※sorae.jpサイトから転載
韓国、「KSLV-1」の2号機の打上げは6月9日
大韓民国教育科学技術部は4月19日、「羅老(KSLV-1)」2号機の打ち上げを早
ければ6月9日にも実施すると発表した。
発表によると、打ち上げ日時は現地時間6月9日16時30分から18時40分(=日本
時間)に設定され、最終的には天候の状況を見ながら、打ち上げを実施する予
定。また、打ち上げ可能期間は6月9日から6月19日までになっているという。
ロシア側が製造した初段は既に羅老宇宙センターに運ばれ、現在打ち上げに向
けての準備作業が進められている。2段目と衛星を載せたペイロードフェアリ
ングは5月下旬に取り付けられる予定で、その後、発射台へと移動し、打ち上
げリハーサルを実施する。
今回の打ち上げには、前回の打ち上げと同じく「科学技術衛星2号(STSAT-2)」
が搭載される予定で、この衛星は韓国航空宇宙研究院と韓国科学技術院(KAIST)
衛星研究センターなどが共同開発したもので、重さ約100kg。マイクロ波ラジ
オメータ観測器やレーザー反射鏡などを搭載し、低軌道で約2年間にわたって、
大気と海洋を観測し、衛星技術の検証などを行う。
韓国は2009年8月25日、「科学技術衛星2号(STSAT-2)」を載せた
「羅老(KSLV-1)」初号機を打ち上げたが、フェアリングの片方が分離せず、
衛星の軌道投入に失敗した。
(sorae.jp 2010/04/19)
2度目のカウントダウン「羅老号」
原子力や宇宙開発は国力に支えられる国のみ取り組むことのできる巨大科学で
ある。米国は24トンの貨物を載せ、国際宇宙ステーションまで往復するスペ
ースシャトルを繰り返して打ち上げている。ロシアやフランス、日本、中国は、
8~18トンの貨物を、一度で低い軌道に打ち上げる宇宙発射体を持っている。
羅老(ナロ)号は、100キロの衛星を打ち上げる宇宙発射体である。始まり
は小さいとはいえ、韓国は宇宙開発のベスト10入りを目標としている。宇宙
開発は、エネルギーや通信、軍事、放送、気象、海洋調査、天体観測のような
分野で、国力を分ける未来産業だ。
◆羅老号は、本物の発射体の開発に向けた「練習用」だ。宇宙発射体の中核は
第1段ロケットだ。羅老号の打ち上げが成功してこそ、1.5トンの衛星を打
ち上げる本物の宇宙発射体「KSLV-2」の開発に乗り出すことができる。
今月5日に、全羅南道高興(チョルラナムド・コフン)の羅老宇宙センターに
第一段ロケットを持ち込んだロシア側のセキュリティは物々しかった。第一段
ロケットの運用や関連装備は全て、ロシアから持ち込んだ。ロシア人の技術者
らは、関連資料の入っているコンピューター室への出入りの際ごとに、新たな
封印を行った。全人数の20%がセキュリティ要員だ。我々の宇宙技術の不足
によって味わわされる悲しさである。
◆宇宙への打ち上げは0.1%が失敗しても、全てが失敗したことになる。全
ての装置が決まった時間に正確に作動してこそ、成功できる。昨年に打ち上げ
られた羅老号は、中間段階でフェアリング(衛星の蓋)が切り離されず、失敗
した。失敗から学ぶ教訓は貴重である。閔庚宙(ミン・ギョンジュ)羅老宇宙
センター長は、「ロシアの技術陣は我々を見下したが、今は、アンガラ宇宙発
射体プロジェクトに我々も参加してほしいと提案を受けるまでになった」と語
った。
◆宇宙開発の超大国である米国は、宇宙開発の予算が我々の180倍にのぼり、
発射台だけでも20台を備えている。しかし、我々は蔚山(ウルサン)の砂原
に造船所を建設し、短期間で世界トップの造船能力を備えた国ではないか。入
梅前の6月初めに羅老号の2度目の打ち上げが行われる。2度目の打ち上げの
成功に続き、本物の宇宙発射体に向けた1段液体ロケットの開発も成功するこ
とを願う。閔庚宙センタ長―の名前は、「星」の「庚」の字に「宇宙」の「宙」
の字を使う。生まれつき、宇宙開発の運命を担っているような気がする。羅老
宇宙センターの関係者らは最近、乾杯の音頭を「空へ」、「宇宙へ」と取ると
言う。
(東亜日報 2010/04/19)
昨年の8月に打ち上げに失敗した韓国の国産ロケット「羅老号」
(KSLV-1)2号機の打ち上げが6月9日と決まりました。
前回は、ロシア製作の第一段の開発遅延もあって合計7回打ち上げ
スケジュールを延期しましたが、前回の打ち上げで第一段には、問
題がなかったので、今回は、意外にすっきりと打ち上がるのではな
いかと個人的には考えています。
前回の打ち上げでは、ロシアで製作された第一段液体燃料(液酸-ケ
ロシン)ロケット、ロシア設計で韓国で製造された(設計及び製造は
韓国とする報道もある)第二段固体燃料ロケットは正常に稼働した
ものの、ロシア設計で韓国で製造された衛星フェアリングの内、片
側の分離に失敗した結果、予定の軌道に投入する事が出来ず、失敗
に終わりました。このフェアリングの分離失敗の原因は、火工品と
呼ばれる、火薬を内蔵した分離用部品の動作不良が疑われています。
この「羅老号」の開発では、人工衛星打上げ能力獲得を急ぐ韓国が、
従来の国産技術開発の方針を転換し、ロシアから技術を導入する事
で、自前ロケットの打ち上げ能力を獲得する狙いがありました。
その結果、「羅老号」の一段目は、当時ロシアで開発途上だったア
ンガラロケットのURM(Universal Rocket Modules)の推力を若干、
少なくしただけのデチューン版(エンジンの型式はアンガラロケッ
トがRD-191であるのに対し、羅老号はRD-151)となった他、二段目や、
衛星フェアリング、その分離機構等も全てロシア設計、韓国内製造
で、ロケット全体の取り纏め、射場設備等もロシアから大きな技術
支援を得たものと思われます。
元々、アンガラロケットは、ロシアが次世代衛星打上ロケットとし
て開発しているロケットですが、韓国は当初、それを技術移転する
事によって、国内生産する事を計画していました。(一部ではエン
ジニアリングサンプルをリバースエンジニアリング手法で解析する
事で技術移転する事を計画していたという噂もあります。)
しかしながら、技術盗用を恐れるロシアは、技術移転には応ぜず、
ロシアで生産した第一段ロケットを完全輸入する事になりました。
中央日報の記事でもわかりますが、第一段エンジンについてはロシ
ア側は、厳しい保安体制を組んでいます。この保安体制の下でも、
韓国は、ロシアからロケットの運用に対する考え方や運用体制につ
いての知識を得る事はできますが、流石に、ロケットエンジン技術
に関するノウハウを得るのは、困難です。
韓国は、今回の打ち上げの後、1.5トン級の衛星打ち上げ能力を持
つ、KSLV-2の開発に入る予定です。当初の目論見では、羅老号の一
段目はそのまま利用し、二段目のみをこの新型ロケット向けに開発
する事で、これを実現する予定でした。しかし、その場合は、今回
同様の屈辱的とも言えるロシアによる保安体制を韓国は再度、受け
入れる必要があります。
今回の打ち上げの結果については、勿論ですが、韓国が、今後、
KSLV-2の一段目について、どの様な開発・導入方針を取るのか他人
事ながら、気になる処です。
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