※写真はFalcon9。SpaceX社サイトから転載
SpaceXのFalconロケット、初の商用衛星の打ち上げに成功
マレーシアの地球観測衛星「RazakSAT」を搭載したSpaceX社の「Falcon 1
Flight 5」の打ち上げが13日、ハワイの南西2500マイルにあるクェゼリン環礁
にある発射施設で実施。打ち上げ1時間20分後、衛星は予定していた軌道への
投入が確認され、打ち上げは見事に成功した。
今回の打ち上げ、同社にとっては初の商用衛星の打ち上げともなった。
同社は創業者となるイーロン・マスク(Elon Musk)の個人出資企業として2002
年に設立されたまったくのベンチャー企業。本格的な宇宙ロケットの開発は国
家予算規模の多額の費用を要するのが普通で、個人出資企業がこうした本格的
な宇宙ロケットの開発に成功したというはスプートニク以降の宇宙開発史上、
初めてのことともなる。
同社のFalcon 1は米国政府の実験衛星を搭載して打ち上げ実験が行われてきた
が、Flight 1からFlight 3まで3回連続して失敗。当初の予定ではRazakSATは
Flight 4に搭載される予定だったが、Flight 4では万事をとって衛星相当分の
重りを搭載して打ち上げが実施し、打ち上げ実験はようやく成功していた。
同社は既に国際宇宙ステーション(ISS)への補給業務に関してNASAと受託契
約を結んでおり、今回の商用衛星の打ち上げ成功を受けて、ISSへの補給業務
も実現に向けて大きな前進を遂げたこととなる。
今回の打ち上げは1段目に自社開発のMerlin 1Cエンジン1基を使用し、低軌道
(LEO)に570キロのペイロード投入能力を持つFalcon 1が使われたが、実際の
ISSへの補給業務では1段目にMerlin 1Cエンジン9基を使用したLEOへ9900キロ
の投入能力を持つFalcon 9とやはり自社開発のDragon補給船が使用される予定。
Falcon 9の初の打ち上げ実験からは、射場をフロリダ州ケープカナベラル空軍
基地に移して年内にも実施される予定。
(テクノバーン 2009/7/15)
前回SpaceX社を取り上げたのは、NASAからISSへの補給契約を獲得
した昨年12月ですが、それ以降、確実に実績を積み上げています。
契約通り、Falcon9をケープカナベラルに輸送し、発射準備を完了
させました。もっとも直立させる迄は行ったものの、NASA側の都合
で発射は2009年中という事になりましたが、SpaceX社が、エンジン
テストを完了させ、機体を製造し、打上場所まで搬送し、発射準備
を完了させたという実績は残ったと言えます。
勿論、実際の打上は行われていませんので、完全に完成したとは言
えませんが、それでも大きな実績になったのは事実です。
Falcon9は2009年には2回、2010年には5回、2011年以降も、平均
3回の打上げが予定されています。NASAの発注が追い風となり、初
飛行も行われていない機体に、既に3社から4機の打上げ発注が行
われているのです。日本のH-IIAが、海外からの受注がなかなか得
られず四苦八苦したのとは、大違いです。
一見絶好調の様に見えるSpaceX社ですが、仔細に見るとなかなか難
しい事が判ります。小型衛星打上がロケットであるFalcon1は、派
生型のFalcon1eを含めても、受注は2機しかありません。今回の
Flight5でFalcon1として初めて商用衛星の打上げに成功した訳です
が、前回のFlight4(衛星は搭載していませんでした)を成功と数え
ても、打上げ成功率は40%に過ぎません。他のロケットの半値で打
ち上げられるとしても、なかなか受注を得られないのは、まだまだ
打上げ実績が少ない事が影響しています。
逆にいえば、Falcon9で受注が相次いでいるのは、NASAがバグ出し
をしてくれるので、発注側が安心していられるからだと言える様に
思われます。
世界の衛星打上げビジネスは、世界経済の急減速と衛星の大型化や
長寿命化もあり需要が縮小しています。その一方で、打上主体の数
は、既に、アリアンやロシアに続く第三の核になっている中国に加
え、新興のインド、ブラジルによる国策ロケットの開発が続いてお
り、これら各国の参入が確実な状況です。
その中で、日本のロケットが、生き残る為には、政府が一定の数の
衛星を打上る事でロケット品質を政府が間接的に保証する形でしか
有り得ない様に思われます。でなければ、数を打ち上げているアリ
アンとロシア、極端な安値で受注可能な中国や新興諸国に対抗して
生き残るすべがないと思われるのです。
SpaceX社の受注リストを眺めると海外からの受注が増えてきたとは
言え、まだまだNASAの発注の割合が圧倒的です。
それを考えればSpaceX社やOrbital Science社ですら、NASAのCOTS
がなければ生き残りが危うかったとすら言える様に思えてなりません。
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