※次期固体ロケット。JAXAWebサイトから転載
M5後継機、本格開発へ 内之浦での打ち上げ有力
性能向上・費用減図る
日本の科学衛星を打ち上げてきた「M5ロケット」の後継機開発が、2010
年度から本格化する。世界最高水準を誇った固体燃料ロケットの開発技術を継
承し、打ち上げ費用削減を目指す。射場として有力視されているのが、M5の
射場だった内之浦宇宙空間観測所(肝付町)。同年3月に開かれる宇宙航空研
究開発機構(宇宙機構)の評価委員会で、打ち上げ時期や搭載衛星の詳細が決
定する。
次期固体ロケットは3段式。1段にH2Aの固体ロケットブースタ「SRBA」
を使用して共通化を図り、大量生産によるコスト削減を図る。2、3段はM5
のエンジンを改良する予定だ。打ち上げは12年度以降とされ、開発に向けて
文部科学省は昨年末、10年度予算案に約20億円を盛り込んだと発表した。
SRBAはH2Aの射場である種子島宇宙センター(南種子町)で充てんされ
るため、宇宙機構は、安全面や移送面から内之浦と種子島をそれぞれ検討して
いる段階という。
ただ、内之浦はM5など多くの固体ロケットを打ち上げてきた実績がある。既
存施設の最大限の活用からも、多くの専門家が「後継機の打ち上げも内之浦が
第1候補」に挙げる。
日本の宇宙開発を長年取材してきた作家の笹本祐一さん=札幌市=は射場の安
全管理面から「『1カ所集中』は、万一事故があった場合、ほかの打ち上げに
影響する。海外では『分散』が一般的」と指摘する。
地元肝付町の永野和行町長は「ロケットの存在の大きさを痛感した3年間だっ
た」と振り返る。M5廃止以降、観測所の見学者は年間約2万人で、廃止前よ
り1万人近く減少。「旅館や飲食店、タクシーなど町の活性化に大きな影響が
ある。射場となるようあらゆる協力を惜しまない」と話す。
■M5と次期固体ロケット
M5は3段すべてが固体燃料。全長30.8メートル、重さ約140トン。旧
宇宙科学研究所が科学衛星打ち上げ用に開発した。高度数百キロの低軌道に最
大1.8トンの衛星を投入し、惑星探査にも使用できる世界唯一の固体ロケッ
トだった。約80億円まで増加した打ち上げ費用がネックとなり、2006年
9月の7号機打ち上げを最後に廃止となった。次期固体は全長24メートル、
重さ約90トン。搭載能力は1.2トンの予定。
(南日本新聞 2010/01/03)
流石は、南日本新聞という処でしょうか。日本のロケット打ち上げ
施設は、鹿児島県に集中していますので、次期固体ロケットに対す
る関心も高いと言えます。特に、打ち上げ施設が、種子島になるか
内之浦になるかで、経済波及効果も違っていますから、地元の関心
もより深いのかも知れません。
次期固体ロケットですが、開発費用は200億円。打ち上げ費用30億
円を予定しています。H-IIロケットが開発費用2000億円。打ち上げ
費用190億円。H-IIAロケットが、開発費用1250億円。打ち上げ費用
100億円であったのと比べると、開発費用も打ち上げ費用も一桁違
う小型の打ち上げロケットです。ですが、このロケット、ペンシル
ロケットからの歴史の持つISAS(宇宙科学研究所)固体ロケット直系
の血を引く由緒正しいロケットなのです。
これまでISAS固体ロケットの最終発展型は、M-Vロケットでしたが、
ペイロードが小さい割には、打ち上げ費用が、H-IIAと比べ、それ
程の違いが無かった事から、ISASのJAXA統合後、結局、廃止になっ
てしまいました。
次期固体ロケットは、第一段に、H-IIAの固体ロケットブースター
SRB-Aを、また、二段、三段には、各々M-Vロケットに使われたロケ
ットモータの改良型が用いられる予定です。更に、打ち上げ準備期
間も、打ち上げ要員も可能な限り削減し、経済的且つ速やかに小型
衛星を打ち上げる様な設計になっています。一説によれば、革新的
な打ち上げシステムの採用によりノートパソコンの様な簡易な端末
装置を使って「モバイル管制」ともいうべき遠隔点検をも可能にし
ているそうです。
また、当初は射場についても、九州に限らず北海道でも打ち上げを
可能とする構想になっていました。但し、固体燃料ロケットの移動
は、危険物の移動に関する法律の規制対象になる為、法律上の例外
処置を設けないと、種子島以外での打ち上げには、問題が出てきま
す。
現在、種子島で固体燃料の充填作業が行われているのも、他所から
の移動では、燃料の分割が必要になり、射場での燃料結合に時間と
費用を要するということでH-IIA開発時に種子島での充填に変更さ
れた部分です。
寡聞にして法律が改正されるという話はまだ聞こえてきませんので
現時点で射場として一番適当であるのは、種子島という事になろう
と思います。
(Wikipediaには、この問題は既に解決済で射場は内之浦になったと
記載されていますが、それを確認できる情報がないので、上記の記
述とします。2010/01/05)
射場がどこになるにせよ、新型固体ロケットは、小型衛星の柔軟な
打ち上げを可能とするシステムになります。しかしながら、それだ
けでは、この新型固体ロケットに対するニーズは、増えません。
射場の柔軟的選択を可能とする事や、発射時期の自由度の増加、衛
星の射場への輸送手段の簡素化等を含めた総合的な環境整備を行わ
ないと、新型固体ロケットも、国内のニーズにしか応えられないニ
ッチな打ち上げシステムになってしまう様に思います。そうなら無
いためにも、官民を上げた打ち上げ体制の整備が望まれてなりません。
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