2009年8月4日火曜日

韓国の新型ロケットは、本当に打ち上がるのか?

※写真は朝鮮日報サイトより転載

韓国が初の人工衛星ロケット打ち上げへ 露が技術協力

韓国初の人工衛星搭載ロケット「羅老(ナロ)号(KSLV1)」が今月11
日に打ち上げられる予定だ。羅老号は同盟国の米国ではなく、ロシアの協力を
得て開発された。ロケットは大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用が可能な
ことから、米国が技術提供を断ったためとされる。韓国のロケット打ち上げが
北朝鮮の反発を呼ぶのは確実で、国際社会が注視している。

韓国では1970年代から兵器の開発などを行っている国防科学研究所で、ミ
サイル用の固体燃料ロケットの開発が進められてきた。しかし推進力が高く宇
宙空間の軌道に進入させることができる液体燃料ロケットの技術開発は難しく、
これまで韓国には、人工衛星を搭載できる自前のロケットがなかった。

開発は急がれていたが、北朝鮮を刺激したくない米国側が技術提供を拒否した
ため、韓国はロシアの協力を得て研究を進めてきた。昨年4月には、ロシアの
宇宙船ソユーズで初の韓国人飛行士を宇宙に送り出している。

さらに米国との間には、韓国の弾道ミサイルの射程を制限する「米韓ミサイル
指針」があり、射程300キロ以上の発射体の開発は制限され、米国の厳しい
監視下にある。米国は今回の打ち上げを静観するとみられるが、「米国は、韓
国が宇宙開発を進めることに内心反対の立場」(韓国の宇宙開発専門家)という。

一方、今回のロケット打ち上げで、南北間の緊張がエスカレートすることを懸
念する声も出ている。

また羅老号は日本の領海上空を通過し、九州西側の東シナ海に1段目が落下す
る見込みという。日本政府は「韓国の場合、研究開発のための宇宙の平和利用
なのでとくに問題はない」との立場だ。ただ打ち上げに失敗すればロケット本
体や破片が落下する可能性も排除できないので、安全面から他国の上空通過は
避けるのが一般的とされる。

今回、打ち上げに成功すれば、自国から自前のロケットで人工衛星を軌道に乗
せた国としては10番目となる。

(産経新聞 2009/8/03)

打上延期が繰り返されている韓国の人工衛星打上ロケット「羅老
(ナロ)号(KSLV1)」ですが、必要とされていたロシア国内での
ロケットエンジン燃焼性能テストに成功した事から、来る8月11日
に羅老宇宙センターから打ち上げられる事になった様です。

韓国では、初の国産人工衛星打上ロケットと言われていますが、
実際には、ロシアから完全輸入した液体燃料エンジンの第一段ロ
ケットと同じくロシアから技術導入した固体燃料ロケットを搭載し
た第二段ロケットで、韓国産の100kg級科学衛星を打ち上げるとい
うものです。

日本の旧宇宙開発事業団系の人工衛星打上ロケットでも、同様の技
術導入や完全輸入を行っていますので、韓国産と言っても、文句を
つける筋合いではないのですが、「羅老号」の場合は、オリジナル
であるロシア製のアンガラロケット(この第一段ロケットを「羅老
号」では、そのまま使用する)が、まだ開発中である点で、原産国
のエンジン開発の影響をモロに受ける事になってしまったと言えます。

元々、アンガラロケットは、ロシアの次世代衛星打上ロケットとし
て開発されているロケットですが、韓国は当初、それを技術導入す
る事によって、自国で生産する事を計画していました。(一部では
エンジニアリングサンプルをリバースエンジイアリング手法で解析
する事を計画していたという噂もあります。)

しかしながら、技術盗用を恐れるロシアが、技術移転に応ぜず、ロ
シアで生産した第一段ロケットを完全輸入する事になりました。
第二段の固体燃料ロケットは、ロシアからの技術導入で、韓国内で
生産されています。(韓国で開発されたとする資料もあります。)

実はアンガラロケットは、非常に高性能のRD-171エンジンを搭載す
る新型ロケットであり、ロシア国内でも、まだ打ち上げられていな
い開発中のロケットなのです。そういう点では、「羅老号」はロシ
アにとって、アンガラロケット第一段の初回フライトテストを韓国
の費用で行って貰っていると言っても過言では無い
様に思われます。

「羅老号」は、打ち上げられた後、九州西部の東シナ海を飛行し、
日本領海の上空を通過する予定になっています。
開発中のロケットは、射場で爆発する可能性や打上後に飛行コース
を大きく逸脱する可能性があります。日本のロケットと同様、「羅
老号」もそういう時の為に、当然、指令破壊(自爆)の機能を持って
いる筈ですが、打上失敗時には、韓国のみならず、日本にも影響が
ある事を念頭に置き、安全面には念には念を入れて欲しいものと思
います。


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