北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈事件をめぐって、韓国の脱北者団体「NK知識人
連帯」は、金正日(キムジヨンイル)総書記(69)が全軍や人民保安省に万
全の戦闘態勢に入るよう指示したとの情報を明らかにした。一方、米国防総省
は24日、北朝鮮の潜水艦探知や海上封鎖を目的とする米韓両軍の軍事演習を
近く実施する方針を明らかにした。バラク・オバマ米大統領(48)はこの日、
北朝鮮政策の見直しを関係省庁に指示、金融制裁の強化やテロ支援国への再指
定など、独自の制裁措置発動について検討する方針を示した。
■「宣戦布告に当たる」
国防総省が韓国軍と合同で実施すると表明したのは、対潜水艦軍事演習と、大
量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に基づく海上封鎖訓練。韓国が昨年5月、
PSIへの全面参加を表明した際、北朝鮮は「宣戦布告に当たる」と反発して
おり、緊張が一段と高まりそうだ。
米韓両軍の連携をめぐっては、ホワイトハウスが24日未明、オバマ大統領が
北朝鮮の攻撃に備え、韓国軍との協調を米軍に指示したことなどを柱とする声
明を発表した。
国防総省のブライアン・ホイットマン報道官はロイター通信に対し、2012
年に米国から韓国への移管が予定されている朝鮮半島有事の際の作戦指揮権に
ついて、「まだ決定事項ではない」などと述べ、北朝鮮を牽制(けんせい)した。
米国政府は2008年10月に北朝鮮のテロ支援国指定を解除したが、「テロ
対策に協力不十分な国家」の指定は継続し、北朝鮮企業との商取引を禁じるな
どの経済制裁を続けている。
■主敵の概念復活
オバマ政権は国務省や財務省などに、北朝鮮の企業や個人に対する現行制裁の
実効性を洗い直し、さらなる金融制裁の強化に向けた制裁リストの追加を検討
する方針とみられる。
オバマ政権は、韓国政府が表明した国連安全保障理事会への問題提起を全面的
に支援しながら、北朝鮮を揺さぶる効果的な対抗策を模索していく意向だ。
一方、北朝鮮と韓国の南北軍事実務会談の北朝鮮代表は25日、韓国海軍の艦
艇などが黄海の南北境界水域で北朝鮮水域を侵犯する挑発行為を続けていると
主張、「侵犯行為が続くなら、われわれの領海を守るための軍事的措置が実行
される」との通知文を韓国側に送付した。
また、韓国の聯合ニュースはこの日、韓国政府が北朝鮮を国防上の「主敵」と
する概念を復活させる方針を固めたと報じた。政府当局者の話として伝えた。
韓国政府は1995年から国防白書で「北韓(北朝鮮)は主敵」と表現してき
たが、対北朝鮮「包容政策」を取った盧武鉉(ノムヒヨン)前政権時代、公表
する文書で「主敵」と明記するのは避けることにし、2005年に刊行された
04年版の国防白書から「主敵」の記述を削除していた。
(産経新聞 2010/05/26)
韓国の李明博政権の制裁発表に対し、北朝鮮は、南北関係の断絶を
宣言するなどエスカレーションを始めました。
北朝鮮の交渉戦術は、いつもそうですが、自分から緊張関係を高め
る行為を行い、その立場を変更させる為に譲歩を求めるというもの
です。これが上手くいくと、自分の立場を聊かも損ねる事なく相手
側の譲歩を引き出せます。
これが一番成功した例としては、ブッシュ政権のテロ支援国指定解
除があげられると思います。米国が北朝鮮に手玉に取られた一例で
すが、それが外交上の大失敗と米国のオバマ政権の反省材料になっ
ているのですから、短期的な成功事例ではあっても、長期的な成功
事例とは言えないのかも知れません。
さて、例の如く、北朝鮮は、韓国との関係を断絶した上で、上の記
事によれば、戦闘態勢に入る様、金正日が指示を出した様ですが、
どこまで本当なのでしょか。
軍事用語では戦争準備に入る事を動員(Mobilization)と言います。
動員によって軍隊は平時編制から軍時編制に移行します。欠員は召
集され、武器庫は開かれて武器弾薬が配布され、いつでも戦争に移
れる様に準備します。この兵員の召集と軍需物資の配布は、大変な
量の輸送需要を発生させますので国内の交通機関は、全て軍用に利
用される様になります。
北朝鮮は、もともと、動員を行わなくても、完全に兵員が充足され
ていると言われていましたが、実際には、農繁期の応援や施設の建
設に転用されており、実際の動員が行われれば、大量の人員や物資
の移動が発生する上、この移動コストは唯でさえ弱体化している北
朝鮮の経済的な苦境を倍化させる事は確実です。
今回の戦闘態勢の指示が本物かどうかは、北朝鮮の交通機関の動き
を観察するだけで明らかになる筈であり、そういう事実があれば、
即座に報道対象になると考えられます。
私は、北朝鮮の強硬な反応は外交的なポーズ(ブラフ)であると考え
ていますが、そう言い切れない一面もあります。それは、北朝鮮が
南北の関係断絶は、開城工業団地にも及ぶと言った点です。
北朝鮮は、開城工業団地から毎年40億円に相当する外貨収入を得
ていると言いますから、これを失う事は、非常に痛手になる筈です。
李明博政権も、インパクトの大きさから、これを制裁の通商関係断
絶の対象から外した程なのです。
その様な犠牲を払っても、金正日が強攻策をとってきたのは、今回
の一連の動きに政治的に重要な事項が絡んでいると考えられます。
例えば、金正日、金ジョンウンの権力継承に関係があるのかも知れ
ません。
その意味で、金正日がどこまでエスカレーションを計画しているの
か、単に軍事面のみならず、人的、物的な移動を含む各種の情報を
総合して冷静に判断したいものだと思います。
2010/5/26追記
北朝鮮の発表した開城工業団地関連の措置は、「南北経済協力協議事務所の凍
結・閉鎖および南側関係者の全員追放」で、開城工業団地の閉鎖ではありませ
んでした。やはり北朝鮮はへたれてますね。
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