空自 イラク撤収開始 献身が生んだ「犠牲ゼロ」
イラクでの任務を終えた航空自衛隊が15日、撤収を始めた。3機のC130
輸送機のうち最初の1機が、日本に向けてクウェートのアリアル・サレム飛行
場を出発。情報収集で、バグダッドの多国籍軍司令部に派遣されていた隊員5
人も帰国した。これまでの国際活動より格段に危険だったイラク派遣では、
C130がロケット弾の標的になりかけたこともある。民主党のイラク特措法
廃止法案は士気に影を落とし、有能なパイロットが自衛隊を去った。1人の犠
牲者も出さずに5年の活動を完遂した裏側で何が起きていたのか。(半沢尚久)
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米中枢同時テロの発生日と同じ9月11日、町村信孝前官房長官は、唐突に空
自撤収方針を表明した。実は前日の1本の公電がきっかけだった。
《イラク政府は多国籍軍のうち(米英豪など)6カ国を残し、ほかの国は撤収
させる意向だ》
米政府は公電に記し、日本が6カ国に含まれていないことを公表するとも伝え
てきた。主体的判断にこだわる日本政府は待ったをかけ、慌てて撤収方針を表
明したのが真相で、出口戦略のなさを象徴している。
■間一髪
空自のC130が攻撃を受け、被害が出たケースはない。だが、隊員が肝を冷
やす場面はあった。C130がバグダッド空港を離陸後、15分遅れで離陸し、
同じルートを飛行した米軍機が対空砲で攻撃されている。同空港の滑走路で要
人を乗せて待機中、C130の上を4発のロケット弾が飛び越えていたことも
弾道計算で判明した。
「非戦闘地域」ではあったが、「治安が悪化した時期には、バグダッド空港へ
の攻撃は月に30件ほどあった」(自衛隊幹部)。クウェートを拠点にイラク
の南部アリ、中部バグダッド、北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を
輸送した空自部隊にとって、最も危険度が高かったのは同空港だった。
着陸直前、同空港へのロケット弾攻撃が起き、パイロットが着陸の判断を迷っ
たこともある。「隊員やC130が1発でも撃たれれば撤収論が巻き起こる」
(同)。空自部隊は“完全試合”を求められていた。
■高評価
真夏の気温は50度で、エンジン始動前のコックピットは70度にも達した。
とりわけ過酷な任務は、クウェートのアリアル・サレム飛行場からバグダッド
を経由し、アルビルを往復する7時間のフライトだった。その都度、パイロッ
トは3キロやせたという。
「軍法もないのに規律正しい」「C130の稼働率はほぼ100%で、信頼性
は群を抜いている」
空自の働きぶりは多国籍軍からの評価も高かった。飛行の技量や信頼性に加え、
注目されたのが士気の高さ。米軍の輸送機は、9機のうち修理などの影響で稼
働しているのは5機程度だが、空自は徹夜の整備も辞さず、常に全3機が飛行
できる状態を維持したこともその一例といえる。
こうした任務の陰には隊員の献身があった。機長クラスでは派遣回数が5回と
いう隊員がざら。派遣されている間に親が亡くなり、最期に立ち会えなかった
隊員も16人にのぼった。
■揺らぎ
「隊員の士気にボディーブローのように効いた」。2度の派遣経験のある空自
幹部がそう指摘するのは、昨年10月のイラク特措法廃止法案提出と、バグダ
ッドへの空輸を違憲とした今年4月の名古屋高裁判決だ。その2つを機に、基
地にデモ隊が押し寄せ、官舎に批判ビラがまかれた。「パパは悪いことをして
いるの?」。妻や子供は疑心暗鬼になり、隊員も揺れた。
実際、廃止法案提出を受け、1人の輸送機パイロットが退職。「自衛隊の任務
は正しくないのかもしれない」。退職願には動揺と戸惑いがつづられていた。
「献身的に支えてくれたご家族に感謝します」。先月、ゲーツ米国防長官から
浜田靖一防衛相に届いたメッセージの一文だが、任務終了決定を受けた麻生太
郎首相談話では、家族へのねぎらいはなかった。「家族へのいたわりを怠り、
自衛官の使命感に頼り切っていると国際任務は破綻(はたん)しかねない」。
防衛省幹部はしみじみと5年を振り返った。
◇
【用語解説】イラク空自派遣
イラク復興支援特別措置法に基づき、空自は平成15年12月に先遣隊を派遣、
翌16年3月から輸送活動を開始した。クウェートを拠点にイラクの首都バグ
ダッドや北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を輸送。約210人の隊
員がC130輸送機3機で任務にあたった。空輸実績は821回、輸送物資は
約673トン。政府は撤収理由として国連安保理決議が年末で切れることや、
イラクの安定化傾向を挙げた。
(産経新聞 2008/12/16)
その内、産経新聞から、派遣隊の実録がでる事を期待しています。
対テロ作戦支援やイラク復興支援の為に、陸海空自衛隊が派遣され
陸は陸なりの、海は海なりの苦労があったと思いますが、空は空な
りに言葉に言い表せない苦労があったのではないかと愚考します。
記事にもありますが、自衛隊の高い士気(モラール)は、どの国に派
遣された場合でも、必ず他国の賞賛の的になっていますが、残念な
事に国内では、それを賞賛する声が未だに少ない様に思えてなりま
せん。
それに加えて、違憲判決を出した名古屋高裁の判事の馬鹿さ加減に
はあきれてしまいますが、文民統制の下に派遣された隊員の留守宅
にビラをまいたり、デモ隊を組織して押し寄せるサヨクにも本当に
恥を知れと言いたいと思います。
イラクに派遣された自衛隊員は国会、即ち国民の指示に基づき派遣
され任務に勤しんでいるのであって、自分の意思で行っている訳で
はありません。それが仕事であるから行っているのです。
言葉は悪いですが、自衛隊は道具に過ぎません。文句を付けるので
あれば、直接的な派遣決議を行った国会議員-政治家に行うべきで
しょう。隊員の家族を脅迫するなど持っての他です。
先日の田母神論文や発言を揶揄する反論が未だに続いていますが、
田母神空幕長は道具が道具としての機能を100%発揮しようとし
ても出来ない様に仕向けられている事を繰り返し指摘している訳で
す。それが判っていない議論をする輩があまりに多すぎる様に思い
ます。
そして、自衛隊員の高いモラルにあまりに頼りすぎているのが政治
の問題であり、やるべき事をやらずに済ませる事で、政治問題化を
回避しているのは判っていても、任務終了決定を受けた談話で、家
族へのねぎらいすら行わない最高指揮官に大きな不満を感じる処で
す。
最高指揮官が、適切な礼を行わないのであれば、政治家を通じてで
はありますが、派遣指示を行った一人の国民として、自衛隊派遣隊
員とそのご家族に心からの感謝を表したいと思います。
「任務完了お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。」
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