※写真は、NASA Webサイトから転載
30年代に人類火星軌道に
新型船で小惑星探査も-オバマ米大統領が宇宙政策演説
オバマ米大統領は15日、航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センター(フロリ
ダ州)で新たな宇宙政策について演説し、「わたしたちは2030年代半ばまでに
人を火星の軌道に送り込み、地球に安全に戻すことができると信じている」と
述べた。火星軌道到達に成功すれば、その後火星着陸を目指すとした。
オバマ大統領は「月には到達した。宇宙には探査すべき場所が多くある」と述
べ、アポロ宇宙船で果たした月の有人探査を超え、火星有人探査を目標にする
ことを明示した。
大統領は2月、前政権が策定した月有人探査計画(コンステレーション計画)
を予算超過や遅延を理由に打ち切ると発表。年内にスペースシャトルが退役す
ることもあり、議会や宇宙産業界から雇用喪失や技術力低下への懸念が高まっ
ていた。
大統領は宇宙政策の概念を「より早く、頻繁に宇宙へ出て、低予算でより遠く
まで到達し、長期間滞在できるような技術を開発する」と説明。新政策の下で、
今後10年間でより多くの宇宙飛行士を宇宙に送り出すとした。
計画では、30億ドル(約2800億円)以上を投じて、2015年までに新たな打ち上
げロケットを設計し、その後建造に着手。大統領は「2025年までに新型宇宙船
により、月を超えた有人飛行を開始し、史上初めて小惑星に宇宙飛行士を送り
込み始める」と強調した。このほか、2015年までの予定だった国際宇宙ステー
ション(ISS)の運用を「5年以上延ばす」とした。また、「宇宙ステーション
への輸送を容易にするために、民間企業と連携する」と述べた。
(時事通信 2010/04/16)
米国の有人宇宙計画に大幅な見直しが行われる事になりました。
かねて有人宇宙計画に関する大統領諮問委員会のレポートなどでそ
の概要は明らかになっていましたが、単純にそのまま適用してしま
うとフロリダ州など、宇宙計画が大きな雇用を生み出している州へ
のインパクトが大きい事から、既存計画の一部を復活させた事と、
火星軌道到達という多少夢のある計画を追加した事が相違点である
と言えるでしょう。
ただ、根幹にあるのは、宇宙への人と物の輸送をNASAによるものか
ら民間打ち上げに委ねるという考え方で変わっていません。また、
既存のコンステレーション計画の中で、生き残ったのは、ISS(国際
宇宙ステーション)の緊急脱出装置に用途変更されたオリオン宇宙
船の司令カプセルのみで、開発が遅延していた有人打ち上げロケッ
トである、アーレス1は開発中止になりました。また、ヘビーリフ
ターと呼ばれる超大型物資打ち上げロケットであるアーレス5は、
一旦リセットされ、今後5年で設計の見直しを行うという事で、事
実上キャンセルとなりました。
ヘビーリフターに関しては、今後5年間、民間輸送事業の実績を見
定めた上で、小惑星などの地球近傍目標や火星へ到達する為に必要
となるロケットをヘビーリフターで一気に地球から直接打ち上げる
のか、それとも、民間打ち上げサービスを使って何回かに分割して
打ち上げ、打ち上げたモジュールを軌道上で組みあげる事で、構成
するのかを後日決定するという事であろうと思われます。
この宇宙計画の評価ですが、それなりに合理的であると言えると思
いますが、全ては、民間打ち上げサービスの成果にかかっていると
言っても過言ではありません。シャトルの打ち上げコストが、現状
では一回当たり500億円かかっているのに対し、民間打ち上げサー
ビスでは、人員打ち上げが一人当たり20億円、物資打ち上げが、10
トン当たり、50億円程度を目標にしています。シャトルの打ち上げ
能力に換算すれば概ね200億円前後になる計算で、上手くいけば確
かに打ち上げ費用は半分以下になります。しかし、ISSへの輸送機
として予定されている民間打ち上げサービスも、確かに初の打ち上
げに向け、準備は着々と進んでいるものの、実績という点では、現
状は、まだゼロであるとしか言えません。
以前にも、宇宙への輸送手段をシャトルに集中した結果、その開発
遅延や事故が米国の宇宙政策全般に大きな影響を及ぼすという結果
になりました。その点で、民間打ち上げサービスについては、二社
のサービスを利用する事で、同時に打ち上げサービス全てが止まる
事による影響を回避しようとしていますが、それでも、それだけで
大丈夫なのかという疑問が晴れるのは、民間打ち上げサービスが軌
道になってからにならざるをえず、その二社に莫大の補助金を投入
する事の是非も含め、それまでは、どうしても、一定のリスク要因
を抱えながら走る事になります。
また、アポロの技術でも実現できたであろう地球近傍目標は別にし
て、2035年という火星軌道到達目標期限も、野心的とは全く言えな
い様に思います。この2035年という目標は、1903年のライト兄弟の
初飛行から1969年のアポロの月着陸までの期間である66年を1969
年に加えた年ですが、アポロがいかに国家威信をかけて推進された
プロジェクトであったとはいえ、ライト兄弟のフライヤーとアポロ
の相違とアポロと火星軌道探査船の相違を考えると、月着陸後、火
星軌道到着までに要した時間が如何に長かったか、また、人類の宇
宙技術分野の進歩が如何に乏しかったかを実感せざるを得ない様に
思います。
それに加えて、オバマ大統領が、コンステレーション計画を破棄し
た様に、今後25年間、今回の計画が生き残る可能性は、限りなくゼ
ロに近いと言わざるを得ません。もし、今回の計画が25年間生き残
ったとすれば、その時にも、恐らくは存命であるオバマ前大統領は、
自らの計画の正しさを自賛するでしょうか?それとも、後任の大統
領の覇気の無さを憂うのでしょうか?興味は尽きません。
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