※写真は、エクリプス500。Wikipediaサイトから転載
小型ジェット機開発のエクリプス社が破産
小型ジェット機エクリプス500型機の開発、製造ならびに販売を手掛けるエ
クリプス社(Eclipse Aviation Corporation、本社:ニューメキシコ州アルバ
カーキ)が11月25日付けで米国において連邦破産法第11章の適用申請を行なっ
た。負債総額は投資家に対して約5億7,700万ドル、ベンダーやサプライヤーに
対して約1億3,500万ドルの計7億1,200万ドル(約676億4,000万円)が見込まれる。
エクリプス社は、元マイクロソフト社重役のレイバーン(Vern Raburn)氏が
設立した新進の航空機会社。小型ジェット機「エクリプス500」の開発を行なっ
ていた。新技術の適用と大量生産により低価格を実現し注目されていた。
この破産により、11月27日、主翼を納入していた富士重工業が売掛債権 2,480
万ドル(23億5,500万円)、出資金 500万ドル(4億7,500万円)、棚卸資産 65
億8,400万円の債権の取立不能または取立遅延および資産の毀損のおそれを発
表した。
(九州企業特報 2008/11/27)
軽量ジェット機(Very Light Jet)のパイオニアであるエクリプス社
が11/25に米国破産法第11章の適用を申請し事実上倒産しました。
同社は、従来のビジネスジェットの常識を破る、小型軽量安価なジ
ェット機であるエクリプス500型機で主として個人向け及びエア
タクシー市場を創設し、実に2300機以上の受注を集めていました。
型式証明は2007年6月になりましたが、2007年中に104機を生産し、
ジェネラルアビエーション(GA)カテゴリーの機体としては、最速の
スピードで100機の製造を達成しました。
ただ、丁度この時期に、サブプライム問題が浮上し、米国経済全体
に一気に不透明感が広がりました。個人用にせよ、エアタクシーに
せよエクリプスが売れる為には、個人が利便の為に、今までより多
くを支出しなくてはなりませんが、それをバックアップする資金の
多くを、実は不動産価格の上昇に負っていたのです。今や、不動産
価格は下落に転じましたが、これがエクリプスを直撃する事になり
ます。会社側は、明らかにしませんが、2300機以上獲得していた受
注の多くがキャンセルされたのは間違いありません。エクリプス社
は生産継続
の為の資金に事欠く事になります。それでも、2008年に130機を製
造しましたが、年央には、生産継続の為の資金が不足し、生産中止
の已む無きに至りました。また、より安価な単発軽量ジェットであ
るエクリプス400型機も開発されましたが、この機体は形式証明
を得る事ができませんでした。
話は前後しますが、この様な経済情勢の変化を受けた資金難もあり、
創業者でありCEOであったVarn Raburn氏は、2008/7に会社を離れ、
最大の出資者であったETRIC(European Technology and Investment
Research Center )の会長Roel Pieper氏がCEOに就任しました。
ETRICは、投資会社ですから、Roel Pieper氏に期待されたのは、エ
クリプス500の生産を継続する為の資金を引き出す事でしたが、
エクリプス社を更なる不幸が襲います。9/19にエクリプス500の
最大(1430機)の発注者であるエアタクシー業者であるDayjet社が航
空業務の停止を発表したのです。
当然の事ながら、これだけの大量の発注が消えると価格面への影響
が出てきます。当初は1.35百万ドルであった機体価格は2.5百万ドル
に上昇し、これによって更に、キャンセルが出た事は間違いありま
せん。その結果、エクリプス社は、レイオフと事業縮小の負のスパ
イラルに入り、今回の倒産に至ったという訳です。
記事にもありますが、エクリプス500型機の主翼は、富士重工が
製造しており、出資金も合わせると富士重工はエクリプス関連で実
に93億円の負債を負うことになります。最大の出資者であるETRIC
は103億円を出資していましたので、負債額は僅かしか替わりま
せんが、ETRICが、CEOの地位を占め、自分の持分を有利に転売しよ
うとしているのに対し、富士重工は、あまりに無策である様に見え
ます。日本企業が、サイレントパートナーとして軽視または無視さ
れるのは、日本企業の悪しき伝統になっていますが、富士重工が今
回の経験を今後に生かす事が求められていると言える様に思います。
今回の経済危機は航空機製造分野全体に大きな影響を与えています
が、特にVLJカテゴリーは、大きな後退を余儀なくされる事になり
ます。新規の機体開発は殆ど停止される事になります。その中には
HondaJetも含まれる事になると思われます。Hondaは製造ライン、
販売経路の構築に資金を投入している最中でしたが、今後、計画を
続行するか否かの岐路に立つ事になります。恐らくは、計画を断念
する事になると思われます。HondaJetはユニークな機体であり、航
空ファンとしては、その成功を祈っていましたが、今回は残念なが
ら時に利がありません。HondaJetの技術を温存し、是非北米市場で
リベンジを図って貰いたいと思います。
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