2010年7月13日火曜日

韓国哨戒艦撃沈事件 国連安保理議長声明による幕引き

※引き揚げられた「天安」の船体。中央日報Webサイトから転載

哨戒艦撃沈事件 国連安保理 北非難の議長声明採択

韓国哨戒艦撃沈事件をめぐって協議を続けていた国連安全保障理事会は9日
(日本時間同日深夜)、北朝鮮を事実上非難する議長声明を全会一致で採択した。

韓国政府が当初求めていた新たな制裁決議からは数段弱い結論となったものの、
中国が一貫して北朝鮮への厳しい対応に難色を見せてきた中での非難声明採択
は、連携して交渉に当たった日米韓にとって一定の外交的勝利といえそうだ。

事件の実質協議を行っていた5常任理事国と日本、韓国が8日、声明案で合意
に達し、ただちに緊急会合が招集されて全15理事国に同案が配布されていた。
11項目からなる声明は、まず「哨戒艦沈没につながった攻撃を非難する」と
したものの、攻撃の主体は明示せず北朝鮮を名指しする表現は避けた。その一
方で、事件を北朝鮮の攻撃と結論づけた、韓国などの合同調査団の調査結果に
言及し、安保理として「深い懸念」を表明、間接的表現ながら北朝鮮を非難した。

また、事件に関して「無関係」とする北朝鮮の主張についても「留意する」と
の表現で触れ、最低限のバランスをとった。問題の平和的解決の重要性も強調、
北朝鮮を刺激するような強い対応に難色を示してきた中国への配慮を示した。

合意後、ライス米国連大使は「明確で適切な内容の声明案がまとまった」と評
価。日本の高須幸雄国連大使も「われわれの求めた要素が含まれ、韓国も納得
する内容だ」と述べた。

(産経新聞 2010/07/09)


私は5月20日のエントリーで次の様に書きました。

「最終的に北朝鮮を非難する安保理議長声明が気が抜けたタイミング
で行われる程度で、幕引きが行われるのではないかと思われます。」

韓国哨戒艦沈没 中国の非協力で韓国民の恨はどこへ行く
http://ysaki777.iza.ne.jp/blog/entry/1612569/

その予想通りと言うべきでしょうか、それから一ヶ月半を経過して
漸く出された安保理議長声明は何とも気の抜けたものになってしま
いました。

北朝鮮を名指しで非難する事もなく、北朝鮮の言い分にも耳を傾け
るなど休戦協定違反を指摘する事もない、安保理決議でもない単な
る議長声明でしかありません。

これに対する北朝鮮の反応は、「われわれは、議長声明が『朝鮮半
島の懸案問題について直接対話と交渉を再開し、平和的に解決する
ことを奨励する』とした点に留意する」とし「6カ国協議を通して
平和協定と非核化実現に一貫して努力していく」という他人事の様
な反応を朝鮮中央通信が伝えています。北朝鮮にとっては、勝利以
外の何者でもないでしょう。

一国の軍艦が、休戦ラインの自国側で、予告なく、一方的に攻撃さ
れ、46名の死者を出した割には、余りにも軽い扱いであり、亡く
なった方には非常に申し訳ない言い方ですが、「犬死」以外の何者
でも無い様に思えてなりません。これでは、大した報復もできずに
泣き寝入りとなる死者家族の恨だけが残る事になりそうです。上記
のエントリーでは、韓国民の恨だけが残ると書いたのですが、韓国
民は北朝鮮を非難する事すら恐れているように見えます。(その割
には、報復される事のない日本に対する攻撃には熱心です。)

この様な扱いになった理由は明らかです。P5(国連安保理常任理事
国)の一角を占める中国が同盟国たる北朝鮮を擁護したからに他な
りません。その上、当事国である韓国も、本音の処では、北朝鮮と
戦争状態に陥る事、ひいては、崩壊した北朝鮮を再建する義務を負
うのを避けたからであると言えます。韓国内の国論が北朝鮮を支持
する進歩派の影響もあって統一されていると言えなかった事も韓国
の立場を弱くしたと言えます。

元々、北朝鮮との対立を避けたがっていた韓国の李政権は、統一
地方選に現れた事を大きくしたくないと言う世論を踏まえ、取敢え
ず面子が立てばそれで良いという方針をとっていた様に見えます。
また、韓国のパートナーである米国も、それ以上を望みませんでした。
米国はイランとの緊張が高まる中で、北朝鮮との緊張を高める事に
積極的ではありませんでした。(個人的には、そういう米国が動き難
い時期を選び、イランと北朝鮮は結託して米国を挑発している気が
します。)
テロ支援国再指定についても、北朝鮮はテロを支援しているのでは
なく、テロを実行した国であるからという屁理屈で回避しています。

北朝鮮は、テロ行為に加担した事を褒められこそしませんでしたが
名指しで非難もされませんでした。これはある意味で、北朝鮮が軍
事力を使った火遊びを続ける事を奨励している様なものです。
将来、北朝鮮が、核ミサイルを他国に打ち込む様な事態に至った時、
なぜ、それまでに火遊びを止めさせなかったのかと問われる事にな
る事は、確実であり、六ヶ国協議参加国と安保理は、その道徳性の
欠如と欺瞞性を人道の名の下に非難される事になると思われます。
とはいえ、所詮、外交は国益のぶつかる場所であり、もともと、道
徳性を問われる場所ではないのですが、それにしても、今回の結末
は、酷いものと言う印象を拭えません。

強いて、犠牲者の霊に捧げるとすれば、これによって韓国海軍の対
潜戦闘に関する軍備や装備が整備され、将来、北朝鮮が再び、潜水
艦で韓国海軍に挑戦して来た時、それを受け止められる準備を行う
上での礎(いしずえ)になったという点は上げられると思うのです。


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