2009年10月23日金曜日

Utilize everything. Sygnus is here! 日本のISS接近システムを使う事にしたシグナス補給機

※ISSに接近するシグナス補給機。OSC社サイトから転載

日本の宇宙船接近技術、米の無人船に採用

日本で開発された無人宇宙船「HTV」に搭載した技術が、米国で開発中の新
しい無人宇宙船に採用されることが決まった。技術を開発した三菱電機が22
日、発表した。

日本の技術が米国の宇宙船の根幹部分に採用されたのは初めて。人工衛星など
の宇宙関連市場で、日本の技術が国際競争力を増している証左と言え、国際市
場への売り込みに拍車がかかりそうだ。

採用されたのは、国際宇宙ステーション(ISS)に安全に近づくための通信
装置「近傍接近システム」。HTVが先月中旬、ISSとのドッキングに成功
し、その技術が高く評価された。
発注したのは、米航空宇宙局(NASA)の無人宇宙船「シグナス」を開発し
ている民間企業オービタルサイエンス社(米バージニア州)。三菱電機は来年
から2014年にかけ、シグナス9機分にあたる装置を約60億円で同社に納
入する。

この装置はISSと無人宇宙船との間で、互いの速度や距離などの情報を自動
的に交換して安全を確認する技術だ。地上から約400キロ・メートル上空を
秒速7・7キロ・メートルで動くISSに、衝突せずに近づくことができる。

NASAはスペースシャトルを2年以内に引退させる方向で検討しており、そ
の後の物資輸送を担う無人宇宙船開発をオービタル社など2社に発注している。

(読売新聞 2009/10/23)


NASAはISS(国際宇宙ステーション)へのCOTS(商業軌道輸送サービス)
の対象として、SpaceX社、オービタルサイエンス社の二社と契約し
ていますが、この2社のアプローチはかなり違います。

SpaceX社は、打上げロケットはエンジンから自社開発で、COTS向け
に使用するロケットは、エンジン9基を3X3に配置するクラスター構
成を取るユニークなものです。また、カプセルの方も、将来宇宙飛
行士の往還にも使用できる有人宇宙船とする事を考慮した構成とな
っています。

これに対し、オービタルサイエンス社(OSC社)の方は、徹底的に自
社・他社の既存品を利用する事で開発費を抑え、NASAの国産品使用
の要求仕様を満足する事を目的としている様に見えます。

例えば、ロケットは、トーラスIIという自社のものですが、第一段
は、エンジンは旧ソ連のN1ロケットのエンジンとして開発された
NK-33に所要の改修を施したAJ-62を、また、燃料タンクにはウクラ
イナ製のゼニットロケットのものを短縮して使用します。第二段に
は、新設計ですが、ATK社が既存品を改修したキャスター30を使用
します。

補給機についても、サービス・モジュールは、自社の小惑星探査機
ドーンのアビオニクスを流用して開発される他、与圧モジュールは
シャトル用多目的補給機(MPLM)のものを、また、非与圧モジュール
は、NASA/GSFC社のExPRESS補給キャリア(ELC)のものを用いる事に
なっています。

今回の三菱電機の受注も、HTV実証機で実績の出来た、JAXA/三菱電
機のHTV用近傍接近システムをISS側に設置した機器利用の権利を含
めて購入したものです。
シグナスは、HTVと同じハーモニーの共通結合機構(CBM)に接舷(バ
ーシング)するのですから、実績のある同一の接近システムを使用
するのは当然とは言え、誠に合理的な判断であると思われるのです。

なお、独自路線を取るSpaceX社は、このISS接近システムについて
も、DragonEyeという独自のシステムを開発し、ISSに設置していま
す。SpaceX社は、このシステムの実証実験をシャトルを用いて、今
年7月に実施しましたが、OSC社は、そういう実験をする必要なく、
シグナス実証機を2011年に打ち上げる事が出来ます。その点、シグ
ナスの設計コンセプトの正しさを証明するような結果になっている
と言えそうです。


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