2010年5月27日木曜日

手作り衛星は元々難しい。失敗を恐れずチャレンジを

金星探査機「あかつき」:相乗りの衛星3個所在不明

21日に鹿児島県種子島から金星探査機「あかつき」とともに打ち上げられた
相乗り小型衛星4個のうち、鹿児島大の「KSAT」など3個が所在不明にな
っていることが26日、宇宙開発委員会への連絡で分かった。不明なのはKSAT
のほか、全国22の大学と高専が参加した「UNITEC-1(しんえん)」、
早稲田大の「WASEDASAT2」の2個。残る創価大の「Negai☆」
は電波が受信できている。

(毎日新聞 2010/05/21)

今回、金星探査機「あかつき」、小型ソーラー電力セイル実証機
「イカロス」と同時に打ち上げられたピギーパック(相乗り)衛星は、
4個ありますが、その内、創価大の製作した「Negai☆」を除
く三個が地上局との交信が出来ず、行方不明になっています。

この内、大学、高専連合の「UNITEC-1」は、5月21日に
は、交信できていましたが、22日午前3時以降は、交信できてい
ない状況です。同じく、鹿児島大学の「KSAT」も21日に一旦
交信できていましたが、その後は、交信出来ていません。早稲田大
の「WASEDASAT2」に至っては、打ち上げ以降は、交信が
できない状況が続いています。

創価大学の「Negai☆」については、27日まで連続で受信さ
れていますが、一回当りの交信時間は数分から十数分となっています。
「KSAT」や「WASEDASAT2」についても、軌道はほぼ
同じですから、交信チャンスは、ほぼ同じであると考えられます。

それに対して、「UNITEC-1」は金星への軌道を飛行してい
ますので、交信チャンスは一日一回になります。先行する「あかつ
き」の運用報告を見ていますと、既に、地球からの距離は、200
万キロ以上になっています。

ピギーパック衛星が行方不明になりがちなのは、衛星がそもそも小
さいので、衛星が発信できる電波の強度が低い事があげられます。
また、受信局側も、例えば「あかつき」の場合、直径64mのパラ
ボラアンテナを持つ臼田宇宙空間観測所や同じく直径30mと20
mのパラボラアンテナを持つ内之浦宇宙空間観測所で交信を行って
います。

それに比べ、例えば、今回、UNITEC-1用に、大学、高専連
合が準備できたのは、九州大学に設置した2.4mのパラボラアン
テナでしかありません。2.4mと30mのパラボラアンテナでの
受信できる電波の強度は、156倍もの違いがあります。従って、
受信そのものが大変という事になります。

また、地球低軌道を周回する場合は、上記の交信、受信出力の問題
の他、一度の交信チャンスに交信できる時間が短いという難点があ
ります。例えば、「Negai☆」は一日に地球を16回周回しま
す。これは地球一周に1.5時間しかかからない事です。その分、
日本から見て、衛星は、見えたと思うとあっという間に見えなくな
ってしまう事を意味します。

今回、唯一継続して交信に成功している創価大の場合、大学内のみ
ならず、石垣島や八丈島にも通信局を設置し、交信可能時間を長く
している事が成功につながっている様に思われます。

もともとピーギーパック衛星のさきがけとなった缶サット(Cansat)
は、コーラ缶の大きさの「超小型衛星模型の設計・製作・運用を学
生自身が行うことで衛星開発に必要な知識と技術を獲得する事」を
目的としていました。打ち上げも模型ロケットを使用し、軌道に乗
せるなど夢物語でした。それが、キューブサットに発展し、実際に
軌道に乗せる処まで、発展して来た訳です。元々、衛星の設計、製
作、打ち上げ、運用を学生に経験させる事によって、宇宙技術の基
盤をより広いものにする事が目的である訳ですから、成功するかし
ないかは、二の次と言って良いとすら言えます。

今回交信に失敗したチームも成果に良否に拘らず、是非再度の打ち
上げに挑戦して欲しいものだと思います。

以前に、ピギーパック衛星の失敗を取り上げて、打ち上げ失敗と報
道した新聞社がありましたが、「あかつき」打ち上げにとっては、
ピギーパック衛星は、「おもり」の位置付けしかありません。マス
コミも、ピギーパック衛星の失敗を大きく取り上げすぎない様にし
て欲しいものだと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
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