2010年1月7日木曜日

国際月有人探査計画への参加は慎重に検討を!


月有人探査、日本にも参加求める方針 米科学誌

米科学誌サイエンスは1日発行の最新号で、米国がアポロ計画以来の月有人探
査を行う場合、欧州や日本、カナダに協力を求める方針と報じた。これまでは
米国単独で目指すことになっていたが、航空宇宙局(NASA)の財政負担を
減らすため、方針を変更した。政権高官の話として伝えた。現実になれば、日
本が初めて月有人探査に加わることになる。

報道によると、オバマ政権は、NASAの限られた予算を有効活用するには、
開発費用の高騰が指摘される開発中の次世代月ロケットアレス1より、既存の
大型ロケットの改良のほうがよいと判断。開発を打ち切る。また欧州や日本、
カナダに月着陸船や月面基地の開発を依頼して、NASAの負担を減らす方針だ。

新方針は大統領が12月16日、NASAのボールデン長官に伝達したという。
正式発表の時期ははっきりしないが、一般教書演説がある1月末などが想定さ
れている。

日本は昨年策定した宇宙基本計画で月探査を宇宙開発の柱とした。2020年
をめどにロボットによる無人探査を行い、さらに人とロボットが連携した探査
を目指しているが、米国と協力することが決まった場合、計画が具体化する可
能性もある。

(朝日新聞 2010/01/06)


米国の有人宇宙計画に関する大統領諮問委員会の報告では、当面の
有人宇宙計画の目的地として、NEO(地球近傍天体)やラグランジュ
点を候補地にあげ、月探査計画は中止すべきという結論を出してい
ましたが、上記の記事によれば、オバマ大統領は、諮問委員会の報
告と既存のNASAのコンステレーション計画の中間を取った様です。

上記の記事を要約すると以下の様になります。

1. 有人宇宙探査計画の当面の目的地は月で従来と不変だが、欧州、
  日本、カナダに協力を求め、国際月探査計画とし、月面基地や、
  月着陸船の開発を依頼する。
2. アレス1の開発を打ち切る。その替りに既存の大型ロケットを
  改良する。

現在のコンステレーション計画では、最終目的地は火星を視野に入
れていたのですが、今回の計画では、月面探査の次の目標を火星と
明示しているのかどうか不明です。また、諮問委員会が新たな目的
地として提案していたNEO(地球近傍天体)やラグランジュ点の扱い
も新方針が正式に発表される際には注目すべきポイントであると思
われます。

国際月探査計画ですが、実際に実行する場合は、ISS(国際宇宙ステ
ーション)建設時以上の複雑な交渉が必要になってきます。既に国
威発揚と言う要素はありません。協力を要請される各国共、何故、
巨費を投じて月探査計画に参加するのかを納税者に合理的に説明し
なければなりません。目的が科学探査であれば、平たく言えば、科
学者が論文を書く材料にしかなりません。勿論、新しい科学的知見
には値段は付けられないという議論もありえますが、それでも、そ
こには一定の限界がある筈です。

今まで、スペースシャトルやISSと言った米国主導の大型国際宇宙
計画では、必ず、完成時期の遅延と、開発コストの大幅な上昇を招
いています。最悪、月面基地の建設に毎年数百億の資金を投じたあ
げく、日本の開発受け持ちや、日本人飛行士の数や役割が資金供給
割合に満たない事も考えられるのです。宇宙開発予算が今後飛躍的
増加が期待できない、寧ろ、減額される懸念がある中、国際月探査
計画に参加したお陰で既存の計画や日本独自の新規計画(例えば独
自宇宙ステーション建設など)が、弾き飛ばされる懸念がないとは
言えないのです。その様な視点で、国際月探査計画に参加すべきか
どうか?参加する場合の参加割合は?等々、冷静に検討する必要が
あると思われるのです。


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