※図は、Seattle TimesのWebサイトから転載。
ボーイング、787ドリームライナー試験飛行一時中止-水平尾翼の問題で
米航空機大手ボーイングは、次世代中型機「ボーイング787 ドリームライナー」
の水平尾翼に製造上の問題を発見したため、試験飛行を一時的に中止した。
シアトル・タイムズ紙(電子版)が伝えた。
問題は、ワシントン州エベレットの同社工場で過去1週間以内に発見され、シ
アトル・タイムズ紙の報道で初めて明らかになった。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の問い合わせに対し、ボーイングの関係
者は今のところコメントをしていない。
シアトル・タイムズ紙がボーイングの広報担当者の発言として伝えたところに
よると、すでに飛行済みの5機と製造された18機について、検査が行われる見
込みで、影響を受けた個所は修理されるという。検査により修理が必要になっ
た場合、修理は最大8日かかるという。
787プログラム担当責任者は22日、シアトルでの記者会見で同機には問題がな
いと言っていた。
スケジュールが大幅に遅れているボーイング787 ドリームライナーにとって、
今回の試験飛行中断は新たな汚点となる。
同紙によると、ボーイングの広報担当者は、今回5機の試験飛行が中断されて
も、最初の引き渡し時期がさらに遅れることにはならないと述べていいる。
(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2010/06/25)
先日、GEnxエンジン搭載ボーイング787の初飛行のエントリーを
書いたばかりでしたが、残念ながら今日は試験飛行一時停止のニュ
ースです。
上記の記事にあるSeattle Timesの記事原文は、以下のURLで読む事
ができます。
http://seattletimes.nwsource.com/html/businesstechnology/2012201147_boeing25.html
この記事によれば、問題が発生した水平尾翼はイタリアのアレニア
社が担当したもので、アレニア社での組み立て工程で誤りが発見さ
れたというものです。
先週、ボーイング社のエンジニアがテスト機を点検した際、そのま
ま放置すれば、亀裂が発生する可能性がある異常を見つけ、その原
因を解析した処、水平尾翼を機体に取り付けるブラケットという部
材がアレニア社内で誤った手順で取り付けられているのが判明した
と言います。
ボーイング社によれば、5機のテスト機とこれまでに製造した23機
の点検には、1~2日しかかからず、もし、問題があっても、その
修理には8日しかかからないといいます。今の処、この問題によっ
て引渡しスケジュールに影響が出る事はなく「遺憾ではあるが対応
可能な問題」というのが同社の説明です。
しかしながら、787で今まで、発生した各種の問題も全て、当初
は、小さな問題と発表された後、引渡し延期に至ったケースが多か
っただけに、ボーイング社の説明をそのまま、素直に受け取る向き
は少ない様に思われます。
航空会社にとっては、引渡しスケジュールの遅延は、機材繰りに大
きく影響するだけに大問題であるのは言うまでもありませんが、乗
客の側から言えば、新しい機体は、今まで以上の安全性が期待され
ている訳で、787が炭素繊維複合材と言う新素材を多用した機体
であるだけに、過去の航空事故の教訓、例えば、コメット機が初め
て経験した金属疲労問題と類似した新素材に特有の問題点がないか、
十分にチェックを重ねて欲しいものだと思います。
なお、アレニア社は、水平尾翼と共に、後部胴体の生産も担当して
おり、ちょうど、一年前にも、規定仕様外の部品を使用した事で胴
体外皮に皺を発生させ、この修復と解決に、多大の時間を要した過
去があります。
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