2009年1月15日木曜日

過剰報復が中東和平を促す皮肉


※写真は、時事通信サイトから転載

ガザ侵攻 「過剰報復」浮き彫りに 死者1000人超す

【エルサレム前田英司】イスラエル軍のガザ攻撃によるパレスチナ人死者が
14日、空爆開始からわずか19日で1000人を超えた。イスラエル国内で
パレスチナ武装勢力の自爆テロが続発し、激しい報復攻撃が繰り返された「第
2次インティファーダ」(反イスラエル抵抗闘争)当時を大きく上回るペース
で、「過剰報復」の実態が浮き彫りになっている。イスラエルは侵攻を「正当
な自衛」と位置付けるが、被害の拡大に国際社会の非難は日ごと高まっている。

イスラエル軍は先月27日、ガザを支配するハマスの「弱体化」を狙って空爆
を開始。ロケット弾攻撃の停止と、エジプト境界の地下トンネルを通じた武器
密輸の阻止を掲げて、3日夜には陸上部隊がガザ地区内へと侵攻した。攻撃は
連日、昼夜を問わず続き、これまでの空爆回数は2300回以上に達する。

イスラエルは、標的はハマスであり、市民ではないと強調する。攻撃の際には
事前にビラを巻くなどして警告し、住民の巻き添えを最大限、抑制していると
も説明している。しかし、ガザ市のシーファ病院で医療支援に当たったノルウ
ェー人医師は「死者の3分の1、負傷者の半数は女性や子供だった」と批判し
ている。

イスラエルのシャロン前首相が00年9月、エルサレムのイスラム教の聖地を
強行訪問して勃発した「第2次インティファーダ」はイスラエル、パレスチナ
双方の暴力の連鎖に発展した。この間のパレスチナ人死者はガザ、ヨルダン川
西岸の両自治区を合わせて3年間で計2480人。今回は、この1年当たりの
死者をすでに上回った。

死者数は、パレスチナの市民を巻き添えにする攻撃の激しさを示すものだ。欧
州連合(EU)の行政府、欧州委員会のミシェル開発・人道援助担当委員は「
(ロケット弾攻撃への反撃としては)あまりに不均衡だ」と非難している。

国際社会の過剰報復批判に対し、イスラエル側はハマスが市民を「人間の盾」
にしていると主張している。

(毎日新聞 2008/01/15)


過剰報復とは一体なんでしょうか?イスラエルのユダヤ人が、パレ
スティナ人程死んでいないから、過剰報復なんでしょうか?それと
もガザに侵攻したイスラエル軍の損害が少ないから過剰報復なんで
しょうか?それとも、ハマスの発射したロケット弾に比べ、イスラ
エルの報復の規模が大きいから過剰報復なのでしょうか?もし、そ
うであれば報復としてどの程度の規模が適性なのでしょうか。

元々、ハマスは、軍事的に勝利する可能性が全くないにも関わらず
イスラエルとの停戦延長に反対し、停戦期限後は1000発以上の
ロケット弾をイスラエルの一般市民に向けて発射したのが、今回の
イスラエルの反撃のきっかけになっています。ハマスとしては、勿
論、イスラエルが報復する様に仕向けていると言えます。

イスラエルの報復がハマスに対する嫌がらせ程度に留まっていたな
らば、イスラエルに一矢報いたと言う事で、パレスティナ人の溜飲
を下げると共に、イスラエルに対する敵愾心を醸成でき、且つ、ハ
マスに対するガザ住民の支持を一層堅固なものに出来るという訳で
す。その点で、イスラエルにとって、中途半端な報復は問題解決に
対して何ら有効な対策とはならず、ハマスを有利にするだけと言う
事になります。

現在イスラエルの報復は、ハマス戦闘員の根城となっている警察署、
ガザとエジプトの密輸ルートとなっている地下トンネル、ロケット
弾の発射拠点に対し行われているようです。しかし、ハマスは、非
戦闘員に隠れてイスラエル兵に対する攻撃を行っていますし、市街
地からロケット弾を発射する事で、コラテラル・ダメージ(付随的
被害)が一般人に出る様に仕向けています。そうする事で、国際世
論がイスラエル非難に向かう様に仕向けていると言えます。正しく、
旧日本軍が中国でやられた事と同じで、例えて言えば、イスラエル
は、今、南京事件の入り口にいる様なものと言えるでしょう。

イスラエルとして出来る事は、コラテラル・ダメージを可能な限り
出ない様な攻撃を行う事ですが、それが避けられないとすれば、一
般人の損害には目を瞑って、ガザの民衆やハマス戦闘員が士気を阻
喪する程の損害を与える迄、徹底的な攻撃を行う事です。そうする
事で、海外にいる好戦的なハマス指導者とガザで直接戦闘指揮を行
っている現場指導者や住民との間に間隙を生じさせ、ハマスを分裂
させる事が出来る様になります。そして、それが、ハマスの力を殺
ぐ事で、実質的な中東和平に道を開く事になると考えられるのです。


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