2010年7月26日月曜日

海自潜水艦増強 本当に実現できれば良いのだが...

※海自潜水艦「そうりゅう」。KURE-NEWS Webサイトより転載。

海自潜水艦を増強 活発化する中国海軍に対処 防衛大綱改定

防衛省は24日、年末に改定する「防衛計画の大綱」で海上自衛隊の潜水艦を
増強する方針を固めた。現在の18隻態勢から20隻台に引き上げる。昭和51
年に初めて策定した防衛大綱で隻数を定めて以降、増強は初めて。東シナ海と
太平洋で中国海軍の動きが活発化し、活動範囲が広がっていることや、北朝鮮
潜水艦による魚雷攻撃と断定された韓国哨戒艦撃沈事件を受け、日米の抑止力
と情報収集能力を強化する狙いがある。

海自の潜水艦は51年策定の防衛大綱の「別表」で16隻と定め、その後の大
綱改定でもそのままだった。ほぼ毎年、最も老朽化した1隻が退役する代わり
に新造艦1隻が就役することで、18隻態勢(教育訓練用の2隻を含む)が維
持されてきた。20隻台に増強する際には、新造のペースは変えず、退役時期
を延ばす計画だ。船体技術の向上や運用に工夫を凝らすことで使用期間の延長
が可能という。

東西冷戦期には、海自の潜水艦の任務はソ連太平洋艦隊に備えるための宗谷、
津軽、対馬の3海峡封鎖に重点が置かれた。しかし、アジア・太平洋地域で中
国海軍の存在感が増すにつれて、その任務は中国などを念頭においた南西方面
への対応にシフトしている。

中国海軍は10年以上にわたり潜水艦の保有数を約60隻で維持する一方、近
代化を急ピッチで進めた。台湾海峡有事で最大の敵となる米空母の接近を阻止
するには、隠密性に優れた潜水艦が切り札になるためだ。

4月、中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間を通過した際、中国が保
有する潜水艦の中で最も静粛性が高く、探知されにくいキロ級潜水艦が潜航せ
ずにあえて浮上航行した。これは、太平洋まで活動範囲を拡大し、「より前方
で米空母を足止めできる能力を誇示した」(防衛省幹部)ものとみられている。
米国防総省が2月に発表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)は、中
国の接近阻止能力への対応を重点項目に挙げ、米軍の態勢強化と同盟国の能力
向上が必要としている。このため、海自の潜水艦態勢の強化は急務となっていた。
     ◇
防衛計画の大綱 日本の国防政策と防衛力整備の基本方針。昭和51年の策定
以来、今年で改定は3回目。有識者による「新たな時代の安全保障と防衛力に
関する懇談会」が今夏に提出する報告書と防衛省などの計画案を踏まえ、年末
に新たな大綱を閣議決定する。
     ◇
海上自衛隊の潜水艦 通常型と呼ばれるディーゼル動力艦だけで原子力潜水艦
は保有していないが、静粛性などで世界最高レベルとされる。最新鋭の「そう
りゅう型」はAIPという新たな動力装置を搭載し、長時間の潜航が可能。潜
水艦の建造費は1隻約500億円。

(産経新聞 2010/07/25)


産経新聞は、先日も、F-Xの選定遅延から当面の繋ぎとしてF-
2を増産するというスクープ記事を出していましたが、他紙は追従
せず、逆に朝日新聞は、それを否定する記事を出す始末で、信頼性
に疑問符がついてしまいました。

今回の記事も同じです。海自潜水艦の退役艦齢が諸外国と比べ、非
常に早いのは、周知の事実です。その理由は、毎年一隻という建造
ペースを維持しながら、保有隻数を大綱の枠内に収める為です。
但し、2000年以降は練習潜水隊が編成され、練習潜水艦2隻が別枠
で配置される様になっているので、現役16隻と練習潜水艦2隻の
合計18隻が保有枠になっています。

今回の構想は、この退役艦齢を今までの18年から20年以上とす
る事で、保有潜水艦数を増加させようというものです。その点では
実現可能なのですが、保有潜水艦数を増加させると、当然、乗員や
支援要員の数が増加します。

近年、海自は、大型艦が増加し、海外任務が増加しているにも関わ
らず艦船乗員の定員は変わらずで、隊員の負担と不満が高まってい
るといいます。水上艦艇に加え、潜水艦隊でも、定員が増加しない
と同様の現象が生じる可能性は高いと思われます。それに加え、稼
動潜水艦数が増えると保守、補修用の費用も増加する筈ですが、社
会保障費以外の予算の抑制方針の中でこれも、本当に手当がされる
のか疑問なしとしません。

日本の将来を左右する科学技術関係の費用すら仕分けしようという
民主党の事です。一年目こそ、22DDHの予算が通りましたが、
今後、政治主導の名目で、マスコミや一般受けのする防衛費の一方
的に削減を行う可能性は、予算編成が厳しさを増せば増すほど、高
くなる筈です。その様に考えると、この記事の様な潜水艦隊の増勢
という意思が、例え、防衛省内で固まっていたとしても、実現性と
継続性には大きな疑問を感じざるを得ないのです。


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