配分される事になります。

今でこそ北朝鮮国民は、今回のデノミを嘆いていますが、富裕層は、
貧困層よりも、確実に人数は少ないでしょうから、意外に、この政
策は北朝鮮の人民に支持される可能性がある様に思われます。

ただし、この理屈が通じるのは、貧民層が新通貨への交換まで、旧
通貨での貯蓄を使わずに持ちこたえられた場合です。今の処、7日
には交換が行われるので、飲まず食わずでも、持ちこたえる事がで
きそうですが、貧困層は元々の物の蓄積が大きい訳ではありません
から、新旧通貨交換まで時間がかかるとインフレで貯蓄を失ってし
まう可能性も大きく、その場合は、富裕層と等しく資産を国家に収
奪される事になるでしょう。

今回も、今まで通り、富み栄えるのは、労働党関係者という事にな
りそうです。


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