2010年6月23日水曜日

胸突き八丁に差し掛かったA350の開発



※CGはAirbus社Webサイトから転載

今まで余り報道されてきませんでしたが、A350XWBの開発も
開発完了まで残り三年と中間点に差し掛かかり、スケジュ-ル上の
余裕もなくなってきた模様です。このまま、787同様、開発遅延
の轍を踏むのか、あるいは、787の七転八倒から教訓を見出し、
新たな道を歩むのか分岐点に差し掛かっています。

以下Bloonbergの記事を抄訳します。

「緊張」のタイミングに差し掛かったA350

EADS社は、ワイドボディー機A350の開発をスケジュール通りに行う為に、
「非常に用心深く」開発を進める事が必要となっている。それは、同種の機体
であるドリームライナーの開発遅延によってボーイング社が陥った泥沼を避け
る為にも必要な事でもある。

「ここ暫く、開発スケジュールに固執しているが、開発スケジュール上の余裕
をほぼ食い潰してしまったので、開発スケジュールを維持できるかどうか緊張
を余儀なくされている。」「ボーイング社は非常に良い会社だし、技術的な能
力も高い水準にある。だから彼らが困難に陥った時には、我々も気をつける必
要がある。」とEADS社CEOのルイ・ガロアは述べた。

エアバス社は、この300人から350人乗りの長距離機の開発に100億ユーロ(120
億ドル)の開発費を費やし、ボーイング787と、就役後15年が経つ、より
大型のボーイング777に挑戦する予定である。この内、新しい機体は二つ共、
先進的な炭素繊維の様な新素材を使用しているが、これは、伝統的なアルミニ
ウムの様な既に飛行機への使用方法が確立している素材に比べ開発遅延を引き
起こすリスクを含む技術である。

エアバス社は、2012年にはA350の初飛行を行い、2013年には、引渡しを開
始したいと考えている。

ガロアは、エアバス社がデッドラインを確保できると期待しているが、それは
同社が、外部ベンダー利用について少ないリスクしか取っていない事を指摘し
ている。「ボーイングは80%の仕事量をパートナーに依存しているが、我々は、
50%の仕事量しか外部ベンダーにアウトソースしていない」また、「それに加
えて、彼らは、より積極的な技術的な選択を行っているが、それが、我々が注
意しなければならない教訓だ」とガロアは語る。

複合材料

ボーイング787もエアバスA350も重量の50%以上は複合材料で成り立っ
ている。787は、もともとの計画では2008年5月に引渡しを予定していたが、
製造上の困難から今年の終わりまでサービス開始が遅延している。787は昨
年12月に初飛行を行っている。

787についてのボーイング社の挑戦の中には、アルミニウムではなく複合材
で作られた丸ごとの胴体を次々に接合するというものも含まれていた。
一方、エアバス社は、より保守的なアプローチを取り、金属製の枠組みに複合
材料製のパネルを貼り付ける方法で胴体を形成している。

カタール航空がA350の最初の顧客になる見込みで、それも含め33の顧客か
ら530機の発注が得られている。

ガロアとエアバスCEOのトム・エンダーは、過去に新しい機体の開発遅延を経
験している。それはエアバス社の旗艦モデルであるA380の開発に関するも
のである。A380スーパージャンボ機は、二階建て500人以上を収容できる
が、この開発は何年も遅延した。またこの世界最大の旅客機の売れ行きもエア
バス社の見込みを下回っている。フランスのツールーズを本拠とするエアバス
社はEADS社最大の部門子会社である。

サービス遅延

A380のサービス開始は、2007年に二年半遅れで開始され、開発予算は50%
増しになり、180億ユーロに達した。エアバス社は、配線上の欠陥と設計上の
誤りが初期生産上の問題点であり、それに加え顧客が閉鎖型のキャビンやバー
と言った特別の装備を個別に発注した事が生産遅延を招いたと考えている。
エアバス社では、A350では、顧客毎の特別注文の内容を制限している。

エアバス社の軍事部門も、その最初の軍用機であるA400M輸送機の開発計
画で、同様の遅延を経験している。この輸送機は欧州各国から老朽化した機体
を置き換える目的で発注を受けているものである。EADS社は、顧客と数ヶ月に
及ぶ交渉を行い、開発遅延の後、予定された時期に200億ユーロの固定価格で
A400Mを引き渡すという枠組みの書き換えを余儀なくされた。

A400Mの救済ファンド投入が約束された後になってからも、欧州各国政府
とEADS社は再契約の内容を固めるに至っていない。この契約問題の最終決着に
は今年後半になる見込みである。

この不安定な契約状態により、エアバス社は、同社がA350やA380の開
発計画に必要とする資金もA400M開発計画に投入する事を強いられている。
エアバス社によれば、A400Mの開発計画には毎月1億ユーロ以上を要して
いる。

「我々は、現在、集中的に契約改正の交渉を行っているが、これは容易なもの
ではない。恐らく、夏前に合意に達する事はできないだろう。合意は恐らく秋
になる」とガロアは語った。

(Bloomberg 2010/06/02)


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