2010年7月15日木曜日

イプシロンロケット開発フェーズへ

※CGは、JAXAサイトからの転載

はやぶさ2:開発検討 総事業費270億円

小惑星探査機「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」について、文部科学省は14
日、開発計画の検討に入った。計画では14年7月~15年に打ち上げ、H2A
ロケットによる打ち上げを含む総事業費は270億円。今後、文科省宇宙開発委
員会の部会で資金計画や科学的意義を審議、8月の来年度概算要求までに結論を
出す意向だ。

はやぶさ2は、はやぶさが到着した小惑星「イトカワ」より形成年代が古く、
有機物や含水鉱物に富むとされる小惑星「1999JU3」を目指す。小惑星
に物を衝突させて人工クレーターを作り地下物質を採取する。19年ごろ地球
に戻り採取物質を収めたカプセルを地上に投下する。

また、文科省は、06年に廃止された国産ロケットM5に代わる新型固体燃料
ロケットも開発する方針を示した。「イプシロン」と命名され、13年度に打
ち上げ予定。高さ24メートル、重さ91トンとM5より小型・軽量で、打ち
上げ準備期間もM5の42日から世界最短の7日間に短縮する。打ち上げ費も
M5の半減の38億円に抑え、小型科学衛星や将来の月探査機に使う。開発費
205億円。

(毎日新聞 2010/07/15)


はやぶさ2についても、折を見て取り上げたいと思いますが、それ
よりもイプシロンロケットの開発移行が宇宙開発委員会で決定され
る見込みです。それを受けて来年度予算で開発予算がつけば、本当
の開発着手となります。

現在、日本が打ち上げているロケットは、大型のH-2AとH-2B
しかなく、M-Vを退役させた為、小型の衛星を安価に打ち上げた
いというニーズに対応できませんでした。例えば、H-2Aを用い
た、先の「あかつき」の打ち上げでは、約500kgの衛星本体と同規
模の相乗り衛星を金星への軌道に投入しています。相乗りをする側
にとっては、打ち上げ費用の節約ですが、メインペイロードにとっ
ては、無駄な打ち上げ能力の為に、コスト高になっている事を意味
します。

そこで、H-2Aに比べ数分の一の打ち上げ能力を持つロケットを
H-2AのSRB-AとM-Vの二段目、三段目を組み合わせる事
で安価に開発すると同時に、M-Vで実現できていなかった高い運
用性と即応力を実現したロケットを開発しようという事になったも
のです。

イプシロンロケットは、M-Vに続き、戦後、日本が全く独自に開
発した固体燃料推進ロケットの系譜を受け継ぐロケットであり、こ
れまで開発された技術を受け継ぐ事も目的の一つとなっています。

先代の固体燃料ロケットであるM-Vが、ペイロードの拡大を主た
る目標として開発されたのに対し、今回のイプシロンロケットでは、
ペイロードこそ三分の二になりますが、コスト、即応力、運用性で、
世界最高水準を目指す事になります。

具体的には、打ち上げコストは、38億円に抑えられ、打ち上げ準備
に要する期間も7日に短縮されます。また、打ち上げ直前まで衛星
へのアクセスと調整が可能とされています。更に、従来の打ち上げ
では多数の打ち上げ要員が必要でしたが、これも、大幅に簡素化さ
れ、ロケット組み込みの自己診断機能と相まって、ノートパソコン
程度の簡素なシステムでも打ち上げ管制が可能となる見込みです。

この簡易管制システムの機能を利用して、移動射点にも対応する事
で、従来限定されてきた打ち上げ期間の制約を外し、機動的な打ち
上げを可能とする事も開発目標とされています。

ユニークなのは、固体燃料ロケットの宿命である軌道投入精度の粗
さを改善する為、オプションで、第四段目(?)に液体燃料推進系を
持つ事です。これによって、高い軌道投入精度を必要とするペイロ
ードを打ち上げる事も可能になります。

打ち上げ場所は、まだ決定されていませんが、従来、ISASのロケッ
トが打ち上げられていた内之浦宇宙空間観測所が有力とされています。

なお、イプシロンロケットは、一段目にSRB-Aを採用した為に
法制上陸上輸送が不可能であり、内之浦での打ち上げは困難とされ
ていましたが、この問題は既に解決したと言われています。(どの
様に解決されたかは不明です。)

イプシロンロケットの開発が順調に進めば、初打ち上げは、平成25
(2013)年度に行われる事とされています。

一見、バラ色のイプシロン計画ですが、弱点が無い訳ではありません。
一番目に付くのは、38億円という打ち上げ費用です。当初は打ち
上げ費用は約30億円という触れ込みでしたが、コストを積み上げ
ると25%近い上昇となってしまった様です。M-Vと比較すれば、
半分になったと言うものの、このコストでは、国際的な打ち上げ市
場での競争力はありません。競争相手となるFalcon-1はペイロード
こそイプシロンの約半分ですが、コストは約6億円と単位ペイロー
ド当たりの単価で三分の一の数字を実現しています。

Falconは、商業打ち上げサービスとして、極めて安価な打ち上げ費
用を実現する為に、ロケット本体以外にも打ち上げ施設、発射管制
を含め、ぎりぎりまでトータルコストを絞り込んだ全体設計が行わ
れています。これが民間企業の持つ商売の厳しさだと言えばそれま
でですが、イプシロンも元々は同様のコンセプトを持っていた筈で
す。それにしては、コスト削りこみが不足しているのではと懸念せ
ざるを得ないのです。


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