2010年7月27日火曜日

新防衛構想 東シナ海重視の日本防衛戦略

※自衛隊組織図

自衛隊、沖縄・南西に重点配備…安保懇が提言

政府の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(菅首相の諮問機関、
座長=佐藤茂雄・京阪電気鉄道最高経営責任者)が来月上旬に首相に提出する
報告書原案の全容が25日、判明した。

朝鮮半島や台湾海峡有事を念頭に、機動的で実効性のある防衛力整備を目指す
ことを打ち出し、冷戦時代からの国防の基本方針だった「基盤的防衛力構想」
の見直しを提言している。集団的自衛権をめぐる憲法解釈見直しの議論を踏ま
えた制度整備を提言し、武器輸出3原則の緩和も求めている。

報告書は、民主党政権下で初めて策定される新たな「防衛計画の大綱」(防衛
大綱)のたたき台となるもので、年末の大綱策定にどう反映されるかが今後の
焦点となる。

原案では、冷戦時代以降、自衛隊を全国に均衡配備する根拠となってきた基盤
的防衛力構想について、現在の安全保障環境にそぐわないとして撤廃を提起。
朝鮮半島や台湾海峡有事とともに、「限定的で小規模な侵略」などの有事に能
動的に対処できる態勢整備を求めている。

具体的には、単一のミサイル攻撃といった事態への対処より、「複合的な事態
の発生に対処できる機動的、弾力的、実効的な防衛力整備」を提言している。
部隊配備は、全国均衡から沖縄・南西諸島重視への転換が視野にある。

また、世界の平和と安定に貢献する「平和創造国家」を目指すべきだとし、国
連平和維持活動や海賊対処、災害救援活動に積極参加できる整備を促している。

集団的自衛権については、米国に向かうミサイルの迎撃を可能とするために憲
法解釈を見直すべきだとした過去の議論を踏まえ、自衛隊がそうした事態を想
定した演習を行えるよう、態勢の整備を求めている。

諸外国への武器や関連技術の輸出を禁じた武器輸出3原則については、米国や
その同盟国など、価値観を共有する国との装備品の共同開発・生産や、日本企
業による国際開発・生産計画への参加を認めることを提言している。

日米同盟については、日本の安全保障戦略や地域の安定に極めて重要だとした
上で、沖縄の戦略的重要性は今後一層高まるとし、在日米軍基地の安定運用に
向け、基地の日米共同使用の推進などを提言している。

今後約10年間の防衛力整備の指針となる防衛大綱の策定は当初、昨年末に予
定されていたが、政権交代に伴い、1年先送りされた。新たな懇談会が今年2
月に発足し、議論を重ねてきた。

◆基盤的防衛力構想=1976年策定の防衛大綱で打ち出された防衛力整備の
概念。各種侵略に対して独立国として必要最小限の防衛力を保有するとし、力
の空白を作らぬよう、自衛隊部隊を均衡に配備するべきだとした。「存在する
ことが自衛隊の仕事」という考え方の源流ともいわれる。冷戦後の95、
2004年に策定された二つの防衛大綱でも撤廃されず、部隊編成の硬直化の
一因とされてきた。

(読売新聞 2010/7/26)


東シナ海を指向する日本の軍事力

日本政府が、中国と向き合っている沖縄など、東シナ海近辺に軍事力を集中さ
せる手順を進めている。日本はこれまで、同地域の安全保障については在日米
軍に任せ、自衛隊は日本国内にバランスを取って配備してきた。

26日付読売新聞は、首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する
懇談会」が、自衛隊の全国均衡配備を設定した「基盤的防衛力構想」(1976年
に設定された日本の防衛力整備の基本概念)の撤廃を報告書に盛り込み、来月
上旬に政府へ提出すると報じた。懇談会の報告書は、今年末に改訂される「防
衛計画の大綱」に大きな影響を与える。

同紙によると、懇談会は報告書の原案で、自衛隊の「機動的実効性」を確保す
るため、自衛隊の部隊配備の原則を「全国均衡」から「沖縄や南西諸島重視」
へと転換することを要求した。ここには、日本政府が米軍の削減を推し進める
沖縄や、中国との間で領有権紛争が起きている尖閣諸島も含まれる。

これと共に懇談会は、▲米国に向かうミサイルを(日本が)迎撃できるよう、
「集団的自衛権」に関する政府の憲法解釈の変更と自衛隊の要撃訓練の実施
▲米国や米国の同盟国など、価値観を共有する国と装備品を共同開発・生産す
るため、「武器輸出三原則」の緩和-などといった内容を原案に盛り込んだ。
「集団的自衛権」とは、同盟国が攻撃された場合、共に戦える権利のこと。現
行の日本国憲法は第9条で、交戦権そのものを認定していない。また、1967年
に決定された「武器輸出三原則」は、日本政府の厳格な追加解釈により、現在
では武器および武器技術の実質的全面禁輸を意味している。

(朝鮮日報 2010/07/27)



従来、日本の防衛力整備は、各種侵略に対して独立国として必要最
小限の防衛力を保有するという基盤的防衛力構想に基づく防衛計画
の大綱とその兵力整備の規模を明示した大綱別表を大枠として整備
されてきました。

この基盤的防衛力とは、「独立国としての侵略に対処する為の最低
限の防衛力」ですから、冷戦が終わっても、ソ連がなくなっても、
中国が台頭しても、本来であれば、考え方の変化は必要なさそうに
も思えますが、実際には防衛対象国がソ連であるか中国であるかは
大違いです。地形上も宗谷、津軽、対馬三海峡のチョークポイント
で押さえられていたソ連と、その様なチョークポイントがなく、第
一列島線、第二列島線で抑えないといけない中国が相手では、対応
も対策も、兵力整備も自ずと異ならざるを得ません。端的に言えば、
冷戦時が北方重視であったのに対し、中国の海洋進出を考えると、
沖縄、南西諸島重視に変更せざるを得ないのです。

こうした安保懇の動きと読売新聞の報道に、朝鮮日報は、すばやく
反応して「東シナ海を指向する日本の軍事力」という題の記事にし
ています。

この変化の方法については、最近の国際情勢の変化を考えれば、当
然の事と考えます。重点を沖縄・南西諸島に置くのも納得できます。
ただ、少し心配であるのは、民主党政権下で、どこまで中国を対象
にした防衛力構想を作り上げる事ができるか、また、防衛力の増強
が本当に可能なのかという点です。実際、上記の記事でも、基盤的
防衛力整備を放棄して、「限定的で小規模な侵略」などの有事態勢
整備を求めていたり、ミサイル防衛に関するトーンが落ちている様
にも思われます。ミサイル防衛については大綱を変更する事なく、
北朝鮮の核武装に対応しようとした為、組織的に各所に無理を生じ
たとも言えますが、依然として北朝鮮は、日本にとって最大の不安
定要因である点に変わりはありません。

また、中国海軍の海洋進出と、その行動は、ソ連海軍のそれと比べ
ても、露骨、冒険的で且つ自己主張に満ちており、日本としても、
直接的な対抗処置を取らざるを得ない処です。しかし、国連平和維
持活動や海賊対処等もあわせ、従来以上の活動が要請されながら、
実際には、財政面での限界から、三自衛隊の定員や予算が固定され
たり、逆に削減される可能性すら高まっているのであり、戦略重心
のシフトが、沖縄・南西諸島への大幅増強ではなく、他地域の大幅
な配備削減と沖縄・南西諸島への若干の増強によって実現が図られ
るのではないかと懸念せざるを得ないのです。

その意味からすれば、今回の「東シナ海を指向する日本の軍事力」
構想が、これから決められる防衛計画の大綱に纏められる段階で、
どの様な具体的な整備内容になるか注目すべきではないかと考える
処です。


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