※写真はJAXA Webサイトから転載
宇宙ヨット「イカロス」の写真を公開 JAXA
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は16日、太陽光の微弱な圧力を受けて飛
行する世界初の宇宙ヨット「イカロス」が大きな帆を広げて飛行する写真を公
開した。宇宙空間で探査機自身の姿が撮影されるのは珍しい。
写真は14日、地球から約1000万キロ離れた金星方面への軌道上で、イカ
ロスから分離された小型カメラが撮影。中心にある円形の本体から一辺約14
メートルの帆が広がり、太陽光を受けて闇の中を飛行する様子がわかる。
イカロスは太陽光の圧力を利用した加速や軌道制御、帆に張り付けた薄型太陽
電池の発電などを行う小型ソーラー電力セイル実証機。10日に展開し終えた
樹脂製の帆は厚さが髪の毛の太さの10分の1程度で、飛行経過は順調という。
イカロスは5月21日、JAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)から国産大
型ロケット「H2A」17号機で日本初の金星探査機「あかつき」と一緒に打
ち上げられた。
(産経新聞 2010/06/16)
実は、宇宙空間で自分の姿を撮影したのは、イカロスが始めてでは
ありません。新型ロケットの発射時の様に、問題が起こりそうな処
にテレビカメラを設置し、映像をテレメトリーで地上に送る事など
はごく普通に行われています。イカロス以前のソーラーセイル展開
実験などは、そういう形で実験の結果の写真を得ています。
また、子探査機が撮影した映像の中に探査機の一部が写っていた事
もあります。小惑星探査機「はやぶさ」が、子探査機ミネルバを放
出した際にミネルバが取った写真の中に「はやぶさ」の太陽電池パ
ネルが写っていたのが、この例であると思います。
広義の自分撮りとしては、「タイ・ファイター」(映画スターウォ
ーズでダースベイダーの搭乗した宇宙戦闘機機)そっくりと有名に
なった、小惑星イトカワに写った「はやぶさ」の影の写真なども上
げられると思います。
偶然写った自分撮りを別にすれば、明確な目的なしに、探査機が自
分撮りを行う事はありません。宇宙空間で自分を撮影するには、今
回の撮影でも判る様に、自分撮り用の仕掛けが必要になります。
今回はその仕組みを非常に安価に実現している様に見受けられます
が、自分撮り用の仕組みは、一般的には写真撮影用の子探査機と同
じ様な扱いになりますので、その自由度や自律性によっては結構な
コストがかかる事になります。「はやぶさ」の子探査機ミネルバも、
当初は、JPL(ジェット推進研究所)でローバーを提供するという話
があったのですが、その開発費用が「はやぶさ」本体に等しくなり
(百億円以上!)、結局取りやめとなった話が残っています。
その代わりに日本側が開発したら、極めて安上がりに仕上がったと
いうオチが付いています。
一般の探査機が自分撮りをしないのは、将に、そういう必要がない
からという事がその理由になります。予算やスペースに制約のある
探査機には無駄な事をする余裕はありません。今回の「イカロス」
についても、ソーラー電力セイル実証衛星として、ミニマムサクセ
スの一項目に大型薄膜の展開、展張があるほどソーラーセールの展
開が重要であり、その達成を検証する事が重要度が高い事から、自
分撮りの仕組みも整えられたという訳です。
それにしても、イカロスから送信された自分撮りの写真の効果は圧
倒的です。今まで発表された写真では類推するしかなかった、ソー
ラー電力セイルの展開状態が一目瞭然に分かります。分離カメラは、
その目的を100%達成したと言えるでしょう。これから、建造される
ソーラー電力セイル実用機や複雑な仕組みのアンテナ展開が必要と
なる衛星には、この様な自分撮り用の分離カメラの様な仕組みは必
須のアイテムになりそうです。
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