※写真は、海賊を臨検するカナダ海軍。AFPサイトから転載
中国、ソマリア海域へ艦艇派遣浮上 「責任大国」アピール
【北京=野口東秀】中国がアデン湾やソマリア海域に海軍艦艇を派遣し、船舶
の保護活動に参加する可能性が浮上している。国営新華社通信を含む中国メデ
ィアが17日、大きく報じた。中国の船舶、乗組員に対する海賊の襲撃が拡大
していることもあるが、軍艦派遣は国内世論の高まりに加え、軍が派遣を「海
洋戦略」を進める一歩としてとらえているようだ。
新華社通信は同日、速報で、ソマリアの海賊問題を討議した16日の国連安保
理会合で中国の何亜非外務次官が艦艇派遣を積極的に検討していることを明ら
かにしたことを伝えた。
何次官によると今年、6隻の中国関連の船舶がソマリア海域で海賊に襲撃され、
今も1隻、17人の中国人が釈放されていない。新華社通信によると、17日
にはソマリア沖のアデン湾を航行していた中国交通建設集団総公司所属の船が
海賊の襲撃を受け、中国人乗組員30人と一時連絡がとれなくなった。
中国現代国際関係研究院の郭暁兵副研究員は軍艦派遣について、「責任大国と
して正常な行動だ」と説明。香港のテレビ局の論説委員も「中国の世界に対す
る義務」とまで主張している。
艦艇派遣により、中国が国際社会での存在感を高めようとしているのは間違い
ない。中国紙「環球時報」は、「軍事力で自国の海上利益を守り、同海域での
海上航行とシーレーン(海上交通路)を守れる意志と能力を示す」と軍事的側
面での意義を強調する専門家の意見を紹介している。
米議会の報告書などで、中国軍は西太平洋での制海権を得るための方策を追求
している-と指摘されている。ソマリア沖への艦艇派遣計画は、軍の海洋戦略
の一環でもある。
(産経新聞 2008/12/17)
第二次大戦後、インド洋の制海権を握ったのは英国でした。インド
洋は、香港、シンガポールを中心とした英国東アジア植民地とイン
ドを中心とした南アジア植民地、中東・アフリカ地域の英国植民地
を結ぶ海上交通網の要として海上の大動脈として機能していたと言
えます。しかしながら、これら英国植民地が第二次大戦後、相次い
で独立した事により、英国はインド洋からの撤退を始めます。そし
て、インド洋の制海権も1971年のスエズ以東の英軍撤退によって事
実上放棄されます。
そして、イギリス海軍の撤退によって生じた空隙に入り込んできた
のが、当時躍進著しかった。ソビエト海軍でした。勿論、巨視的に
は米国海軍の制海権と言う上位の傘が被っていたのですが、ベトナ
ムのカムラン湾やイエメン領のソコトラ島に基地を建設するなど着
実にインド洋でのプレゼンスを強化してきたのです。
余談ですが、この時、一部では、日本がインド洋に進出するのでは
ないかとの観測が持ち上がった事があります。インド洋の海上貿易
ルートに対する日本の依存度が極めて大きいので、日本がその安全
を確保しようとするのは自然であると考えられたからです。日本で
も主として左翼系の学者がソ連の意を受けて懸念を表明しましたが、
戦後の日本が安全保障について如何に近視眼に陥っているかについ
ての無理解から生じた誤解でした。当時海上自衛隊には、艦隊補給
艦が僅か一隻(「はまな」後に「さがみ」に交替)しかなく、その後も
その体制が続いた事からも、日本に進出のその様な意図がない事は
明らかでした。
さて、インド洋の制海権が一見、ソ連海軍に握られた様に見えた時、
インド海軍もまた、着実な発展を見せていました。三度に亘る印パ
紛争で、インド海軍がインド洋でパキスタン海軍に優越した事が、
バングラディシュ独立に役立った事は言うまでもありません。これ
によって、印パの力関係は、大きくインドに傾いた状態で固定しま
した。(バングラディシュが独立した結果、パキスタンは領土の四
分の一、人口の二分の一、ハードカレンンシーを獲得するジュート
など重要輸出商品を失った。)これには、インド海軍の貢献も大き
かったのですが、インド海軍が独立以降、英国海軍の中古艦とは言
え常時、空母を運用していた事を忘れてはなりません。また、1980
年代には、ソ連から、原子力潜水艦をチャーターし、世界で五番目
の原潜運用国(その後、チャーターしたC級原潜が老朽化したので
返却し、再度、新鋭原潜のチャーター導入を計画中)となり、イン
ド洋では米ソを除く諸国と比べ優越したプレゼンスを維持する意図
を明確にしています。
更に、インド海軍は、今回のソマリア海賊対策についても積極的に
対応しており、既に海賊船を撃沈したり、また海賊船を捕獲するな
ど活発な動きを見せています。
これに対し、中国海軍もソマリア海賊制圧に向けて動き出した事は、
中国もインド洋でのプレゼンス拡大に積極的である事を示すものと
言えます。実際、中国はミャンマーに軍港を確保し、本国と陸上ル
ートで結ぶ事で、インド洋への直接アクセスルートを整備し、東シ
ナ海、南シナ海方面が海上封鎖されても、大洋へのアクセスができ
る様に構想している様に思われ、その為にもインド洋で一定のプレ
ゼンスを確保する事が必要なのです。
それに加えて、中国としては、ソマリア海賊対策に対応する事で、
今まで、主として活動していた東インド洋からプレゼンスを西イン
ド洋に拡大する事となり、資源地域として勢力の扶植に力を入れて
いるアフリカ大陸諸国に対しても中国のリーチの長さを認識させる
事による効果も狙える事になります。
上記の記事は、一見、自国の商船に害をなすソマリアの海賊を退治
するお話である様に見えるのですが、実は、戦略的なオイルルート
を担うインド洋での制海権やプレゼンスを競う中印両国の角逐がバ
ックグラウンドに見え隠れしている様に思えるのです。
それにしても、日本の国会では、親中を標榜する党派が日本のソマ
リア海賊対策参加に抵抗を示し続けています。これは中国の行動と
一致しない点で、一見奇異に見えますが、実は、日本がこれ以上イ
ンド洋でのプレゼンスを高める事を歓迎しない中国の意思が働いて
いると考えれば、非常に納得しやすい態度であると思えるのです。
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