2009年1月16日金曜日

海賊対策 有効な策は航路帯防衛しかない!



※写真はAPサイトより転載

海自任務は護送限定 海賊対策、日本籍船を最優先

政府・与党は15日の「与党海賊対策等に関するプロジェクトチーム」で、海
上警備行動でアフリカ・ソマリア沖に派遣する海上自衛隊護衛艦の任務をあら
かじめ対象に決めた船舶の護送(エスコート)に限定する方針を決めた。保護
対象となる船舶から事前に申請を受け付け、国土交通省海事局が判断する。

護送対象を決定する際の優先順位は(1)日本籍船(2)日本人の乗船する船
舶(3)日本企業が運航管理する日本関係船舶や日本の貨物を積んだ外国船舶-
とする方向。日本籍船が92隻に対し日本関係船舶だけでも2200隻以上あ
り、日本籍船を最優先とする。

政府は護送について、護衛艦1、2隻を海賊多発海域の入り口に配置し、同海
域を抜けるまで護送対象船に伴走することを想定している。保護対象となった
船が複数ある場合には、海賊多発海域の通過時刻・場所を合わせてまとめて護
送する方針だ。

政府はこうした対処方針案を来週にも与党に提示、合意が得られれば月内にも
浜田靖一防衛相が海自に準備指示を出す。日本からの護衛艦派遣は3月になる
見通しで、4月からの任務開始を目指している。
(産経新聞 2008/01/16)

日本の護衛艦だけで船団護送をするという案が出ているようですが、
殆ど意味がないのではないかと思います。記事にもある通り、日本
関係船舶2200隻に対し、日本籍船舶は、わずか92隻しかありません。
また、日本籍船舶のみ護送して、その横にいる中国向けや、韓国向
けの船舶を無視するというのでは、国際的には、納得を得られる対
応ではありません。しかも、今回の場合、海賊相手の警察行為です
から憲法上の制約を理由にして他国船を保護しないという事は出来
ません。国際社会からは、準備の悪さを非難されるだけと言う事に
なります。

更に、船団を組ませる事自体が、非常に難しい事を無視しています。
少し考えれば判りますが、船団を構成する各船は、自分が船団のど
の位置にいて、前後左右の船とは、どの程度の間隔を維持しながら
どの位の速度で、どの方向に進むのかを知っていなければなりませ
ん。また、海賊が現れた場合は、どの方向に避けるかもキチンと決
めておかないと、船団を維持する事ができず、最悪、海賊を避けよ
うとして海上衝突事故を招く事になってしまいます。

しかも、各船は、これまで船団を組んだ経験もなく、操船性や加速
性もマチマチなのです。さらに船団の指揮をどの様に行うかも問題
になります。各国海軍は、信号旗による艦隊行動に慣れていますが
今時の商船は、頻繁な信号旗の交換の経験が事実上ありません。
恐らく、船団を組む事は不可能であり、勝手に走っている商船の横
を、ごくまばらに護衛艦が伴走するという程度になってしまう事が
容易に想像されるのです。

では、解決策が無いのかと言えば、そんな事はありません。各国の
護衛艦が受け持ち海域を決めて、その海域に関しては確実に安全を
守るという体制を構築する事が一番現実的です。今時の護衛艦は、
ペリコプターを搭載していますから、一隻で50km四方の海域を守る
事ができます。この50km四方のゾーンを多国籍護衛艦隊を構成する
各艦が作り、そのゾーンを連続させる事で安全な航路帯を作り上げ
る事ができます。

日本が護衛艦二~三隻を派遣するだけでは、商船の安全を守る事は
不可能です。国際的な艦隊の一部として同じ行動基準の下に航路帯
防衛を行う事しか海賊対策として有効でない事を念頭に置いて、派
遣に関わる法体制の整備を進めるべきであると考えます。

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