2010年6月24日木曜日

ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負を挑むMRJ

※CGは、MRJ Webサイトから転載

全日空、三菱の小型ジェットMRJ15機を約692億円で購入へ

全日本空輸(ANA)は21日、三菱製の国産小型ジェット機「MRJ90型機」
15機を約692億円で取得すると発表した。2013年度から2017年度
に受領することを予定している。
「MRJ」は三菱重工業子会社の三菱航空機(名古屋市)が開発中の国産初の
小型ジェット旅客機。

全日空では、収益性向上と今後想定される空港環境の変化への対応と現有小型
機の後継機として90─100席クラスの航空機を調達するとしている。燃費
効率がよく競争力のある新鋭機に更新していく計画だ。

(Reuter 2010/06/21)


全日空は25機のMRJを発注したと伝えられていましたが、その内訳は
確定発注15機と、オプションが10機となっています。上記の記事は、
この内、確定発注分について契約が纏まったという事だと思います。
一機46億円という価格は思ったよりも高いという印象を受けます。
MRJの価格は30億~40億円というレンジが予想されていました。
この処の円高で一機50百万ドルというのでは、米国の顧客に受け入
れられるのか心配になってしまいます。

とはいえ、三菱は、ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負
を挑むという記事が、FlightglobalにMRJに掲載されていました
ので、やや旧聞に属しますが、抄訳してみました。

三菱は、ボンバルディアとエンブラエルにガチンコ勝負を挑む

リージョナル航空機市場への三菱航空機の進出は挑戦的な冒険だ。日本は1960
年代の日航製(NAMC)YS-11以降、民間航空機を製造していない。そして、ボン
バルディア社とエンブラエル社というこのセクターの二大リーダー企業に加え、
中国の様な新規参入者との競争も待ち受けている。

しかし、三菱航空機の江川豪雄社長は、MRJにとって有利な点があると指摘
する。ライバルであるCOMACが中国の巨大な国内市場に焦点を当てており、政
治的なコネクションを利用して中国の航空会社に90席のARJ21-700旅
客機や150席のC919旅客機の購入を進めている。また、中国の第三世界の
同盟国は、輸出目標国にもなっている。

COMACは、実際には、競争相手ではないと江川は語る。MRJリージョナル・
ジェットは、西側諸国の市場への輸出を目的に造られており、その為、三菱の
直接競争相手は、ボンバルディア社やエンブラエル社となる。江川によれば、
MRJの売上の40%は北アメリカで、30%はヨーロッパで、また、20%はアジア、
残り10%はその他の諸国で挙げられると期待されている。

ゲーム・チャンジャー

エンブラエル170/190や、ボンバルディアのCRJ700/900、
それにARJ21-700は、ジェネラル・エレクトリック社のCF34エンジン
を使用しているが、MRJはP&W社が開発中のPW1000Gギアード・ターボフ
ァン・エンジンを使用している。このエンジンは、P&W社や三菱に言わせれ
ば、ゲームを変更してしまう存在になる。

三菱は、ボンバルディア社やエンブラエル社が、70席から90席クラスのリージ
ョナル航空市場から関心を失いつつあり、開発の焦点を110席から130席クラス
の機体に集中している事が続くことを期待している。ボンバルディア社は、既
に、110席~130席のCシリーズの提供を約束しており、ボンバルディアもこの
セグメントへの参入を評価している途中である。

三菱は、ボンバルディア社のCRJやエンブラエル社のEシリーズと比べMRJ
が全く新しい機体である点も指摘している。

その他の有利な点には、三菱の国際的な耐空証明を取得する能力も挙げられる。
江川は、日本で耐空証明を得た後、一~二ヶ月後には米国の連邦航空局からも
耐空証明を得られると予測している。江川は日本と米国の関係や日本が、二国
間相互安全協定に調印している事に自信を持っている。

しかし、日本がここ何十年も民間航空機を作っていなかったと言う事実は、米
国の連邦航空局が、日本の航空局の型式証明のプロセスが連邦航空局の標準に
そったものである事を確実とするため影の証明を実行しなければならないこと
を意味すると、江川は言う。三菱航空機の親会社である三菱重工は、何十年に
も亘り、エアバス社やボーイング社、ボンバルディア社向けの大型で複雑な機
体部品を製造してきた経験がある。

それに加え、三菱には、製造業界で技術と信頼性に定評があり、三菱ブランド
には国際的に高い評価と認識がある点も指摘する。
「日本には、モノヅクリという、製造を意味する言葉がある。」

三菱重工は、2008年に三菱航空機をスタートしたが、その後、株主として、
トヨタ自工(10%)、三菱商事(10%)、住友商事(5%)、三井物産(5%)、日本開発銀
行(1%)他を加えている。その結果、三菱重工の持分は64%となっている。

三菱航空機は、これらの巨大企業から世界的な販売資源としての役割を期待し
ており、三井物産には北米の、住友商事には、アジアと欧州での販売キャンペ
ーンを期待している。

金融面では、三菱グループは国内最大の、東京三菱UFJ銀行を保有しており、
販売パートナーは三井住友銀行を保有している。

江川は、これらの協力企業がMRJの販売ファイナンスにどの程度の協力を行
うかについてはコメントを避けたが、日本の輸出信用調査機関や日本輸出投資
保険や国際協力銀行の関与については、確認している。

三菱が、現在取り組んでいる重要な問題が、顧客サポートである。それができ
るかどうかで、MRJが国際的に成功するかどうかが左右される事になる。
三菱航空機は、2006年にサーブと覚書を交わし、北米と欧州のサーブの顧客サ
ポートネットワークで、MRJのサポートを行う事に両社が取り組む事を明ら
かにした。

しかし、最終的な合意は昨年12月に行われたが、当初予定されたよりもトーン
ダウンしたものになった「我々は、サーブと技術的解説書類を開発する事にな
った。それだけだ。顧客サポートの為ではない。三菱が顧客サポートの努力を
リードし、全責任を負う事になる。」と江川は語った。

とはいうものの世界的な顧客サポート体制を構築するのは、難しく、時間がか
かる複雑な仕事である。ATRやボンバルディアやエンブラエルの様なリージ
ョナル航空機のメーカーは、その様なネットワークを作るのに、数十年かかっ
ている。

その仕事の複雑さは、江川が、主要な市場で、MRJが認定した補修や修理、
オーバーホールを行う会社の強力なサポートネットワークを約束しても、その
時期について口を濁すことからも明らかである。

三菱は世界中に予備部品の倉庫を準備し、顧客リエゾンエンジニアからの技術
サポートを得られる24時間コールセンターの設置を計画している。

これまで、MRJリージョナルジェットは、確実な顧客を一社しか持っていな
い。それは全日空で、確定発注15機と更に10機のオプション発注をしている。

昨年10月、米国のリージョナル航空会社であるトランス・ステート・ホールデ
ィングが100機までのMRJを発注すると公表した。但し、江川によれば、そ
れは覚書に過ぎない。江川は、それがいつ最終化できるのかについては、コメ
ントを避けた。

(Flightglobal 2010/06/01)



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