※CGは朝日新聞サイトより転載
月にまとまった量の水 NASA、体当たり探査機で確認
米航空宇宙局(NASA)は13日、無人探査機L(エル)CROSS(クロ
ス)による観測で「月の南極に近いクレーターに凍った水が存在することがわ
かった」と発表した。「かなりまとまった量」といい、将来、月面基地を建設
したときに宇宙飛行士の飲料水として期待されるほか、電気分解によって呼吸
用の酸素やロケット燃料の水素を作れる可能性がある。
10月9日に探査機から切り離したロケットを秒速2.5キロでクレーターに
衝突させた。舞い上がった土砂などの噴出物を分光計と呼ばれる装置で探査機
本体が観測した結果、水蒸気と氷の存在を示す特徴的な光が確認された。
水蒸気はクレーターに存在する氷が衝突時の熱で昇華してできたと考えられ、
90リットル程度の水に相当する氷がクレーターから噴き上がったとみられる。
月全体でどれだけあるかはさらにデータの分析が必要だが、研究チームは衝突
地点について「極端に乾燥した地域である南米チリのアタカマ砂漠よりは少し
湿潤なのではないか」と話した。
月面は乾燥した世界だと考えられてきたが、月面の極域近くのクレーターの底
には、太陽の光が当たらない陰の部分があり、例えば、氷の核を持つ彗星(す
いせい)の衝突でもたらされた氷などが解けずに残っている可能性が指摘され
てきた。
インドの周回探査機などの観測で、月面の広い範囲の砂の表面に水が結合して
存在していることが確認されているが、まとまった量の水が確かめられたのは
今回が初めて。
(朝日新聞 2009/11/14)
エルクロスについては、10月9日のエントリーで取り上げましたが、
そのデータ分析が終わり、その前のインドの月探査機チャンドラヤ
ーンが検出したのと同様、月の南極の永久影の領域に水の存在する
事が証明された様です。二つの別の方法で証明されたのですから、
これで水の存在は確実になったと言えます。
チャンドラヤーンは、NASAが提供した月面鉱物マッピング装置(Moon
Mineralogy Mapper)を搭載していましたが、この観測によって、月
の南極のかなり広い地域から少量ですが、水の分子を検出しました。
これに対しエルクロスは、自身を打ち上げたセントールロケットを
先に月面に衝突させ、それを観測すると共に自身もその直後に月面
に突入し、先のセントールの衝突と合わせ、月面物質をクレータの
縁より高く吹き上げる事で、今度は地上から直接観測を可能とし、
水の検出を確実に行うという目的を持っていました。その点で、エ
ルクロスは、そのミッションの期待通りの成果を確実に達成したと
言えます。
今回検出された水の分量そのものについては、記事にもある通り、
「アタカマ砂漠より少し湿潤」といった程度なので、微量でしかあ
りません。これをどの程度、有効に活用できるかは、月面でレゴリ
スを収集し、そこから水分を抽出するコストと、地球から持ち込む
コストとの見合いと言う事になります。勿論、両者ともに、技術進
歩によって変動する数字になりますから、現時点で評価しても、あ
まり意味はありません。
また、月面全体でどの程度水が存在するかについても、今後の月探
査の成果待ちと言えますし、その評価の為にも、有人月探査が必要
となるかも知れません。
しかしながら、先日から取り上げている有人探査計画諮問委員会は
今回の発見に関して重要な発見ではあるが、月を有人探査の目標か
ら外すと言う委員会の勧告を変更するものではないと述べています。
しかし、それにしても、将来、月面基地を建設した時に宇宙飛行士
の飲料水として利用可能で、電気分解すれば、呼吸用の酸素やロケ
ット燃料になる水素を作る事ができる水を地球から運ぶ必要がなく
なる可能性があるというのは、今後の人類の月面での活動に計り知
れない利益を齎すものです。その意味でも、エルクロスミッション
は、極めて重要な意味と価値があったと考える処です。
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