2010年7月22日木曜日

新型対艦ミサイルXASM3が開発本格化!?

※新空対艦誘導弾XASM3概念図。朝雲新聞社Webページから転載

防衛省 新型対艦ミサイル開発

防衛省が本年度防衛費で二十三億円を投じ、F2戦闘機から発射して艦艇を攻
撃する超音速空対艦ミサイル(XASM3)の開発を始めたことが分かった。
超音速のため迎撃するのは不可能に近く、空母建造を急ぐ中国海軍に対抗する
狙いとみられる。(編集委員・半田滋) 

XASM3は高性能な対空火器を搭載する艦艇を攻撃するため、音速の三倍以
上で飛行する。これまでの空対艦ミサイルのASM1やASM2は亜音速で、
艦対空ミサイルや機関砲で撃墜される可能性があった。
総額三百二十五億円かけて試作と試験を繰り返し、二〇一六年度までに開発を
終え、量産化に移る見通し。

超音速の空対艦ミサイルは米国やロシアにもあるが、いずれも特大で爆撃機に
搭載する。憲法九条の制約から「攻撃的兵器」を持てない自衛隊は長距離爆撃
機を保有できないため、ミサイルの小型化を模索。戦闘機に搭載できる全長六
メートル、重量九百キロのXASM3の開発に踏み切った。

一方、一五年までの空母建造を目指すとされる中国海軍は、既に対空・対艦能
力に優れたソブレメンヌイ級駆逐艦四隻をロシアから購入、さらに防空能力が
高いイージス艦に似た国産駆逐艦の「蘭州」「海口」を就役させた。XASM3
は、空母を警護するこれらの駆逐艦に対抗するが、防衛省は「特定の国を想定
していない」としている。

海軍力強化を進める中国の艦艇は、沖縄近海を抜けて太平洋へ進出し、海上自
衛隊との間で緊張が高まっている。XASM3の開発により、航空自衛隊も東
シナ海や太平洋の「覇権争い」に参加する形となる。

XASM3の特徴は、精度を増すため、自らレーダー波を出す一方、敵艦艇の
出すレーダー波を探知して飛ぶ複合誘導方式を採用したこと。推進装置はロケ
ットとジェットを組み合わせたインテグラル・ロケット・ラムジェット(IRR)
を搭載している。

(東京新聞 2010/07/21)


XASM3の開発に今年度予算で23億円が支出される事自体は秘
密でも何でもありません。実は朝雲新聞のWebニュースでは、4/15
付けで以下の記載があります。

22年度防衛費 重要施策を見る<7>研究開発
高運動ステルス機を試作 外部評価調整官など新設

(前略)
③新空対艦誘導弾XASM3=敵防空艦を狙い撃ちする超音速ステルス対艦ミ
サイル。ロケット・ラムジェット統合エンジン推進で射程も大幅延伸。22億円。
(後略)


東京新聞の記事は、このたった2行の朝雲新聞の記事を、解説して
くれたものであり、それ以外の新しい情報は殆どありません。朝雲
新聞から三ヶ月もたって何故東京新聞が記事にしたのか判りません
が、防衛省が、もっと注目して貰いたくて、東京新聞の記者に働き
かけをしたのかも知れませんし、逆に、中国辺りが脅威に感じて与
党の政治家に注目させる為に記事にさせたのかも知れません。
今までも、対艦ミサイルはあるのに、わざわざ、「航空自衛隊も東
シナ海や太平洋の「覇権争い」に参加する形となる。」と書いてい
る処に若干の毒が感じられます。

XASM3は、第三世代の空対艦ミサイルです。日本の巡航ミサイ
ルはASM1から派生しシリーズ化されていますので、XASM3
の出来によっては、陸上自衛隊や海上自衛隊が保有する巡航ミサイ
ルもXASM3系列によって置き換えられる事が考えられます。
但し、XASM3の全長は、ASM2に比べ1.5倍、約2m長い
ので、既存のランチャーの改修が必要となるケースも考えられます。

XASM3の主な特徴は、なんと言っても、その超音速性能にあり
ます。記事にはありませんが、ステルス形状をしているので、高速
性とも相まって敵側による探知が困難で、更に探知されてから命中
までの時間が短縮されるのでミサイル防御が非常に困難になります。
近年、周辺国で、フェーズドアレイレイダーや高性能対空ミサイル
システムを搭載した、艦隊防空艦の整備が進んでいますので、この
盾の強化に対抗する矛の強化であると言えるでしょう。

上の概念図では、XASM3の飛行プロファイルには、高空飛行の
他、シースキミング、ポップアップ&シースキミングの三種類があ
るのが判ります。XASM3は、高速性能が売りですが、高速であ
るが故に、機体を制御する誘導技術が重要になります。でないと誘
導仕切れずオーバシュートしてしまう可能性が出てきます。超音速
ミサイルが大型になる理由の一つは超音速を出す為に大量の燃料が
必要になる事と、もう一つは、遠距離から目標を探知する為に、レ
ーダーを大型化する必要がある事によります。
その点で、XASM3の技術開発で一番困難な点、その小型化にあ
ると言って良さそうに思われます。


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