【ワシントン=山田哲朗】米国の有人宇宙探査計画を見直していたオバマ政権
は、1960~70年代のアポロ計画以来となる月面探査計画を中止すること
を決めた。
米メディアが28日、一斉に報じた。2月1日の2011年度予算教書に合わ
せて正式発表する。
米航空宇宙局(NASA)の予算は今後5年間で計約59億ドル(5300億
円)増額される。月探査の中止で浮いた予算と合わせ、現在、野口聡一さんが
滞在している国際宇宙ステーション(ISS)の利用は2020年まで5年間
延長される。
日本にとってはISSに飛行士を送り込むチャンスが増えるほか、ISSへの
物資補給で、より大きな役割を果たすよう国際的に期待されることになる。
一方、有人宇宙船を運ぶNASAの新型ロケット「アレス1」は開発を打ち切
り、民間企業が開発する新ロケットを活用する。
月とそれに続く火星探査は、ブッシュ前政権が04年に目標に設定した。しか
し景気悪化で予算が大幅に不足、オバマ政権は抜本的に見直す作業を進めてい
た。NASAは、比較的予算が少なくて済む小惑星探査などを検討するとみら
れる。
(読売新聞 2010/01/29)
実際の発表は、日本時間の本日(2/1)夜に発表される予算教書で明
らかになりますが、既に、いくつかの新聞社から、米国の新しい
宇宙計画の概要が報道されていますので、その内容をご紹介します。
まず、一番大きな方針変更は、有人月探査計画であるコンステレー
ション計画に関する予算が削られる事です。これは、開発中の打ち
上げロケットであるアレスI、アレスVの他、有人カプセルである
オリオン宇宙機についても適用されます。
(ただし、アレスVに相当するヘビーリフター(重量物打上ロケット)
は、より少ない予算で開発する方法が検討されるべきだとされてい
ます。)
これによって、開始から6年を経過し、既に91億ドルを費やした
オリオン計画は、何らの成果なく中断される事になります。
NASAは予算額こそ、現状よりも大きな金額が認められますが、その
金額は有人月探査計画を満足させるものではありません。
そして、地球低軌道への物資、人員の輸送に関しては、民間ベース
で行われる事が奨励される事になります。これは、宇宙開発のアウ
トソーシングとも言えるもので、この為に、5年間で数十億ドルが
支出されます。
政府は宇宙飛行士の為に、タクシーに乗せる様に、宇宙行きの座席
を買うだけで済む様になるという発想です。航空輸送の揺籃期に、
民間業者の航空郵便輸送を政府が積極的に支援した事が、民間航空
事業の育成に役立ったのと同様の発想によるものです。
地球低軌道への物資と人員輸送を民間に任せる事で、NASAは、地球
軌道より遠い遠宇宙探査や、より良い観測衛星による地球探査や研
究に集中する事ができると言うわけです。
国際宇宙ステーションは少なくとも2020年(従来は2015年)まで運用
期間が延長されます。
ただし、それ以外の計画については、まだ、固まっている訳では無
いようです。特に有人宇宙探査計画については、有人の小惑星や火
星の月探査、あるいは、恒久月面基地ではなく、ごく小規模な月面
での有人活動といったものから選ばれる事になる見込みです。
いずれにせよ、それが決定されるまで、NASAには新しい大型開発計
画がなくなってしまう事になります。
有人月面探査計画を実現不可能にした実質的な要因は国際宇宙ステ
ーション(ISS)であり、米国にはこのISSの延命と有人月面探査を同
時に行う余裕はないという実際的な決断が今回の計画変更につなが
ったというべきでしょう。
NASAの宇宙開発は、ある側面からすれば、高給を取るNASA技術者や
宇宙関連産業従事者に雇用機会を与える事でもあります。今回の大
幅な宇宙開発計画の変更は、間違いなく、米国の産業に対し大きな
影響を与える事になります。しかし、米国での宇宙事業従事者の雇
用の為に過去最大の宇宙開発計画の成果であるISSを完成後わずか
数年で放棄するのも、余りに非合理です。コンステレーション計画
の断念は、宇宙ファンには残念な事件ですが、オバマ政権は合理的
な指導力発揮したというべきではないかと考える次第です。
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